FF14の二次創作置き場

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注意・補足セイブ・ザ・クイーン第4章終了後ストーリー補完。ちょっとあまりにもシド…

漆黒,ネタバレ有り

#シド光♀

漆黒,ネタバレ有り

"嫉妬"
注意・補足
セイブ・ザ・クイーン第4章終了後ストーリー補完。ちょっとあまりにもシド自機の話にかち合うので急いで書きました。
 
 自分を苦しめ続けた全てに片が付いた、気がした。ペンダントの蓋を開き、その写真を見つめる。1人酒を飲み、優しく微笑んだ。

「シド。ああ邪魔だった?」
「アンナか。いや、そろそろ呼ぼうとは思っていた」

 ボズヤ解放戦線はひとまず終わった。否、彼らにとっては一つの始まりになる。東奔西走し、武器を振り回していたヴィエラのアンナはジョッキを持ち、はにかんでいた。

―――途中から彼女と言葉をあまり交わさなかった。いや、避けられていた気がする。理由は分からないが。ただ槍を手にし、冷ややかな目で作戦内容を聞いていた。声を掛けてもすぐに「用事、あるから」と去る。それは初めて見せた目付きだった。が、振り返ってみると俺や暁の人間以外に向ける視線はこんな感じだった、と思う。兎に角、これまでの時間を考えると一瞬だけ他所他所しくなり少しだけ寂しかった。



 作戦中に社員リリヤが大怪我を負い、クガネに連れて行った。治療の合間にふとそれをネロにリンクパール経由でアンナが急に冷たくなったと言うと爆笑される。そしてこう言ったのだ。

『アイツ、槍握るとすげェ怖くなンぞ。オメガの一件中に一瞬マジな殺意喰らった。まさしくあの"鮮血の赤兎"、息が詰まって殺されンじゃねってな。ンで? ガーロンド、何やった?』
「分からん。記憶探索の後まではいつものアンナだった。クガネで慰めてくれたし。それから徐々に態度が冷たくなって、そういや槍を持ってるって思ってな」
『マァ相当ストレスが来たンだろ。だが多少の戦闘でそこまでキレるバブーンじゃねェ。お前が悪いンだろ絶対』
「きっかけがリリヤらから宿題を渡されて一度戻った後からかもしれん。そん時会話交わす暇もなかった。だから俺不在の間に機嫌を崩されちゃどうしようもないだろ」

 失礼なことにため息を吐きながら切られた次の日、再びネロの方から連絡が来る。すると『ただの惚気話に巻き込むンじゃねェぞ』と呆れたような声がした。わざわざ本人に聞いてくれたのかと感謝の言葉を述べようと思い、どういうことだと尋ねる。だが、『鈍感な男は本格的に嫌われンぜ? マァ新入りは復帰後お仕事増量しとくと代理サマからの伝言だ』としか言わない。モヤモヤとした気持ちを持ったまま第IV軍団との最終決戦を迎える。
 そして作戦終了後、リンクパール通信経由でリリヤが『あと英雄サン本当にごめんなさいッス! 姉御達から聞いてビックリしたッスよぉ……。だからボスの件は反省してるんで! どうか、どうか姉御に鬼な仕事量減らすように進言して欲しいッス!!』という悲痛な命乞いに俺含め周囲は首を傾げていたがアンナは「何を聞いたの?」と苦笑していたのが印象的だった。

 それが俺から見たアンナとボズヤ解放戦線の後半戦だ。判断ミスで大切な社員を大怪我させてしまったのは大失態だが、俺にとっては一つの区切りで。酒盛りの喧騒から離れ、1人親父との写真を眺めながら飲んでいると、よく分からないがいつもの物静かなアンナが姿を見せる。



「隣、いい?」
「ああ」

 隣に座り込む。一瞬だけ俺の脚に顔を擦り付けた。息を飲み、目を見開いてしまう。しかし何事もなくペンダントの方を指さす。

「それ、あなたとお父様?」
「ああ。15年ぶりに開いた」
「吹っ切れたってやつね。よかった」

 ほら、とジョッキを向けられたので軽く合わせる。アンナは一気にエールを煽り、俺に少し複雑そうな笑顔を見せた。

「冷たくしてごめん。あなたは悪くない。怖い思いさせちゃった」
「いや俺は大丈夫だ」
「……あれも私。"ガレマール帝国"の初代皇帝が欲し、兵士の間では怪談になったヒト。あなたが過去と向き合ったように私だって―――ね?」
「アンナ」
「アレを見ても、あなたは……私のことスキ? それとも兵器として利用してみる?」

 じっとこちらを見上げ、答えを待っている。笑みがこぼれ、肩を軽く叩き、寄せてやった。

「アンナは人間だ。兵器じゃない。いつも言ってるじゃないか。ただの旅人ってな」
「杞憂だったかぁ」
「そもそも兵器として見るならオメガの一件までにはそうしてるさ。今更だろう。アンナはもう余計なものを1人で突っ走る必要はない。俺も一緒に行くからな」
「バイシャーエンからも同じようなこと言われたよ。『そこまで解放者殿が背負う必要はありません』ってね。―――あの人が最後に止めてくれなかったら本気で過去に引っ張られてたかもしれない位やりすぎたのは反省してる」

