FF14の二次創作置き場

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No.38

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―――魔導城プラエトリウム以前、あの旅人には数度会った事がある。その中でも異質だ…

本編前

#ネロ #即興SS

本編前

旅人と赤色

―――魔導城プラエトリウム以前、あの旅人には数度会った事がある。その中でも異質だったグリダニア入りする前の彼女を語っておこうと思う

1.高地ラノシアより

 あの頃、オレはエーテル計測のために独断でエオルゼアに潜入していた。今回は高地ラノシアでタイタンのエーテル計測に洒落込もうと1人森の中で計測装置と睨み合っている。エオルゼアでは敵視されるであろう第三の眼を隠すため仮面を被り行動していたのもあり少々視界が狭い。それを補う手は持っていたのであってないようなものだが。とにかく手に持った端末でエーテル観測装置動きを見る。
 急にエーテル反応が激しく上下し、興奮した。どこから来ているモノなのか、タイタンと関係してるのか? いやあの小さき蛮族たちにはまだ召喚できるほどの余裕はないハズだ。未知の発見に大人げなく目を輝かせていたらやらかした。いつの間にかコボルド族に囲まれ俺はため息を吐く。
 別にコイツらくらい即追っ払える。いつものハンマーは持って来ていないが、小型ガンブレードを取り出そうとニィと笑いながら懐に手を突っ込もうと瞬間だった。観測装置が何やらブザーを鳴らし、端末で映し出していたデータがぐわんと動いたのだ。どういうことだ、と思った瞬間だった。

 オレの前にヒトが降って来た。

 赤色の髪、長い耳。鋭い"銀色"の目にすらりと高い背丈はオレと同じくらいだろう。長い耳を含めたらアウラ族の男と同じくらいには大きい。聞いたことがある。オサードの方に住むヴィエラ族。急に天に向かい矢を打ち放ちオレに「伏せな」と一言。その異質な声に一瞬鳥肌が立った。これは殺意、それも目の前の女から。オレは反射的に地面に伏せた。更に腕を掴みながら抱き寄せられた瞬間、頭上が風を切った。先程まで自分がいた場所に大量の矢が落ちる。

 コボルド族の叫び声を皮切りに、断続的に何かが落ちてくる音が聞こえた。

「いいよ」

 と朗らかな声が聞こえ、細い肢体から離れながら顔を上げると周りに散乱した矢、そしてコボルド族の死体。うめき声も聞こえる。仲間を見捨てて逃げ行くヤツもいた。
 目の前でそのヴィエラは「恨むならあの男じゃなくて、"私"」と言いながら笑顔で致命傷を負ったコボルド族にトドメを刺す。ヒュ、と喉が鳴った。観測装置をチラりと眺めるといつの間にか何事もなく推移していた。



「ケガはない?」
「あ、ああ」
「よかった」

 一頻り作業が終わったのかオレのところにヴィエラが駆け寄ってくる。優しい"銀色"の目が細められた。

「騒ぎ声が聞こえて木の上から確認したらあなたが蛮族に囲まれてたから乱入してみたさ」
「あ、ありがとナ?」

 引きつった笑顔でとりあえず礼を言う。会話は出来るらしい。ひとまず安堵するがあのパワーがどこから出て来ているのか分からなかった。
 健康的な褐色の肌に引き締まった筋肉、男とは異なる柔らかそうなそこらの女より豊満であろう胸。背面を隠すマントの下に見える民族衣装の特徴的にもオンナだと分かるが理解を拒む。

「あ、"私"は通りすがりの旅人、あなたも……旅人だな?」
「まあ異国から来たからオマエと一緒ってやつか」
「そう。だから名乗り合わず一期一会って所。ああ仮面も外さなくて構わない。"この子"は興味ないだろうから」
「怪我をしているもンでな。助かるぜ」
「そう。最近蛮族やモンスターが騒がしいから気を付けてな」   

