FF14の二次創作置き場

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No.14

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注意次元の狭間オメガ途中の話。シド少年時代捏造。   上級軍人になった…

紅蓮,ネタバレ有り

#シド #ネロ #ギャグ

紅蓮,ネタバレ有り

好奇心は旅人を起こす
注意
次元の狭間オメガ途中の話。シド少年時代捏造。
 
 上級軍人になった頃、オレは新たに立ち入れるようになった軍の資料室で調べモノをしていたンだ。その時偶然『あの怪談』の真実へつなぐ一欠片を見つけてしまった。それが今につながるたァ思わねェよな? 英雄サンよォ―――



「ネロ、面白い話して」
「何言ってンだ? オマエ」
「あなた、社の中では新人社員」
「だから英雄サマに面白い話を献上しろってかァ? コッチはオシゴト忙しいの」
「あき……新人クンとのコミュニケーションの一環」

 今明らかに飽きたと言いかけたな、隣では『保護者』の社長サマが笑いをこらえている。ヤーンの大穴にて発生したオメガの検証。オレやガーロンド社の人間からしたら未知との遭遇であり目を輝かせるものなのだがこの各所で英雄と呼ばれるオンナ(?)にはあまり響かないものだったらしい。英雄サマは俺を半ば強引に社員として引き入れた"会長代理サマ(ジェシー)"とはまた違う女性として認識しにくい。それどころか人間と認識できるか曖昧なほどの強さを持つ。超える力なンて必要ないんじゃねェか? どうせ疑わしいものは全部ぶちのめしていくクセによと思うことは多々ある。ガーロンド達や暁の人間がいないと誰も自分の領域に一切入れたがらない孤独な存在だは『知って』るさ。
 ていうか何が新人社員とのコミュニケーションだ。そもそも元凶であるアンナは社員でもないやつだ。最初こそ大人しく人助けがシュミな奇妙なウサギかと思っていた。だが、ガーロンドの野郎に懐いて稀に奇行に走る変人だったと聞いたときは正直眩暈がした。社員として招き入れられたからにはいつかこっちに余波が飛んでくると思っていたがまさか今だとは予想外だ。つーかビッグスとウェッジが倒れた後のくせに呑気すぎる。いやもしかしたらそういう雰囲気にしないと耐えられンないと判断でもされたか? そりゃまた余裕あンな。
 しかし事の元凶からの期待するかのような視線が痛い。癪だが従ってやる。この退屈を嫌うヤツが気に入りそうな話はあっただろうか。ウサギ……赤……そういえば昔聞いた話があった。戦い好きにはちょうどいい話でもあるだろう。

「英雄サマに気に入ってもらえるか分かんねェが……今は暑いし新人兵時代に聞いた怪談にすっか」
「お前がそういう話持ってるとは珍しいじゃないか」
「オマエなァ……」

 次はガーロンド側がうるさい。オレが何したっていうんだ。まァいろいろあったか。記憶を頼りにイイ感じの話にしてやろう。

「昔帝国に奇妙なやつが現れてな」
「私が見た帝国の人皆変だった」
「否定はしねェが大人しく聞いてろ。まあソレは突然帝国領内に現れたそうだ。深々と血塗れのマントを被った戦士だってンだ。面白ェだろ?」
「……うん?」

 長い耳がピクリと動く。そして少しだけ顔が青い気がする。もしかして怖い話は苦手だったのか? いやそれだったら最初から拒否するか。珍しくスキを見せやがったので少し嬉しくなったもンだから追撃してやる。

「『ここはどこだ、出口はどこだ』と低い声で呻きながら兵士に近付く。無論その場にいた奴らからしたら侵入者だ。捕らえようと動くが手に持った槍であっという間に一網打尽にされたそうな」
「うぇ」
「倒した後ポーションぶっかけて去るんだよ」
「はあ?」
「そしてその名前は」

 そういえば不在だがビッグズとウェッジも入隊はしていた事を思い出した。じゃあアイツらも知っているかもしれない。ガーロンドといえばきょとんとした顔でオレを見ている。まァおぼっちゃまにまでは届かなかった血生臭い話だろう。あとさっきから奇声を上げているウサギも見ていて少しだけ面白い。