 命の恩人(リンドウ)の修行による影響でバカみたいに強い力でこれまで色々解決してきた人間だ。今更目の色変えてしまうわけがないだろうに―――ここまで来てそんな心配をしていたらしい。だが、確かに"鮮血の赤兎"と呼ばれていた頃があったことを、嫌でも思い出した。心の奥底で罪悪感を持ち続けていた俺のように、アンナも笑顔という仮面を被り決して過去がバレないよう立ち回る。そうやってお互いずっと触れられたくない過去を封印し、見ないようにしてきた。きっと今回は帝国兵が相手だったから、そういう手段も取れたのだろう。向こう側がどういう反応をしていたのか気になる所ではある。
 そう思った所で意外なことを言い出した。舌をペロリと出し、イタズラな笑みを浮かべながら聞き飽きたあの言葉を吐く。

「まあ昔の私だったら、『だからあの人の方がいいよ。まとめて護ってあげる』って言ったかもね」
「おいだから何を今更」
「現実は怖くて言えなかった。不思議だね」

 ペンダントの方を見つめながらボソリと暗いトーンで機嫌が悪かった本当の理由を語り始めた。

「周りから見たらあなたとミコト、お似合いなんだってね」
「そうか?」
「頭いいし、ちっちゃくて可愛らしいし。護ってあげたい子だよね。研究職な子だし、真面目なあなたなら議論のし甲斐もあるでしょ?」

 鈍感だと周りに言われ続けた俺でも流石にここで気が付く。ネロから"惚気話"と吐き捨てられ、ジェシーによるリリヤに課された謎の"仕事増量"。そしてリリヤが何故かアンナ"に"命乞いをする声で察するべきだったかもしれない。声を出して笑ってしまう。

「何が面白い?」
「いやお前さんもちゃんと嫉妬するんだなって思ってな」
「別に。周囲がアドバイスやらで盛り上がってて少しだけイラッとしたから槍を振り回して……あっ」
「ほら嫉妬じゃないか」

 そっぽを向かれる。よく見ると肩が少し震えていた。まさか自分がいない間にそんな話がされてるとは微塵も考えになかった。そしてアンナが複雑な気持ちを持ってくれているとも予想せず笑みがこぼれる。これでまだ男女の付き合いをしてないというのが嘘だろ? と思う位には面白く感じた。

「きゃ、客観的に見たら最終的にそうなっただけで別に私自体はその。だから背中バンバン叩くなぁ!」
「今から言いに行くか? 俺にはアンナがいるから」
「必要ない! ヒミツはヒミツのままでいいし第一私はまだ結論が、ついてなく」
「はははそうだったな」

 きっとヒト耳だったら耳まで真っ赤な姿が見れただろう。少しだけ長い耳が後ろに倒れている。そのまま耳と一緒に頭を撫でてやるとジトリとした目でこちらを見上げた。

「待ってるぞ」
「……期待しないで欲しいねぇ」

 目を細め苦笑しながらアンナはその手を握り指先に口付ける。仕草はもう恋人そのものに見えるし、以前と違い見上げるように座っていることが嬉しい。昔だったら耳を触られたくないからという事実を誤魔化し、立ったまま飲んでいただろう。

「でもまあ……同じ背負うという行為ならば騒ぎながら"キミ"の重たい過去や夢と一緒に歩けるのは私だけなのは分かる。普通の人だったら押し潰されてるね」
「そんなにか?」
「キミの好き嫌いもその料理の作り方も、イタズラされた時の怒ってる顔が面白いことだって知ってる。あとキミだってよく不機嫌な顔して話に割って入るね。不在の間に起こったこと部下に聞いてるんでしょ? 把握してる。性行為中に見るなつってもずっと私を見る顔も、満足してイビキかいてるムカツク程腑抜けた寝顔だってぜーんぶ見てるさ」
「コラッ、外で言うんじゃない」
「でもね、どう言えばいいのかな。結論を出すには材料が足りない」
「いい加減観念してくれないか?」

 ここまで人のことを把握しておいて待たされるのはずっと待てをされ続けている犬の気分になる。目の前にご褒美があるというのにどうしてこんなにも焦らされるのか。ジトリとした目を向けると少しだけ困った顔をしている。

「中途半端な結論は絶対に後悔するから。慎重に考えてる、んじゃないかな、うん。ええっと、その」

 しどろもどろに言葉を紡ぐ姿が珍しく感じる。今までこちらの感情を散々煽っていた時の面影は存在しない。自分はされたくないのかと呆れてしまうがそれが本来の姿なのだろう。

「―――いつか一緒にガレマルド、見に行こうね。キミの故郷で、ボク達が出会った場所」
「……ああ」
「かつてどう魔導城まで走ったかも教えてあげるよ、その時」
「それは楽しみかもしれんな」

