FF14の二次創作置き場
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- 2024/11/19 "召し上がれ&quo… 新生
- 2024/11/15 溶けあうもの 紅蓮
- 2024/11/11 "11月11日&qu… 蒼天
- 2024/10/18 "嫉妬"、… 漆黒,
No.100, No.99, No.98, No.97, No.96, No.95, No.94[7件]
ウサギは影と踊る
注意
漆黒以降暗黒騎士の力を手に入れた自機と影身フレイの短編3本立て
"英雄"
「逃げたくないのですか? 英雄という枷から」
「フレイ」
目を開くとひょろりと長い影がアンナを見下ろしている。どうやら自室のソファで寝落ちしていたらしい。決してその顔を覆うバルビュートを外さない彼の者フレイは主の答えを待つ。
「何度も逃げようと思ったさ。でも今が一番楽しい」
「楽しい、ですか」
「そそ。辛いこともあったし、苦しかった時もあった」
脳裏に浮かぶのはこれまでの旅路。英雄と呼ばれるようになり数々の陰謀に巻き込まれてきた。しかし"運のいい"彼女はいつも差し伸べられた手を握りしめ走り続ける。フレイは未だにその姿が不安に思っているのだろう、安心させるかのように優しく語った。
「でも何も目的もなく嫌な目で見られながら旅をしていた頃に比べたらマシさ」
「……それはあなたが手にしてしまった力のせいですか?」
手にしてしまった力、それは命の恩人に教えてもらった"無駄に強い"もの。そもそもそれが原因で悲惨な目に遭い、"鮮血の赤兎"と恐れられた時期もあったのだ。フレイはそれを言いたいのだろう、アンナは笑う。
「そうだよ。でもこれは人を護るために教えてもらえた唯一無二のものなんだ。誰にも否定なんてさせない」
「そう、ですか」
フレイは洗練された動きで跪き、寝そべるアンナと同じ視線で見やる。アンナはクスリと笑いそのバルビュートの口元に手をかけるが大きな手で阻まれてしまう。ケチとボソリと呟くと金色の双眸を細めながら額を指で弾かれた。
「いけません。あなたには見せられない顔な故」
「いいじゃん減るもんじゃなし」
唇を尖らせて不満を言う様にクスリと笑う声が漏れていた。直後アンナを抱き上げ、ベッドに優しく落とす。一瞬驚いた顔を見せたがすぐにいつもの余裕のある笑顔を見せた。
「あなたが英雄であり続ける限り、"ボク"もあなたと共に戦いましょう」
「ええ。折角闇と向き合おうって決心した成果なんだから地獄の果てまで付き合ってほしいね」
おやすみなさい、とフレイが言うとすぐにアンナは目を閉じ、寝息を立てている。クスリと笑い声を漏らし寝台から離れ、ドレッサーの前へ立った。その眼を閉じてバルビュートを脱ぎ、その顔をじっと見つめるように開いた。
―――長い銀色の髪に青色の目。左の目元に傷があり、長い耳を揺らした男はため息を吐いた。
「おぬしの闇、ということは"私"が出て来るのも仕方のない話」
自らと溶け込んだ"フレイ"、そして主人格である"アンナ"と同じ笑みを浮かべ、眠る赤髪の女をじっと見つめた。
「地獄の果て、か―――そこへ行くのは"私"だけでよいのだ、エルダス」
再びバルビュートを被り、闇に溶け込むように消えた。
"修練"
―――影はどんな武器も扱うことが出来た。
「うーフレイ強すぎ」
「あなたがまだ未熟なだけですよ、アンナ」
フレイは暗黒騎士の影でありながらも数々の武器を"影"で作り出し、修練に付き合ってくれた。稀にリテイナーのアリスも手伝ってくれるがやはり自分の影で殴り合える方が楽しい。と思っていた。自分の影なら実力が互角になるというのがお約束だろうにフレイの方が圧倒的に強くあっという間に転がされる。両手剣も、斧も、双剣も、刀や槍でさえ勝ることはない。息一つ乱さずその金の目で確実にクセを読まれ弾かれる。一度勝ったはずの相手なのに、自分と混じり合った影響で余計に強くなるなんて予想外だ。
「手加減しろー」
「しています」
「その武器の射程減らせー」
「本番に弱くなりますよ」
重そうな鎧と視界が狭そうな兜を被っているくせにどうしてそんなにも軽やかに動けるんだとアンナは悔しがる。
しかし裏返すと共に戦う時は心強い味方になるということだ。
「ほらもう今日はもう終わりにしましょう。2時間ぶっ続けは疲れましたよね?」
そして程よいタイミングでこうやって自分を甘やかす。勝てないな、そうアンナは苦笑を浮かべた。
「今日は何を食べようかな」
「蕎麦とかどうでしょうか?」
「もーフレイ本当に蕎麦好きだね。天ぷらと食べようか。今日シド来る予定なんだよね」
「……"ボク"の分はなしと」
「フレイどの道私の前じゃ食べないじゃん。おにぎりと一緒に置いとくから夜中に食べて」
「寿司にしてください」
「はいはい」
フレイは東方料理が気に入ったらしい。食事は特に必要ない性質らしいがやはりあると意欲が上がるようで「美味しいですよ」という言葉を聞いていて楽しい。
兜を脱ぐからかアンナは食べている所を見たことはないが。気が付いたら空になった食器があるのが日常である。
「いつか一緒にフレイとご飯食べたいな」
「考えておきますよ」
こう言う時は大体考えるポーズを取るだけなのは知っていた。まるで「努力しよう」と言うシドのようだと頬を膨らます。自分よりもすらりと高い影を見上げ、鎧を小突いた。
早々に仕込みをし、デスマーチで疲れたシドを迎える。側に置いてある3つ目の皿に首を傾げる男をケラケラ笑いながら夜は更けていった。
深夜、2人が寝静まると影は音を立てず形を作り暗闇の中食事を摘む。バルビュートの口元を外し青色の目を細めながら幸せそうに笑うアンナの顔を浮かべ、再び闇に溶け込み消えた。次の日、寝る前はあったはずの天ぷらが消え慌てる何も知らないシドに「夜食はダメ。太るよ?」とからかい笑うアンナの姿があった―――。
"浮気?"
「アンナが見知らぬ男と鍛錬してた?」
シドは大きなため息を吐いた。整備帰りの社員が偶然飛空艇の上から見かけたらしい。全身甲冑を纏った長細い男と思われる人間と戦っていたのだという。見た所、喧嘩や殺し合いというわけでもなくアンナが斬りかかっては弾き飛ばされ転がされていたという話はにわかには信じがたい。あの負け知らずのアンナが、見間違いではないかと言うが間違いなく黒髪赤メッシュヴィエラ女と聞くと本人だろう。まさか今になって何も言わず他の男の所に行くとは思えないが、また変なことをしている想い人にため息しか出ない。試しにリンクパールに繋げてみる。
『もしもし』
「アンナ、今いいか?」
『何か私の力が必要になる変な仕事でも?』
「いや、最近お前さん修行でもしてるのか?」
『―――あー』
どこか歯切れが悪い。息も少し上がっている気がする。
『してないしてない。ごめんちょっと用事思い出した。切る』
「お、おいアンナ!」
プツリと切断される。怪しい。
「なあレフ、アンナが何か怪しいのだが」
「また喧嘩でもするのか?」
「そういえば先日飯食いに行った時も変だった」
1人分余分に作られ、目が覚めると無くなっていた。おかしいと思わないかと言うとレフは肩をすくめネロは爆笑している。
「寝ぼけてどちらかが食ったでなければネズミでもいるんじゃないか?」
「ネズミ」
「ケッケッケッ、いやあ分かンねェぞ新たなバブーンでも拾ったンじゃね? ヒトじゃなくてガチモンの野生生物をな」
「お前たち人の不幸を面白がってるんじゃない。というかそこらの生物に天ぷらを食わすわけないだろ」
とりあえず本日最終便でリムサ・ロミンサに行くかと拳を握る。
◇
「フレイ、シドに察されたかも」
「言えばいいじゃないですか」
「まだ遊べる」
アンナはリンクパールを切った後自らの影と対話する。鍛錬の合間にかかってきて平静を装うのも疲れたと座り込んだ。
「妙な勘違いされて痛い目を見るのはあなたですよ? アンナ」
「むーそうなんだけどどう説明すればいいのかも分からんね」
闇と向き合いもう1人の自分が影身として具現化し、それと修行をしていますなんて言える? と聞くとフレイは肩をすくめた。
「"ボク"だったら呪術士の元に連れて行くかもしれませんね。マハで妖異にでも憑かれたかもしれない、助けてほしいと」
「ほらー!」
「はい休憩は終了です。続きを始めましょうか」
フレイはアンナから欠けていた感情である。"無名の旅人"として負の感情を触らないようにし、斬り払うように奔り別の世界までも救った。
―――きっかけは護ると決めた男だった。英雄という道を作ってくれた白い星と一度次元の壁に隔たれた時のお話。"それ"が牙を剝き、蹂躙する光と共に襲い掛かって来た情景を思い出すだけで未だに身体が震えてしまう。もうそんな弱さを露呈させるわけにはいかない。だからどこか懐かしさも感じる男に、今日も刃を向け、その不安を落ち着かせるため修練を重ねる。
溢れ出した感情に引っ張られた"力"が"また"誰かを傷つけるのではないかと手が震える。―――自分が使う"力"がまだ大切な人たちを傷つけたことがないはずなのに、不安が襲い掛かるようになった。何度も護ると決心した人間までも傷つける夢を見るようになり、目が覚めた後何度も小さな声で謝る時もあった。そんな時にエーテルで補強された長細い影のフレイが現れ、修練に付き合ってくれるようになる。そうだ、英雄であるために、また弱さと向き合うために。アンナはシドにも秘密にし、その剣を自分より頭一つ位大きな自らの影に振るう。"内なる存在"とはまた違う相棒という存在が、久々にアンナの心を滾らせた。
ニィと笑い、腕に力を集中させる。
「ああ、私はまだやれるさ」
「ええ、あなたの全力を"ボク"に見せてください」
空気が震え、赤黒い光を抱きしめる。怒りも、この護るという意志も全て、自分のものだと飲み込みながらその力を穿った。
「あーご主人らやってんねぇ」
1人と1体に悟られない距離まで離れた場所。白衣を纏った金髪ミコッテの青年は、カラカラと笑いながらスコープを覗いている。アンナのリテイナーであるアリスはそのエーテルの塊である影を凝視しながら呟いた。
「イシュガルドの暗黒騎士ってやつァよく分かんねぇな。ちと調べて今後の参考にすっか」
2人の歪んだ"家族団欒"を邪魔するわけにもいかねぇしよ、と踵を返し、掘り出し物探しへと走り去っていった。
