FF14の二次創作置き場
更新履歴
- 2024/11/26 旅人は魔導兵器を識りたい 新生
- 2024/11/19 "召し上がれ&quo… 新生
- 2024/11/15 溶けあうもの 紅蓮
- 2024/11/11 "11月11日&qu… 蒼天
- 2024/10/18 "嫉妬"、… 漆黒,
No.81, No.80, No.78, No.77, No.74, No.72, No.71[7件]
頻繁に出る設定、キーワード
注意
暁月までネタバレ有り
リンドウ・フウガ
アンナの命の恩人であり、初恋であり、呪いでもあったエレゼンとガレアンのハーフ。かつて生み出した技を幼いアンナに教えた際、体内エーテルを急激に消費させてしまった。彼女が死にかけていた所、友人の技術を使って自らを"継承"させ、息を吹き返させる。
かつて父はガレマール共和国で誕生し、リーパーとして鎌を振るっていたが、生活苦によりドマへ亡命した。亡命中行き倒れそうになったところで呪術師の旅人だった女性と結婚し、息子リンドウは誕生した。後に母親の故郷で出会った女性と結婚することになる。
強くなるために数々の武器や魔法に対しての豊富な知識を持っていた。しかし、父親の影響によりエーテル操作は不得意であった。そのため代替技術を探す旅をした結果ラザハンに辿り着く。錬金術の概念として存在した"アーカーシャ"に注目した。それを表層化させる技術を友人2人が理論を作り出した後リンドウの体で実験を行う。結果は成功し、エーテルを用いず自らの強く想う心、負の感情を刀身に纏わせ全てを斬り伏せる"奥義"を会得した。だが、副産物として想いの力を作用させ異常な怪力や体力も制御するようになるバケモノと化す。その力を人のために使うべくドマに戻り旅をした。だが英雄だと囃し立てる一方で恐れられ刺客を差し向けられる生活に嫌気がさしていく。それに加え、自分よりも遥かに大きい妖異を一発で斬り伏せる等圧倒的すぎる自分の力を目の当たりにしたリンドウは、少しでも人間に見せるために"無名の旅人"と名乗り人助けをしながらも誰かに介入するという行為をやめた。
友人の1人が妹が誕生したという報を受け3人の奇妙な旅は終わる。だが、リンドウと3人目の男ア・リス・ティアは経過観察という名の交流は続けていた。
行き倒れていた所を助けてやったアンナとは約20年共に旅をし、自分の持つ全てを継承させた。それは絶対に死なさない、茨の道へと突っ込ませてしまった罪悪感から起こした行動である。森を懐かしんでいるが故郷に帰りたいわけではなかったアンナのためにエオルゼアへの舟券を与え旅に出したが、水難事故で行方不明になったことを知る。多大に後悔し、苦しんでいたが訪れたアリスにより死んではいないことを彼女の命を示す"発信機"を渡された。その後、彼女が自分よりも先に死なないよう祈る旅を続けたが長年の無理が祟り倒れてしまう。
意気消沈したまま故郷の村へ戻った。そこで献身的に治療してくれた病気で旦那に先立たれ既に子供もいた女性と結婚。手に入れた小さな幸せにより少しだけ元気になり離れの山に家を建て、療養生活を送ることになる。
ある夜、その住処に1人の男が訪ねて来た。第三の眼を持った猫背で金目の黒い男によって語られた話によりショックを受けてしまう。それはバケモノと化しかけたかつての唯一の弟子と、自らの正体、これからその力を利用し滅ぼされる世界の真実。信じるに値しない話だと思った。だが、大切にしていた絵画を"魔法"で複製して見せたありえない行為と苦しめようと締め上げるエーテルに現実だと思わされた。そこで提示された約束は『いずれ貴様の大切な弟子をここに訪れさせるしもうすぐ尽きる命を無事冥府へと送り届けてやろう』、『だから指をくわえて何もせずここで最期を迎えろ』というもの。せめて愛する人やその周辺を護りたかったリンドウは『この場所を、戦地にするのはやめろ』と言いながらその手を握ることしかできなかった。
数年後、ドマが占領されたが自分の住処と家族が住む村には一切の被害はなかった。守られてしまった約束と、アンナに対する後悔を抱ることになった。その後、ドマ侵略から3年後、家族と同じく年老いたア・リスに看取られ生涯を閉じる。享年89歳。