 どうやら感情についてはもう聞いて欲しくないらしい。仕方がない、今夜"は"我慢しようじゃないか。傍に置いてあった酒を再びジョッキに注ぎ、星を見上げながら2人で静かに飲んだ。
 途中、酔っぱらったゲロルト達も乱入し、その静かな時間も破壊された。だがまあそれも楽しかったからいいだろうと笑い合う。結局飲みすぎてしまい、ほぼ全員まとめて酔わないアンナが介抱する羽目になったのはまた別の話。


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#シド光♀

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注意旅人、猫を拾うと同じ頃に起こったお話。少しだけその複製体は聞き記すと繋がって…

漆黒,ネタバレ有り

漆黒,ネタバレ有り

"ボトルレター"
注意
旅人、猫を拾うと同じ頃に起こったお話。少しだけその複製体は聞き記すと繋がっている話でもある。
 
―――アンナがリテイナーア・リスを認知した一方その頃ガーロンド・アイアンワークス社。

「会長、手紙が届いてますよ」
「俺にか?」
「いえ会長というよりかは会社にって感じでしょうか」

 会長代理であるジェシーは少し怪訝な顔でボトルを差し出す。ボトルレターかと呟きながらそれを観察する。確かに中に入っている紙には『ガーロンド・アイアンワークス社に届くことを願って』と書かれていた。

「新生祭の実行委員会から受け取りました。勝手ながら中身を確認したがこちらでは理解が出来なかったのでと」
「えらく古びた手紙じゃねェか」

 偶然通りかかったネロはニィと笑いながらボトルを凝視する。

「開けねェのか?」
「いや今から取り出そうとは思ったが」

 シドはボトルの蓋を開き手紙を取り出す。非常に質の悪い紙に文字が刻まれていた。

「何々、―――は?」

 シドは目を丸くし手紙を凝視している。ジェシーとネロも覗き込むと同じく眉間に皴を寄せた。

『目覚めた猫に愛しの女を盗られるなよ シド・ガーロンド』

 手紙の陰で見えなかったがウサギを模すように巻かれた針金に白と金の塗料を塗ったものが転がり落ちる。それを拾いながらシドは首を傾げた。

「よく分からん」
「全然分かりませんね」
「イタズラにしちゃ年季が入ってンな……ア」

 ネロは少しだけ悩む素振りを見せた直後シドが持っていた手紙とウサギを分捕る。

「おいネロ!」
「貰ってくぜ」
「いや何でお前が持って行くんだ!?」

 そそくさとその場を後にする姿をシドは呆れた目で見送った。



『"最高傑作"を完成させる永い旅の準備を終わらせた』

 先日あるミコッテが遺したトームストーンに入っていた映像で確かにその単語が入っていた。最高傑作というのは明言はしていなかったがあの英雄のことだろう。命を捧げ何らかを施した―――らしい。シドはその場に居合わせなかったからこの言葉を知らない。知っているのは一度しか再生されないビデオレターを見たネロとエルファーだけだ。

「エルに言うべきかねェ」

 不思議なウサギの物体を指で遊びながらため息を吐く。普通のミコッテ相手ならばもう死んでいるだろう存在について心配することはない。しかし相手は話を聞いた限りでは普通というカテゴリに収まれない。しかもソイツはかつてのエルファーと共に何かをやらかした友人だ。"第八霊災を防ぐことが出来なかった世界"という話を以前暁やアンナが口にしている。もしもこの忠告が本当に時間と次元を越え流された手紙ならば何かが起こってからでは遅い。ありえないと思いたいが問題の英雄周辺では"絶対にありえない"ことが起こり続けている。やはり一言だけ伝えておく方がいいのかもしれないと判断した。次に酒が入った時に言っておこうと1人頷き歩み出す。
 ふと窓の外から視線を感じた。思わず振り向き確認するが気配は消えている。

―――それから彼らの周りで奇妙な現象が起こるようになる。視界の端に何やら細長い尻尾を捉えたりアンナが不思議な装置や錬金薬を見せるようになるとか、だ。

『こういう面倒事に巻き込まれンのはガーロンドだけでいいじゃねェか』

 そうネロは怪訝な目をするエルファーの隣でため息を吐いた。


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オメガ中に起こったお話。時系列がバラバラなものなので順番にリスト化します。アンナ…

紅蓮,ネタバレ有り

紅蓮,ネタバレ有り

連作:紅蓮レイド編【完結済み】
オメガ中に起こったお話。時系列がバラバラなものなので順番にリスト化します。

アンナ編
本筋
 旅人は奮い立たせたい // 旅人は、目覚めさせる // 旅人と約束

幕間(R18含む)
好奇心は旅人を起こす  :: デルタ編終了~シグマ編4までに起こった会話。アンナの過去が少しだけ分かりネロと仲良く(?)なる話。
【R18】旅人は初めての夜を過ごす【pass:共通鍵】 :: 旅人は奮い立たせたいで起こったR18部分。シドが屁理屈と勢いで押し切り想いを伝える話。
【R18】旅人は初めての夜を過ごす(SideA) :: 上記のアンナ視点。どんどん自爆してドツボにハマり堕とされるアンナさんの話。
旅人は人を見舞う :: 旅人は奮い立たせたい数日後。ネロへお見舞いとアンナと帝国関係のお話チラ見せ。

