FF14の二次創作置き場

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No.37

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注意レイド次元の狭間オメガシグマ編4終了後のシド光♀。事後描写有り(最中は無し)…

紅蓮,ネタバレ有り

#シド光♀

紅蓮,ネタバレ有り

旅人は奮い立たせたい
注意
レイド次元の狭間オメガシグマ編4終了後のシド光♀。事後描写有り(最中は無し)。
 

―――ビッグスが、ウェッジが。ネロまでヤツの襲撃に遭った。俺は軽口をたたきながらも深い傷によりグッタリとしたネロを抱え出口に向かった。するとケフカの検証の時には見られなかった神妙な顔をするアンナとへとへとになったアルファが戻って来た。
 怖かった。俺以外の検証に参加した仲間が目の前で倒れていく姿をこれ以上は見たくなかった。"あのデータ"を取り寄せるよう言いつけて俺はありったけの酒を持ち支社の与えられた部屋に籠る。


「ジェシー。シドは?」
「あらアンナ。会長なら暗い顔して部屋でお休みよ。あなたこそ何やってたの?」
「ビッグスとウェッジとついでにネロサンにちょっとだけ回復魔法をかけてあげてた」
「ありがとう。あなたも色々あったのに疲れたでしょ?」
「大丈夫。体力だけが取り柄だから。シドの方が精神的に疲れてると思う」

 ラールガーズリーチでアルファと後片付けをしていたジェシーの元にアンナはふらりと現れた。珍しく白魔道士の装束をまとい杖を持ち上げながら背伸びして体を伸ばす動きをしている。置いてあったケトルでコーヒーを淹れ、一気に飲み込む。
 アンナの手によってオメガによって行われるシグマグループとの検証が終わった。ぐったりとしたネロを引き連れて戻って来たシドの顔は精神的に限界を見せていた。ジェシーが心配するのは当然の話で。アンナは肩をすくめながら話しかける。

「まあ親友が大ケガでぶっ倒れたらさすがに決壊するよねって思う」
「確かに……会長大丈夫かしら」

 ジェシーの言葉にアンナは少し考えるそぶりを見せる。ここ最近は仕事だけではなく脱線してオメガの行方ばかり追いかけストレスが溜まっているだろう。それなら少々慰めて様子を見てみればいい。そんな最近の彼の動きを考えながら「そうだ」とつぶやいた。

「なんとなく私に任せてほしい。発破かけてくる」
「いつも大変な役回りばかりさせちゃうわね」
「大丈夫。普段から助けてもらってるから」

 ジェシーはアンナにシドがいる部屋の位置を教える。「迷子にならないかしら?」とジェシーが冗談を言うと「善処する」と消えて行った。

「多分あなたにしか出来ない役回りよ。頑張って、アンナ」

 1人残されたジェシーはため息を吐いた。足元のアルファは「クエッ?」と鳴いた。



 ドアを数回叩かれる。もう資料が届いたのだろうか? 開いてるぞ、と口を開こうとする前に扉が開かれアンナが顔を出す。第一声が「酒くさい」だったので「悪かったな」を返してやった。彼女は扉を閉め倒れた酒瓶を起こしながら俺の前に座る。部屋に充満するアルコールの香りの中からふわりとせっけんの香りがする。改めて彼女の服装をちらりと見るといつもと違い少しだけ軽装ところを見るに先に風呂にでも入っていたのだろう。武器も外し完全なオフの格好に見える。少しだけ沈黙が流れた後彼女が口を開いた。

「シド、落ち込んでる?」
「ま、まあな」
「そりゃ連日部下からケガ人が出てたらそうなるか」

 やれやれと言いながら俺の髪を丁寧に梳くように撫でる。熱くなった頬に触れながら「ほら今のあなたはお酒が入ってる。誰にも言わないからさ? 吐いてしまえばいい」という言葉に心の中のナニカが決壊する。

「皆が倒れていく。なぜ俺だけ無事なんだ。お前もいなくなるかもしれない」
「私は負けないよ?」
「うそをつくんじゃない。お前だって合流した時、苦しそうだったじゃないか! 社員を、アンナを失わないために何かできるのか? 俺は―――」
「シド!」