ア・リス・ティア
リンドウが欲した力を理論化させ、アンナにリンドウを"継承"させたマッドサイエンティストなミコッテ。
かつて恋人と幸せに暮らしていたが事故により失い心が壊れてしまった。蘇らせるための技術を探し、数々の過去の文明を荒らしまわる。偶然錬金術で人を蘇らせることができるという噂を聞きラザハンに訪れていた所にリンドウともう1人に出会った。そこで錬金術の概念の話を聞いたアリスは蘇生よりも面白そうな"新たな技術"にのめり込んでいく。これまで集めた技術とリンドウ自身の技量と精神力で新たな理論を作り出した。
3人別れた後もリンドウとは会い続けていた。もう1人と交流が途絶えたのは森に帰ったので連絡が付かなかったからである。その傍らアラグ文明のクローン技術に興味を示していたので数々の資料や重要そうな装置を持ち逃げした。
ある日容体確認のために数年ぶりに会いに行くと衰弱しきった少女にただただ謝罪するリンドウの姿があった。詳しく聞くと自分たちが作った技術の一部を教えると一瞬で習得し倒れてしまったという。持っていた装置で確認すると、その少女は体内エーテルが異常に少なかった。状況を見るに、アーカーシャを用いる所を体内エーテルで代用し再現した行為が原因。このままでは死んでしまうだろうと告げた。『どんな手を用いてもいいからこの子を死なせないでくれ』というリンドウの声に、かつて俺たちで作り上げた技術を彼女に施せばいいと提案する。別れた後も科学的に説明できない未知の理論を研究し、"比較的"リスクを減らした発展形を作り上げていた。だがそれに耐えうる存在が未だに見つからなかったので丁度いい。それに加えリンドウのエーテルがあればそのまま"継承"させることもできる可能性が高いだろう。リンドウは最初こそ反対したが時間がないことを悟ると重い腰を上げアンナの命を繋ぐ。エーテル制御の装置をいくつか渡し、最低限死なないように立ち回る指導をリンドウと共に行った。
いつの間にかには恋人なんてもうどうでもいいと思っていた。既知の技術を探るより未知の技術を作り出すことに喜びを見出した彼はかつて漁ったデータをトームストーン3つに分散させ、リンドウとアンナで共有する。本当は3人目の友人でありアンナの兄エルファーに渡したかったが会える気がしなかったのでアンナに託す。当時のアンナはリンドウとお揃いのものが手に入ったと喜んだ。結局彼女には自分の身体がどうなってしまっているか等一切教えなかった。
その後アンナが死んだと落ち込むリンドウに彼女を示す"発信機"を渡す。それは2人の変質したエーテル反応を視覚化させる機械である。それを大切そうに握り締める姿を見てア・リスは「俺たちも年を取ったな」と苦笑した。
リンドウの死に目を確認した後、表舞台から消え去った。彼の抱えた"真実"をあと1つのトームストーンに込めながら―――。
"気迫"
リンドウ、ア・リス、エルファーが作り出した新たな"理論"を用いた必殺技。またの名を"奥義:流星"、"シハーブ"。各々呼び名が異なっている。
木の棒1本でもあれば妖刀のように光り輝き全てを斬り捨てる。振り下ろす刀身の軌跡が流星のように見えたためア・リスとエルファーはそう名付けていた。
大切な人を想う力に満ちると青白く光り、負の感情に満ちると赤く光る。意志が強ければ強いほどその力は強大となった。かつてアンナはアーカーシャではなくエーテルで再現し体に大きな負荷をかけてしまう。だが、ア・リスに施された"手術"によりリンドウと同じ力を得るようになった。しかし、大切な人とは何か理解できなかった彼女は人々の恨みを吸収しながら終末の獣のような現象に陥ってしまう。それを救ったのが何も知らなかったエメトセルクだった。
エオルゼアに辿り着いてからは不慣れな武器を使い隠していた。だが、無意識に魔導城プラエトリウムのアルテマウェポン戦にて赤黒く輝かせる。その後、トールダンやゼノスにも失った者達に対する負の感情に塗りつぶされながら斬り払った。しかしオメガとの最終決戦にてシドの前で意識的に"弱き人間の想いの力"という例として発現させるとそれは青白く輝いた。それは初めて無意識だが明確的に"シドを護る"という想いに応えた力となる。