◇
シドは貰った鍵を回し、扉を開いた。既に真っ暗で寝息が聞こえる。珍しくもう眠っているらしい。少し遅い時間だったが、思えば一言も連絡なしで来たのだから何も準備されていないだろう。
連絡を交わしてから全く集中出来なかった。レフが手回ししたのか、きちんと飛空艇の最終便へ間に合うように帰らされる。明日は朝一の便で行けば大丈夫だろうと感謝しながら軽くため息を吐いた。
椅子をアンナの前まで運び座り見つめる。そして頬に手を近づけた瞬間、「もし」と声をかけられた。アンナと自分以外誰もいないはずなのに、だ。
「レディの寝込みを襲いに来たのですか? なかなか大胆なことで」
「っ!? 誰むぐ」
真っ黒なガントレットがシドの口を塞ぐ。見上げるとひょろりと長い全身鎧姿のヒトが口元に指を当て見下ろしていた。明らかにアンナよりも背が高く、輝く金色の目が少しだけ恐ろしく見える。
「"ボク"だってあからさまに不審な態度で連絡を切られたら、その日のうちに様子を見に来る。申し訳ございません。"我が主"はどう説明すればいいのか、悩んでいただけ」
まあまだ遊べるとも言っていましたがとくすくす笑う男の声に眉をひそめた。
「お前は、誰だ」
「フレイとでもお呼びください。"ボク"はアンナの影、闇が具現化したもの。所謂アンナの弱さ、"負の感情"」
「何を言っている。アンナは弱くないが」
「そうとしか説明が出来ないのですよ。あぁ既に表舞台から去った存在たちとも言えますね」
「……こいつは"また"厄介なやつに絡まれているってことでいいか?」
「新たな力を使いこなすための修行中、と言ってほしいですね。兎に角あなたの敵ではないということだけ分かっていただいたら幸いです」
のらりくらりと自分の質問を躱す姿に頭痛がし、少しだけ眉間に皴が寄って行く。
「もしあなたに危害を与えてしまうと、"我が主"が怒ってしまいますからそんな目をしないでください。殺意を持たれたら、手が出てしまいます」
フレイと名乗った男は跪きシドの手を優しく握りしめた。先程まで怖く感じた金の双眸が細められ、じっと見つめる様にどこか懐かしさを覚え少々緊張が解けていく。
「"ボクたち"は"我が主"の心の壁を壊し、氷を融かしたあなたに感謝しています。だからどうか、これからも末永く、"この子"を頼みたい」
返事を返す前にそれは暗闇の中に溶け込み、消えた。顔が熱い、そう思いながらコートを脱ぎ頭を冷やすためにシャワーを浴びに行く。「俺は、疲れてるんだな」というボヤキは水音でかき消された。
シドがシャワー室へと向かい数刻後、再び影は形を作った。バルビュートを脱ぎ不器用な笑顔でその先を見つめている。
「確かにあやつの言った通りか。エルが複雑な感情をもつわけだ」
男の目に宿っていた星のおかげで"圧倒的な力"に怯えず前へ進む"主"の髪を優しく梳き再び溶け消えた。直後、シドはブランケットで髪とヒゲを乾かしながら現れる。寝台で眠るアンナの横に座るとふと腕を掴まれる。
「し、ど?」
半覚醒状態のアンナがとろんとした目でシドを見ている。
「ああ起こしてしまったか?」
「ん、だいじょーぶ」
まだ寝ぼけているようだ。普段だったら「何でいるの!?」と驚くだろうに。ここにいるのが当然のような動きを見せているのが少し面白かった。
「ねえ、はやく、寝よ?」
「ああ俺もちょうど疲れてたんだ」
「ん、おやすみなさい」
心の中で浮気ではないようでよかったと安堵する。冷たい身体を抱き寄せ、目を閉じた。
◇
いつもの起床時間だとアンナは目を覚ます。何だか身体が重いとその腕を掴んだ。
「……腕?」
視界は肌色。飛び起き、隣を見ると寝る前にいなかったはずの男が眠っている。記憶を呼び寄せてもトップマストの一室に来るという連絡は受けていない。アンナは首を傾げ、まずは日付を思い出す。間違いなく休日ではない。ということは朝一の便で帰るということか。
時計を見やり、「こっちに来る時は事前に連絡!」と言いながらゲンコツを入れるとシドは情けない声を上げながら目を開けた。
「ああすまん。お前さんがまた変なことしてるのかと思うと居ても立っても居られなくなってな」
「寝ぼけて変なこと言ってる? 軽く朝食作ってあげるから遅刻しないでね」
「ん、ああ勿論」
言ってくれれば晩飯も置いといたのにとボヤきながらエプロンを付けキッチンへ向かう。シドは「日中用事があるって一方的に通信を切った人間の言葉じゃないな」と目をこすりながら着替えを手に取った。
「それで? アンナ、俺に『まだ遊べる』って隠していることとかないだろうな?」
「……ナイヨ?」
「いつか話すんだぞ。苦しみも全て、一緒に背負うって言っただろ」
「―――分かってるつもりさ」
ジトリとした目で睨むシドから目を逸らし、焼いたパンをいつもより多めに押し付ける。一連の動作に子供かと思いながらコーヒーを啜るのであった。
#シド光♀ #フレイ
漆黒以降暗黒騎士の力を手に入れた自機と影身フレイの短編3本立て
"英雄"
「逃げたくないのですか? 英雄という枷から」
「フレイ」
目を開くとひょろりと長い影がアンナを見下ろしている。どうやら自室のソファで寝落ちしていたらしい。決してその顔を覆うバルビュートを外さない彼の者フレイは主の答えを待つ。
「何度も逃げようと思ったさ。でも今が一番楽しい」
「楽しい、ですか」
「そそ。辛いこともあったし、苦しかった時もあった」
脳裏に浮かぶのはこれまでの旅路。英雄と呼ばれるようになり数々の陰謀に巻き込まれてきた。しかし"運のいい"彼女はいつも差し伸べられた手を握りしめ走り続ける。フレイは未だにその姿が不安に思っているのだろう、安心させるかのように優しく語った。
「でも何も目的もなく嫌な目で見られながら旅をしていた頃に比べたらマシさ」
「……それはあなたが手にしてしまった力のせいですか?」
手にしてしまった力、それは命の恩人に教えてもらった"無駄に強い"もの。そもそもそれが原因で悲惨な目に遭い、"鮮血の赤兎"と恐れられた時期もあったのだ。フレイはそれを言いたいのだろう、アンナは笑う。
「そうだよ。でもこれは人を護るために教えてもらえた唯一無二のものなんだ。誰にも否定なんてさせない」
「そう、ですか」
フレイは洗練された動きで跪き、寝そべるアンナと同じ視線で見やる。アンナはクスリと笑いそのバルビュートの口元に手をかけるが大きな手で阻まれてしまう。ケチとボソリと呟くと金色の双眸を細めながら額を指で弾かれた。
「いけません。あなたには見せられない顔な故」
「いいじゃん減るもんじゃなし」
唇を尖らせて不満を言う様にクスリと笑う声が漏れていた。直後アンナを抱き上げ、ベッドに優しく落とす。一瞬驚いた顔を見せたがすぐにいつもの余裕のある笑顔を見せた。
「あなたが英雄であり続ける限り、"ボク"もあなたと共に戦いましょう」
「ええ。折角闇と向き合おうって決心した成果なんだから地獄の果てまで付き合ってほしいね」
おやすみなさい、とフレイが言うとすぐにアンナは目を閉じ、寝息を立てている。クスリと笑い声を漏らし寝台から離れ、ドレッサーの前へ立った。その眼を閉じてバルビュートを脱ぎ、その顔をじっと見つめるように開いた。
―――長い銀色の髪に青色の目。左の目元に傷があり、長い耳を揺らした男はため息を吐いた。
「おぬしの闇、ということは"私"が出て来るのも仕方のない話」
自らと溶け込んだ"フレイ"、そして主人格である"アンナ"と同じ笑みを浮かべ、眠る赤髪の女をじっと見つめた。
「地獄の果て、か―――そこへ行くのは"私"だけでよいのだ、エルダス」
再びバルビュートを被り、闇に溶け込むように消えた。
"修練"
―――影はどんな武器も扱うことが出来た。
「うーフレイ強すぎ」
「あなたがまだ未熟なだけですよ、アンナ」
フレイは暗黒騎士の影でありながらも数々の武器を"影"で作り出し、修練に付き合ってくれた。稀にリテイナーのアリスも手伝ってくれるがやはり自分の影で殴り合える方が楽しい。と思っていた。自分の影なら実力が互角になるというのがお約束だろうにフレイの方が圧倒的に強くあっという間に転がされる。両手剣も、斧も、双剣も、刀や槍でさえ勝ることはない。息一つ乱さずその金の目で確実にクセを読まれ弾かれる。一度勝ったはずの相手なのに、自分と混じり合った影響で余計に強くなるなんて予想外だ。
「手加減しろー」
「しています」
「その武器の射程減らせー」
「本番に弱くなりますよ」
重そうな鎧と視界が狭そうな兜を被っているくせにどうしてそんなにも軽やかに動けるんだとアンナは悔しがる。
しかし裏返すと共に戦う時は心強い味方になるということだ。
「ほらもう今日はもう終わりにしましょう。2時間ぶっ続けは疲れましたよね?」
そして程よいタイミングでこうやって自分を甘やかす。勝てないな、そうアンナは苦笑を浮かべた。
「今日は何を食べようかな」
「蕎麦とかどうでしょうか?」
「もーフレイ本当に蕎麦好きだね。天ぷらと食べようか。今日シド来る予定なんだよね」
「……"ボク"の分はなしと」
「フレイどの道私の前じゃ食べないじゃん。おにぎりと一緒に置いとくから夜中に食べて」
「寿司にしてください」
「はいはい」
フレイは東方料理が気に入ったらしい。食事は特に必要ない性質らしいがやはりあると意欲が上がるようで「美味しいですよ」という言葉を聞いていて楽しい。
兜を脱ぐからかアンナは食べている所を見たことはないが。気が付いたら空になった食器があるのが日常である。
「いつか一緒にフレイとご飯食べたいな」
「考えておきますよ」
こう言う時は大体考えるポーズを取るだけなのは知っていた。まるで「努力しよう」と言うシドのようだと頬を膨らます。自分よりもすらりと高い影を見上げ、鎧を小突いた。
早々に仕込みをし、デスマーチで疲れたシドを迎える。側に置いてある3つ目の皿に首を傾げる男をケラケラ笑いながら夜は更けていった。
深夜、2人が寝静まると影は音を立てず形を作り暗闇の中食事を摘む。バルビュートの口元を外し青色の目を細めながら幸せそうに笑うアンナの顔を浮かべ、再び闇に溶け込み消えた。次の日、寝る前はあったはずの天ぷらが消え慌てる何も知らないシドに「夜食はダメ。太るよ?」とからかい笑うアンナの姿があった―――。
"浮気?"