後日談
【R18】旅人は密会する【pass:共通鍵】 :: オメガ事変終了約2週間後。R18と書いているが多分してることはR15程度の話。
【NSFW】旅人は首元を押さえる :: 上記の数日後。特定の感情を感じ取ると首元がザワつくアンナがどうして自分が好きになったのか聞く話。
【R18】旅人は首元を押さえる(full)【pass:共通鍵】 :: 上記のフルバージョン。
【R18】旅人は首元を押さえる(SideC)【pass:共通鍵】 :: シド視点。

エルファー編
旅人の兄が歩んだ短編集 // オメガ開始直前までのエルファーとネロ話短編4本。
旅人の兄が歩んだ短編集2 // エルファーから見たオメガ事変短編6本。

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「アンナ今日は召喚士か、珍しいな」「そう?」 黒髪のヴィエラアンナの膝に乗る青色…

漆黒

#シド光♀ #即興SS

漆黒

"カーバンクル"
「アンナ今日は召喚士か、珍しいな」
「そう?」

 黒髪のヴィエラアンナの膝に乗る青色のカーバンクルをジトリとした目でシドは見た。
 アンナは器用なものでエーテルを扱う力も片手間にこなすことができる。初めて見た時、「昔エーテルの扱い方が下手だったから修行したんだよ」と苦笑いしながら長い指をクルクルと回していた。直後、高く飛ぶカーバンクルに突然飛び蹴りを喰らったのを未だ根に持っているらしい。

「そこまで悪い子じゃないのに。どうしたんだろ。やめるようにちゃんと躾けとくね。ごめんなさい」

 そう当時苦笑しながら額の宝石を優しく弾いていた。ちなみに現在、流石に飛び蹴りまではされないが未だに噛みつかれたりと懐かれていない。ジェシーをはじめとした部下には懐いてるらしく何故かシドにのみそうするのだ。召喚者と同じくイタズラしているつもりなのだろうと自分を納得させているが面白くはない。
 ふとその召喚物をじっと見つめる。違和感がある。そうだ、以前暁の血盟のヤ・シュトラから聞いたアンナについての情報を思い出した。

「そういえばこのカーバンクルってやつはいろんな色がいるよな?」
「うん」
「以前ヤ・シュトラからお前さんのエーテルの色を聞いた。てっきり赤いやつになるかと思ったが青なんだな」
「あー確かに。不思議」

 クシャリと撫でじっと見つめているとシドは隣に座る。少しだけ召喚物をじっと見つめている。

「どしたの?」

 アンナは首を傾げる。
 そう、アンナからは見えないがカーバンクルは撫でられながらシドを見上げている。まるでここは自分の特等席だと言いたいが如く目を細めすり寄っていた。

「いや、何でもないからな」

 そっぽを向く。アンナはしばらく考え込み「まさか」と軽くため息を吐いた。
 シドという男はほんの少しだけ嫉妬深い所を見せることがあった。恋心を自覚する前から気が付いたら隣に立っていたり、密かに話し相手を睨んだりと、アンナの目には何かと妙なことをしているように映っている。

「キミ、まさか召喚した子にまで嫉妬? いや流石にそんな」

 少しだけばつの悪そうな顔でこちらを見ている。まじかぁと呆れたような声を上げた。

「この子は悪い子じゃないよ。だから仲良く」

 ほらシドもと抱き寄せくしゃりと頭を撫でる。ふと顔を見ると、眉間に皴は寄せているものの口元は緩みこれはもし尻尾が生えていたならば激しく振ってるだろうなと苦笑した。

「まったくどっちのシドも嫉妬深くて困る」
「悪かったな小動物にまで嫉妬し……うん?」
「あ」

 アンナは用事思い出したと離れようとしたがシドはその腕を掴む。"また"余計なことを言ってしまったと手で口を覆った。

「今何と? よく聞こえなかったからもう一度言ってくれ」
「別に、何でも」
「どっちの何って言ったんだ?」
「聞こえてるじゃん! ……カーバンクル! 頭突き!」

 顔を真っ赤にしながらカーバンクルに指示しているが珍しく何もせず頭に乗っている。両耳の間に器用に立っているのは正直凄いと目を細めた。アンナは「こういう時に限って! 言う事聞く!」と震え思い切り目を逸らす。頭を激しく振っても頑なに動かない。一方隣に座っているシドの機嫌は一転し、笑いながら背中を叩く。

「チクショー……もー!!」

 アンナは理解している。このカーバンクルは今名前を呼ばないと指示を聞く気がない。自爆したお前が悪いと言いたいが如くつむじを足で突いていた。しかし、もし呼んでしまえば次は隣の大男がこちらへ頭を擦り付けてくるだろう。絶対何か勘違いしている。
 何故当時の自分は『なんか似てるね』と何も考えず呼んでしまったのか。しばらくがっくりと項垂れ、頭をぐしゃぐしゃと掻き盛大な溜息を吐いた―――。


