FF14の二次創作置き場

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No.166

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補足 2025年のヴァレンティオンデークエストに少し触れたシド光♀です。 少しだ…

漆黒

#シド光♀ #季節イベント

漆黒

旅人は花を置く
補足
 2025年のヴァレンティオンデークエストに少し触れたシド光♀です。
 少しだけ黄金ネタ有り。(物語の核心に繋がるネタではないです)
 
 
1.平和なヴァレンティオンデー朝
「今年もあるんだな……」

 シドは苦笑いして見せた。目の前には"これまで以下略チョコレート"と書かれている。毎年変なことを言いながら渡していたが、ついに建前を考えることすら面倒になったらしい。
 ヴァレンティオンデー。本来好きな人に「愛」を伝える祝祭と記憶している。だが、アンナが莫大な量のチョコレートを変な口実付けて配る日と化していた。
 原因はアンナの兄であり現在社員として働いているエルファーによる見当違いなアドバイス。しかし残念ながらシドだけは現物を貰えたことがない。

 閑話休題。今年はアンナ本人から手渡さず、自分で取る方式らしい。近くにいたジェシーにこれを置いて帰ったヤツはどこに隠れているのかと聞いた。どうやら「グリダニアで仕込み」と言ったのだとか。

「で、止めずに行かせたと」
「いいじゃないですか。恋人の奇行くらい許容しましょうよ」
「ああ、お前らもついに奇行と認めたか……」

 仕込みというキーワード。それは彼女の厄介な"趣味"に起因するものである。最初こそは微塵も見せていなかったが、彼女はモーグリ族顔負けのイタズラ趣味を持っている。
 多少のサプライズならどうってこともない。だが、彼女は何事にも全力を尽くす人間だ。無駄に器用な技術を用い、あの手この手でこちらを驚かせ、満足したら去る。救いなのはそのイタズラ相手はシドだけで、他人には相変わらずすました顔で対応していた。
 しかし毎回怒鳴りながら追いかけている姿は社員の間でも「また見せつけて来てる」と惚気の一種だと勘違いされている。確かに間違いなく愛はある。あるのだが――心臓がいくつあっても足りないというのが本音だ。

「だって会長、アンナさんからイタズラされた後機嫌いいですし」
「毎日されててほしいよなあ」
「オイラは毎回愛って何か考えさせられるッスよ……」

 このように社員らの目には機嫌を直す薬として見られているらしい。どういう解釈をしたらそういう解を導くことができるのか、是非とも詳しく聞いてみたい。が、理解できそうもないのでやめておく。
 嫌な予感を察知しながらも、どさくさに紛れてチョコを手に取りながら本日も業務が始まった。

2.サプライズには花束を
 珍しく彼女は夕方まで現れなかった。

「やあシド」
「またバカみたいな量のチョコを作ってたな」

 シドは苦笑しながら自室に現れたアンナを迎えた。何かを後ろに隠している。怪訝な目で見ているとアンナは満面な笑顔で差し出した。

「ほらチョコレートなんかより。バラの花束、いかが?」
「ど、どうしたんだいきなり」
「今、グリダニアで、バラが熱い」

 アンナによると、現在グリダニアでは愛する人に渡すバラを配っているのだという。お手伝いのお礼で貰ったからあげる、と。
 ニッコリと笑いながら大きな花束を押し付けてくる。

「日頃のお礼だよ」
「だからそれをやるなら俺の方だと」
「早いもん勝ち」

 ほら早く手に取って、とアンナはまた一層押し付けてくる。シドはやれやれと言いながらその花束を受け取る。
 見た目は何もない赤いバラの花束だ。まじまじと眺め、どこのバラかと聞くと昔はイシュガルドで。霊災による気候変動の影響で今はグリダニアの人が育てているとアンナは答えた。
 シドは柔らかな笑みを見せる。それを握り、どこに飾ればいいのかと考えているとカチッという音が鳴った。

「カチ?」

 鳴り響くクラッカーの音。飛び散る紙吹雪。一瞬で理解する。これが朝聞いた仕込み、かと。アンナを見る。いつの間にか扉を開きこちらを見ていた。ニィと不敵な笑みを浮かべていつもの一言を口にする。

「ナイスイタズラ」

 その言葉と共に一目散に走り去る。シドは「待てアンナ!」と怒りながら、今日もまた追いかけ回した。

3.真実は突然に
「今日も平和すぎて欠伸が出るな」
「まーた変なことしてたのか我が妹は」

 また逃げられてしまった。逃げ足だけは本当に早い。ため息を吐きながら彼女の兄に苦情を言いに行く。
 こいつらにも平和扱いされるのかと思いながら大体の出来事を話す。

「ということがあってな」
「赤のバラ、ねぇ」
「よしここで新開発したシステム披露。OKカイルくん」

 エルファーが手を上げると青色に光る玉がコロコロとやって来る。

『ピピッ、何について調べますカ?』
「何だこれ」
「お前最近また引き籠ってンなと思ったら変なモン作ってたのか」
「変なのとは何だ変なのとは。まあ見てろ。……赤いバラ、花言葉」

 手を叩きながら検索ワードを語りかけるとしばらく読み込み音が聞こえた後、電子音声が鳴り響く。

『ピピッ、愛の誓い! 愚問ですネ!』
「今さらだな。ガーロンドくん、何本?」
「何がだ?」
「お前そンなことも分かんねェのか。本数によってまた花言葉が変わンだよ」