「アンナが見知らぬ男と鍛錬してた?」
シドは大きなため息を吐いた。整備帰りの社員が偶然飛空艇の上から見かけたらしい。全身甲冑を纏った長細い男と思われる人間と戦っていたのだという。見た所、喧嘩や殺し合いというわけでもなくアンナが斬りかかっては弾き飛ばされ転がされていたという話はにわかには信じがたい。あの負け知らずのアンナが、見間違いではないかと言うが間違いなく黒髪赤メッシュヴィエラ女と聞くと本人だろう。まさか今になって何も言わず他の男の所に行くとは思えないが、また変なことをしている想い人にため息しか出ない。試しにリンクパールに繋げてみる。
『もしもし』
「アンナ、今いいか?」
『何か私の力が必要になる変な仕事でも?』
「いや、最近お前さん修行でもしてるのか?」
『―――あー』
どこか歯切れが悪い。息も少し上がっている気がする。
『してないしてない。ごめんちょっと用事思い出した。切る』
「お、おいアンナ!」
プツリと切断される。怪しい。
「なあレフ、アンナが何か怪しいのだが」
「また喧嘩でもするのか?」
「そういえば先日飯食いに行った時も変だった」
1人分余分に作られ、目が覚めると無くなっていた。おかしいと思わないかと言うとレフは肩をすくめネロは爆笑している。
「寝ぼけてどちらかが食ったでなければネズミでもいるんじゃないか?」
「ネズミ」
「ケッケッケッ、いやあ分かンねェぞ新たなバブーンでも拾ったンじゃね? ヒトじゃなくてガチモンの野生生物をな」
「お前たち人の不幸を面白がってるんじゃない。というかそこらの生物に天ぷらを食わすわけないだろ」
とりあえず本日最終便でリムサ・ロミンサに行くかと拳を握る。
◇
「フレイ、シドに察されたかも」
「言えばいいじゃないですか」
「まだ遊べる」
アンナはリンクパールを切った後自らの影と対話する。鍛錬の合間にかかってきて平静を装うのも疲れたと座り込んだ。
「妙な勘違いされて痛い目を見るのはあなたですよ? アンナ」
「むーそうなんだけどどう説明すればいいのかも分からんね」
闇と向き合いもう1人の自分が影身として具現化し、それと修行をしていますなんて言える? と聞くとフレイは肩をすくめた。
「"ボク"だったら呪術士の元に連れて行くかもしれませんね。マハで妖異にでも憑かれたかもしれない、助けてほしいと」
「ほらー!」
「はい休憩は終了です。続きを始めましょうか」
フレイはアンナから欠けていた感情である。"無名の旅人"として負の感情を触らないようにし、斬り払うように奔り別の世界までも救った。
―――きっかけは護ると決めた男だった。英雄という道を作ってくれた白い星と一度次元の壁に隔たれた時のお話。"それ"が牙を剝き、蹂躙する光と共に襲い掛かって来た情景を思い出すだけで未だに身体が震えてしまう。もうそんな弱さを露呈させるわけにはいかない。だからどこか懐かしさも感じる男に、今日も刃を向け、その不安を落ち着かせるため修練を重ねる。
溢れ出した感情に引っ張られた"力"が"また"誰かを傷つけるのではないかと手が震える。―――自分が使う"力"がまだ大切な人たちを傷つけたことがないはずなのに、不安が襲い掛かるようになった。何度も護ると決心した人間までも傷つける夢を見るようになり、目が覚めた後何度も小さな声で謝る時もあった。そんな時にエーテルで補強された長細い影のフレイが現れ、修練に付き合ってくれるようになる。そうだ、英雄であるために、また弱さと向き合うために。アンナはシドにも秘密にし、その剣を自分より頭一つ位大きな自らの影に振るう。"内なる存在"とはまた違う相棒という存在が、久々にアンナの心を滾らせた。
ニィと笑い、腕に力を集中させる。
「ああ、私はまだやれるさ」
「ええ、あなたの全力を"ボク"に見せてください」
空気が震え、赤黒い光を抱きしめる。怒りも、この護るという意志も全て、自分のものだと飲み込みながらその力を穿った。
「あーご主人らやってんねぇ」
1人と1体に悟られない距離まで離れた場所。白衣を纏った金髪ミコッテの青年は、カラカラと笑いながらスコープを覗いている。アンナのリテイナーであるアリスはそのエーテルの塊である影を凝視しながら呟いた。
「イシュガルドの暗黒騎士ってやつァよく分かんねぇな。ちと調べて今後の参考にすっか」
2人の歪んだ"家族団欒"を邪魔するわけにもいかねぇしよ、と踵を返し、掘り出し物探しへと走り去っていった。
◇
シドは貰った鍵を回し、扉を開いた。既に真っ暗で寝息が聞こえる。珍しくもう眠っているらしい。少し遅い時間だったが、思えば一言も連絡なしで来たのだから何も準備されていないだろう。
連絡を交わしてから全く集中出来なかった。レフが手回ししたのか、きちんと飛空艇の最終便へ間に合うように帰らされる。明日は朝一の便で行けば大丈夫だろうと感謝しながら軽くため息を吐いた。
椅子をアンナの前まで運び座り見つめる。そして頬に手を近づけた瞬間、「もし」と声をかけられた。アンナと自分以外誰もいないはずなのに、だ。
「レディの寝込みを襲いに来たのですか? なかなか大胆なことで」
「っ!? 誰むぐ」
真っ黒なガントレットがシドの口を塞ぐ。見上げるとひょろりと長い全身鎧姿のヒトが口元に指を当て見下ろしていた。明らかにアンナよりも背が高く、輝く金色の目が少しだけ恐ろしく見える。
「"ボク"だってあからさまに不審な態度で連絡を切られたら、その日のうちに様子を見に来る。申し訳ございません。"我が主"はどう説明すればいいのか、悩んでいただけ」
まあまだ遊べるとも言っていましたがとくすくす笑う男の声に眉をひそめた。
「お前は、誰だ」
「フレイとでもお呼びください。"ボク"はアンナの影、闇が具現化したもの。所謂アンナの弱さ、"負の感情"」
「何を言っている。アンナは弱くないが」
「そうとしか説明が出来ないのですよ。あぁ既に表舞台から去った存在たちとも言えますね」
「……こいつは"また"厄介なやつに絡まれているってことでいいか?」
「新たな力を使いこなすための修行中、と言ってほしいですね。兎に角あなたの敵ではないということだけ分かっていただいたら幸いです」
のらりくらりと自分の質問を躱す姿に頭痛がし、少しだけ眉間に皴が寄って行く。
「もしあなたに危害を与えてしまうと、"我が主"が怒ってしまいますからそんな目をしないでください。殺意を持たれたら、手が出てしまいます」
フレイと名乗った男は跪きシドの手を優しく握りしめた。先程まで怖く感じた金の双眸が細められ、じっと見つめる様にどこか懐かしさを覚え少々緊張が解けていく。
「"ボクたち"は"我が主"の心の壁を壊し、氷を融かしたあなたに感謝しています。だからどうか、これからも末永く、"この子"を頼みたい」
返事を返す前にそれは暗闇の中に溶け込み、消えた。顔が熱い、そう思いながらコートを脱ぎ頭を冷やすためにシャワーを浴びに行く。「俺は、疲れてるんだな」というボヤキは水音でかき消された。
シドがシャワー室へと向かい数刻後、再び影は形を作った。バルビュートを脱ぎ不器用な笑顔でその先を見つめている。
「確かにあやつの言った通りか。エルが複雑な感情をもつわけだ」
男の目に宿っていた星のおかげで"圧倒的な力"に怯えず前へ進む"主"の髪を優しく梳き再び溶け消えた。直後、シドはブランケットで髪とヒゲを乾かしながら現れる。寝台で眠るアンナの横に座るとふと腕を掴まれる。
「し、ど?」
半覚醒状態のアンナがとろんとした目でシドを見ている。
「ああ起こしてしまったか?」
「ん、だいじょーぶ」
まだ寝ぼけているようだ。普段だったら「何でいるの!?」と驚くだろうに。ここにいるのが当然のような動きを見せているのが少し面白かった。
「ねえ、はやく、寝よ?」
「ああ俺もちょうど疲れてたんだ」
「ん、おやすみなさい」
心の中で浮気ではないようでよかったと安堵する。冷たい身体を抱き寄せ、目を閉じた。
◇
いつもの起床時間だとアンナは目を覚ます。何だか身体が重いとその腕を掴んだ。
「……腕?」
視界は肌色。飛び起き、隣を見ると寝る前にいなかったはずの男が眠っている。記憶を呼び寄せてもトップマストの一室に来るという連絡は受けていない。アンナは首を傾げ、まずは日付を思い出す。間違いなく休日ではない。ということは朝一の便で帰るということか。
時計を見やり、「こっちに来る時は事前に連絡!」と言いながらゲンコツを入れるとシドは情けない声を上げながら目を開けた。
「ああすまん。お前さんがまた変なことしてるのかと思うと居ても立っても居られなくなってな」
「寝ぼけて変なこと言ってる? 軽く朝食作ってあげるから遅刻しないでね」
「ん、ああ勿論」
言ってくれれば晩飯も置いといたのにとボヤきながらエプロンを付けキッチンへ向かう。シドは「日中用事があるって一方的に通信を切った人間の言葉じゃないな」と目をこすりながら着替えを手に取った。
「それで? アンナ、俺に『まだ遊べる』って隠していることとかないだろうな?」
「……ナイヨ?」
「いつか話すんだぞ。苦しみも全て、一緒に背負うって言っただろ」
「―――分かってるつもりさ」
ジトリとした目で睨むシドから目を逸らし、焼いたパンをいつもより多めに押し付ける。一連の動作に子供かと思いながらコーヒーを啜るのであった。
#シド光♀ #フレイ
ioで呟いたアンナ概念(今後書く予定もあるしSSにしてるやつもある)2
ここ数ヶ月でノートしたメモlog
アクセの話
星芒祭ネタのやつで設定上はアイオライトがあしらわれた髪飾りをシドから貰って完全に1人旅の途中は付けてるよって設定になってる
メインストーリー中は落としたり壊れたら嫌だから外してる
アイオライトの石言葉が「道しるべ」「誠実」って感じで
お話上ではその辺り考えずにあげたけど自機は即気付いて嬉しいって思ってるよって感じ
SかMか
普段の行動やら戦闘方法やら見てるとそういう枠組みが存在しないかSと思われがちだけど実際はMですねえ
アンナも自覚は無いけど相手からは把握されてる感じ
絵心(ピクトマンサー話題の時に)
そんなに嗜んでこなかったから多少旅の記録として発見した珍しいものや構造物をスケッチする程度
地図書く腕はありません
ギャザクラ
何でも出来るよって感じに上げてますね
料理が一番得意
1人で生きていけるからってアピール
50年以上迷子でサバイバルしてたんだから料理とギャザラー要素とあと木工革細工くらいはできるに決まってるよなあって感じで
そのスキルは現在イタズラ装置を作るのに役立ててます
守る守られる
お互い守ってもらってるなあって思ってるよ
そりゃ人やシドから見たら圧倒的パワーで自機が守ってるって感じだけど自機は「彼の作った道に守られて進んでるだけだよボクはね」って笑顔で言うよ
ジョブの話
まず、自機の後付けで付けた森の名は『フレイヤ・エルダス』で
エルダス(Eldur)とはアイスランド語で火という意味なので生まれ故郷は森の中にいながらも火を重んじている部族なんですよ
だからそういう魔術への理解も早いんですね
だから魔術系ジョブはヨシとしています
竜騎士というか槍術士が育成遅れたのは、「『鮮血の赤兎』時代が槍持ってたのですぐに高揚して殺意漏れるから過去バレしちゃうと怖がっていた」という後付け設定を作ったんですね
暗黒は、前にノートしたけど迷子になるから闇が嫌いという事で理解が出来なかったけど、漆黒終わってから「ずっと明るくても迷子にはなる」と少しだけ向き合うようになったんです
そういう意味ではリーパーも一緒
逆に侍がメインジョブなのは、何も考えずに森を飛び出して行き倒れていた所助けてくれたのが侍なヒゲのおじ様だったからですね
憧れの命の恩人みたいに刀を振るい人助けしたいと思い手に取ったわけです
殺意溢れる気迫はこのおじ様から受け継いでいます
ゴウセツ氏はその侍のおじ様を知っており、時々溢れる気迫が似てると指摘されます
ウサギは照れてますっていう設定
要するに、紅蓮辺りまでは槍以外はどの武器も慣れてないからその辺りの冒険者と変わらないよーっていう無害アピール
つまりメインでボロ負けするのは一種の舐めプという後付け設定
自機の脳みそ(Y談ビームから派生)
そもそもY談内容は自分と一切結びついていない脳筋野生生物なのでへーこういうのがあるんだってねーすごいね人体って思ってるよ
だからああいう物語になっちゃうんですね
自機の影響された環境が
リンドウ(20年旅してた)>アリス(15年程度会ってた)>里(14年過ごした)>>>>エルファー(合計1年も一緒にいない)
なのでお兄ちゃん可哀想
内なるやつ関連
内なるやつとフレイくん的なポジションになるやつは違うヤツです
先に言っておきます内なるやつはまじでお前なんなんだよ!ってなりますなりました
戦い方教えて!
アンナ「右腕に戦うぞパワーを溜めてそれを刀に込めて力にしズバッといけば一撃必殺」
リンドウ「全身に戦うための力を溜めそれを刀に込めて振りかぶれば一撃必殺だ」
ア・リス「こうやるぞ!って腕にズバーンってやってドン!っとやればいいんだよ!こんなもんフィーリングだ!」
エルファー「(こめかみに指を当て震えている)」
リンドウ「では今から出て来たモンスターを使って解説しよう。まず貴様が持っている武器の間合いからだが(くどくど)」
ア・リス「んなもん考えなくても俺様の秘密兵器を使えばな!」
エルファー「吊るして燃やせばいいだろ」
リンドウ(アンナの命の恩人で師匠)は努力で強くなって更に大ドーピングした人間なので各モンスターやら人の特性を理解した上で理詰めも出来る感じ
アンナはそれをそのままそっくり暗記してるから無意識にやるから脳筋解答になる
エルファーは吊るして燃やせばいいって思ってるしア・リスは色々荒らした"成果"でモノを作ってるからそれ使おうぜーお代はお前の命なーって冗談混じりで言う
アンナはメスバブーンとか野生生物かって言われたら実はちょっと違うんだよね
武器の特性とかも含めて全部理解させられた上で事故で死にかけたアンナの命を救うため仕方なくリンドウと同じ大ドーピングされたからただの人間兵器なんだよね。
#log
アクセの話
星芒祭ネタのやつで設定上はアイオライトがあしらわれた髪飾りをシドから貰って完全に1人旅の途中は付けてるよって設定になってる
メインストーリー中は落としたり壊れたら嫌だから外してる
アイオライトの石言葉が「道しるべ」「誠実」って感じで
お話上ではその辺り考えずにあげたけど自機は即気付いて嬉しいって思ってるよって感じ
SかMか
普段の行動やら戦闘方法やら見てるとそういう枠組みが存在しないかSと思われがちだけど実際はMですねえ
アンナも自覚は無いけど相手からは把握されてる感じ
絵心(ピクトマンサー話題の時に)
そんなに嗜んでこなかったから多少旅の記録として発見した珍しいものや構造物をスケッチする程度
地図書く腕はありません
ギャザクラ
何でも出来るよって感じに上げてますね
料理が一番得意
1人で生きていけるからってアピール
50年以上迷子でサバイバルしてたんだから料理とギャザラー要素とあと木工革細工くらいはできるに決まってるよなあって感じで
そのスキルは現在イタズラ装置を作るのに役立ててます
守る守られる
お互い守ってもらってるなあって思ってるよ
そりゃ人やシドから見たら圧倒的パワーで自機が守ってるって感じだけど自機は「彼の作った道に守られて進んでるだけだよボクはね」って笑顔で言うよ
ジョブの話
まず、自機の後付けで付けた森の名は『フレイヤ・エルダス』で
エルダス(Eldur)とはアイスランド語で火という意味なので生まれ故郷は森の中にいながらも火を重んじている部族なんですよ
だからそういう魔術への理解も早いんですね
だから魔術系ジョブはヨシとしています
竜騎士というか槍術士が育成遅れたのは、「『鮮血の赤兎』時代が槍持ってたのですぐに高揚して殺意漏れるから過去バレしちゃうと怖がっていた」という後付け設定を作ったんですね
暗黒は、前にノートしたけど迷子になるから闇が嫌いという事で理解が出来なかったけど、漆黒終わってから「ずっと明るくても迷子にはなる」と少しだけ向き合うようになったんです
そういう意味ではリーパーも一緒
逆に侍がメインジョブなのは、何も考えずに森を飛び出して行き倒れていた所助けてくれたのが侍なヒゲのおじ様だったからですね
憧れの命の恩人みたいに刀を振るい人助けしたいと思い手に取ったわけです
殺意溢れる気迫はこのおじ様から受け継いでいます
ゴウセツ氏はその侍のおじ様を知っており、時々溢れる気迫が似てると指摘されます
ウサギは照れてますっていう設定
要するに、紅蓮辺りまでは槍以外はどの武器も慣れてないからその辺りの冒険者と変わらないよーっていう無害アピール
つまりメインでボロ負けするのは一種の舐めプという後付け設定
自機の脳みそ(Y談ビームから派生)
そもそもY談内容は自分と一切結びついていない脳筋野生生物なのでへーこういうのがあるんだってねーすごいね人体って思ってるよ
だからああいう物語になっちゃうんですね
自機の影響された環境が
リンドウ(20年旅してた)>アリス(15年程度会ってた)>里(14年過ごした)>>>>エルファー(合計1年も一緒にいない)
なのでお兄ちゃん可哀想
内なるやつ関連
内なるやつとフレイくん的なポジションになるやつは違うヤツです
先に言っておきます内なるやつはまじでお前なんなんだよ!ってなりますなりました
戦い方教えて!
