FF14の二次創作置き場

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No.165

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補足 時間軸はウェルリト後なので念のためにネタバレ有り行きにしてます。 本当は兄…

漆黒,ネタバレ有り

漆黒,ネタバレ有り

旅人は悩みを解決したい
補足
 時間軸はウェルリト後なので念のためにネタバレ有り行きにしてます。
 本当は兄のエルファーとご飯きっかけに文通以外でお話したい自機の話。
 

――ウェルリト。

「おおアンナか、すまぬ」
「ガイウス、別に着替えしてるわけでもなしそのままでいいよ」

 エオルゼアの英雄であり、かつて"鮮血の赤兎"と祖国で恐れられたヴィエラは宿泊スペースで刀の手入れを行っていた。手招きをされたのでガイウスはアンナの近くへと寄る。そしてしばらく慣れた動きを眺め、感心した。

「器用なものだな」
「慣れてるから」
「龍殺しに教えてもらったのか?」

 アンナは目を見開きガイウスを見る。しかし「あーそういや帝国の人ってフウガ知ってるんだっけ」とすぐ刀に視線を落とす。

「旅人たるもの武器の手入れを怠るなって教えてもらったんだ」
「流石唯一の弟子と伝わっているだけある。うぬは苦手なこともないのか?」
「んーフウガには最後まで勝てなかったよ。だから戦うのも苦手。木の棒でドラゴンを倒したり岩をチーズのようにスライスしたりもできないよ。ボクは全然すごくないさ」

 苦笑しながら柄に入れ、顔を上げた。手入れ道具を片付け身体を伸ばす。

「せっかくよい環境におるのだ。一度プロに見てもらった方がいいかもしれぬぞ?」
「うーん……武器ってさ。持ち主の身体の一部だと思ってる。だからそれを気軽に渡して見せるってのはねえ」

 少しだけ唸るような声を上げた後「あーでも」と手をポンと叩く。

「銃系が分かんないんだよね」
「銃、と申すと?」
「ほら、機工士が使う銃とガンブレイカーのガンブレイドだよ。フウガって魔導技術革新より前の時代の人間だから、教えてもらえてないのさ。とりあえずイシュガルドの工房で、整備の仕方は一通り教えてもらったんだけど。まあガンブレイドの方はさっぱりってやつ」

 お手上げなんだよねってと肩をすくめるとガイウスは少しだけ考える。その後愛用のガンブレイドを取りだした。アンナは首を傾げ、それを見ている。

「こいつは、No.IXと言ってな。ワシの親友、ミド・ガーロンドが軍団長就任祝いにと贈って来たものだったのだ」
「……ホー」
「うぬが持っておるものとは仕様が異なるかもしれぬが、魔導機工師ならきちんと頼めば診てもらえるのではないか? ……信頼できる人がおるだろう?」
「確かに、そうかもねぇ」

 アンナは不敵な笑みを浮かべる。そして今回の企みで脳内がフル回転された。これをダシにしたら、あわよくば兄のエルファーとご飯を食べられるかもしれない。

「よし。ガイウス、いい思い出話ありがとね。かわりにちょっとだけフウガの話をするよ」
「子供たちも呼んでいいだろうか」
「……あんのアシエンどこでフウガを知ったんだよほんとに」

 即苦笑しながらため息を軽くつき、呼びに行ったガイウスを待つ。
 その後、少しだけリンドウとの旅の思い出を話してやる。アンナは"そういえば、こうやってフウガの詳しいこと人に話すのは初めてだっけ"と考えながら、夜が更けるまでその話をした。



 作戦はこう。ネロサンに武器の整備を依頼し、次の日にいつもネロサンの部屋に隠れてる兄さんを呼び、一緒に朝ごはんを食べる。これをきっかけに引きこもってないで時々は一緒に買い物とか行こうと誘う。ネロサンもノッてくれるはずだ。よし、我ながら完璧。

「というわけで武器の整備をお願いしたいんだよね」
「なーにがというわけだ? ガーロンドに頼みゃいいだろ」
「適材適所」

 ガーロンド・アイアンワークス社。休憩室で優雅にコーヒーを飲んでいた男をラボと称している場所に引っ張り武器を突きつけた。

「元軍属なら銃とガンブレイドの整備位朝飯前でしょ?」
「マァそうだがそンな使ってねェよ。俺の戦い方位知ってンだろ?」
「む、お金出すし少々使える方向に改造してもいいから」
「いやガーロンドに殺されっか」
「あ、もしかしてボクが使う武器触るの怖い? まあ結構使いやすいように弄ってるしね。壊しちゃうって思ってるんだ。天才のくーせーに、意外と繊細。メンタルがザ」

 その畳みかけるようなセリフにネロはカチンと来る。ヘタクソな罵倒言葉を打ち切るように震えながらキレ散らかした。

「やってやろうじゃねェかよこの野郎! この天才機工師の俺様にできないことはねェ!」
「じゃあ明日までによろしくね。はいお代先払い」

 勢いで言ってしまった。ネロはその場に突っ伏してしまう。アンナは重みのある革袋を武器の横に置き、踵を返した。扉を開く直前にネロが「そういやよ」と引き留める。アンナは「何?」と言うと、ネロは指さした。