「鮮血の赤兎」

 当の元凶を見ると顔色が真っ青というかいつにも増して様子がおかしい。



「英雄サマはコワイ話は苦手だったかァ? 戦う相手はしっかり選べっていう教訓話だったンだぜ?」と声をかけてやるとビクリと体が跳ねオレを一瞬だけ睨みつけた。その刹那が怖かった。蛇に睨まれた蛙の気持ちが今ならわかる。殺される、本能が警笛を鳴らし喉がひゅっと鳴る音が聞こえた。しかし即座に普段の穏やかな表情を見せると回れ右をし、出口へ走り出した。

「おいアンナどこに」
「う〇ち!」
「仮にも女だろ少しはぼやかす表現しろ!」
「じゃあお花摘み!」

 シドの問いかけに対し遠慮なく言いやがったなコイツ。以前チラッとガーロンドからあまりデリカシーというか恥じらいが存在せず男友達みたいで楽しいと聞いた。しかし大の大人であるこっちが恥ずかしくなるような事も言うのは少し人としてはどうかと思うがそれはいい。
 オレは本能で理解した。特大の地雷を踏んだのだ。面倒くさい。だがどの部分で踏み抜いたンだ?

「しかし不思議なんだが」

 アンナが外出した後ガーロンドが何やらブツブツ言っている。

「深くマントを被ったって話なのに何で兎って単語が付いたんだ?」
「そりゃ見た勇気あるやつがいたンだろ? ヴィエラなンてオレらの故郷では珍しいし記憶に残ってたンじゃないの」
「それもそうか。……実話なのか?」

 ガーロンドは俺の襟を掴み体を揺らす。珍しくスゲェ必死な感じが伝わるが力任せで痛いので強引に払いのける。

「アァ、マジらしいぜ? 真っ赤な髪の返り血が良く似合う性別不明なヴィエラだったってよ」
「会ったことがあるんだ。赤髪赤目で帝国の外への道を聞いてきた優しいヴィエラだった」
「ア?」

 話を聞くとこうだ。魔導院に入学する直前に偶然夜外に出ると国内で行き倒れかけてたヴィエラがいた。温かい食べ物を渡し出口を教えると走り去ってしまったと。いろいろありすぎて忘れていたが自分が飛空艇に憧れを強めたきっかけでいつか再会できたら大空を案内すると約束したとか。なンという淡い初恋みたいな話。最近グリダニアで会えたとかよくこンな状況で話せンな。

「入学前の頃って事は20年程度前か? 遥か昔にあった騒動が元ネタらしいから違うヤツじゃねェの」
「そうか……ならよかった」

 よかったって何言ってンだコイツ。しかし20年程度前? どこか昔の記憶が引っかかる。思い出した、流し読みで終わったアレの記録だ。いざ蓋を開いたらただの過去の不祥事をごまかしたくだらない種明かしだとため息を吐いた『報告書』。そこからオレは頭の中でパズルのピースが嵌め込まれていく感覚を味わった。



 外の空気を吸ってくるとロビーから出ると道にはモンスターの死骸が落ちている。恐ろしいほどに分かりやすい感情だ。情景をたどるとそこには血に塗れた槍を持った英雄サマが眉間にしわを寄せ空を見上げていた。

「トイレはいいのか? 英雄サマ……いや『鮮血の赤兎』さんよォ」

オレの軽口に先程見せたクァールもぶッ倒れそうな位細く睨みつけた目を向ける。

「怖い怖い、そのキレイな顔が台無しだぜ?」
「ネロ、サン」

 その目は一瞬だった。次にウサギは引きつった笑顔でこう言い放ちやがった。

「"私"、武器振り回した後ポーションはまとめて渡したけど一々ぶっかけた記憶はない。それよりさ、仲良クシマセンカ?」

 どうやら地雷、怒りではなくバレた事に対しての怯えの方が大きかったらしい。先程の緊張は何だったのか、ため息を吐く。あとさりげなく重要なことを言っている。詳しく聞きたいが先に彼女の質問攻めが始まった。帝国兵だけが知っている話なのか、悪用してやらかしたヴィエラはいないのか、他に変な逸話は出来ていないか。適当に返してやるとアゴに指を添えふむと考え込んでいた。

「勿体ないがやはり帝国消滅……」
「おっかねェこと言うな。ッたくおたくの仲間らに過去の事は」
「聞かれてないし。そりゃ言っておいた方がいいだろうけどここ最近タイミング悪い」
「そうだな。まァちょっと過去に繋がる話出来るだけでこンな挙動不審になるオマエが話せるわけないよなァ?」
「……そもそも何で"私"って分かった?」