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#シド光♀ #即興SS

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補足漆黒以降、シドとアンナ付き合い始めた後。リテイナーア・リスとアンナが出会って…

漆黒

漆黒

旅人、猫を拾う
補足
漆黒以降、シドとアンナ付き合い始めた後。リテイナーア・リスとアンナが出会っていた話です。
 
「あ、そろそろリテイナーくんたち帰って来るか」

 クガネで伸びをしながらアンナは世話をしている"子供たち"を労うために意気揚々とお菓子を準備する。さあベルで呼ぶかとふとリストを見やると首を傾げた。

「1人多くない?」

 確かフウガ、リリア、ノラという名付けた子を拾ってリテイナー契約をしていた筈。しかし4人目の枠が存在した。何かの間違いではと一度目をこすりその場を離れ戻るが変わりない。名前を確認する。試しに読んでみよう。ベルを鳴らし、口を開いた。

「えっと、ア・リス・ティア?」
「呼んだか呼んだなご主人!」
「ひゃん!?」

 ビクリと身体が跳ねてしまった。キョロキョロと見渡していると「下!」と言われる。見下ろすとそこには金髪のミコッテが満面の笑顔で立っていた。これまで気配が一切無かった筈なのにいつの間に。白衣のようなものを纏う不敵な笑みを浮かべる男性。一瞬だけ今まで会った人間でいえばネロに少し近い雰囲気を感じた。まああの男はこんなイタズラが好きそうな無邪気な兄ちゃんではないのだが。

「え、あの」
「ちゃんと行ってきたぜ面白い掘り出し物があったんだよご主人!」
「あ、ああありがとう。はいスクリップとお菓子焼いたんだけど食べる?」
「お! 嬉しいな! フーガから聞いてたんだよご主人の手作り料理美味しいってな!」

 その場でもぐもぐとうめーうめー言いながら食べてくれるのが嬉しい。嬉しいのだが、誰だこいつ。知らない。

「待って。あの、ア・リス……サン?」
「おうア・リス様だぜ」
「どちら様?」

 その言葉にガクンと膝から崩れ落ちる。流石に言葉がダメだったか。アンナは「ご、ごめん」と言う。すると「いや大丈夫、俺様それ位じゃ折れない」と拳を握り締めた。

「ご主人あの時疲れてたみたいだからな。俺様が振り返ってやろう。ほわんほわんほわん」
「その擬音言う必要ある?」

 とりあえず何かあったか説明してくれるらしい。少しだけ懐かしさも感じる男の話を聞いてみる。



 俺様はア・リス・ティア。天才トレジャーハンターなミコッテさ。ある日東方地域にある不思議な塔を見つけてこっそり侵入する。しかし凶悪な罠に気付かずかかって大ケガしちまった! なんとか身体を引きずってクガネに帰還。だがお腹も空いてバタリと倒れてしまった。そこに偶然通りかかったかわいこちゃんに「えっと、大丈夫?」と声を掛けられたんだぜ!

「それがご主人、アンナちゃんだぜ!」
「へ、へぇボクって優しいね」

 残念ながら事情を聞いてもアンナには全く記憶に残っていない。もしかしたら最近疲れ気味だったので"内なる存在"が対応したのかもしれないと考え付く。ここ数日の記憶が一切無いし、ありえると手をポンと叩いた。

「ご飯一緒に食べに行って美味しかったぞ! そこで『トレジャーハンター危険、よかったらリテイナー契約しない? 掘り出し物私がかわりに換金。あなた心配』ってのも忘れちゃった?」
「うん? うーん―――言ったかもしれない?」
「だろー? あ! ついでに俺たち付き合っちゃおっか! って言ったら『え、ごめん。そういうの間に合ってる』ってあっさり断ったのも忘れたなら俺様にチャンス来た?」
「あ、それは記憶ある」
「ちぇー」

 その言葉は何か朧げに記憶がある。確かにそういう断り方した相手はいた。このミコッテかは忘れたのだが。そういえばと持ち帰った来たものとやらを見る。何やらトームストーンのようだった。

「ア・リス、持ち帰り物、何?」
「よくぞ聞いてくれたな! 遺跡で拾ったんだよ! 何かお宝データとか入ってるかも? 電源入らないみたいだから壊れちゃってるみたいでな」
「あーその辺り修理する専門家の知り合いいるからいいよ。ありがと」
「へへっ! どういたしまして! じゃあ次も何か持って来るからよろしくな!」
「うん、君のこと覚えとくよ。よろしく、ア・リス」
「にゃはははは!」