アンナ「右腕に戦うぞパワーを溜めてそれを刀に込めて力にしズバッといけば一撃必殺」
リンドウ「全身に戦うための力を溜めそれを刀に込めて振りかぶれば一撃必殺だ」
ア・リス「こうやるぞ!って腕にズバーンってやってドン!っとやればいいんだよ!こんなもんフィーリングだ!」
エルファー「(こめかみに指を当て震えている)」
リンドウ「では今から出て来たモンスターを使って解説しよう。まず貴様が持っている武器の間合いからだが(くどくど)」
ア・リス「んなもん考えなくても俺様の秘密兵器を使えばな!」
エルファー「吊るして燃やせばいいだろ」
リンドウ(アンナの命の恩人で師匠)は努力で強くなって更に大ドーピングした人間なので各モンスターやら人の特性を理解した上で理詰めも出来る感じ
アンナはそれをそのままそっくり暗記してるから無意識にやるから脳筋解答になる
エルファーは吊るして燃やせばいいって思ってるしア・リスは色々荒らした"成果"でモノを作ってるからそれ使おうぜーお代はお前の命なーって冗談混じりで言う
アンナはメスバブーンとか野生生物かって言われたら実はちょっと違うんだよね
武器の特性とかも含めて全部理解させられた上で事故で死にかけたアンナの命を救うため仕方なくリンドウと同じ大ドーピングされたからただの人間兵器なんだよね。
#log
旅人は子供になりすごす-1-
注意
漆黒以降の自機が子供化ギャグ概念。ネロ+光♀気味のシド光♀。ネロと自機はお互い友人以上の感情は無し。
やらかした。その一言に尽きる。
「サ、サリスさん大丈夫ですか!?」
覚醒するとベッドの上。アンナは身体をゆっくり起こし、錬金術師ギルドの人を見上げた。どうしてそんなにも心配そうな顔で見ているのかと腕組みすると自分の腕がえらく細いことに気付いた。鏡を渡されたのでちらと覗くと、小さな子供が自分を眺めている。
「は? え?」
喉から幼い声が出てる? アンナは察した。
衣服は子供用に着替えさせられ、数人がずっと頭を下げている。
なんと事故で被った錬金薬で、子供になってしまっていた。
下肢を確認すると、察する。14歳以下、つまりヴィエラの性別がはっきりする前の年齢に変化しているらしい。あっという間に血の気が引くのを感じた。
「個人差はありますが数日で戻っていると思います! ただ結構な量頭から被ってしまったので……」
「いやまあいつか戻るなら気にしてない。……誰かに連絡した?」
「いえ、サリスさんの意識が回復してからでいいかと思い。荷物はギルドの方でお預かりしています」
「ありがとう。……ツテはあるから大丈夫。後から取りに来るね」
介抱してくれたのであろう女性の手を振り払い寝台から降りる。
「絶対、暁には、ナイショでおねがい」
アンナは人差し指を口の前に持って行き、ウィンクをした。大人たちはキャーと黄色い声を上げている。チョロいもんだとニィと笑った。
とりあえずはレターモーグリーに頼むことにする。まずは手早く紙に一言書いた。そしてふわふわと浮かんでいるポンポンがチャームポイントの可愛らしい生物に小さく咳払いした後話しかけた。
「モーグリさん! お手紙送ってくださいな!」
「分かったクポ! 誰に送るクポ?」
「ガーロンド・アイアンワークス社にいるネロパパ!」
「そうなのクポ!? 誠意を込めて送ってあげるクポ!」
「なるべく急ぎで他の人に見られないように! えへへ、パパねー会社では私のこと隠してるから!」
アンナはフードを被り血反吐を吐きそうになりながら子供のフリをしてレターモーグリに便箋を渡す。
この奇妙な出来事を何とか現実として受け止めながらも流してもらえる存在が"彼"しか思い浮かばなかった。それはシドではない。なるべく多くの人にバレたくないのだ、あまり頼りたくない人間の1人だが仕方のない話だろう。
まさか相手があの英雄であろうとはつゆ知らず。ふわふわ飛んで行くモーグリを見送りながら待ち合わせ場所に向かった。大丈夫、これだけバカみたいな嘘吐いたらすぐに飛んで来るさと笑う。
◇
ガーロンド・アイアンワークス社。今日もせわしなくシド含めた社員たちが働く中、ネロは休憩室でサボっていた。本当はまた自由になりたかった。だが、シドやメスバブーンを中心とした環境は数々の好奇心を満たす案件をもたらすのでつい残ってしまう。
タバコをふかし物思いに更けていると目の前にポンとモーグリーが現れた。
「なンだこの白豚」
「クポー! ガーロンド・アイアンワークス社のネロさんクポね! お手紙どうぞクポ!」
「俺に手紙だぁ? 誰からだよ」
「娘さんクポ! 家族想いで意外といい人とは知らなかったクポー」
「アァ!?」
「と、とにかく渡したから失礼クポ!」
こっちの話を聞かず手紙を押し付け逃げるように消える。「何言ってンだクソが」と呟きながらとりあえず手紙を開くと可愛らしい文字で短い文が記されていた。
【緊急 誰にもバレずにウルダハクイックサンド前に来い 可愛い娘より】
紙切れをグシャリと丸め灰皿の上で燃やす。どういうことだとっちめンぞと言いながらコートを羽織り鞄に手を取った。
「ちょっとネロあなたどこに行くの!?」
「用事ができたから早退する」
「おいサボるな!」
会長と会長代理の言葉を無視しチョコボを呼びウルダハへ走り出した。
◇
精一杯飛ばし日が傾くより前に何とか辿り着いた。クイックサンド付近を見回すとララフェルの男数人とフードを被った小さな物体が。
「お坊ちゃん迷子かい? おじさんが一緒に探してあげようか?」
「いやいやワタクシがご一緒しましょう」
「可愛いねえ僕」
知ったこっちゃない。こんなクソみたいなイタズラ手紙送った首謀者は絶対にあのメスバブーンだ。遂にシドだけで満足できず俺にまで悪影響を与えに来やがった。どこにいるのかとため息を吐いているとフードを被ったガキがこっちを振り向いている。遠目からでも分かる位目を輝かせながら中性的な声でこう言いやがった。
「パパ!」
「アァ!?」
小走りで抱き着いてきやがった。危うくもう少しずれていたら鳩尾に頭が激突する所だった。そして普通のガキよりも少し強い力で腕を掴み引っ張る。
「おじさんたち話し相手になってくれてありがとう! ほらパパ行こ!」
「エ、ちょ、おま」
ポカンと見ている男たちを尻目にガキは同じく状況が理解できない俺を引っ張ってナル回廊へ連れて行かれる。
程々に人がいない所でこのガキの首根っこを掴み怒鳴ってやった。
「テメエのことなンぞ知らねェ! ガキはとっととおうちでママのおっぱいでも吸って寝てろ! ……っておま」
「はー今日はツイてない。しかし時々は元軍人の固い腹筋に当たるのも悪くない」
掴み上げフードを取り払うと長い耳。黒色の髪に赤色のメッシュ、赤色の目で褐色の肌。開いた口が塞がらず、血の気が引いて行くのが分かる。
「いやあネロサンならあんな血反吐吐きそうな手紙書いたら即飛んで来ると思ったよ嬉しいねぇ」
「メスバ、なに、ハ????」
毒づいていた相手と同じ喋り方をしたガキはケラケラと笑っている。厄介なことに巻き込まれてしまった、そうとしか言えないと片手で顔を覆った。
◇
「で? 錬金薬を事故でぶっかかってガキの姿に」
「そうそう」
「くだらねェ……ていうかナニしたらそンな事故起こンだよ」
食事でもしようかとクイックサンドに連れて行かれ座らされた。周りの視線が痛い。ガレアン人とフードを被ったガキとなると異質に映るだろう。勝手に付いてきただけだと主のモモディには言っておいた。
「いやあ頼れる人間を考えたらキミしかいなくてねえ」
「ガーロンドや暁にでも言えばいいじゃねェか」
「いや暁はグ・ラハとアリゼーが怖いし。シドは……特にめんど、じゃなかった性犯罪者にしたくないなって」
「俺はいいってのかよ」
「まず子供になったボクに対して過大なリアクションをしない存在。そして秘密を守って匿ってくれる。発情しない。シドの動きをいつでも確認できる相手」
アンナはサラダを頬張りながら順番に指を立てる。発情という言葉が引っかかるが何も言わず話を聞いてやる。
「その条件を満たせる知り合いって考えるとネロサンしかいないってわけ」
「呆れて何も言えねェ。つーかお前がガーロンドやグ・ラハらをどういう目で見てるかよく分かった」
「普段妄信的な目で見ているヤツらにキャーって言いながら抱きしめられたり着替えさせて来るのがイヤ。あとシドのヒゲ絶対痛い」
なるほどナァとその情景を思い浮かべた。多分ガーロンド社に連れて行っても同じようなリアクションをされるだろう。兄もいるしそりゃ祭りになるのは想像に難くない。
「だから! ネロサン! いやネロサマ! 拠点あるでしょ? しばらく泊めて! おねがい!」
「イヤに決まってンだろ!? ガーロンドに殺されるわ!!」
「パパのいじわる!」
「俺はバブーンじゃねェ!!」
ギャーギャー言い合っていると周りの視線が刺さる。舌打ちしながら座り直しため息を吐いた。
「家で大人しくするし料理も作るしその分のお金は色付けて出すから。キミはシドの動向さえ教えてくれたらそれでいい」
「なンでお前はそう変な方向に突っ切れるンだよ……」
時折思い切りが怖いというシドのボヤキを思い出す。これは、ダメだと眉間にしわを寄せ天を見上げた。
◇
結局ガキになっても変わらないアンナのゴリ押しに負け連れ帰ることにした。
まずは服を買いたいと引っ張られていく。今は冒険者ではなく庶民向けの服屋で下着等の選別を見守っている。
「服って子供の頃はもらったやつしか知らなかった。新鮮」
「ハァ」
「ネロサンもお金は後から出すから適当に服見繕って。今から錬金術師ギルド行く。その下の制服見られたら面倒」
「ハァ」
目を輝かせながら言っている姿に『その姿の頃は可愛げがあったンだな』という言葉が浮かんだが仕舞い込んでおく。
「あ、お金は」
「領収書、名前はガーロンド・アイアンワークス社のシド・ガーロンド。ネロさンに苦労をかけさせたお詫びで頼む」
「え」
着替えさせられ次は錬金術ギルドに向かうために帽子を深く被らされた。
不審な目で見られながら荷物を受け取る。「パパ」と呼ばれながらただ心を無にして重い鞄を持った。こういうストレスを解消する手段は簡単で。「ほら次は食材でも買い込むぞ。あぁガーロンド・アイアンワークス社のシド・ガーロンドで頼ンだぞ」とヤツの名義で買い物するのに限る。今ここにいる2人の心が痛まない楽しい手段だ。
「こんなに買って大丈夫?」
「最終的に全てガーロンドに行くから俺は痛くねェ。単純だからお前が関わってるつったら許すだろ」
「……そうだね! シドチョロいし! 暇つぶしにほしいものがジャンク屋にあったからそれもいいかな?」
「いいぜ買ってやろうじゃねェか。経費かガーロンドの金でな!」
「ホホー……ヘッヘッヘッそういうのやってみたかったんだよねえ!」
2人はゲラゲラと笑いながらウルダハの街に消えて行った。
◇
その後アンナの持っていた2人乗りマウントに乗りレヴナンツトール付近に降り立った。変形ロボットとはロマンが分かってンじゃねェかと言ってやると満面の笑みを浮かべていた。
しっかりとフードを被せ、荷物は買ったデカいスーツケースに入れて引っ張る。多分体を折り曲げたら横で手を引いている子供も入るかもしれないとふと頭に浮かび上がった。さすがに犯罪でしかない思考なので置いておく。
周囲を見回し、ガーロンド社で働き出してから拠点にしているアパートの一室に帰った。アンナは早速キョロキョロと見まわし部屋の設備を確認している。
「キッチン、よし。風呂トイレ別、よし。ベッドは1つか。まあ今の私小さいから2人行ける」
「おいおい俺はソファで寝るぞ」
「別に何も起こらない」
「バレたら殺されるつってンだろ!」
