FF14の二次創作置き場
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- 2024/11/26 旅人は魔導兵器を識りたい 新生
- 2024/11/19 "召し上がれ&quo… 新生
- 2024/11/15 溶けあうもの 紅蓮
- 2024/11/11 "11月11日&qu… 蒼天
- 2024/10/18 "嫉妬"、… 漆黒,
No.120, No.119, No.118, No.117, No.116, No.115, No.114[7件]
"カーバンクル"
「アンナ今日は召喚士か、珍しいな」
「そう?」
黒髪のヴィエラアンナの膝に乗る青色のカーバンクルをジトリとした目でシドは見た。
アンナは器用なものでエーテルを扱う力も片手間にこなすことができる。初めて見た時、「昔エーテルの扱い方が下手だったから修行したんだよ」と苦笑いしながら長い指をクルクルと回していた。直後、高く飛ぶカーバンクルに突然飛び蹴りを喰らったのを未だ根に持っているらしい。
「そこまで悪い子じゃないのに。どうしたんだろ。やめるようにちゃんと躾けとくね。ごめんなさい」
そう当時苦笑しながら額の宝石を優しく弾いていた。ちなみに現在、流石に飛び蹴りまではされないが未だに噛みつかれたりと懐かれていない。ジェシーをはじめとした部下には懐いてるらしく何故かシドにのみそうするのだ。召喚者と同じくイタズラしているつもりなのだろうと自分を納得させているが面白くはない。
ふとその召喚物をじっと見つめる。違和感がある。そうだ、以前暁の血盟のヤ・シュトラから聞いたアンナについての情報を思い出した。
「そういえばこのカーバンクルってやつはいろんな色がいるよな?」
「うん」
「以前ヤ・シュトラからお前さんのエーテルの色を聞いた。てっきり赤いやつになるかと思ったが青なんだな」
「あー確かに。不思議」
クシャリと撫でじっと見つめているとシドは隣に座る。少しだけ召喚物をじっと見つめている。
「どしたの?」
アンナは首を傾げる。
そう、アンナからは見えないがカーバンクルは撫でられながらシドを見上げている。まるでここは自分の特等席だと言いたいが如く目を細めすり寄っていた。
「いや、何でもないからな」
そっぽを向く。アンナはしばらく考え込み「まさか」と軽くため息を吐いた。
シドという男はほんの少しだけ嫉妬深い所を見せることがあった。恋心を自覚する前から気が付いたら隣に立っていたり、密かに話し相手を睨んだりと、アンナの目には何かと妙なことをしているように映っている。
「キミ、まさか召喚した子にまで嫉妬? いや流石にそんな」
少しだけばつの悪そうな顔でこちらを見ている。まじかぁと呆れたような声を上げた。
「この子は悪い子じゃないよ。だから仲良く」
ほらシドもと抱き寄せくしゃりと頭を撫でる。ふと顔を見ると、眉間に皴は寄せているものの口元は緩みこれはもし尻尾が生えていたならば激しく振ってるだろうなと苦笑した。
「まったくどっちのシドも嫉妬深くて困る」
「悪かったな小動物にまで嫉妬し……うん?」
「あ」
アンナは用事思い出したと離れようとしたがシドはその腕を掴む。"また"余計なことを言ってしまったと手で口を覆った。
「今何と? よく聞こえなかったからもう一度言ってくれ」
「別に、何でも」
「どっちの何って言ったんだ?」
「聞こえてるじゃん! ……カーバンクル! 頭突き!」
顔を真っ赤にしながらカーバンクルに指示しているが珍しく何もせず頭に乗っている。両耳の間に器用に立っているのは正直凄いと目を細めた。アンナは「こういう時に限って! 言う事聞く!」と震え思い切り目を逸らす。頭を激しく振っても頑なに動かない。一方隣に座っているシドの機嫌は一転し、笑いながら背中を叩く。
「チクショー……もー!!」
アンナは理解している。このカーバンクルは今名前を呼ばないと指示を聞く気がない。自爆したお前が悪いと言いたいが如くつむじを足で突いていた。しかし、もし呼んでしまえば次は隣の大男がこちらへ頭を擦り付けてくるだろう。絶対何か勘違いしている。
何故当時の自分は『なんか似てるね』と何も考えず呼んでしまったのか。しばらくがっくりと項垂れ、頭をぐしゃぐしゃと掻き盛大な溜息を吐いた―――。
#シド光♀ #即興SS
「そう?」