 走り去って行った。アンナは嵐のような人だなあと苦笑しながら軽くため息を吐く。とりあえず先程会う約束を交わした何故か機嫌が悪そうだったシドではなくネロと兄にでも渡そうかと1人頷いた。シドは以前フウガとお揃いのトームストーンの"写真"を見て嫉妬したのか少しだけ機嫌が悪いみたいで。数日置いたら大丈夫かなと思っていたが悪化していた。
 あと兄エルファーはアンナに対して誤魔化しているつもりらしい。が、ちゃんとエオルゼアに滞在し、しかもガーロンド社で働いてること位は把握している。何でバレないと思っているのかとノリで話を合わせているだけだ。しかしどこで拾ったかとか聞かれるのが面倒なので誤魔化し方を考えなければいけない。そうだ、例えば―――また壊したから修理してほしい、とか。



「ヒヒッ」

 金髪のミコッテは笑いながらテレポでエオルゼアへ戻って行く主人アンナを屋根の上から見守る。

「ささ、ナイスイタズラな"仕込み"も終わったしちょと来客用にラボの掃除して、60年、いや違うか。80年振りにエルの顔でも拝んでやろうか。愉しみだナァ」

 目を閉じた後、常人を超越する高さを跳躍しながら笛でチョコボを呼び出し上空を飛び去って行く。

―――封印は、解き放たれた。


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注意表題でカットしたネロとエルファーサイドの話。   一服は、嘘ではな…

漆黒,ネタバレ有り

#エルファー関連 #ヴィエラ♂+ネロ

漆黒,ネタバレ有り

技師は宿題を解きに行く-幕間-
注意
表題でカットしたネロとエルファーサイドの話。
 
 一服は、嘘ではない。それよりも外の男が心配だった。「エル」と声をかけると赤髪のヴィエラはゆっくりと口を開いた。

「……長い耳舐めんな。全部聞こえた」

 石碑の前に座り込んでいる。顔を凝視すると涙を拭った痕跡が見えた。こちらに来ると気付いて急いでこすったのだろう。

「クソが。だからコイツ嫌い」
「まさかガーロンドと似てるつって毒吐いてた奴が」

 煙草を取り出し咥えるとエルファーは指をパチンと鳴らし火が灯された。

「臆病者。本質は年を取っても変わらず。大方妹を雑な扱いして死んだら僕に殺されるって思ってたんだろ」

 眉間に皴を寄せる。空に手を伸ばし、吐き捨てる。

「まさか"僕ら"が作った理論を妹が使いこなすようになるとは予想外」
「そりゃどういうもンだよ」
「"奥義:流星"、門外不出。それに―――科学で解明できないものなんて嫌いだろう?」

 火事場の馬鹿力を表層的なものにした錬金術由来のモノ、って感じかな? と言うとネロは眉間に皴を寄せ煙を吐いた。

「ほーら嫌な顔。僕だって現実感皆無で嫌い」
「そーだな。だがな、エル。オレはオマエのことだけはもっと知りてェなァ」

 笑ってやるとエルファーも釣られたように口元が持ち上がった。笑っているつもりなのだろう。

「でもきっとそのリンドウと自分が似てるなンてガーロンドにバレたら不味くね。嫉妬でバグるぜ?」
「ありえる。ほらこれ、当時描いてもらった」

 懐から取り出した劣化防止された紙を眺める。それには3人の男が描かれていた。
 中央にいる片目を髪で隠したヴィエラ、背の低い笑顔を見せるミコッテの男、そして背の高いエレゼンの男。

「そのエレゼンがリン。ハーフガレアンだったんだよ」
「はぁ!?」
「言っただろう? 親の影響でエーテル操作が下手だったって。まあそういうこと。多分妹も知らない。酒の席で樽2個飲ませてようやく口を割った」
「こわ」

 3人が出会った頃はまだガレマール共和国時代であった。父親は鎌を持つとある集落の"農耕民族"だったが生活苦で亡命。オサードで呪術士として旅をしていた母親に出会ったらしい。そして成人後、強くなるために父が持っていたものやエーテルとはまた違う技術に頼ることにした。各地を旅する内にサベネア島に辿り着き、現地人と話をしていたアリスとエルファーに出会うこととなる。

「やべェな。共和国時代か。何つーか昔すぎる話に現実感がねェ」
「言っただろう? 僕は君が思っているより年より上。―――不思議な男だったよ。第一印象は、な。その後、ラザハンの伝承で面白そうなものがあってね。アリスが理論をこね、僕が協力して形作る。んで、全てリンの体で実験、実証」
「実験、ねェ」
「はっはっはいっぱい苦しめてやった。その結果魂自体も少し歪んだ。そのドス黒い闇の歪みがな、実は今の妹にもある」
「―――は?」
「察してた。だが、信じたくない。僕が関わった研究でバケモノにしてしまった事実から目を背けたかった。だから自分の好奇心を満たす旅を優先した。最低だろう?」

 君の前に現れたのも本当はそれが理由だったと目を細め、石碑を撫でる。ネロは吸殻を踏みつぶし、隣に座った。

「あの野郎の手紙に"継承"とあったみたいだが理論だけではない。文字通りリンの全てを魂ごと受け継いでるんだよ。細かいクセも影響されたというには忠実すぎる。完璧にアリスのアホも一枚噛んでるな」
「ンなこと出来ンのか? 聞いたことねェぞ。ていうかオマエ魂視れンの?」
「昔色々あった。―――アリスならありえる。しかもその上でアシエンに魂を弄られている。挙句の果てにハイデリンの加護だぁ? 笑える。何で妹ばっかりこんな目に遭わないといけない」