 なぜ俺が呆れられないといけないのかとジトリとした目で見ながら、思い返す。しかし、まじまじと眺め数えてはいなかった。

「いや覚えてないな。10本は超えていた、と思う」
「……まあ想像の範疇。OKカイルくん」
「なぁそのOKまでいるのか?」
「これがいいんじゃないか。コホン、赤いバラの花束、10本以上、我が妹が好きそうな花言葉」

 またジジジと読み込み音が聞こえる。30秒余り経過した後、電子音声が鳴り響いた。

『ピピッ、21本』
「なぜ?」
『ピピッ、花言葉はあなただけに尽くします。ついでにヴァレンティオンデーの概要を確認しますカ?』
「はいカイルくんありがとうもうお腹いっぱいだ」
『ピピッ、お役に立てたようで何よりでス! またいつでも質問してくださいネ!』

 そのまま物陰へ去っていくのを見届けた後、エルファーとネロはジトリとした目でシドをちらりと見た。

「結論、照れ隠し」
「ハッ、茹蛸になってンな」
「お、お前たちうるさいぞ!」

 そういえばイタズラの後片付けを忘れていたことを思い出す。急いで自室へ駆けだした姿を呆れた目で2人は見守っていた。

4.照れ隠し
 自室へ戻ると即違和感を抱く。そのまま飛び出したのでイタズラの残骸が残っていたはずだ。しかし綺麗に掃除されている。首を傾げているとふと気配を感じた。
 肩をすくめた後、ゴーグルを外す。そして神経を研ぎ澄まし、第三の眼で確認をすると、何かが部屋の隅で丸まっていた。ゆっくりと近づき、目の前に座る。

「人をストレートに口説きたいなら変なギミック加えない方がいいぜ」
「……チッ」
「舌打ちをするな。ほら姿を見せてくれ」
「やだ」
「透明化はアルファ――じゃないな。これはシルフ族のおまじないから着想でも得たのか? 相変わらず錬金術で遊んでるな」

 ボンという音と煙で何も見えなくなる。だが、ガレアン人が持つ目を持ってすれば小手先の策は通じない。姿を現しながら立ち上がろうとした彼女の腕を掴み、そのまま抱きしめた。

「っ――!?」
「アンナ」
「離して」
「逃げるじゃないか」
「帰る」
「帰すわけないだろ」

 みるみる煙が晴れ、そこには顔を真っ赤にした恋人が。アンナ・サリスという人間はイタズラ好きのクセに、いざやらかしたらこうやって隅で震えている。初めてやらかされた時は逃げた先で泣いていた。
 だから強く責めることもできない。何より器用な技術が気になるからと後で調べることも多かった。そして少しだけ改良してやり返したらこれも泣く。シドはそんな姿もまた愛おしく感じていた。
 そう、あの血も涙もないと一部で囁かれているこの英雄様。実は意外と泣き虫な面がある。兄によれば「人と関わってこなかったから分からなくて泣き出すのだろう。まだまだ子供で可愛いよな。ついにガーロンドくんにも分かってもらえるとは思わず」らしい。これは酒の席で出た発言なので流石に気持ち悪いぞ一緒にするなと釘を刺しておいた。
 まあ確かに彼女の泣き顔は少しだけ、そうほんの少しだけそそる所もあるのだが、絶対に言うわけがない。吊るされるというオチが浮かぶ。

「造花だよな?」
「もちろん。本物はジェシーがいい花瓶準備してくれた」
「明日部下たちからどういう目で見られるか」
「愉快」
「お前なぁ……っとそうだった」

 シドはふと後で食べようとそばに置いていたチョコレートに手を取る。

「キミはママ以外からいっぱい貰ったことある。何貰ってるの」
「うるさいぞ」

 今年はコーンっぽいものを模した立体チョコレートと、白いモコモコとしたような動物を描いたアイシングクッキーだ。

「これは最近お前が行った場所で生息してる生物か? いやこれは食べ物か?」
「アルパカとモロコシ様だけど」
「モロ、コシ……?」

 相変わらずどこを旅すれば奇妙な体験をするのか理解ができない。もう少し説明を求めたら満面な笑みを見せた。

「アルパカはこっちでいうチョコボみたいなやつだよ。モロコシ様はモロコシ様。とっても優しくておいしいんじゃぞ」
「また妙な語尾を……」
「で? いきなりそれを持ち出してどうしたの?」
「決まってるだろ」
「……お断り」

 シドは何も言わずにジトリとした目で見ると、アンナは両手を上げた。

5.サプライズはメインディッシュ
 目を覚ますと、既にアンナはいなかった。相変わらず早朝の日課とやらが大切らしい。伸びをしながら着替えを手に取った。
 嫌な予感がしながらも外へ出るとやはり視線が気になる。アンナは一体どこに飾ったというのだろう。
 工房に入るとネロとエルファーが笑顔で立っていた。そして手に持っていた"カイルくん"が浮かび上がりシドを案内する。その先には複数の大きな花瓶に生けられたバラの花。

「OKカイルくん、女心が分からない会長クンに本数数えて花言葉、どうぞ」
『ピピッ』

 上部のフタが開き、レンズが現れた。そして光と共にバラを照らした後、再び読み込み音が流れる。高らかな電子音声が響いた。

『ピピッ、バラの花束、99本ですネ! 永遠の愛、長年の想い、ずっと一緒にいてください! こちら七度目の質問でス!』
「まーた茹蛸になってンな」
「兄は割とマジで許さないぞとしか言えん」
『ピピッ、また何かありましたらいつでも質問してくださいネ!』
「いらん!」

 ポケットを漁ると心当たりのない紙切れの感触。恐る恐る開くと『満足』と書かれていた。
 シドは再び顔を真っ赤にしながら恋人の名前を叫んだ。


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