黒髪のヴィエラアンナの膝に乗る青色のカーバンクルをジトリとした目でシドは見た。
アンナは器用なものでエーテルを扱う力も片手間にこなすことができる。初めて見た時、「昔エーテルの扱い方が下手だったから修行したんだよ」と苦笑いしながら長い指をクルクルと回していた。直後、高く飛ぶカーバンクルに突然飛び蹴りを喰らったのを未だ根に持っているらしい。
「そこまで悪い子じゃないのに。どうしたんだろ。やめるようにちゃんと躾けとくね。ごめんなさい」
そう当時苦笑しながら額の宝石を優しく弾いていた。ちなみに現在、流石に飛び蹴りまではされないが未だに噛みつかれたりと懐かれていない。ジェシーをはじめとした部下には懐いてるらしく何故かシドにのみそうするのだ。召喚者と同じくイタズラしているつもりなのだろうと自分を納得させているが面白くはない。
ふとその召喚物をじっと見つめる。違和感がある。そうだ、以前暁の血盟のヤ・シュトラから聞いたアンナについての情報を思い出した。
「そういえばこのカーバンクルってやつはいろんな色がいるよな?」
「うん」
「以前ヤ・シュトラからお前さんのエーテルの色を聞いた。てっきり赤いやつになるかと思ったが青なんだな」
「あー確かに。不思議」
クシャリと撫でじっと見つめているとシドは隣に座る。少しだけ召喚物をじっと見つめている。
「どしたの?」
アンナは首を傾げる。
そう、アンナからは見えないがカーバンクルは撫でられながらシドを見上げている。まるでここは自分の特等席だと言いたいが如く目を細めすり寄っていた。
「いや、何でもないからな」
そっぽを向く。アンナはしばらく考え込み「まさか」と軽くため息を吐いた。
シドという男はほんの少しだけ嫉妬深い所を見せることがあった。恋心を自覚する前から気が付いたら隣に立っていたり、密かに話し相手を睨んだりと、アンナの目には何かと妙なことをしているように映っている。
「キミ、まさか召喚した子にまで嫉妬? いや流石にそんな」
少しだけばつの悪そうな顔でこちらを見ている。まじかぁと呆れたような声を上げた。
「この子は悪い子じゃないよ。だから仲良く」
ほらシドもと抱き寄せくしゃりと頭を撫でる。ふと顔を見ると、眉間に皴は寄せているものの口元は緩みこれはもし尻尾が生えていたならば激しく振ってるだろうなと苦笑した。
「まったくどっちのシドも嫉妬深くて困る」
「悪かったな小動物にまで嫉妬し……うん?」
「あ」
アンナは用事思い出したと離れようとしたがシドはその腕を掴む。"また"余計なことを言ってしまったと手で口を覆った。
「今何と? よく聞こえなかったからもう一度言ってくれ」
「別に、何でも」
「どっちの何って言ったんだ?」
「聞こえてるじゃん! ……カーバンクル! 頭突き!」
顔を真っ赤にしながらカーバンクルに指示しているが珍しく何もせず頭に乗っている。両耳の間に器用に立っているのは正直凄いと目を細めた。アンナは「こういう時に限って! 言う事聞く!」と震え思い切り目を逸らす。頭を激しく振っても頑なに動かない。一方隣に座っているシドの機嫌は一転し、笑いながら背中を叩く。
「チクショー……もー!!」
アンナは理解している。このカーバンクルは今名前を呼ばないと指示を聞く気がない。自爆したお前が悪いと言いたいが如くつむじを足で突いていた。しかし、もし呼んでしまえば次は隣の大男がこちらへ頭を擦り付けてくるだろう。絶対何か勘違いしている。
何故当時の自分は『なんか似てるね』と何も考えず呼んでしまったのか。しばらくがっくりと項垂れ、頭をぐしゃぐしゃと掻き盛大な溜息を吐いた―――。
#シド光♀ #即興SS
旅人、猫を拾う
補足
漆黒以降、シドとアンナ付き合い始めた後。リテイナーア・リスとアンナが出会っていた話です。
「あ、そろそろリテイナーくんたち帰って来るか」
クガネで伸びをしながらアンナは世話をしている"子供たち"を労うために意気揚々とお菓子を準備する。さあベルで呼ぶかとふとリストを見やると首を傾げた。
「1人多くない?」
確かフウガ、リリア、ノラという名付けた子を拾ってリテイナー契約をしていた筈。しかし4人目の枠が存在した。何かの間違いではと一度目をこすりその場を離れ戻るが変わりない。名前を確認する。試しに読んでみよう。ベルを鳴らし、口を開いた。
「えっと、ア・リス・ティア?」