主にシドとお前の兄にな! と心の中で呟く。そんな考えもいざ知らず「別にキミがヘマしなきゃ死なないよ?」と首を傾げた。お前、マジかという言葉を飲み込みながらキッチンに食材を置く。こうやってシドを本気にさせて行ったんだなという底抜けな無神経さに流石のオレ様でも引いてしまっていた。
「飯は当番制でいいだろ? 今日は俺が作ってやるから明日はお前がやれ」
「いいの? ていうかネロサン料理できるんだ」
「おぼっちゃんと一緒にされるのは心外だナァ」
病み上がりみたいなやつなンだから座ってろと言いながら食材を手に取った。
◇
適当な料理を与えると意外なことに普通に食べた。いつもだったら一瞬で消える筈の食事が一般的な時間で胃袋に収まっている。さすがに大人のような暴れっぷりは発揮されないようだ。現在はシャワーを浴びに行っており、その合間にシドから怒りのリンクパール通信が来たので適当に受け答えする。
『だからお前は急にどこに行って』
「アー大丈夫だ。明日はきちンと出社して片付けるっつーの」
扉が開く音が聞こえた。「スマンがありがてェ説教は明日な」と切断し、それと同時にタオルを頭に乗せパジャマ姿のアンナが現れた。
「通話中だった?」
「愛しの会長サマからの説教だぜ。何せお前のひっでェラブレターで飛び出したわけだからな。怒髪天なンだわ」
「あっそう」
「っておい何髪拭かずにこっち来てンだよ! 乾かしてからにしろ!」
髪から雫を落としながら歩いているので注意した。するときょとんとした顔で「自然乾燥」と言うので「この野生児が」と頭を抱えながらドライヤーで乾かしてやる。
「耳に触ったら殺すからね」
「無茶言うな。イヤならその耳取り外せ」
「ふっ……耳だけにイヤと―――何でもない。そう言われると反論できないねぇ」
何で俺がガキのドライヤーの世話をしないといけないんだ、ボソボソ呟きながら軽く乾かしてやる。途中から気持ちがよかったのか気の抜けるような声と一緒に長い耳が垂れ下がる。何かリアクションをするべきかと思ったが指摘したら怒りそうなので何も言わない。というか同じくヴィエラで兄のエルが髪を乾かしている時はこうならないぞどうなっているのかと考え込んでしまう。
その後、今回のものも含め他に錬金術師ギルドにあった薬の効果について質疑応答を繰り返しながら時間を過ごす。そして夜が更ける頃に布団に投げ込み眠らせた。
寝る前に小さな肩に触れてしまった。ひんやりと冷気が伝わる。
「うわ冷て。いやこりゃ意外と冷房代わりになるか」
つい抱き寄せそのまま眠ってしまう。普段からこれ位大人しければという妙な考えを煙に巻きながら明日以降のシドやエルへの誤魔化し方を考えるのであった―――。
その2へ続く。
#ギャグ
漆黒以降の自機が子供化ギャグ概念。ネロ+光♀気味のシド光♀。ネロと自機はお互い友人以上の感情は無し。
やらかした。その一言に尽きる。
「サ、サリスさん大丈夫ですか!?」
覚醒するとベッドの上。アンナは身体をゆっくり起こし、錬金術師ギルドの人を見上げた。どうしてそんなにも心配そうな顔で見ているのかと腕組みすると自分の腕がえらく細いことに気付いた。鏡を渡されたのでちらと覗くと、小さな子供が自分を眺めている。
「は? え?」
喉から幼い声が出てる? アンナは察した。
衣服は子供用に着替えさせられ、数人がずっと頭を下げている。
なんと事故で被った錬金薬で、子供になってしまっていた。
下肢を確認すると、察する。14歳以下、つまりヴィエラの性別がはっきりする前の年齢に変化しているらしい。あっという間に血の気が引くのを感じた。
「個人差はありますが数日で戻っていると思います! ただ結構な量頭から被ってしまったので……」
「いやまあいつか戻るなら気にしてない。……誰かに連絡した?」
「いえ、サリスさんの意識が回復してからでいいかと思い。荷物はギルドの方でお預かりしています」
「ありがとう。……ツテはあるから大丈夫。後から取りに来るね」
介抱してくれたのであろう女性の手を振り払い寝台から降りる。
「絶対、暁には、ナイショでおねがい」
アンナは人差し指を口の前に持って行き、ウィンクをした。大人たちはキャーと黄色い声を上げている。チョロいもんだとニィと笑った。
とりあえずはレターモーグリーに頼むことにする。まずは手早く紙に一言書いた。そしてふわふわと浮かんでいるポンポンがチャームポイントの可愛らしい生物に小さく咳払いした後話しかけた。
「モーグリさん! お手紙送ってくださいな!」
「分かったクポ! 誰に送るクポ?」
「ガーロンド・アイアンワークス社にいるネロパパ!」
「そうなのクポ!? 誠意を込めて送ってあげるクポ!」
「なるべく急ぎで他の人に見られないように! えへへ、パパねー会社では私のこと隠してるから!」
アンナはフードを被り血反吐を吐きそうになりながら子供のフリをしてレターモーグリに便箋を渡す。
この奇妙な出来事を何とか現実として受け止めながらも流してもらえる存在が"彼"しか思い浮かばなかった。それはシドではない。なるべく多くの人にバレたくないのだ、あまり頼りたくない人間の1人だが仕方のない話だろう。
まさか相手があの英雄であろうとはつゆ知らず。ふわふわ飛んで行くモーグリを見送りながら待ち合わせ場所に向かった。大丈夫、これだけバカみたいな嘘吐いたらすぐに飛んで来るさと笑う。
◇
ガーロンド・アイアンワークス社。今日もせわしなくシド含めた社員たちが働く中、ネロは休憩室でサボっていた。本当はまた自由になりたかった。だが、シドやメスバブーンを中心とした環境は数々の好奇心を満たす案件をもたらすのでつい残ってしまう。
タバコをふかし物思いに更けていると目の前にポンとモーグリーが現れた。
「なンだこの白豚」
「クポー! ガーロンド・アイアンワークス社のネロさんクポね! お手紙どうぞクポ!」
「俺に手紙だぁ? 誰からだよ」
「娘さんクポ! 家族想いで意外といい人とは知らなかったクポー」
「アァ!?」
「と、とにかく渡したから失礼クポ!」
こっちの話を聞かず手紙を押し付け逃げるように消える。「何言ってンだクソが」と呟きながらとりあえず手紙を開くと可愛らしい文字で短い文が記されていた。
【緊急 誰にもバレずにウルダハクイックサンド前に来い 可愛い娘より】
紙切れをグシャリと丸め灰皿の上で燃やす。どういうことだとっちめンぞと言いながらコートを羽織り鞄に手を取った。
「ちょっとネロあなたどこに行くの!?」
「用事ができたから早退する」
「おいサボるな!」
会長と会長代理の言葉を無視しチョコボを呼びウルダハへ走り出した。
◇
精一杯飛ばし日が傾くより前に何とか辿り着いた。クイックサンド付近を見回すとララフェルの男数人とフードを被った小さな物体が。
「お坊ちゃん迷子かい? おじさんが一緒に探してあげようか?」
「いやいやワタクシがご一緒しましょう」
「可愛いねえ僕」
知ったこっちゃない。こんなクソみたいなイタズラ手紙送った首謀者は絶対にあのメスバブーンだ。遂にシドだけで満足できず俺にまで悪影響を与えに来やがった。どこにいるのかとため息を吐いているとフードを被ったガキがこっちを振り向いている。遠目からでも分かる位目を輝かせながら中性的な声でこう言いやがった。
「パパ!」
「アァ!?」
小走りで抱き着いてきやがった。危うくもう少しずれていたら鳩尾に頭が激突する所だった。そして普通のガキよりも少し強い力で腕を掴み引っ張る。
「おじさんたち話し相手になってくれてありがとう! ほらパパ行こ!」
「エ、ちょ、おま」
ポカンと見ている男たちを尻目にガキは同じく状況が理解できない俺を引っ張ってナル回廊へ連れて行かれる。
程々に人がいない所でこのガキの首根っこを掴み怒鳴ってやった。
「テメエのことなンぞ知らねェ! ガキはとっととおうちでママのおっぱいでも吸って寝てろ! ……っておま」
「はー今日はツイてない。しかし時々は元軍人の固い腹筋に当たるのも悪くない」
掴み上げフードを取り払うと長い耳。黒色の髪に赤色のメッシュ、赤色の目で褐色の肌。開いた口が塞がらず、血の気が引いて行くのが分かる。
「いやあネロサンならあんな血反吐吐きそうな手紙書いたら即飛んで来ると思ったよ嬉しいねぇ」
「メスバ、なに、ハ????」
毒づいていた相手と同じ喋り方をしたガキはケラケラと笑っている。厄介なことに巻き込まれてしまった、そうとしか言えないと片手で顔を覆った。
◇
「で? 錬金薬を事故でぶっかかってガキの姿に」
「そうそう」
「くだらねェ……ていうかナニしたらそンな事故起こンだよ」
食事でもしようかとクイックサンドに連れて行かれ座らされた。周りの視線が痛い。ガレアン人とフードを被ったガキとなると異質に映るだろう。勝手に付いてきただけだと主のモモディには言っておいた。
「いやあ頼れる人間を考えたらキミしかいなくてねえ」
「ガーロンドや暁にでも言えばいいじゃねェか」
「いや暁はグ・ラハとアリゼーが怖いし。シドは……特にめんど、じゃなかった性犯罪者にしたくないなって」
「俺はいいってのかよ」
「まず子供になったボクに対して過大なリアクションをしない存在。そして秘密を守って匿ってくれる。発情しない。シドの動きをいつでも確認できる相手」
アンナはサラダを頬張りながら順番に指を立てる。発情という言葉が引っかかるが何も言わず話を聞いてやる。
「その条件を満たせる知り合いって考えるとネロサンしかいないってわけ」
「呆れて何も言えねェ。つーかお前がガーロンドやグ・ラハらをどういう目で見てるかよく分かった」
「普段妄信的な目で見ているヤツらにキャーって言いながら抱きしめられたり着替えさせて来るのがイヤ。あとシドのヒゲ絶対痛い」
なるほどナァとその情景を思い浮かべた。多分ガーロンド社に連れて行っても同じようなリアクションをされるだろう。兄もいるしそりゃ祭りになるのは想像に難くない。
「だから! ネロサン! いやネロサマ! 拠点あるでしょ? しばらく泊めて! おねがい!」
「イヤに決まってンだろ!? ガーロンドに殺されるわ!!」
「パパのいじわる!」
「俺はバブーンじゃねェ!!」
ギャーギャー言い合っていると周りの視線が刺さる。舌打ちしながら座り直しため息を吐いた。
「家で大人しくするし料理も作るしその分のお金は色付けて出すから。キミはシドの動向さえ教えてくれたらそれでいい」
「なンでお前はそう変な方向に突っ切れるンだよ……」
時折思い切りが怖いというシドのボヤキを思い出す。これは、ダメだと眉間にしわを寄せ天を見上げた。
◇
結局ガキになっても変わらないアンナのゴリ押しに負け連れ帰ることにした。
まずは服を買いたいと引っ張られていく。今は冒険者ではなく庶民向けの服屋で下着等の選別を見守っている。
「服って子供の頃はもらったやつしか知らなかった。新鮮」
「ハァ」
「ネロサンもお金は後から出すから適当に服見繕って。今から錬金術師ギルド行く。その下の制服見られたら面倒」
「ハァ」
目を輝かせながら言っている姿に『その姿の頃は可愛げがあったンだな』という言葉が浮かんだが仕舞い込んでおく。
「あ、お金は」
「領収書、名前はガーロンド・アイアンワークス社のシド・ガーロンド。ネロさンに苦労をかけさせたお詫びで頼む」
「え」
着替えさせられ次は錬金術ギルドに向かうために帽子を深く被らされた。
不審な目で見られながら荷物を受け取る。「パパ」と呼ばれながらただ心を無にして重い鞄を持った。こういうストレスを解消する手段は簡単で。「ほら次は食材でも買い込むぞ。あぁガーロンド・アイアンワークス社のシド・ガーロンドで頼ンだぞ」とヤツの名義で買い物するのに限る。今ここにいる2人の心が痛まない楽しい手段だ。
「こんなに買って大丈夫?」
「最終的に全てガーロンドに行くから俺は痛くねェ。単純だからお前が関わってるつったら許すだろ」
「……そうだね! シドチョロいし! 暇つぶしにほしいものがジャンク屋にあったからそれもいいかな?」