 肩を掴まれ、彼女の俺を呼ぶ叫び声でハッとわれに返る。

「オメガは真っ先に残っていたビッグスやウェッジ、ネロサンを狙った。検証終わりを狙って私を殺そうともしたさ!」
「そうだ、だから」
「でもアイツは2つも間違えてしまった大莫迦機械だよ。まずミドガルズオルムのおかげで私は生還した。そして何よりもシドを狙わなかった。毎回壮大な夢物語を現実で形にして世界や私のために道を作る、あなたを」

 彼女は俺を力強く抱きしめた。冷たい肌の感覚とバクバクと心臓の鼓動が聞こえる。普段と変わらない声色なのに緊張はしてるのかと彼女の硬い胸へと頭を沈めた。

「心臓の音、聞こえる? 私は生きてる。……アルテマウェポンを破壊するときも、トールダン7世をぶちのめすときも。アレキサンダーを停止させるときだって確かにほとんど私が全部斬ったさ。でもそこへ向かう道を作ってくれたのはシド、あなただ」
「アンナ―――」
「アジス・ラーの時言ってくれたよね? 俺は生きてるって。そうだよ自らを犠牲にせずみんなに伝え、空へ道をつないで支援に徹するのが天才機工師であるあなたの役目さ」

 彼女の体に手を回そうとした瞬間体が離れていった。気配察知だけは相変わらず上手なようで優しい笑顔で俺を見ている。つい釣られて笑みを浮かべてしまう。

「元気になった?」
「ま、まあな」
「よかった」

 頭をぐしゃりと撫でまわされた。「子供扱いしてるのか?」と聞くと「私からしたら今のシドは子供みたいなもん」とキシシと笑っている。自称26か40か忘れたがそんなに変わらない年齢だろうと小突いてやった。

「だから、オメガを止める協力、よろしく」
「それは俺のセリフだ。お前がいないと終わらせることはできないからな。俺は……」
「……うーんまだ本調子じゃないね」
「? って、なっ!?」

 彼女のつぶやきの意味を考える前に身体に痛みが走り天井を見上げていた。そして彼女の顔が近づいたところで俺は初めて押し倒されたと判断する。抵抗しようにも腕を押さえつけられ身動きが取れない。やはり彼女は無駄に力が強すぎる。俺の抗議を無視して彼女は妙な事を言い出す。

「私は敵を数体薙ぎ払えば悩みや欲求不満なんて吹っ飛ぶけど……まぁ普通の人は違うよねえ」
「あ、ああそんなストレス解消方法があるのはお前だけだが―――」
「聞いたことがあるんだ。男というヤツはさ」

 不敵な笑顔を見せ一息入れた後恥じらいもせず言い切りやがった。

「一発ヌいたらいいんでしょ?」

 さっきまでのいい空気が台無しだチクショウ。天を仰ぎため息を吐いた。



 意識を飛ばしたアンナの後処理をした後、しばらく本当にこの人と性行為を行ってしまったのかとぼんやり考えた。考えても仕方ないと眠ろうと寝そべり睡魔に身を任せようとした瞬間、アンナは起き上がった。「マジかぁ」という声が聞こえた。自分の体を確認している動きを見せた後いきなりシドの頭を撫でたので何が起こったのか一瞬理解できなかった。
 立ち上がろうとしたので慌てて抱きしめ、「行くな」というと、振り向き苦笑した顔を見せ再び寝そべった。見捨てる気はないらしい。
 アンナは無言で熱がこもった目で自分を見るシドを見つめる。一瞬無言の時間が流れ、アンナは口を開く。

「一度しか言わない」

 寝起きでぼんやりしているシドにアンナはかすれた声で囁きかける。喘ぎすぎて声を枯らしてしまったか、罪悪感が湧いてくる。しかし、過去にどこかで聞いたような懐かしい声色だ。

「"この子"に特別な感情を抱かせたかったら……宿題だ。最高の殺し文句を考えておいで。期限は今日から1年」
「いち、ねん」
「キミがもし見つけるコトができなかったらアンナ·サリスはキミを……世界ごと捨てていなくなる」
「消えても、絶対に捕まえてやる」
「ダメ。ちゃんと頭を使って考えて。キミがどれだけ想ってくれているかは、痛いほど分かった。2人きりならキスも許すし好きと言うのも止めないよ。でも、"今のボク"はキミに感情を抱くことはできない。ボクの呪いを解けるもんなら解いてみな。多分世界中どこを探しても解くことが出来る人間は、キミだけだから。そのために"ボク"は―――」
「お前が欲しい、言葉。ヒントもなしか?」
「もう揃ってる。……さあ寝るんだ。もう出すもん出し切ったでしょ? 身体が重いったらありゃしない。絶対オメガの検証を完了させよう」
「ああ。―――ごめんな」