「呼んだか呼んだなご主人!」
「ひゃん!?」
ビクリと身体が跳ねてしまった。キョロキョロと見渡していると「下!」と言われる。見下ろすとそこには金髪のミコッテが満面の笑顔で立っていた。これまで気配が一切無かった筈なのにいつの間に。白衣のようなものを纏う不敵な笑みを浮かべる男性。一瞬だけ今まで会った人間でいえばネロに少し近い雰囲気を感じた。まああの男はこんなイタズラが好きそうな無邪気な兄ちゃんではないのだが。
「え、あの」
「ちゃんと行ってきたぜ面白い掘り出し物があったんだよご主人!」
「あ、ああありがとう。はいスクリップとお菓子焼いたんだけど食べる?」
「お! 嬉しいな! フーガから聞いてたんだよご主人の手作り料理美味しいってな!」
その場でもぐもぐとうめーうめー言いながら食べてくれるのが嬉しい。嬉しいのだが、誰だこいつ。知らない。
「待って。あの、ア・リス……サン?」
「おうア・リス様だぜ」
「どちら様?」
その言葉にガクンと膝から崩れ落ちる。流石に言葉がダメだったか。アンナは「ご、ごめん」と言う。すると「いや大丈夫、俺様それ位じゃ折れない」と拳を握り締めた。
「ご主人あの時疲れてたみたいだからな。俺様が振り返ってやろう。ほわんほわんほわん」
「その擬音言う必要ある?」
とりあえず何かあったか説明してくれるらしい。少しだけ懐かしさも感じる男の話を聞いてみる。
◇
俺様はア・リス・ティア。天才トレジャーハンターなミコッテさ。ある日東方地域にある不思議な塔を見つけてこっそり侵入する。しかし凶悪な罠に気付かずかかって大ケガしちまった! なんとか身体を引きずってクガネに帰還。だがお腹も空いてバタリと倒れてしまった。そこに偶然通りかかったかわいこちゃんに「えっと、大丈夫?」と声を掛けられたんだぜ!
「それがご主人、アンナちゃんだぜ!」
「へ、へぇボクって優しいね」
残念ながら事情を聞いてもアンナには全く記憶に残っていない。もしかしたら最近疲れ気味だったので"内なる存在"が対応したのかもしれないと考え付く。ここ数日の記憶が一切無いし、ありえると手をポンと叩いた。
「ご飯一緒に食べに行って美味しかったぞ! そこで『トレジャーハンター危険、よかったらリテイナー契約しない? 掘り出し物私がかわりに換金。あなた心配』ってのも忘れちゃった?」
「うん? うーん―――言ったかもしれない?」
「だろー? あ! ついでに俺たち付き合っちゃおっか! って言ったら『え、ごめん。そういうの間に合ってる』ってあっさり断ったのも忘れたなら俺様にチャンス来た?」
「あ、それは記憶ある」
「ちぇー」
その言葉は何か朧げに記憶がある。確かにそういう断り方した相手はいた。このミコッテかは忘れたのだが。そういえばと持ち帰った来たものとやらを見る。何やらトームストーンのようだった。
「ア・リス、持ち帰り物、何?」
「よくぞ聞いてくれたな! 遺跡で拾ったんだよ! 何かお宝データとか入ってるかも? 電源入らないみたいだから壊れちゃってるみたいでな」
「あーその辺り修理する専門家の知り合いいるからいいよ。ありがと」
「へへっ! どういたしまして! じゃあ次も何か持って来るからよろしくな!」
「うん、君のこと覚えとくよ。よろしく、ア・リス」
「にゃはははは!」
走り去って行った。アンナは嵐のような人だなあと苦笑しながら軽くため息を吐く。とりあえず先程会う約束を交わした何故か機嫌が悪そうだったシドではなくネロと兄にでも渡そうかと1人頷いた。シドは以前フウガとお揃いのトームストーンの"写真"を見て嫉妬したのか少しだけ機嫌が悪いみたいで。数日置いたら大丈夫かなと思っていたが悪化していた。
あと兄エルファーはアンナに対して誤魔化しているつもりらしい。が、ちゃんとエオルゼアに滞在し、しかもガーロンド社で働いてること位は把握している。何でバレないと思っているのかとノリで話を合わせているだけだ。しかしどこで拾ったかとか聞かれるのが面倒なので誤魔化し方を考えなければいけない。そうだ、例えば―――また壊したから修理してほしい、とか。
◇
「ヒヒッ」
金髪のミコッテは笑いながらテレポでエオルゼアへ戻って行く主人アンナを屋根の上から見守る。
「ささ、ナイスイタズラな"仕込み"も終わったしちょと来客用にラボの掃除して、60年、いや違うか。80年振りにエルの顔でも拝んでやろうか。愉しみだナァ」