圧倒的な力を行使できるようになるが、副作用として自分に向けられた感情を敏感に感じ取れるようになってしまう。好意も悪意も全て首筋に伝わっていくとこの技を得た人間は語った。
アンナの身体の秘密
ア・リスの手術により元のフレイヤ・エルダスとは全く別の存在に変わっていた。リンドウが40年以上費やして身に付けた技術や知識とエーテルで補われている。背中の傷が残り続けているのもその手術の影響だった。その後、負の感情が魂にまで纏わりついたところをエメトセルクが引き剥がし、変質されないよう保護されている。
エルファーやヤ・シュトラが称した『奥底に闇の杭が打たれ、何者かの手によってエーテル、というより魂そのものに操作を施されたような形跡』とは前者はア・リス後者はエメトセルクが行ったもの。闇の杭はエメトセルクが覗いた時にはもう施されており、それに自分のエーテルを混ぜ込んだ。
重い物を持ち上げたり身体能力が高いのも想いの力の無駄遣い。マンダウィル家と一緒。
"東方風雅録"
ガレマール帝国がドマ侵略を行った後に出版された東方地域に伝わる伝説の英雄の話。"龍殺しのリンドウ"とその弟子ザクロの旅の記録が綴られた大衆向け冒険小説。舞台化もされ、彼の奥義とされる光の刀身は公演によって日替わりで目玉の一つにされていた。
その影響でリンドウの終の棲家があるとされた村に毎日帝国兵が墓参りに訪れていた所を目撃されている。お供え物として持って来られる金品、ゆっくり滞在するための最新の魔導機械が導入された宿が作られた。それにより山奥でありながらも生活が苦にならない独自の文化が形成された村となっている。いつの間にか伝説になったリンドウにとっていいことなのかは、知る術はない。
なお周辺には飛空艇を停泊させる場所が存在しない。石碑周辺は上空から住処を発見することが出来ない不思議な結界が張られているという都市伝説が囁かれている。実際はリンドウの家にジャミング、カモフラージュさせる装置が設置されていただけなのだが。
暁月までネタバレ有り
リンドウ・フウガ
アンナの命の恩人であり、初恋であり、呪いでもあったエレゼンとガレアンのハーフ。かつて生み出した技を幼いアンナに教えた際、体内エーテルを急激に消費させてしまった。彼女が死にかけていた所、友人の技術を使って自らを"継承"させ、息を吹き返させる。
かつて父はガレマール共和国で誕生し、リーパーとして鎌を振るっていたが、生活苦によりドマへ亡命した。亡命中行き倒れそうになったところで呪術師の旅人だった女性と結婚し、息子リンドウは誕生した。後に母親の故郷で出会った女性と結婚することになる。
強くなるために数々の武器や魔法に対しての豊富な知識を持っていた。しかし、父親の影響によりエーテル操作は不得意であった。そのため代替技術を探す旅をした結果ラザハンに辿り着く。錬金術の概念として存在した"アーカーシャ"に注目した。それを表層化させる技術を友人2人が理論を作り出した後リンドウの体で実験を行う。結果は成功し、エーテルを用いず自らの強く想う心、負の感情を刀身に纏わせ全てを斬り伏せる"奥義"を会得した。だが、副産物として想いの力を作用させ異常な怪力や体力も制御するようになるバケモノと化す。その力を人のために使うべくドマに戻り旅をした。だが英雄だと囃し立てる一方で恐れられ刺客を差し向けられる生活に嫌気がさしていく。それに加え、自分よりも遥かに大きい妖異を一発で斬り伏せる等圧倒的すぎる自分の力を目の当たりにしたリンドウは、少しでも人間に見せるために"無名の旅人"と名乗り人助けをしながらも誰かに介入するという行為をやめた。
友人の1人が妹が誕生したという報を受け3人の奇妙な旅は終わる。だが、リンドウと3人目の男ア・リス・ティアは経過観察という名の交流は続けていた。
行き倒れていた所を助けてやったアンナとは約20年共に旅をし、自分の持つ全てを継承させた。それは絶対に死なさない、茨の道へと突っ込ませてしまった罪悪感から起こした行動である。森を懐かしんでいるが故郷に帰りたいわけではなかったアンナのためにエオルゼアへの舟券を与え旅に出したが、水難事故で行方不明になったことを知る。多大に後悔し、苦しんでいたが訪れたアリスにより死んではいないことを彼女の命を示す"発信機"を渡された。その後、彼女が自分よりも先に死なないよう祈る旅を続けたが長年の無理が祟り倒れてしまう。