 オマエの反応があからさますぎたから、と言えば簡単なンだが今まで隠していた情報を出してやる。

「まずオマエがグリダニアにたどり着く前」
「はい?」
「赤髪だったのを見てたンだよなァ」
「……はああああ!?」

 期待通りの驚愕する叫び声に笑いを堪えられない。ゲラゲラ笑いながら追撃する。

「前言ったよな?エオルゼアに来てからずっと見てたってよ」
「いやそれは蛮神殺しやらで監視してたとかそういうやつじゃ」
「バーカ、当時話もしたンだが英雄サマには歯にもかけられない存在だったかァ。悲しいなァ」
「あ、いやそういうのはいい……あれか? あれだよなあ」
「過去より今が大事なンだろ? ッたくアレも意味が変わってくるじゃねェか……」
「? 何か?」
「こっちの話だ気にすンな。ほら帰ンぞ。保護者心配してンじゃねえか?」
「別にシドは保護者じゃない。―――いや現状の"あの子"を考えるとそうかも?」

 オレがあの時読んでしまった『報告書』。それはとある部隊が初代皇帝陛下へ報告するためのモノだ。持ち出し不可の書架に置かれた軽く50年を超える記録。帝国占領地内を移動するバケモノの行動が記されていた。当時のオレには全く理解できなくて。それに加えてただの不祥事から作られた創作なンて事実にガッカリした。しかしこれがもしソル帝が対象のヴィエラが女だったと知ってたらトンデモなく下らねェ理由で創設された部隊になる。
 そして幾らか前、再び帝国内に招き入れたが潜伏され帝国領外へ走り去ったなンて記述も記憶にあった。それがもしシド・ガーロンドがやらかした事だったとしたら。そして助けた少年がアレだとアンナ・サリスも気付いていたとしたら。なぜ無名の旅人だと言ってるくせにエオルゼアから出て行かずここにいるのかに対しての見方も変わるじゃねェか。

「なあガーロンドに」
「"ボク"がいつかちゃんと言うから"この子"のために絶ッッッ対に言うな」
「おーコワイコワイそれがオマエの本性か。つーか苦しいから離せ」

 胸倉を掴み上げられ舌打ちされた。無駄に背が高くてウサ耳褐色肌で一人称ボクの女の見た目をした顔のいいヤツと人によったら大好物かもしれない。中身を見るとトンデモ戦闘兵器なンだが。しかし先程から様子がどこかおかしい。妙に自分に対して他人事だ。ふと我に返ったのか手を放しオレの服を整えながら「アーゴメン」と謝る。オレはため息を吐きながら女の手を軽く振り払った。

「言う気はねェよ。オマエの反応をしばらく見てるのも楽しそうだしナァ」
「むー……そう言ってくれると思ってた。キミの本質は"ボク"と変わらなさそうだし」
「オマエさんと? バカいうんじゃねェよ」
「そうかな? "ボク"みたいに一匹狼でいる方が好きで1人でバカみたいに抱え込みやすくて分厚い仮面を被っている。ほら一緒」
「何が一緒だどっちかっつーとガーロンドと同じお人好し厄介ゴリラバカなンだわ」
「ケケッ"ボク"分かってるんだよ。オメガ片付いたら逃げる気だろう? 黙っててくれるなら"ボク"も内緒にするよ?」
「その秘密と割に合うと思ってるオマエがすげェわ」

 目を丸くしている。そして次第にくくくと笑い、いつの間にかオレら2人で大爆笑していた。そしてふと前にガーロンドが言っていた彼女への評価を思い出した。

「男友達みたいで面白い、か」
「ネロサン何か言った?」
「ンでもねェ。つーかさん付け気持ち悪ぃわ」
「いやあ仲良くしましょうぜ、へへ肩でもお揉みしますよダンナァ」
「肩が粉砕されるからいらねェ。くっそ人の過去なんて気軽に暴くもンじゃねェな」

 エントランスへ戻る途中、揉み手しながら俺の2歩程後ろを歩く英雄サマはどう考えても気持ち悪すぎる。これはガーロンドの元に戻るまで続き、オメガに対峙するよりも遥かに疲れがたまってしまった。一緒に戻ってくるなり仮眠を取ると決めたオレの顔と満面の笑顔なのだろう後ろの英雄サマを見た時のヤツの反応を見る前にオレは固い床に寝転ぶのであった。クエッと鳴き声がオレの頭上から聞こえる。そのまま掴み引き入れて今後を考えながら意識を底に沈めるのであった―――。

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