 アンナは「"ボク"は気にしてないし謝るくらいならヤるな可哀想だろ」とシドの頭を撫でながら再び目を閉じた。その優しい手にシドも目を閉じ、あっという間に眠ってしまった。



 目が覚めるとシドは1人寝台に転がっていた。夢だったのだろうか、と気怠い身体を起こし鏡を確認すると昨晩付けられた痕跡が現実だと教えてくれる。
 カーテンを開けると外はすっかり明るくそりゃ彼女はいないわけだと苦笑する。衣服が整えられ酒瓶が片付けられているのを見ると彼女はしっかり後片付けまでしたようで。のんきに眠っていた自分が恥ずかしくなってくる。「そうか、ついにやってしまったか」とボソリと呟いた。
 ウソまで吐いてこれまで叶わなかった彼女と抱き潰すように体を重ねるという結果を残してしまった。罪悪感がないわけではないが先に仕掛けて来たのは彼女だ。
 兎も角空腹で倒れそうなので上着を羽織って外に出ようと扉を開いた。念のため鏡を再び確認すると一度イタズラで付けやがった時にも思ったがパッと見えない位置に付けている。相も変わらずその技術は見事な手法だと笑みがこぼれた。対して自分はどこに噛みついたのか記憶をたどったが思い出せない。

「会長、やっと起きたんですか」
「ああすまないな。……アンナは?」
「アンナですか? オメガの検証で疲れた身体を癒やすためにクガネで温泉一時休暇旅って言ってました」
「そ、そうか」

 いつもだったら笑顔であいさつしてくれるハズの彼女が、いない。ジェシーの「何かあったんですか?」という言葉を適当にかわしつつ食事をとろうと外に出る。まだ手が震えるが少しでも勝率を上げるために、彼女を勝利へと導くために。何よりも彼が道を作るために必要なモノを待つ。
 何よりも隣にいてもいいという【許し】を得られたことが、そしてようやくSOSを聞かせてくれたのが何よりも嬉しいと笑みをこぼす。1人でどこまでできるか分からないが、やれるところまでやってやろうと思いながらコーヒーに手を伸ばすのであった。
 あの言葉が夢ではなければあと1年だ。そうしないと、シドは、世界ごと捨てられてしまう。そんなこと、認められるわけがないと不味いコーヒーを一気に飲み干した。

―――一方その頃。

「ちくしょー騙された。容赦なさすぎる」

 アンナはクガネにある温泉につかりながらボソボソとつぶやいている。幸い人がいない時間帯だったので噛み痕だらけの体を人に見られることはない。今朝は早々に起き上がりジェシーに「しばらくクガネにいるから。適当なタイミングでお見舞いするね」と言ってそそくさとテレポで離れてしまった。殆ど拭き取られていたがドロリと垂れ落ちる感覚に気持ち悪さを抱きながらチェックインする自分に嫌気がさす。どれだけヤられたんだと首元をさすりながら荷物を置いた。
 しかしネロがいない分検証に勝ち上がる準備に時間がかかるだろう。ときどきは何も考えず英気を養うための温泉旅行も悪くない。

「まあでもスッキリ元気になったならいいか。ボクは……とりあえず風呂から出たら寝るか」

 切り替えていつも通りに行こうと伸びをした。しかし、人の記憶に残したくないからと置いていた壁が一晩で破壊されてしまった気持ちと、どこかハジメテという行為が彼でよかったと安堵する感情がアンナの情緒をぐちゃぐちゃに乱していく。切り替えようと頭をぐしゃりとかき乱し深呼吸する。

 最近自分の中で決めていたリズムが崩されて困っている。悩みの元はシドだけじゃない。暁のメンバーや最近ならばドマの人たちにも。自分が引いた線よりも中に土足で入り込んでくる。孤独な無名の旅人に、何故。理解が出来ない、どうすればいい?

 とりあえずオメガを斬ったら、分かるかな?


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