「いいぜ買ってやろうじゃねェか。経費かガーロンドの金でな!」
「ホホー……ヘッヘッヘッそういうのやってみたかったんだよねえ!」
2人はゲラゲラと笑いながらウルダハの街に消えて行った。
◇
その後アンナの持っていた2人乗りマウントに乗りレヴナンツトール付近に降り立った。変形ロボットとはロマンが分かってンじゃねェかと言ってやると満面の笑みを浮かべていた。
しっかりとフードを被せ、荷物は買ったデカいスーツケースに入れて引っ張る。多分体を折り曲げたら横で手を引いている子供も入るかもしれないとふと頭に浮かび上がった。さすがに犯罪でしかない思考なので置いておく。
周囲を見回し、ガーロンド社で働き出してから拠点にしているアパートの一室に帰った。アンナは早速キョロキョロと見まわし部屋の設備を確認している。
「キッチン、よし。風呂トイレ別、よし。ベッドは1つか。まあ今の私小さいから2人行ける」
「おいおい俺はソファで寝るぞ」
「別に何も起こらない」
「バレたら殺されるつってンだろ!」
主にシドとお前の兄にな! と心の中で呟く。そんな考えもいざ知らず「別にキミがヘマしなきゃ死なないよ?」と首を傾げた。お前、マジかという言葉を飲み込みながらキッチンに食材を置く。こうやってシドを本気にさせて行ったんだなという底抜けな無神経さに流石のオレ様でも引いてしまっていた。
「飯は当番制でいいだろ? 今日は俺が作ってやるから明日はお前がやれ」
「いいの? ていうかネロサン料理できるんだ」
「おぼっちゃんと一緒にされるのは心外だナァ」
病み上がりみたいなやつなンだから座ってろと言いながら食材を手に取った。
◇
適当な料理を与えると意外なことに普通に食べた。いつもだったら一瞬で消える筈の食事が一般的な時間で胃袋に収まっている。さすがに大人のような暴れっぷりは発揮されないようだ。現在はシャワーを浴びに行っており、その合間にシドから怒りのリンクパール通信が来たので適当に受け答えする。
『だからお前は急にどこに行って』
「アー大丈夫だ。明日はきちンと出社して片付けるっつーの」
扉が開く音が聞こえた。「スマンがありがてェ説教は明日な」と切断し、それと同時にタオルを頭に乗せパジャマ姿のアンナが現れた。
「通話中だった?」
「愛しの会長サマからの説教だぜ。何せお前のひっでェラブレターで飛び出したわけだからな。怒髪天なンだわ」
「あっそう」
「っておい何髪拭かずにこっち来てンだよ! 乾かしてからにしろ!」
髪から雫を落としながら歩いているので注意した。するときょとんとした顔で「自然乾燥」と言うので「この野生児が」と頭を抱えながらドライヤーで乾かしてやる。
「耳に触ったら殺すからね」
「無茶言うな。イヤならその耳取り外せ」
「ふっ……耳だけにイヤと―――何でもない。そう言われると反論できないねぇ」
何で俺がガキのドライヤーの世話をしないといけないんだ、ボソボソ呟きながら軽く乾かしてやる。途中から気持ちがよかったのか気の抜けるような声と一緒に長い耳が垂れ下がる。何かリアクションをするべきかと思ったが指摘したら怒りそうなので何も言わない。というか同じくヴィエラで兄のエルが髪を乾かしている時はこうならないぞどうなっているのかと考え込んでしまう。
その後、今回のものも含め他に錬金術師ギルドにあった薬の効果について質疑応答を繰り返しながら時間を過ごす。そして夜が更ける頃に布団に投げ込み眠らせた。
寝る前に小さな肩に触れてしまった。ひんやりと冷気が伝わる。
「うわ冷て。いやこりゃ意外と冷房代わりになるか」
つい抱き寄せそのまま眠ってしまう。普段からこれ位大人しければという妙な考えを煙に巻きながら明日以降のシドやエルへの誤魔化し方を考えるのであった―――。
その2へ続く。
#ギャグ
20240304メモ
注意
漆黒5.0終了直後の話なのでふんわりネタバレ
旅人は星を見つけるというようやく観念し、自分の想いと向き合おうとする話を書きましたのでそのあとがき。
5.0メインストーリー終了直後のお話です。
シドは旅人は奮い立たせたいで言い渡された宿題をアンナが第一世界に行っている間に解くためにネロとアンナの兄エルファーと共に命の恩人リンドウ・フウガの終の棲家へ再び訪れる話(技師は宿題を解きに行く)と妖精のイタズラで夢で繋がり話をする不思議な出来事("夢")を経て今回の話になります。
アンナ自体は"夢"で余計なことまで喋っちゃったから会いたくねー!って思ってるけどまあ報告には帰らないとだめだよね。じゃあ石の家行ったら帰る! え? ガロ社行け? ……まあ今回も別次元とはいえ助けてもらった人たちだし行かないとね……。ジェシーに挨拶して逃げようって感情でした。まあ"宿題"とやらは早々に終わり夢で逢った後も準備をしっかり先回りしているので捕まるんですけど。
アンナの新生から漆黒までのシドに対する感情を初めてしっかり公開しました。実はそのモノローグの中で書いてない話が一つだけあるのでそれもいつか出しておきたいですね。
鮮血の赤兎がアンナになって初めて出会った時から無意識に一つの星を見出して、ガルーダ戦の前には感情がバグり散らしていました。お前を助けるのはボクだ、ボクだけ見ろというのが星芒祭での話で、それからどんどん歯車が軋みオメガでのやらかしに繋がります。そして別に約束覚えてないなら隙を見て消えてもいいんじゃない? と思ってたりもしてたし人の心が理解できていませんでした。というかこれで特定の感情持ってないですは嘘だろ!? ってなるのも仕方ないです。普通は本気にされるよ。
それも全てかつて命の恩人リンドウがしていたことを真似していただけという認識なんですね。実はリンドウもそのアンナと同じ感情になってるんですけど。「私の教えは成長するごとに忘れて行き、自分の目で大切な人を見極めて全てを護る強き存在になれと言いたかった。頑なに孤独で旅をして怒りに任せて暴れるだけでなく世界を滅ぼすトリガーに利用されろとは言ってない」って感じで。手紙にそう書き残す位には後悔していました。
その想いを受け取ったシドが"宿題"の答えとして「俺はアンナが好きだ。だからお前を絶対に獣にはしない。俺はお前が最大限の力を発揮するための道を示す、星になる。だから、もう無名の旅人にならなくてもいい。アンナ・サリスとして隣に立っていてくれ。"お願い"だ」という言葉を送りました。リンドウの手紙に書かれていた『私はアンナを獣にし、人々を絶望させるために全てを教えたわけではない。アシエンの手を今からでも振りほどき星空の知識を教えた思い出と共に自由な夜空を愛してほしい』という部分から取って来たんですね。基本的に仕事相手以外には不器用だけどここまではっきりと明示されたらピンポイントにツボは押さえてくれると解釈しています。
◇
リンドウとアンナの最終的な関係。アンナからしたら命の恩人であり、師匠であり、幼い頃の初恋で、厳しいが優しい血の繋がりのない父であった人。リンドウからは全てが枯れた後に育てた娘という認識でした。というか枯れてなくても年齢差が30位あるし友人の妹に手は出せないという考えがあったり。墓参りの話のネロとエルファーの会話をカットしているので明かされてはいないのですがリンドウは度重なる"実験"により欲だけでなく生殖機能まで失い子孫を遺せなかった存在なのでアンナは本当に大切な娘として刻み込まれ、そして"継承"させてしまいました。
手紙に残されていた友人が準備した"奥の手"が"内なる存在"と呼ばれるもう一人のアンナになります。どうやって準備されたかはまた別の機会に。これが時々アンナの意識を乗っ取って今回の話に繋がって行きました。乗っ取る基準は"ダメージを一定以上喰らった時"、"気絶した時"、"ストレスが一定以上になった時"と一種の補助電源のような存在になっています。一度死にそうになってもこの"内なる存在"が動ける限りは少しだけコイツが生き永らえさせることが出来ます。しかし本体が本当に死んでしまうと体内エーテルが切れた地点でおしまい。
例としては幼少期シドと出会った時ですね。この時は凍死しかけ"内なる存在"に切り替わり、帝国兵に捕まるのだろうかと悩んでる内に偶然通りかかったシドに助けられました。その時に会話したのが"内なる存在"のアンナ。なので星芒祭の夜に再会した時の"旅人さん"も"内なる存在"が演じています。確実にシドの記憶に残すためにアンナを騙しあえてやりました。策士ですね。元のアンナが単純すぎるだけともいう。
というわけでその"内なる存在"がどう介入していたかというのを加筆修正しました。対象の作品はこちら。時系列準。
・本編前
旅人と赤色
・新生
旅人は過去を視る
・蒼天
星降る夜の奇跡の話―中―
・紅蓮
好奇心は旅人を起こす // 旅人は奮い立たせたい // 旅人は、目覚めさせる // 旅人と約束
・漆黒
旅人を闇は抱きしめる
以上。あとは差し替え以降に書いてるので省略。この辺りは確実に"ボク"になっています。見分け方はボクと"ボク"で実際喋ってる時もイントネーションが違う感じになっています。出番数的にネロだけは違和感に気付いています。シドの前に出たのは星芒祭と初夜後と検証終了直後に少々だけなのでちょっと検証材料が足りない状態。
これらに加えて漆黒の大罪喰いを全て倒した後以降ハーデス戦が終わるまで全部"内なる存在"が終わらせています。理由としては本体は内包された光の気持ち悪さにダウンしてしまい1人塞ぎ込んでしまったから。全部フラフラしながら"内なる存在"が片付けました。しかし塞ぎ込みすぎてかつては自分の中に大量に溜め込まれた闇を、今回は光を体内から排出させてくれたエメトセルクにお礼が言えず後悔しています。それに関しては「知らん」と語る"内なる存在"であった。
閑話休題。これ以降はボズヤ、ウェルリトを経てアンナによるシドを知る旅編が始まります。リンドウと別れて以降初めて人に興味を抱いたアンナはそれを知り、自分がどういう感情を抱いているかを自覚しようと努力します。シドだけではなく周りからするともうとっくに一線も越えて想いを伝えあう以外は大体終わってるのに今更何を言ってるんだと思われてますが、アンナは人の気持ちを一切理解してこなかったので考える事にしました。
というのもこれまでのアンナは徹底的に君を助けるんだやらナイスイタズラやら自分の気持ちを押し付けるようにしてたんですね。人がどう思ったか反応を見る前に立ち去るのがこのウサギでした。でもエオルゼアの人間たちは絶対にお礼を言いに来たりシドは追いかけてどういう技術使ってんだと説教したりと「何でボクに構うんだよこっち見ないでよ!」って思うようなことになっています。ばかですね。冒険者だからだよ。かわいいね。
もうくっついた後の話も何本も書いてるけど本軸もゆっくり進めたりエルファーメインのリンドウ、ア・リスという存在が色々やらかしてる話もしっかり準備はしてるので読みたい方はまたよろしくお願いします。
あ、あと初夜話なんですけどfullを下げてシド視点とアンナ視点で書き直しました。
漆黒5.0終了直後の話なのでふんわりネタバレ
旅人は星を見つけるというようやく観念し、自分の想いと向き合おうとする話を書きましたのでそのあとがき。
5.0メインストーリー終了直後のお話です。
シドは旅人は奮い立たせたいで言い渡された宿題をアンナが第一世界に行っている間に解くためにネロとアンナの兄エルファーと共に命の恩人リンドウ・フウガの終の棲家へ再び訪れる話(技師は宿題を解きに行く)と妖精のイタズラで夢で繋がり話をする不思議な出来事("夢")を経て今回の話になります。
