FF14の二次創作置き場

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No.160

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注意・補足 新生以降紅蓮以内のシド光♀。モンクジョブクエ50前提。  …

新生,ネタバレ有り

#シド光♀

新生,ネタバレ有り

"武器と手加減"
注意・補足
 新生以降紅蓮以内のシド光♀。モンクジョブクエ50前提。
 

 目を閉じて、息を大きく吸う。目に見えぬ何かをまとわせ、それを拳へ集中させる。重心を下半身に、上半身は力を抜き、"気"を意識。

「アンナじゃないか」
「っ!?」

 突然声を掛けられ集中が途切れてしまった。振り向くと白い男が手を振りながら走り寄って来る。

「だいぶ早い時間に起きるんだな」
「そんなことないよ? シドこそ早い。……いや徹夜明け?」
「正解だ」

 肩をすくめ、苦笑している。そして何をしていたんだと聞くのでボクはいつもの笑顔を見せた。

「朝の日課は運動から始まる」
「ああ準備運動みたいなもんか」
「昔ある人に教えてもらった。武術、その"型"と言えばいいのかな? 体操の代用」
「アラミゴの僧兵か?」
「あーそれに近い。本場のモンクの人に色々教えてもらったけど違う動きだったの。多分別流派」

 じゃあそういうことでと再び構えるとシドはそのまま少し離れた場所で見ている。首を傾げた。

「いいじゃないか」
「楽しくないよ?」
「楽しいとかじゃないさ」

 よく分からないので放置しておこう。そのままいつも通り、姿勢を正してゆっくりと呼吸を整え、そして―――



汗を拭きながら、一息吐く。シドは―――ずっといたみたい。

「凄いな」
「毎日やってれば誰だってできるものだよ。健康体操みたいなもん。君もやってみる?」
「あー今度にしてくれ」
「やる気はなし」
「邪魔をしたくないんだ」

 しっかり自覚して結構と言ってやると顔がほころんでいた。どうやら褒め言葉だと思っているらしい。もうそれでいいよ。

「まあこの辺りでやっているのも理由があるんだ」
「理由、か?」
「ここモードゥナは"世界の中心"とやららしいからね。確かにエーテルの吸収をしやすい。流れも掴みやすく、面白いことがやりやすいんだよね」
「俺の論文読んだのか?」
「ちょっと借りたのよ」

 目を丸くしているシドにニィと笑ってやり、装備していた格闘武器を外す。1本の樹木の前に立ち、息を吸う。そして拳を当てがい、エーテルを集中させた。

「例えばこうやって」

 拳に力を入れる。その瞬間パンと破裂音が響き渡った。小鳥たちの慌てたように飛び立つ音が聞こえる。

「木が」

 シドの顔を見るとどんどん血の気が引いているのが分かる。当たり前だ。跡形もなく樹木がバラバラになったのだから。

「エーテルって便利だね」

 満面の笑みで言ってやる。こうすると大体の人間はボクの周りから去って行くのだ。
 しかしこの男は違った。

「おい拳は痛くないのか!?」

 その手を握りボクを心配するような目を見せている。どこまでも優しい男だ。首元がくすぐったい。

「? エーテルを拳に集中させて撃ってるだけだし。やってることはモンクの体術と一緒だよ? チャクラは体内エーテルの流れのことだし」
「いやそんな激しく体内エーテルを消費するような行為も身体に悪いだろ! 無茶をするな」
「こんなのめったに人に見せないしやらないよ。だから武器装備してる」

 傍に置いてある刀を持ちシドに触らせる。鞘を通し、長い刀身をなでさせた。

「これは他の人に内緒だよ? 私にとって武器というものは手加減の道具。これがないととーっても困っちゃうの」
「手加減」
「少しでも拳に力を入れちゃったらあなただって一瞬で粉砕しちゃう。人間として、エオルゼアにいるための大事なパーツ」

 耳元にまで近づき、笑みを浮かべた。子供に言い聞かせるように優しくささやく。

「私は強大すぎる力を得てしまった。誰の手にも負えない、だからどの勢力にも属せない。そんな私があなたの"手伝い"をしている。その意味をよーく考えてね」

 震える手を一瞬だけ握り、離れてやった。シドは一瞬ポカンとして顔を見せた後に咳払いをし、苦笑する。

「抑止力としての忠告のつもりか?」
「さあどうでしょう。……お腹空いたから朝ごはんにしましょ?」
「ああ俺も腹が減ってた所なんだ」

 屋台で何を食べようかとシドは聞いてきた。そうだね、ご機嫌な朝ごはんと言いながら一緒に歩き出す。

 乾いた風が今日も小心者なボクの心を嗤っていた―――。


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