 エルファーは苦虫を嚙み潰したような顔を見せ、拳を握り締める。

「正直に言う。正気なのが奇跡。―――それは多分リンの教えで自らを縛り、ガーロンドクンがいたから人の形を保っているんだと思う。それが無い今の妹はきっとハイデリンの加護が全て。アシエンに保証されてるとは思いたくない」
「ナァ」

 ネロはうじうじとマイナス方向に考えを張り巡らせるエルファーの思考を打ち切るように声をかける。

「もう妹以外のこと考えねェか? ずっと現実から目を背けてこのオレ様とイイコトでもしようぜ?」

 目を見開き少しだけ慌てた顔をしているのを見てゲラゲラ笑う。「か、からかうんじゃない」と咳ばらいをしながら小突いた。

「そうだな、妹は大丈夫。あの子は強い。どれもこれも全てリンとガーロンドクンのせい。アイツらが似てるのが悪い、うん」
「ああそうだガーロンドが悪い。しかし余計にバレたら機嫌悪くなりそうな話だなァ」
「だな。今の話は無しだ」

 立ち上がり、鞄からミネラルウォーターを取り出しそのまま石碑に注ぐ。

「アリス共々冥府で頭冷やせ。あと100年位したらそっちに行ってやるから指くわえて待ってろ。―――よし、ネロ。さっきから気になってたモンが家の中にある。見に行こう」

 前髪を払い左の紅色の目を開き口角を上げた。


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#エルファー関連 #ヴィエラ♂+ネロ

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注意旅人は星を見つけるの冒頭独白シドバージョンです。   寒い夜。ガキ…

漆黒,ネタバレ有り

#シド光♀

漆黒,ネタバレ有り

技師は紅き星を振り返る
注意
旅人は星を見つけるの冒頭独白シドバージョンです。
 
 寒い夜。ガキの頃、俺は言いつけを破り何かに導かれたように外へ出た。キョロキョロと周りを見渡し少しだけ裏路地に入ると大きな塊。それに恐る恐る近付くと長い槍に、褐色の長い指が見えた。まじまじと観察する前に『人を、呼ばなくては』と判断する。踵を返し、巡回兵を呼ぼうとすると俺の服の裾を掴まれた。振り向くと、フードを深く被った人が「寒い」と小さく呟く。その時、キレイで不思議な赤色の旅人に心を奪われた―――。

 初めて抱いた感情は、物静かで、作り物のような不気味さ。しかしそんな何かに怯え続けながらも、裏では俺や周りを観察していた。
 あの星空が綺麗な夜、それまで暗い雰囲気だった"彼女"が見せた柔らかな笑顔に衝撃を受けてしまった時のことは未だに覚えている。綺麗な顔で細い身体から繰り出される強い力。―――その時の自分との正反対さが目を細めてしまうほど眩しかった。思えばこの地点で既に"彼女"に惚れてしまっていたのかもしれない。

 俺が記憶を取り戻した時の、あの優しげな目を覚えている。元気になって、よかったという言葉だけでは説明出来ない"彼女"の目に灯る星を見た。それから蛮神討伐、そして仲間の救出という同じ目的を共有した冒険が何よりも楽しかった。だからそれ以降も何気なく付いて行こうと画策するようになる。"彼女"が何らかに関わるだけで未知の技術が転がり込んでくるのだ。技術者としての自分も簡単に"彼女"という存在を手放せるわけがないさ。
 "彼女"が刀を持った日、内面に沸き立つ興奮が初めて俺の心を焼き焦がす。舌をペロリと出しながら愛しげに刀の柄を撫でる姿に本能がこのオンナは危険だと警笛を鳴らした。それに反し、自らの情熱は熱が灯りかけ、作戦中じゃなければ非常に危なかった。絶対に敵に回したくないと決心するくらい、斬り払う時の笑顔にゾクリと背筋が凍るほどの美しさを覚える。

 一度、うっかりと手から零れ落ちてしまったヒトに対し悲しむ弱さを目の当たりにしてしまう。どうすればいいのか分からず、肩を撫で続けることしか出来なかった。一瞬火傷しそうなほど熱くなった身体と震えた空気。その肩を少しでも強く握るとすぐに壊れてしまいそうで。なんて繊細な機械装置のようなヒトなんだ、と思ってしまう。
 あの星芒祭での出来事を境に少しだけ素を見せるようになった。何気に精巧な技術を用いたイタズラに説教しながらも居場所だと認識してくれたことに対して喜びを覚える。"あの人"が置いて行った髪飾りを握りしめ、何としても"彼女"の助けになろうと追いかけた。
 思い返すとお互いの距離感がおかしくなったのもこの出来事がきっかけだったかもしれない。狂い始めた歯車は、軋み続けていった。

