FF14の二次創作置き場

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No.167

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注意・補足 漆黒.x終了後ネタバレ有り。 疲れた恋人を癒やそうとする2人の話。事…

漆黒,ネタバレ有り

#シド光♀

漆黒,ネタバレ有り

癒やして
注意・補足
 漆黒.x終了後ネタバレ有り。
 疲れた恋人を癒やそうとする2人の話。事後的なシーン有り。R18シーンは後日。
 
『お仕事疲れなキミに朗報。いつもの場所で』
「お、おいアンナ待て!」

 突然鳴ったプライベート用のリンクパール。出てみると約1週間ぶりに聞くあの声。妙な言葉を発し、そのまま切断された。
 肩をすくめ、相変わらず自由な人だと笑みを浮かべた。工房を離れてペンを握り、書類と向き合う。折角のお誘いだ、乗らないわけにはいかない。

 数時間後。勢いで仕上げてしまった。正直に言うと引き出しの中に書類の塊を投げ込んだような気がするが、来週の自分が頑張ってくれるだろう。
 なんとか最終便に間に合わせたことに胸をなで下ろす。社員の生暖かい目には触れないでおいた。今回も誰かがアンナがいないと仕事場から離れないと泣きついたのだろう。
 そんな心配するようなことは一切ない。疲れた時は眠るし、最低限の食事も取っている。また会うために、作業の手を止めなかっただけだと胸を張った。

 そうして向かう先は、ラノシアのミストヴィレッジ。恋人のアンナからアパートの鍵を受け取り、少しの時が経った。物置だと言っていた殺風景な部屋もだいぶ家具を置くようになっている。ついでに作業用のテーブルが置かれ、多少の仕事もここでやるようになった。
 しかし、実際は納期が近付くと会社に缶詰だ。言うなれば出張ついでの細かな作業に使う程度。なので思ったよりかは利用できていない。そして家主も世界に危機が迫るレベルの作戦中は帰って来ていない。
 なので、酷い時はほこりを被った部屋の掃除から始まる。リテイナーも自由奔放で掃除ができるのは金庫担当の1人だけだ。シドも掃除は得意ではない。が、家具や皿を壊しながら箒で薙ぐアウラとミコッテの姉妹に比べたら幾分もマシである。

 階段を上り、無骨な銀色の飾りが掛けられた扉の前に立った。新しいものを贈ったが、未だ最初に作ったものを吊り下げている。一度なぜか分からないとネロにこぼしたことがある。ただ一言こう吐き捨てられた。

『俺に聞くモンじゃねェだろ鈍感おぼっちゃんが』

 全くその通りだ。言い返せなかった。しかしなぜかアンナの心理はシドよりネロの方が詳しい。
 本人は照れくさい性格だからなのか絶対に教えてくれないので自然と聞いてしまう。

 閑話休題。扉を開くとそのまま腕を引っ張られ、転びかける。壁に激突し、見上げるとアンナがニィと笑っていた。ちなみにぶつかった場所は壁ではなく彼女の胸だ。

「硬い」
「レディの胸に埋もれるのは男の夢と最近聞いた」
「……せめて胸部装甲外してくれないか?」
「ほらお疲れ様でした」

 誤魔化すようにアンナはシドの頭をグシャグシャと激しく撫でた。シドは腰に手を回し、アンナの肢体を抱きしめる。久々の甘い匂いに包まれ、笑みがこぼれた。目の前にいるという事象を確認するかのようにゆっくりと触れる。
 背中から腰へと徐々に下へまさぐるように撫で回す。すると、アンナは少しだけ甘い吐息を漏らしながらシドの手を掴んだ。ジトリとした目で口を尖らせる。

「帰って即? 疲れは?」
「男の夢とやらで誘ってきたじゃないか」
「……私が動く日。ご飯は?」
「後でいい」

 はいはいと言いながらシドを軽く抱き上げ、ベッドへ運ぶ。相変わらず細い腕で一連の動きを軽々と行うアンナの姿に男としての自信を失いかける。眉間にしわを寄せ、口を開いた。