目を閉じた後、常人を超越する高さを跳躍しながら笛でチョコボを呼び出し上空を飛び去って行く。
―――封印は、解き放たれた。
漆黒以降、シドとアンナ付き合い始めた後。リテイナーア・リスとアンナが出会っていた話です。
「あ、そろそろリテイナーくんたち帰って来るか」
クガネで伸びをしながらアンナは世話をしている"子供たち"を労うために意気揚々とお菓子を準備する。さあベルで呼ぶかとふとリストを見やると首を傾げた。
「1人多くない?」
確かフウガ、リリア、ノラという名付けた子を拾ってリテイナー契約をしていた筈。しかし4人目の枠が存在した。何かの間違いではと一度目をこすりその場を離れ戻るが変わりない。名前を確認する。試しに読んでみよう。ベルを鳴らし、口を開いた。
「えっと、ア・リス・ティア?」
「呼んだか呼んだなご主人!」
「ひゃん!?」
ビクリと身体が跳ねてしまった。キョロキョロと見渡していると「下!」と言われる。見下ろすとそこには金髪のミコッテが満面の笑顔で立っていた。これまで気配が一切無かった筈なのにいつの間に。白衣のようなものを纏う不敵な笑みを浮かべる男性。一瞬だけ今まで会った人間でいえばネロに少し近い雰囲気を感じた。まああの男はこんなイタズラが好きそうな無邪気な兄ちゃんではないのだが。
「え、あの」
「ちゃんと行ってきたぜ面白い掘り出し物があったんだよご主人!」
「あ、ああありがとう。はいスクリップとお菓子焼いたんだけど食べる?」
「お! 嬉しいな! フーガから聞いてたんだよご主人の手作り料理美味しいってな!」
その場でもぐもぐとうめーうめー言いながら食べてくれるのが嬉しい。嬉しいのだが、誰だこいつ。知らない。
「待って。あの、ア・リス……サン?」
「おうア・リス様だぜ」
「どちら様?」
その言葉にガクンと膝から崩れ落ちる。流石に言葉がダメだったか。アンナは「ご、ごめん」と言う。すると「いや大丈夫、俺様それ位じゃ折れない」と拳を握り締めた。
「ご主人あの時疲れてたみたいだからな。俺様が振り返ってやろう。ほわんほわんほわん」
「その擬音言う必要ある?」
とりあえず何かあったか説明してくれるらしい。少しだけ懐かしさも感じる男の話を聞いてみる。
◇
俺様はア・リス・ティア。天才トレジャーハンターなミコッテさ。ある日東方地域にある不思議な塔を見つけてこっそり侵入する。しかし凶悪な罠に気付かずかかって大ケガしちまった! なんとか身体を引きずってクガネに帰還。だがお腹も空いてバタリと倒れてしまった。そこに偶然通りかかったかわいこちゃんに「えっと、大丈夫?」と声を掛けられたんだぜ!
「それがご主人、アンナちゃんだぜ!」
「へ、へぇボクって優しいね」
残念ながら事情を聞いてもアンナには全く記憶に残っていない。もしかしたら最近疲れ気味だったので"内なる存在"が対応したのかもしれないと考え付く。ここ数日の記憶が一切無いし、ありえると手をポンと叩いた。
「ご飯一緒に食べに行って美味しかったぞ! そこで『トレジャーハンター危険、よかったらリテイナー契約しない? 掘り出し物私がかわりに換金。あなた心配』ってのも忘れちゃった?」
「うん? うーん―――言ったかもしれない?」
「だろー? あ! ついでに俺たち付き合っちゃおっか! って言ったら『え、ごめん。そういうの間に合ってる』ってあっさり断ったのも忘れたなら俺様にチャンス来た?」
「あ、それは記憶ある」
「ちぇー」
その言葉は何か朧げに記憶がある。確かにそういう断り方した相手はいた。このミコッテかは忘れたのだが。そういえばと持ち帰った来たものとやらを見る。何やらトームストーンのようだった。
「ア・リス、持ち帰り物、何?」
「よくぞ聞いてくれたな! 遺跡で拾ったんだよ! 何かお宝データとか入ってるかも? 電源入らないみたいだから壊れちゃってるみたいでな」
「あーその辺り修理する専門家の知り合いいるからいいよ。ありがと」
「へへっ! どういたしまして! じゃあ次も何か持って来るからよろしくな!」
「うん、君のこと覚えとくよ。よろしく、ア・リス」
「にゃはははは!」