アンナ自体は"夢"で余計なことまで喋っちゃったから会いたくねー!って思ってるけどまあ報告には帰らないとだめだよね。じゃあ石の家行ったら帰る! え? ガロ社行け? ……まあ今回も別次元とはいえ助けてもらった人たちだし行かないとね……。ジェシーに挨拶して逃げようって感情でした。まあ"宿題"とやらは早々に終わり夢で逢った後も準備をしっかり先回りしているので捕まるんですけど。
アンナの新生から漆黒までのシドに対する感情を初めてしっかり公開しました。実はそのモノローグの中で書いてない話が一つだけあるのでそれもいつか出しておきたいですね。
鮮血の赤兎がアンナになって初めて出会った時から無意識に一つの星を見出して、ガルーダ戦の前には感情がバグり散らしていました。お前を助けるのはボクだ、ボクだけ見ろというのが星芒祭での話で、それからどんどん歯車が軋みオメガでのやらかしに繋がります。そして別に約束覚えてないなら隙を見て消えてもいいんじゃない? と思ってたりもしてたし人の心が理解できていませんでした。というかこれで特定の感情持ってないですは嘘だろ!? ってなるのも仕方ないです。普通は本気にされるよ。
それも全てかつて命の恩人リンドウがしていたことを真似していただけという認識なんですね。実はリンドウもそのアンナと同じ感情になってるんですけど。「私の教えは成長するごとに忘れて行き、自分の目で大切な人を見極めて全てを護る強き存在になれと言いたかった。頑なに孤独で旅をして怒りに任せて暴れるだけでなく世界を滅ぼすトリガーに利用されろとは言ってない」って感じで。手紙にそう書き残す位には後悔していました。
その想いを受け取ったシドが"宿題"の答えとして「俺はアンナが好きだ。だからお前を絶対に獣にはしない。俺はお前が最大限の力を発揮するための道を示す、星になる。だから、もう無名の旅人にならなくてもいい。アンナ・サリスとして隣に立っていてくれ。"お願い"だ」という言葉を送りました。リンドウの手紙に書かれていた『私はアンナを獣にし、人々を絶望させるために全てを教えたわけではない。アシエンの手を今からでも振りほどき星空の知識を教えた思い出と共に自由な夜空を愛してほしい』という部分から取って来たんですね。基本的に仕事相手以外には不器用だけどここまではっきりと明示されたらピンポイントにツボは押さえてくれると解釈しています。
◇
リンドウとアンナの最終的な関係。アンナからしたら命の恩人であり、師匠であり、幼い頃の初恋で、厳しいが優しい血の繋がりのない父であった人。リンドウからは全てが枯れた後に育てた娘という認識でした。というか枯れてなくても年齢差が30位あるし友人の妹に手は出せないという考えがあったり。墓参りの話のネロとエルファーの会話をカットしているので明かされてはいないのですがリンドウは度重なる"実験"により欲だけでなく生殖機能まで失い子孫を遺せなかった存在なのでアンナは本当に大切な娘として刻み込まれ、そして"継承"させてしまいました。
手紙に残されていた友人が準備した"奥の手"が"内なる存在"と呼ばれるもう一人のアンナになります。どうやって準備されたかはまた別の機会に。これが時々アンナの意識を乗っ取って今回の話に繋がって行きました。乗っ取る基準は"ダメージを一定以上喰らった時"、"気絶した時"、"ストレスが一定以上になった時"と一種の補助電源のような存在になっています。一度死にそうになってもこの"内なる存在"が動ける限りは少しだけコイツが生き永らえさせることが出来ます。しかし本体が本当に死んでしまうと体内エーテルが切れた地点でおしまい。
例としては幼少期シドと出会った時ですね。この時は凍死しかけ"内なる存在"に切り替わり、帝国兵に捕まるのだろうかと悩んでる内に偶然通りかかったシドに助けられました。その時に会話したのが"内なる存在"のアンナ。なので星芒祭の夜に再会した時の"旅人さん"も"内なる存在"が演じています。確実にシドの記憶に残すためにアンナを騙しあえてやりました。策士ですね。元のアンナが単純すぎるだけともいう。
というわけでその"内なる存在"がどう介入していたかというのを加筆修正しました。対象の作品はこちら。時系列準。
・本編前
旅人と赤色
・新生
旅人は過去を視る
・蒼天
星降る夜の奇跡の話―中―
・紅蓮
好奇心は旅人を起こす // 旅人は奮い立たせたい // 旅人は、目覚めさせる // 旅人と約束
・漆黒
旅人を闇は抱きしめる
以上。あとは差し替え以降に書いてるので省略。この辺りは確実に"ボク"になっています。見分け方はボクと"ボク"で実際喋ってる時もイントネーションが違う感じになっています。出番数的にネロだけは違和感に気付いています。シドの前に出たのは星芒祭と初夜後と検証終了直後に少々だけなのでちょっと検証材料が足りない状態。
これらに加えて漆黒の大罪喰いを全て倒した後以降ハーデス戦が終わるまで全部"内なる存在"が終わらせています。理由としては本体は内包された光の気持ち悪さにダウンしてしまい1人塞ぎ込んでしまったから。全部フラフラしながら"内なる存在"が片付けました。しかし塞ぎ込みすぎてかつては自分の中に大量に溜め込まれた闇を、今回は光を体内から排出させてくれたエメトセルクにお礼が言えず後悔しています。それに関しては「知らん」と語る"内なる存在"であった。
閑話休題。これ以降はボズヤ、ウェルリトを経てアンナによるシドを知る旅編が始まります。リンドウと別れて以降初めて人に興味を抱いたアンナはそれを知り、自分がどういう感情を抱いているかを自覚しようと努力します。シドだけではなく周りからするともうとっくに一線も越えて想いを伝えあう以外は大体終わってるのに今更何を言ってるんだと思われてますが、アンナは人の気持ちを一切理解してこなかったので考える事にしました。
というのもこれまでのアンナは徹底的に君を助けるんだやらナイスイタズラやら自分の気持ちを押し付けるようにしてたんですね。人がどう思ったか反応を見る前に立ち去るのがこのウサギでした。でもエオルゼアの人間たちは絶対にお礼を言いに来たりシドは追いかけてどういう技術使ってんだと説教したりと「何でボクに構うんだよこっち見ないでよ!」って思うようなことになっています。ばかですね。冒険者だからだよ。かわいいね。
もうくっついた後の話も何本も書いてるけど本軸もゆっくり進めたりエルファーメインのリンドウ、ア・リスという存在が色々やらかしてる話もしっかり準備はしてるので読みたい方はまたよろしくお願いします。
あ、あと初夜話なんですけどfullを下げてシド視点とアンナ視点で書き直しました。
漆黒以降の自機が子供化したギャグ概念。ここからシド光♀。
その1、その2、その3から読んでね。
罪人2人をレヴナンツトールに連れて帰る。勿論アンナはしっかりと抱いて、だ。ネロはガーロンド社へと連れて行かれる。シドは次の日にネロの部屋に置いてある荷物の類を回収する約束をし、宿にアンナを連れ込んだ。普段のアンナの仕草を見せているのに見下ろす形なのは新鮮だ。そう思いながら軽々と抱き上げると「子供扱いしない」と頬を膨らませている。
「普段俺にしてるじゃないか」
「私はいいの」
薄い身体に普段より気持ち温かいが人より冷たい体温。抱きしめてやるとアンナは頭を優しく撫でた。額に頬に、そして唇に優しく口付けるとアンナは眉間にしわを寄せた。
「ヒゲくすぐったい」
「いつも通りじゃないか」
「子供の姿だからかな。刺さる、って続行しない!」
小さくて、やわらかい。細い身体は確かに抱き心地がよかった。
「そういえばさ、シド」
「どうした?」
「―――今の私の身体、第二次性徴前」
耳元でボソリと呟かれると顔が熱くなっていく。改めて言われると恥ずかしくなる。クスクスと笑い声がした後「お風呂入って来るから、大人しくしててね」と下ろすよう床を指さした。言われるがまま解放すると部屋着を持って浴室へ駈け込んでいった。
◇
暇だ、と思いそろそろ説教も終わっているであろうネロにリンクパール通信を繋ぐ。
『あ?』
「ああネロ大丈夫か?」
『妹自慢が終わった所だ。ッたく受けるンじゃなかったぜ』
疲れ切った声が聞こえて来た。いい罰だ、優越感が勝る。
「お前の家ではアンナはどんな感じだったんだ?」
『料理は当番制で適当に本やらジャンクパーツで遊ンで寝させてただけだっつーの』
「健全だな」
『ッたりめェだろ。お前と違ってメスバブーン相手にはどうも思わねェよ』
談笑していると扉がキィと鳴る。アンナがふとこちらを見ている。ただじっと。何か手に持っているようだがよく見えない。「アンナ、どうした?」と聞くが何も言わず奥に消えて行った。首を傾げながらネロに問う。
「風呂から出たら何かしてたか?」
『ドライヤーかけてやってただけだ。家の中濡らされたくなかったンだよ。面白ェもン見れたから苦になる作業じゃなかったぜ?』
「なるほど。じゃあ一度切るからな」
ネロの答えを聞くより前に通信を切り、アンナの様子を伺いに立ち上がる。覗き込んでみるとドライヤーを手に持って四苦八苦しているようだ。使い方を教えずただやってあげてたのかとため息を吐きながらその機械を手に取る。
「あ」
「ほらやってやるから」
耳を触らないように暖かい風をかけてやる。正面にある鏡でアンナの表情はよく見えた。珍しく誰の目から見ても分かる程度にはご機嫌のようで。よっぽどこれが気に入っているのかと苦笑した。もっと早く気付いていたらとネロに対し舌打ちしていると「んー」と言いながらふにゃりと耳が垂れ下がった。
「アンナ?」
「―――へ?」
鏡で今の自分の状況を見たらしい。顔を赤くし、固まっている。耳を押さえ声が震えている。
「待って、シド、誤解。知らない」
「アンナ、髪はまだ乾いてないぞ?」
逃がさないよう固定し、頭をガシガシと撫でてやると「やーめーろー!」と抗議の声が聞こえた。動かさないように修行していると言っているくせにふとした拍子にこう垂れ下がる姿を見せる。しかしいちいち丹念に触らなくても即見れる手段ができたのは朗報だと考えた。
「スマンドライヤーの音で何も聞こえないな」
「嘘つかない! あ、じゃあやーいばーか! おーじーさーんー!」
「俺は普段のお前より半分以下の年齢だ」
「聞こえてるじゃん! 都合のいい耳だなあ!」
聞こえないと言われたら思ったより幼い悪口が飛び出し苦笑する。絶対に大人に戻ったらやらせないという恨み言が飛び出した。「それなら子供のうちにゆっくり堪能しないとな」と後先考えずに喋るアンナに感謝する。
直後、可愛らしい「みぎゃー!」という叫び声が響き渡った。やりすぎたかもしれない、一瞬その手を止める。
数十分後、少々機嫌が悪くなったアンナの機嫌取りをしようやく抱きかかえる許可がもらえた。一回り小さな頭に顎を置き、アンナが読んでいる本を眺めている。滲んだ文字が多めな東方地域のからくり装置のカタログを呼んでいるようだ。その筆跡はどこかで見たことがある気がするが思い出せない。
とりあえず程々な時間で錬金術師ギルドで何を仕込みする気満々だったのか聞きながら眠らせる。どうやら大したことをするわけでもなくただ"今後の参考"のために錬金術の勉強をしていたらしい。「嘘をつくな。蒼天街で割った煙幕の幻影だろ」とネロやヤ・シュトラからの報告内容をぶつける。すると舌打ちしそっぽを向いて無言を貫きそのまま眠っていた。戻った後、まだ残っているであろう試作品を絶対全回収しようと決心しながら目を閉じる。
◇
5日目。目が覚めると子供のままのアンナは既に着替えをし、本を読んでいた。相変わらず早起きだなと欠伸をしながら体を起こすと気が付いたようだ、「おはよ」とニコリと笑顔を見せた。
「とりあえず今日は石の家に連れて行くからな。まあ溜まった仕事を終わらせて定時で迎えに行く」
「昨日も無理やり迎えに来たし皆怒ってるんじゃないの。別にゆっくり徹夜してもいいんだよ?」