 ドマで初めて具体的な"彼女"の過去を目の当たりした。同じく"無名の旅人"と名乗っていた命の恩人から与えられた全ての始まりを知る。再会の約束が叶わなかったと少し悲しそうな姿を見て、このまま傍にいてもいいのか、という疑問が湧く。しかし当時の自分は気付いていなかった。もうすでに何度も焦がされていた心は修理不可能なほどその熱で歪み切っていたことに。そしてこの時から、確実に"あの人"と"彼女"を重ね始めていた。

 いつも数歩後ろを歩く"彼女"と常に隣で笑い合ってみたかった。そんな反面、全てを斬り払うための道を作ると、流星の如く走り抜き去っていく後ろ姿を見守る。―――そんな"彼女"を支える行為も楽しかった。紅く光る流星が、灼熱の炎で俺の心ごと文字通り全て燃やし尽くす。"彼女"に無意識下で長い間恋焦がれていたと、初めて首元に噛みついた夜に自覚してしまった。甘い香りと冷たい肌に歯を立てた瞬間の少しだけビクリと震え喉から発せられた甘い声。その直後遅れて湧き出したのは底知れぬもっと欲しいという欲望。だが、俺は今の関係がいいと想いを封印し、笑い合うことを選ぶ。それは2人きりの時に何が起こっても、表では平静で居続ける行為が可能な、そう、人に無関心な"彼女"に甘え続けていたのも確かで。この後オメガによって引き起こされた事変で再び共闘出来ることをただただ喜んでいた。

 オメガによる度重なる仲間への襲撃に対し落ち込んだ時、遂に慰めに来た"彼女"を抱き、想いを伝えてしまった。まるで一目見てから我慢し続けた感情を全てぶつけるかのようにトンデモ理論と勢いで押し切る。いや、きっかけも"今まで出会った人間の中で初めてならキミがいいとは考えていた"と煽ったのも向こうだから俺は悪くないさ。と思いたい。
 ただただ相手は初めてだったのに、手加減無しで一晩中衝動に任せて抱き潰した。そう、その夜は甘くもなく自分の"好き"に塗り替えていく行為に夢中になってしまう。後日何度も謝り倒した。
 だが、そこで命の恩人の言葉に縋る理由も分かったので有意義な時間ではあった。そしてどこか懐かしい低い声で"宿題"を言い渡された時、絶対解いてやると決心する。誰も手中に収めることが出来なかった"彼女"という報酬が手に入るのだから躍起にもなるだろう。
―――それは初めて"彼女"の口から漏れた"SOS"。だから全力で解きに行くに決まっている。

 最後の検証で初めて弱き人間の想いを込めたという"本気"を見る。怒りの感情に合わせるかの如く空気が震え赤黒く染まった後、全ての音が消えた世界で刀身が青白く光り、人を模したオメガを斬り伏せる。振り下ろされた時に現れた光の斬撃はまるで流星の軌跡のように綺麗で。
 青白い光の意味は未だに分からない。ただただこの人が敵じゃなくて本当によかったと痛感する。だってもしも敵だったら二度とこの美しい流星が見えないじゃないか。疲れたのか少しだけ動きがぎこちない"彼女"の背中を叩きながら笑い合う。
 その後、"彼女"は何者かに呼ばれ、別の世界に消えてしまった。

 オメガの後処理に鬼のような量の仕事。それらを終わらせた後、いつの間にか悪友と親しくなっていた"彼女"の兄と対面する。―――驚くほどにそっくりだった。その赤髪も、喋り方も、故郷の髪飾りも。俺は彼も連れ、"宿題"を解くために命の恩人の墓へ向かう。そこで"真実"を知った。彼が遺した手紙はこれまでの"彼女"との旅路がなければ信じられなかっただろう。
 そして"宿題"の答えは"これ"でいい。少しの間だけ反応したがまた光が消えた用途不明な装置を受け取りエオルゼアへと帰る。

 別の世界に消えてしばらくして、"夢の世界"に連れて行かれた。そこは少しだけ弱った"彼女"と真実を照らし合わせる幸せな夢。絶対に生きて戻ってこいという俺が与えられる最高の"呪い"。命の恩人の教えに上書きするかのように吹き込み、帰りを待った。

 青龍壁の調整をし、飛空艇の整備を行い、何事もなく納期もやってくる。―――"彼女"がいなくてもつまらない日常は回り続けた。
 俺は『会いたい』とため息を吐く。するとふとあの解析しても用途が一切不明だった装置が突然ポンと音を鳴らした。それを持ち上げ、何が起こったのかと思いながら見つめているとリンクパールが鳴る。送信主は暁の血盟のクルル。どうしたのか、いや彼女からならば1つしかない。分かっていながらも平静を装うために用件を問うとこう言ったのだ。

『アンナが帰って来たの。嫌そうな顔をしながらガーロンド社へ向かったから、頑張ってね』

 俺は反射的にネロと"彼女"の兄レフが軽量化、再調整した捕獲装置を手に取り慌てて部屋を飛び出す。謎の装置の光が徐々に強くなっているのが見えた。これは、もしかして―――。


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