「いきなり何で武器を整備しろって言い出したンだ。お前何でも自分でできるハズだろ? 動機教えろ動機」
「え、ウェルリトでガンブレイド整備方法不明ってガイウスに言ったら"信用できる人がおるだろう?"ってヒント教えてくれたからだよ? そういやあの人が持ってる武器ってミド・ガーロンドに贈ってもらったものなんだって」
「ア?」
「じゃ、ボクは別の用事こなしてくるからまた明日」

 ネロが止める間もなくアンナは去ってしまった。顔に手を当てため息を吐いているとひょっこりとエルファーが現れる。

「アレ、絶対意味履き違えてるよな。俺の勘違いじゃなけりゃ、超遠回しにガーロンドに頼めつってるよな閣下」
「だな。でもまあ一先ず隠そうか。よし、華麗に会長くんへ全仕事を押し付け、定時退社。腹ごしらえ後整備だ。我が妹の武器がどんなもんか見てみたかったんだ」
「マァ使いやすいように弄ってるっつーのがどういうのか気になるがよ」

 ま、バレなきゃ何も起こらないかと肩をすくめ、笑みのようなものを見せるエルファーに笑いかけた。部屋を後にし、今晩の計画を練る。



「で、俺に全部仕事を押し付けてお前たち2人は優雅に外部からの依頼、と。金もたんまりと貰ってな」
「黙秘権行使」
「しかもこれ見たことあるぞ。アンナのだよな。どういうことだ? ネロ」

 2人は"普段は鈍感なくせにこういう時に限って鋭い"と舌打ちする。
 優雅な定時退社を決め、整備するための道具を準備した後腹ごしらえだとレヴナンツトールで飯を食いに行く。戻ると、"ちょっと聞くことがあったから"とラボを覗いた後、何かに気づいたシドがジトリとした目で待っていた。笑顔を引きつらせながら「何か用でもあったか?」と聞くと「それはこっちのセリフだ」と吐き捨てた。
 見るからに自分は不機嫌だと顔に書いている。

「前にも言ったよな? 勝手に、アンナの、お願いを聞くなって」
「記憶にねェな」
「初耳」
「いつ何回言ったか覚えてるぞ言ってやろうか?」
「クソッ、適材適所つって押し付けてきたンだよ恨むなら日ごろからアピールしてねェ自分を恨め」
「武器なら元軍属のネロに頼るのは自然だろう? 我が妹は意外と合理主義なことを忘れたのかいガーロンドくん」
「うぐ……」

 シドは言葉を詰まらせる。面白いわけがなかった。これがあるということは日中アンナが来ていたということ。自分の所へは挨拶にすら来ずに。大方最初は断ろうとしたが、どうしてもと押し付けてきたのだろう。アンナが一度思いついたことは絶対に曲げない頑固さがあることを、鈍感なシドでも体感してきた。

「―――じゃあ今日の所はお前がやってるのを見る。次はないからな」
「勝手にしろ」

 ネロはため息をつき道具を広げる。隣で2人分の視線を受けながら"あのバブーン覚えてろよ"とグチグチ言いながら夜は過ぎた。



「やあやあ取り立てにきたよネロ、サ、うわぁシドいるじゃん。……じゃなかったおはよ」

 早朝、アンナは日課を早々に終わらせこっそりとガーロンド社に顔を出す。この時間ならシドも起きていないだろうしと思いながら、軽やかなステップで3回ノック後、ネロの部屋に入る。いの一番に笑顔で立っているシドと目が合った。ネロは隣で大欠伸をしながら伸びをしている。

「うわぁって何だ。また1週間程度連絡つかなかったが元気そうじゃないか。アンナ」
「いや私がそんなこと言うわけないじゃない、お早いお目覚めとは健康で結構結構。へへっ……頼みごとの回収終わったら顔出す予定だったでやんすよ」
「変な誤魔化し方してると後で酷い目遭うの位いい加減に覚えとけ。……ほらメスバブーン終わったぞ。ったくアホみたいに弄りやがって。結構苦戦したかンな」
「帝国式に比べたらクセはあるがこれ位俺でもできるさ。ネロじゃなくて俺に頼れ」

 アンナは武器を受け取りながら苦笑する。しばらく眺めた後、3人分のサンドイッチを机に置いた。

「私的には。あなたと武器、似合わないなって思ったからネロサンに押し付けただけだよ。でもまあ何かプランがあるのなら、次はお願いしようかな」
「嘘つきやがるのもお上手で」
「ネロサンお黙り」

 シドは目を丸くしてアンナを見る。

「んじゃ、報酬代わり。3人で食べてね。ありがと」

 そのまま踵を返し、部屋から抜け出した。シドの声が聞こえたが無視して扉を閉じる。
 しばらく歩き、ジェシーと鉢合わせした。

「あらアンナ、おはよう早いわね。会長に会いに来たの?」
「……兄さんと朝ごはん食べたかったなぁ」

 盛大なため息を吐く姿をジェシーは珍しいものを見る目で眺めていた。


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