意気消沈したまま故郷の村へ戻った。そこで献身的に治療してくれた病気で旦那に先立たれ既に子供もいた女性と結婚。手に入れた小さな幸せにより少しだけ元気になり離れの山に家を建て、療養生活を送ることになる。
ある夜、その住処に1人の男が訪ねて来た。第三の眼を持った猫背で金目の黒い男によって語られた話によりショックを受けてしまう。それはバケモノと化しかけたかつての唯一の弟子と、自らの正体、これからその力を利用し滅ぼされる世界の真実。信じるに値しない話だと思った。だが、大切にしていた絵画を"魔法"で複製して見せたありえない行為と苦しめようと締め上げるエーテルに現実だと思わされた。そこで提示された約束は『いずれ貴様の大切な弟子をここに訪れさせるしもうすぐ尽きる命を無事冥府へと送り届けてやろう』、『だから指をくわえて何もせずここで最期を迎えろ』というもの。せめて愛する人やその周辺を護りたかったリンドウは『この場所を、戦地にするのはやめろ』と言いながらその手を握ることしかできなかった。
数年後、ドマが占領されたが自分の住処と家族が住む村には一切の被害はなかった。守られてしまった約束と、アンナに対する後悔を抱ることになった。その後、ドマ侵略から3年後、家族と同じく年老いたア・リスに看取られ生涯を閉じる。享年89歳。
ア・リス・ティア
リンドウが欲した力を理論化させ、アンナにリンドウを"継承"させたマッドサイエンティストなミコッテ。
かつて恋人と幸せに暮らしていたが事故により失い心が壊れてしまった。蘇らせるための技術を探し、数々の過去の文明を荒らしまわる。偶然錬金術で人を蘇らせることができるという噂を聞きラザハンに訪れていた所にリンドウともう1人に出会った。そこで錬金術の概念の話を聞いたアリスは蘇生よりも面白そうな"新たな技術"にのめり込んでいく。これまで集めた技術とリンドウ自身の技量と精神力で新たな理論を作り出した。
3人別れた後もリンドウとは会い続けていた。もう1人と交流が途絶えたのは森に帰ったので連絡が付かなかったからである。その傍らアラグ文明のクローン技術に興味を示していたので数々の資料や重要そうな装置を持ち逃げした。
ある日容体確認のために数年ぶりに会いに行くと衰弱しきった少女にただただ謝罪するリンドウの姿があった。詳しく聞くと自分たちが作った技術の一部を教えると一瞬で習得し倒れてしまったという。持っていた装置で確認すると、その少女は体内エーテルが異常に少なかった。状況を見るに、アーカーシャを用いる所を体内エーテルで代用し再現した行為が原因。このままでは死んでしまうだろうと告げた。『どんな手を用いてもいいからこの子を死なせないでくれ』というリンドウの声に、かつて俺たちで作り上げた技術を彼女に施せばいいと提案する。別れた後も科学的に説明できない未知の理論を研究し、"比較的"リスクを減らした発展形を作り上げていた。だがそれに耐えうる存在が未だに見つからなかったので丁度いい。それに加えリンドウのエーテルがあればそのまま"継承"させることもできる可能性が高いだろう。リンドウは最初こそ反対したが時間がないことを悟ると重い腰を上げアンナの命を繋ぐ。エーテル制御の装置をいくつか渡し、最低限死なないように立ち回る指導をリンドウと共に行った。
いつの間にかには恋人なんてもうどうでもいいと思っていた。既知の技術を探るより未知の技術を作り出すことに喜びを見出した彼はかつて漁ったデータをトームストーン3つに分散させ、リンドウとアンナで共有する。本当は3人目の友人でありアンナの兄エルファーに渡したかったが会える気がしなかったのでアンナに託す。当時のアンナはリンドウとお揃いのものが手に入ったと喜んだ。結局彼女には自分の身体がどうなってしまっているか等一切教えなかった。