「絶対に終わらせてくるからな」
頬をギュッと引っ張った後、一緒に朝食を食べに行き石の家へ引っ張って行く。少々ばつの悪そうな顔をしながら笑顔を見せているタタルとクルルに手を引かれ、奥へと連れて行かれるところを確認した後会社へ向かう。
「会長、アンナさんは連れて来てないんですか?」
ジェシーをはじめとする人間に何度も聞かれた。石の家にいると返しながらその後ろにある子供服を隠しとけとため息を吐く。人へ過剰に関与しないアンナからするとこれが嫌だから隠れていたんだな。そう思うと結果的にはネロに頼り隠れていたのは間違っていなかったのかもしれない。なら声くらいは聞かせろとぼやくことしかできなかった。ネロのことをパパと呼び自分のことをおじさんと呼んだのも未だムカつく所がある。しかも三度も呼んだ。ジェシーに明日大人に戻っていなかったら連れて来るという条件を持ち出し、ネロへ仕事を押し付けていく。
夜、石の家に顔を出すと少し疲れた顔をしたアンナがいた。こちらに気が付くといつもの笑顔に戻り「おや特大なお仕事は?」と聞くので「"調整"してくれたからな」と笑顔を返すと舌打ちしている。とりあえずどういう意味だと小突いた。抱き上げアンナと談笑していたクルルに会釈をしその場を後にする。
外で日中何があったのか聞きながら晩飯を済ませ、ネロの部屋からアンナの荷物を回収した。大きなスーツケースに纏められている。「デカいな。頑張ればアンナが入る」と呟くと足を踏まれながら「通報」と言われたし、ネロにも「口には出すな」呆れられた。流石に実行はしないと苦笑しながら宿に運び込む。
シャワーから出て来たアンナの髪を乾かしてやり、自分も頭を冷やしがてらシャワーを浴びた。戻ると昨日とは打って変わって既に寝転びながら身体を伸ばしていた。隣に座ると少しだけジトッとした目でこちらを見る。その後何か思いついたのかのそりと起き上がり膝の上に頭を置きニィと笑った。
「もう二度とないかもしれない体験で嬉しいでしょ?」
「大人に戻ってもやればいいじゃないか」
「やだ」
膝枕はさせる方が好きなんだよと柔らかな笑みを浮かべ膝の上でゴロゴロ転がっている。長い耳が当たってくすぐったい。
「石の家で子供っぽい動きとは何かとララフェルの方々に聞いてた。だから色々と試す」
「それは口に出さない方がよかったかもしれんな」
顔に手を当てため息を吐く。アンナは唐突に腕を掴み、顔へと持って行かせた。首元を撫でてやると笑顔を見せている。
「そもそも子供とは何かという所から議論をした」
「哲学は専門外だから分からんな」
「言葉を舌足らずにとかキャーキャー喚いたりとか。でもそれ私が嫌い。だからやらない。ならば普段から可愛いララフェル先輩に聞くのが一番」
「まあ突然そんなことされたら呪術士の所に連れて行くかもな。マハで妖異にでも憑かれたかもしれんと」
「非科学的なものに頼りに行こうって思う程異常に見えるってことね、オーケーオーケー」
私が普段どういう目で見られてるかよーく分かったよと言う口に反し笑みを隠さずその指をカリと甘噛みする。
「というか自分が子供の頃と同じ感じで行けるだろう。覚えてないのか?」
「ずっと素振りしてるか部屋中イタズラの仕掛けをして女の人のお尻触ってもいいなら」
「却下だ」
忘れかけていたがアンナは当初自分が男として生まれたと思っていた。実際普段の姿で見慣れているだけで笑顔で立っていなかったら十分少年だと言われても信じる自信はある。
「とにかく子供である利点をもう少し楽しもう。これ今日のまとめ」
「それを先の4日間で気付くべきだったな」
「やだ。そんな長く好奇心の目に晒されるとか頭おかしくなる」
普段のビックリ人間ショーみたいな英雄行為はいいのかと思うが口には出さないでおく。
それから適当に子供とはどういうものなのかという話を交わし眠った。
◇
6日目。いつもより早起きしたが既にアンナも起床していた。柔軟運動をしている姿はまだ子供のままだ。少しだけ安堵している自分を叱咤しながら身体を起こす。
「もっとゆっくり眠っててもいいんだぞ?」
「ホー今日は早い。……習慣だし。どうせ寝起きの姿見たいだけでしょ?」
「そうかもしれん」
やっぱりと言いながらこちらに近付き口付けた。今日は社に連れて行くからなと言うと一瞬笑顔が引きつっていたが即平静を装っていた。「そこまで酷いことはならんさ、多分」と言ってやると「だといいけどねえ」とアンナは苦笑した。
子供になったアンナの姿を見るや否や飛びついて行く老若男女問わない社員たち。ヒッという声を上げながら逃げることもかなわず捕まり奥へと連れて行かれた。その中には旅人服を着たレフがいる。どさくさに紛れて何やっているんだと思いながらネロに事情を聞く。すると「そういう体でいるために昨日休暇をもぎ取ったんだぜ? ただのアホだろ」と返された。あの男は意地でもちゃんと模範的な生活を送る護人であるという所を妹にだけは見せたいらしい。偶然にしてもここにいるのはどう考えてもおかしいだろと言いたかったが多分アンナは信じるだろう。それ位兄は嘘をつかない規律的な人間だと思っているからだ。実際は護人時代から黙って抜け出して興味関心を満たしたり、既に自分勝手な理由で離婚して里とも断絶している生粋のシスコンなのだが。
「蒼天街でファットキャットのパーカー着てたっつーと滅茶苦茶目を輝かせた奴らがいてな」
「お前絶対それアンナが話して欲しくなかったやつじゃ」
「ケッ散々迷惑かけられたンだ。アレ見てちょっと清々したぜ」
ミギャーという叫び声が聞こえる。あの声は不味い。流石に戻った後の荒みっぷりが想像できないので小走りで止めに行くことにした。
「おいおい止めに行くのか?」
「このままじゃ戻った後今回の錬金薬を量産して社内にぶちまけて大パニックにするぞ」
「アー"あっち"が絡んだらやりそうだな」
あっちという表現はよく分からないが程々にしとけと小部屋に行く。そこには髪を赤く染め、ウィスパーファインウールを着せられたアンナがいた。
「シド! に、兄さんにまで裏切られたし、社員教育はどうなってるんだ!」
「え、あ、似合うな?」
「ちがーう! このぉ……エロオヤジ!」
「あ、それは減給がやば。ゴホン! ……よーし妹よ! 兄と彼らのお仕事の邪魔にならないようにお出かけするか! な!」
「ずるいぞ!」
「マスコットとして置きなさいよ!」
「どこぞの会長クンの顔を見てから言う! ほら妹よ行くぞー」
「んー体鈍ってるから運動したいな」
「ああ久々に組み手でもしよう」
並ぶ姿を見ると確かに兄妹だ。なぜかパワーアップした罵倒を放ち、一瞬こっちを見やりくるりと回る姿が非常に可愛く周辺からも歓声が上がった。明らかに煽ってる姿に歯を食いしばりそのまま兄に引っ張られていく姿を見送る。覚えてろと思いながら早々に仕事を終わらせようと書類に向き合う。
◇
何とか仕事を終わらせレヴナンツトール中を歩き回っていた兄妹を捕まえ回収した。兄からの視線がとても痛かったが無視し連れ帰る。
「兄とはどういう話をしたんだ?」
「別に? いきなり会っても何話したらいいか分からないし……。故郷でヤることが終わってよかったって話と。ご飯食べて、街の中歩き回って色々買い物して、あとは郊外で組み手した」
里にいた頃思い出して楽しかったと笑顔で言う姿にため息を吐き頭を撫でてやる。3日程度ほぼ室内でのんびりしていたから身体を動かせて満足しているようだ。その辺りを汲んで付き合ったのなら兄は本当に有能な人間だなと思う。どうせ言われるがまま遊んでやっただけだろうが。
現在は汗をかいたからとシャワーを浴びに行っている。髪は赤いままで「戻ったら美容師にお願いする」とぶっきらぼうな顔で言っていた。個人的にはこれが本当のアンナの幼少時代の姿かと思うと少々興奮してしまう。そんなこと言ったらまた子供相手に云々と言われるので心の中にしまっておいた。
カタンという音が聞こえ振り向くとこちらに顔を覗かせている姿が見えた。多分ドライヤーかけろという合図なのだろう。しかしあえて無視してやると下着一枚でこちらでやってきてヒゲを引っ張る。
「いたた」
「ド・ラ・イ・ヤー」
「分かった分かった」
もうやらせんと言ったくせにワガママな子供である。素直に引っ張られてやり耳が垂れ下がる姿を見ながらドライヤーをかけてやった。「戻った後のためにやり方、教えて」と言われたが無視し髪をグシャグシャとかき回してやる。「ケチ!」という言葉に笑い終わった後は抱きしめてやる。再び耳を硬く立たせようとするので妨害するために優しく撫でまわし甘噛みしてやった。
「あーもー邪魔しない!」
「勿体ないからな」
抱き上げベッドまで運ぶ。「服は着ないのか?」と聞くと「そろそろ戻りそうな予感がしてねえ」と言いながらも風邪ひくからと布団を被る。
「ほら君もシャワー浴びてきなよ。汗臭い」
そっぽを向き手を振った。大人しく言う通りにすることにする。シャワーから出るともう既に眠っていたのでそのまま隣に倒れ抱き寄せながら眠りにつく。
◇
早朝、シドはふと腕がずしりと重くなり薄目を開いた。目の前には"いつものアンナ"がいた。そろそろ戻るような予感がしたという彼女の予想は当たっていたらしい。くすりと笑いが漏れてしまった。今すぐにでも抱きしめようと思ったがぐっと我慢をし、目覚めるのを待つ。
更に1時間もしない頃、多分いつもの起床時間なのだろう、アンナが起き上がり「あ」という声が聞こえた。「よし」という声も漏れ嬉しそうだ。「起きる前に撤退しよっと」と呟きながらそろりと寝台から離れようとしたので腕を掴んでやる。
「げぇっ」
「何がげ、だ。どこに行くつもりだ?」
「いや、ほら、もう起床時間で日課をこなさなければ、ね?」
「戻った直後にいきなり大量にタスクを課すのは身体への負荷が半端ないと思うんだが?」
ニコリと笑顔を見せ合う。こちらはここ数日の子供な言動と蛮行に我慢してきたのだ、そのまま行かせるわけにはいかない。しばらく沈黙が流れたがアンナが動き出す前に力いっぱいベッドへと引き摺り込んだ―――。
◇
「ネロサン、迷惑をかけた」
「なンだお前戻ったのか。結局1週間位かかっちまってたな」
夕方、ガーロンド社にフラフラと髪を黒く染め直したアンナが現れる。戻ったんですねというすれ違う人に会釈をしながらネロを見つけ手に持った袋を渡す。中を見ると菓子、迷惑料と書かれた袋、そして冊子が1冊入っていた。パラパラと捲るといくつか走り書きされた図面たち。「何だこれ?」と聞くと「さあ? どう使うかはご自由に」とニィと笑う。見たことのない魔法人形に、奇妙な小銃のようなもの、先日渡された煙幕の幻影関係のデータも入っている。
「"ボク"の体は重役出勤したであろう人間の説教で疲れてるんでね、失礼するよ」
「……アー」
昼の出来事を思い出す。早朝社員に突然遅刻すると連絡を寄越したシドは昼に機嫌よく出勤した。それから部屋に篭らされ書類に埋まっているが嫌そうな顔一つ見せない。ジェシーも「ねえ今日の会長怖すぎない?」と引いていた風景を半笑いで眺めた。
「戻ったのは早朝。それから説教に重なる説教でボクはダウン。でもちゃんと戻った件はなるべく早急に報告しないといけないからね。何とか"ボク"が身体を起こして錬金術師ギルドと暁に顔を出してきたのさ」
「ハァそりゃお疲れさまなこって」
それじゃシドに会う前に帰る、と踵を返し、手を振りながら去って行った。
「"ボク"は何が起こっていたのか分からないんだけどねぇ。とりあえずは教訓だ。錬金薬の扱いは慎重に。イヒヒッ」
空を見上げ伸びをする。なまった身体をまずは程よい運動でリハビリしよう、アンナはテレポを唱え、どこかへ飛んだ―――。
-終わり-
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#シド光♀ #ギャグ