走り去って行った。アンナは嵐のような人だなあと苦笑しながら軽くため息を吐く。とりあえず先程会う約束を交わした何故か機嫌が悪そうだったシドではなくネロと兄にでも渡そうかと1人頷いた。シドは以前フウガとお揃いのトームストーンの"写真"を見て嫉妬したのか少しだけ機嫌が悪いみたいで。数日置いたら大丈夫かなと思っていたが悪化していた。
あと兄エルファーはアンナに対して誤魔化しているつもりらしい。が、ちゃんとエオルゼアに滞在し、しかもガーロンド社で働いてること位は把握している。何でバレないと思っているのかとノリで話を合わせているだけだ。しかしどこで拾ったかとか聞かれるのが面倒なので誤魔化し方を考えなければいけない。そうだ、例えば―――また壊したから修理してほしい、とか。
◇
「ヒヒッ」
金髪のミコッテは笑いながらテレポでエオルゼアへ戻って行く主人アンナを屋根の上から見守る。
「ささ、ナイスイタズラな"仕込み"も終わったしちょと来客用にラボの掃除して、60年、いや違うか。80年振りにエルの顔でも拝んでやろうか。愉しみだナァ」
目を閉じた後、常人を超越する高さを跳躍しながら笛でチョコボを呼び出し上空を飛び去って行く。
―――封印は、解き放たれた。
旅人、猫を拾うと同じ頃に起こったお話。少しだけその複製体は聞き記すと繋がっている話でもある。
―――アンナがリテイナーア・リスを認知した一方その頃ガーロンド・アイアンワークス社。
「会長、手紙が届いてますよ」
「俺にか?」
「いえ会長というよりかは会社にって感じでしょうか」
会長代理であるジェシーは少し怪訝な顔でボトルを差し出す。ボトルレターかと呟きながらそれを観察する。確かに中に入っている紙には『ガーロンド・アイアンワークス社に届くことを願って』と書かれていた。
「新生祭の実行委員会から受け取りました。勝手ながら中身を確認したがこちらでは理解が出来なかったのでと」
「えらく古びた手紙じゃねェか」
偶然通りかかったネロはニィと笑いながらボトルを凝視する。
「開けねェのか?」
「いや今から取り出そうとは思ったが」
シドはボトルの蓋を開き手紙を取り出す。非常に質の悪い紙に文字が刻まれていた。
「何々、―――は?」
シドは目を丸くし手紙を凝視している。ジェシーとネロも覗き込むと同じく眉間に皴を寄せた。
『目覚めた猫に愛しの女を盗られるなよ シド・ガーロンド』
手紙の陰で見えなかったがウサギを模すように巻かれた針金に白と金の塗料を塗ったものが転がり落ちる。それを拾いながらシドは首を傾げた。
「よく分からん」
「全然分かりませんね」
「イタズラにしちゃ年季が入ってンな……ア」
ネロは少しだけ悩む素振りを見せた直後シドが持っていた手紙とウサギを分捕る。
「おいネロ!」
「貰ってくぜ」
「いや何でお前が持って行くんだ!?」
そそくさとその場を後にする姿をシドは呆れた目で見送った。
◇
『"最高傑作"を完成させる永い旅の準備を終わらせた』
先日あるミコッテが遺したトームストーンに入っていた映像で確かにその単語が入っていた。最高傑作というのは明言はしていなかったがあの英雄のことだろう。命を捧げ何らかを施した―――らしい。シドはその場に居合わせなかったからこの言葉を知らない。知っているのは一度しか再生されないビデオレターを見たネロとエルファーだけだ。
「エルに言うべきかねェ」
不思議なウサギの物体を指で遊びながらため息を吐く。普通のミコッテ相手ならばもう死んでいるだろう存在について心配することはない。しかし相手は話を聞いた限りでは普通というカテゴリに収まれない。しかもソイツはかつてのエルファーと共に何かをやらかした友人だ。"第八霊災を防ぐことが出来なかった世界"という話を以前暁やアンナが口にしている。もしもこの忠告が本当に時間と次元を越え流された手紙ならば何かが起こってからでは遅い。ありえないと思いたいが問題の英雄周辺では"絶対にありえない"ことが起こり続けている。やはり一言だけ伝えておく方がいいのかもしれないと判断した。次に酒が入った時に言っておこうと1人頷き歩み出す。
ふと窓の外から視線を感じた。思わず振り向き確認するが気配は消えている。
―――それから彼らの周りで奇妙な現象が起こるようになる。視界の端に何やら細長い尻尾を捉えたりアンナが不思議な装置や錬金薬を見せるようになるとか、だ。
『こういう面倒事に巻き込まれンのはガーロンドだけでいいじゃねェか』
そうネロは怪訝な目をするエルファーの隣でため息を吐いた。
Wavebox