その後アンナが死んだと落ち込むリンドウに彼女を示す"発信機"を渡す。それは2人の変質したエーテル反応を視覚化させる機械である。それを大切そうに握り締める姿を見てア・リスは「俺たちも年を取ったな」と苦笑した。
リンドウの死に目を確認した後、表舞台から消え去った。彼の抱えた"真実"をあと1つのトームストーンに込めながら―――。
"気迫"
リンドウ、ア・リス、エルファーが作り出した新たな"理論"を用いた必殺技。またの名を"奥義:流星"、"シハーブ"。各々呼び名が異なっている。
木の棒1本でもあれば妖刀のように光り輝き全てを斬り捨てる。振り下ろす刀身の軌跡が流星のように見えたためア・リスとエルファーはそう名付けていた。
大切な人を想う力に満ちると青白く光り、負の感情に満ちると赤く光る。意志が強ければ強いほどその力は強大となった。かつてアンナはアーカーシャではなくエーテルで再現し体に大きな負荷をかけてしまう。だが、ア・リスに施された"手術"によりリンドウと同じ力を得るようになった。しかし、大切な人とは何か理解できなかった彼女は人々の恨みを吸収しながら終末の獣のような現象に陥ってしまう。それを救ったのが何も知らなかったエメトセルクだった。
エオルゼアに辿り着いてからは不慣れな武器を使い隠していた。だが、無意識に魔導城プラエトリウムのアルテマウェポン戦にて赤黒く輝かせる。その後、トールダンやゼノスにも失った者達に対する負の感情に塗りつぶされながら斬り払った。しかしオメガとの最終決戦にてシドの前で意識的に"弱き人間の想いの力"という例として発現させるとそれは青白く輝いた。それは初めて無意識だが明確的に"シドを護る"という想いに応えた力となる。
圧倒的な力を行使できるようになるが、副作用として自分に向けられた感情を敏感に感じ取れるようになってしまう。好意も悪意も全て首筋に伝わっていくとこの技を得た人間は語った。
アンナの身体の秘密
ア・リスの手術により元のフレイヤ・エルダスとは全く別の存在に変わっていた。リンドウが40年以上費やして身に付けた技術や知識とエーテルで補われている。背中の傷が残り続けているのもその手術の影響だった。その後、負の感情が魂にまで纏わりついたところをエメトセルクが引き剥がし、変質されないよう保護されている。
エルファーやヤ・シュトラが称した『奥底に闇の杭が打たれ、何者かの手によってエーテル、というより魂そのものに操作を施されたような形跡』とは前者はア・リス後者はエメトセルクが行ったもの。闇の杭はエメトセルクが覗いた時にはもう施されており、それに自分のエーテルを混ぜ込んだ。
重い物を持ち上げたり身体能力が高いのも想いの力の無駄遣い。マンダウィル家と一緒。
"東方風雅録"
ガレマール帝国がドマ侵略を行った後に出版された東方地域に伝わる伝説の英雄の話。"龍殺しのリンドウ"とその弟子ザクロの旅の記録が綴られた大衆向け冒険小説。舞台化もされ、彼の奥義とされる光の刀身は公演によって日替わりで目玉の一つにされていた。
その影響でリンドウの終の棲家があるとされた村に毎日帝国兵が墓参りに訪れていた所を目撃されている。お供え物として持って来られる金品、ゆっくり滞在するための最新の魔導機械が導入された宿が作られた。それにより山奥でありながらも生活が苦にならない独自の文化が形成された村となっている。いつの間にか伝説になったリンドウにとっていいことなのかは、知る術はない。
なお周辺には飛空艇を停泊させる場所が存在しない。石碑周辺は上空から住処を発見することが出来ない不思議な結界が張られているという都市伝説が囁かれている。実際はリンドウの家にジャミング、カモフラージュさせる装置が設置されていただけなのだが。
"耳"
「だから触るな!」
「いいじゃないか」
アンナは壁に追いやられながら威嚇するがシドはどこ吹く風かと手を伸ばしている。眉間に皴を寄せながら必死にその手を握りしめ抵抗した。
そう、アンナは耳を優しく触れられる行為に対して非常に弱く、"シドに"触られるとほぼ"終わり"となる。なので手段を選ばず何としても手を出すシドと度々小競り合いが起こった。今回は仕事疲れで戻って来たシドが癒してほしいと言うので、"多少の"スキンシップを許可した所まではいい。しばらく首や顎、頬を撫でまわしていたが突然耳に手をかけようとしたので、耳だけはやめろと拒否する。