「なあ、歩く位はできる」
「今日は指一つ動かさなくていいって言ってる」
「そこまで言ってなかったぞ」
「じゃあ今言った。覚えてて」

 優しくベッドに下ろし、アンナはシドの膝の上に跨がった。ニィと笑い、胸のラインに沿って指を這わせる。

「シド、約束をよく反故するからねぇ」

 そう言いながら懐から手錠を取り出す。準備万端か、とシドはため息を吐いた。素直に手を差し出すと、ガシャンと音を立て、拘束される。

「本題。疲れた会長様を癒やしてあげよう」
「手枷で人を癒やせると聞いたことないが――次は誰から何を吹き込まれたんだ?」
「失礼」

 アンナは旅に関係ないことに関しては知識しか存在しない。もちろん恋人の営みに関してもである。
 そして持ち帰る知識は正しいものとは限らない。
 久々に会ったと思いきや、出所不明なコトを即実践しようとする。よく相手を振り回しては、最終的に毎回なぜかアンナが啼いてシドは満足していた。

「よし、今回こそはキミにぎゃふんと言わせてあげる」
「疲れを癒やすんじゃなかったのか?」
「おっと口が滑った」
「あとぎゃふんはとっくに死語だ久々に聞いたぞ」

 喋るなと唇に指を添えながらアンナは顔を近づけ、ニィと笑った。ゴーグルを剥ぎ、第三の眼に口付ける。それから目元、頬、鼻先、首、鎖骨。一番ほしい場所を飛ばすので「唇は?」と聞くと、「ご褒美は最後」という言葉が返ってきた。

「どうやって脱がす?」
「お前なあ……」
「教えて」
「これ外せば終わる話だろ」
「猛獣の檻を自分から開けるバカがどこに?」

 ほら口答で説明とアンナは首筋に口付ける。説得される気はないらしい。アンナは意外と頑固で一度決めたことは滅多に曲げたりしない。今回に限っては積極的な姿を見られるのだ。よって無駄に抵抗せず諦めた方が早い。――シドは分かったと言いながら大人しく脱がされることにした。



「やっぱりアンナが作る飯は美味いな。疲れに効く」
「本日"も"とっても調子がよろしいことで」
「……今回もすまなかった。もちろん本心だ」

 私が癒やす側だったのに、とアンナは口を尖らせそっぽを向いていた。怒っているような仕草を見せながらも食事は与えてくれるのでやはり優しい人である。
 あれから楽しんだ後、アンナがあらかじめ用意していた料理を振る舞っていた。シドにとっては、先ほどまで乱れていたのが嘘のように普段の振る舞いを見せるアンナのことが正直に言うと少し怖い。今回は"普段より"控えめなものだったが、どんなに激しい行為の後でも一眠りしてしまえば、説教は挟まるがいつもの生活を送っている。おかげで外では自分が完全に尻に敷かれていると誤解している人が多い。
 閑話休題。今回は最近ガレマルドの話を聞いたからなのか、帝都風の料理が多めだ。相変わらず味の再現度が高くて驚いてしまう。

「"女性"から貰ったガレアンチーズなかなか美味。またガーロンド社に顔を出す時ピッツァ沢山準備」
「あ、ああそりゃ喜ぶやつは多いだろうな」

 生地から作る姿が容易に浮かぶ。そして女性と強調する姿に、エプロンの件を未だ根に持っていることも確認できる。苦笑しながらアンナの手を握った。

「今度は人助けに疲れたお前さんを俺が癒やしてやる」
「キミが余裕ある時に私が? ないない」
「残念だぜ」

 2人は笑い合う。
 シドはアンナが疲弊しきった姿を見たことはない。しかも忙しい仕事の合間に立ち会うなんて希少であろう。しかしその状況は思ったより早く来ることになる。
 それは異形の塔がエオルゼア各地に出現し奔走した夜。普通の人間には拾えないであろう"ナニカ"を受け取ってしまったらしい。沈みきった顔で、テンパード化治療の術式探しで犠牲になった装置の分働かされていた最中に現れた。



「突然ですみませんが会長、帰ってください」
「……は?」

 ジェシーの言葉にシドは目を点にする。周辺の社員らも2人の方を見ていた。

「いやまだ終わってないだろう。まさかお前たちに全部任せて俺が休暇を」
「あ、いえ会長にはちゃんと働いて貰いたいですけど緊急事態なので」

 シドは首をかしげながら言われるがまま自室へ戻る。扉を開けた瞬間、そこにはソファに突っ伏す黒髪のヴィエラがいた。

「……アンナ?」

 動かない。慌てて近付き、ひっくり返すと褐色の肌の上からもよく見えるほど真っ青になり、疲れ切っていた。緊急事態、こういうことだったのか。

「なあ、大丈夫か」
「――シド」

 長い睫が動いた。少しずつ目を開いた恋人は、弱々しい笑みを浮かべる。

「英雄、面倒」

 そう言いながら、シドの胸板に頭をぶつけた。最低限な単語の組み合わせ。これはコミュニケーションを最低限にしか取りたくない時に使う言語だ。最初聞いた時はどう解釈していいか分からなかったが、現在は何となく言いたいことは分かるようになった。