 オンナは踵を返し手を振る。

「じゃ、逃げたあなたを襲ったコボルド族のトドメ刺しておいてやるから。あまり知られたくないでしょう? イヒヒッ」

 逃げて行った奴らの方向へ走って行った。その後俺は汗が噴き出し座り込んだ。手の震えを止めようと端末のログを見つめた。
 あんなまとまった殺意を隣で受けたのだ。ビビるに決まってンだろ。だが当時のオレにとっては一つの興味も湧いてしまったのだ。

「面白ェ玩具を見つけたぜ」

 当時のオレを殴りたい。あンなヤツに興味持った地点でオレは終わってンだよ。
 でたらめに撃ち上げた矢と回し蹴りだけで小型生物であれ笑顔で生き物を殺せる人間を扱えるヤツがいるわけがないじゃねェか。

2.戻ってこない

 俺はとりあえず何人かに金を握らせてそのヴィエラの情報を集めた。名前はすぐに分かった。『アンナ・サリス』、第七霊災以降エオルゼア周辺に現れた『旅人』らしい。困ったことはないかと声をかけ、牧畜の手伝いからモンスター討伐まで大体のことは何でもやってもらえるのだという。加えて報酬は現金でなく食事や泊まる場所の提供でいいというお人好しだとか。
 よく分かんねェヤツだった。あんな軍人でもある自分が本能的にやべェとなる旅人が存在するわけがないだろと平和な脳みそのやつらだとため息を吐く。
 また調べたら冒険者として登録もされていない本当にフリーの旅人というわけで。いや絶対どこかで雇われた傭兵とかスパイだろ? そうだと言って欲しかった。
 じゃなければアレは、山から下りてきた危険生物か災害の擬人化だ。
 しかし気になったこともある。金を握らせた情報屋たちが日を重ねるごとに来なくなった。持ち逃げされたのか? とその時は思ったが、オレはある時とンでもない話を通りすがった衛兵の話が聞こえたのだ。「最近よく情報屋の死体が上がるな」、と。
 詳細を聞くべきか衛兵に声をかけようとした瞬間肩を叩かれた。一瞬風がざわめき心臓が止まりそうになりながらも振り向くとそこには、あのヴィエラがいた。"赤色"の目を細め、会釈する。

「こんにちは」
「お、おう」
「いい天気だね」
「そうだな」

 しばらくこの調子で他愛のない話が続く。この辺りのおいしかった食べ物の話や、特産物の話。グリダニアに行きたいんだけどねと漏らした女に大体の方向を指さしたりもした。

「うん、あなたではなさそう。じゃ」

 と一頻り話をした後軽やかなステップで去って行ったのであった。そしてボソと無機質な小さな声が俺の心臓を掴んだことを覚えている。

「この辺りで合流するって口を割ったんだけどなあ」

 振り向くがそこには誰も、いなかった。
 アイツが殺せるのはモンスターだけではない。人も、あの笑顔で、手にかけることができる。
 アレをもし閣下の元に持って行ったらどうなるだろうか。いや、忠実に人の言うことを聞くオンナには見えない。それ以前にアレを、誰にも渡したくない。当時のオレはそンな下らないことを考えていた。異性としての感情ではない。ただ、今復元しようとしている旧い技術と並ぶ"奥の手"として欲するようになったのだ。
 あの時のオレに言いたいことがある。やめておけ。鮮血の赤兎に、殺されかけるぞ。



 というのがあのオンナがグリダニアに辿り着く前の話ってやつだ。今や髪色を変え性格も柔らかく見せガーロンドの野郎に懐くバカウサギになっている。
 未だ底を見せないあのオンナのバケモノスペックを前によくデレデレ出来るもンだ。
 練度が低かったとはいえ小型のカストルムを1時間経たずに1人で殲滅させる実力を持つバカがオンナなわけがねェだろ。隠蔽したこっちの身にもなれって話だ。

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