 シドはポツポツと先ほどまでエオルゼア中を奔走していたという話を聞く。

「ゼノス、アシエン。変な塔、元凶。望む、終末。精神汚染有り。んー……主にガレアン人拉致洗脳、強制労働。接近禁止。……いなくならないで」

 推測するに、祖国が滅亡に近い目に遭っていることも分かり、頭を抱える。変な塔が出現したことは知っていたが、まさかそれが終末とやら由来のモノだというのは頭痛がする。もう少しだけ話したいようだが今の状態で考えをまとめさせるのも酷だ。止めてやる。
 アンナが疲れてダウンするのも納得できる。そして「皆に休め、と。休み? 分からず。だから来た。――ジェシーたち、鉢合わせ。死にそうだって。今に至る」と言いながら苦笑していた。
 とりあえずリンクシェルで社用回線に繋ぎ、簡潔に説明をし情報を集めるように伝達する。そして切断した後、相変わらず顔を上げず胸板に頭をグリグリと擦り付けるアンナの後頭部を優しく撫でた。

「癒やして」
「――分かった」

 シドはアンナを抱き寄せ、耳の先端に口付ける。



 アンナを寝台に寝かせ、水を取り出した。取りに行かなくてもアンナの鞄を漁ればすぐに見つかる。彼女の鞄には少し仕掛けがあり、アイスシャードを用いて食材や飲み物を冷やすスペースがあった。元々原始的な機工として入っていたものにシドが少々手を加え、効率よく冷やせるようになっている。商品化も考えたが、難点は非常に重い。忘れかけていたが、アンナはこの異次元にでもつながっているのではないかと疑わしい中身を持つバッグを軽々持ち上げているからできた仕様だ。

「レディの鞄勝手に漁ってる、すけべ」
「今はスケベで結構。ほら口を開けろ」

 キャップを開き、ボトルを手渡す。アンナは大人しくその水をちびりちびりと飲んでいた。弱々しい姿はとても珍しい。シドが覚えている限り熱でフラフラしながら顔出した時以来か。それからずっと英雄として休まず、元気に人助けをする所を見てきた。

「仕事、大変な時期。ごめん」
「恋人を優先するに決まってるだろう」
「どうせ何も聞かされずに来たくせに」
「うぐ……」
「図星」

 手を差し伸べてきたので握り返した。すると強い力で引っ張られ、抱きしめられた。シドは慌てながらアンナの肩を掴もうとする。細い肢体に反し、びくともしない。慌てた様子を見せたシドに対し、「別に風邪じゃない。大丈夫」と笑った。そして胸元に顔を埋め、そのままアンナは黙り込んでしまう。
 しかしシドにとってはその弱々しい姿、久方ぶりの逢瀬、甘い匂いで少々魔が差してくる。アンナは首を押さえながら口を開いた。

「心臓バクバク言ってる。あと顔真っ赤。ほんっとうに分かりやすい」
「悪かったな。忙しかったんだ」
「キミが忙しくない日、知らず」
「ぐっ……」

 言葉を詰まらせるシドに対しアンナは苦笑する。そして顔を上げ、相手の顔面に最接近した。ニィと笑いながら胸のラインを沿うように指を這わせる。

「水飲んで少し回復した。ちょっとくらいは付き合ってあげてもいいよ」
「む……じゃ、じゃあそうだなーー今日は俺が動こうか」
「いつも通り」
「……そうとも言われてるな」

 顔を見合わせ笑い合う。アンナはシドの前髪をかき上げるように撫でつぶやく。

「そのいつも通りでいい。ボクはそんなキミに救われてるから」
「勘違いしていいのか?」

 アンナは呆れた顔で「いつもしてる」と言い、シドは苦笑して見せた。

「傷つくからあまり辛辣なことを言うんじゃない」
「これでも甘やかしてるつもり」
「そうか、未だに慣れないんだな」

 シドはアンナの後頭部をぐしゃりと撫でながら寝台に倒れ込んだ。今の言葉は他の人間ならば嫌味だろうが、人付き合いを得意としないアンナにとっては本心なのは分かる。自分とはまた違う不器用な人だ、とシドは考えていた。

「いいの?」
「いつでもできる。今日は寝よう」
「……ん」

 灯を消し、薄暗い中アンナが目を閉じるのを待つ。アンナはしばらく指先でシドの髪で遊んだ後、「おやすみ」と囁いた。


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