「触ってもいいってさっき言ってたじゃないか」
「してない。許可した個所は顔」
「頭部の一部じゃないか」
かすってない! とシドの両手を片手で掴みながら額のゴーグルを外し指さす。
「あなた以前第三の眼で遊ぶの拒否したでしょ?」
「お前のパワーで何かされたら命の危機だろ」
「失礼な。耳だって命の危機と隣り合う器官」
「力加減位できるさ」
埒が明かない。他の話題を探して有耶無耶にするかとアンナは判断し、床に転がす。今回はきちんと受け身を取ったようだ。胸板の上に乗り腕を押さえる。
「誘ってるのか?」
「違う」
「お前知ってるぞ、以前人に触らせてただろ耳」
どこから話が漏れたんだとアンナはため息を吐く。グ・ラハとレヴナンツトールを歩いていると通りすがりの子供が声をかけて来た。ヴィエラが珍しかったのか長い耳に興味を持っていたので仕方なく触らせる。すると思い切り掴み引っ張られたので、頬を引っ張りながら笑顔を見せてやった。喋った犯人はグ・ラハだなと思いながら適当に心を抉る言葉を吐く。
「シドの触り方おっさん臭くて嫌い」
シドの表情が固まる。よし、このまま傷付いてろとため息を吐き畳みかける。
「お子様が手加減無しで掴んで、ビックリして頬を引っ張った。一度だけ。何度もせがむおっさんとは大違い」
「ぐ。いや待てお前の方が遥かに年上じゃないか」
「まあ君が子供と仮定しても絶対不許可」
悲しげな表情を見せた。そこまで傷付くのか? と苦笑するがそこで手を差し伸べてはいけない。ここから痛い目に何度も遭って来た。
シドが耳を狙う理由は簡単である。普段は全く動かない耳を"シドが"触り続けるとふにゃりと垂れ下がってしまうからだ。アンナは相手に感情を読まれないよう極力耳を反応させない修行を行った。そんなアンナの弱った姿を見て自分の精神を癒やそうとする悪意と下心が丸見えなので許可は与えない。勿論相当なことがない限り絶対に他人が触ろうとすると反射的に刀に手をかける。アンナにとってはこれでも優しく断っているつもりだった。
「人の嫌がるとこ狙うの最低」
「う」
「純粋にあなたに会うために来たのに残念」
「す、すまん」
「もうジェシーやネロサンとお茶飲んで帰る。明日は折角の休みなのに残念だねえ」
ちらとシドを見るといつの間にか泣きそうな顔が消え、少々機嫌が悪い顔になっている。またやってしまったと慌てながら訂正する。
「いやさすがに帰るのは冗談」
「本当か?」
「私、嘘はつかない」
機嫌を取るように頬に口付けてやる。「ん」と舌を差し出してきたのでそのまま舌を絡めてやった。指を絡め合い、目を閉じて行為の終わりを待つ。いつの間にか力が抜けてしまったか急に手が振りほどかれ抱きしめられる。仕方がない、「苦しい」と言いながら離れると次の瞬間ひっくり返される。
「へ?」
見上げると笑顔のシド。騙されたかと一瞬考えたがよく見ると目は笑っていなかった。これは、終わったなとアンナは察した。
「悪かったな触り方がおっさん臭くて」
次の瞬間、シドは思い切り長い耳を掴んだ。アンナは目を見開き叫んでしまう。
「いっ―――たぁ!?」
「流石に痛いのか。すまん」
本当はそんなに痛くはない。しかし突然の行為に対し反射的にリアクションをしてしまった。
「怒ったからって子供のマネ? 大人が力加減無しでやるな、普通のヴィエラなら潰れる。拷問したいの?」
「いや大丈夫かと思ってつい」
「もーフウガぶりだ。負けず手加減しないね」
意外な名前が出て来てシドは「リンドウが?」と言うとアンナはため息を吐く。心がざわめく感情を抱いているがまだアンナは気付かない。
「里で修行できなかった分。おかげで多少では耳は動じない。ってシド凄い目が怖い」
「修行?」
「いや、護人が耳で色々バレるの、ダメ。真っ先に対策必要。だから……って撫でるな!」
シドは思い切り掴んだ部分を優しく撫でる。アンナはその手首を掴み抵抗するが弱々しい。その姿にシドはクスリと笑う。
「痛くしてすまん。―――もうあっという間に弱ってる。本当にそれは修行だったのか?」
「ひゃ、それはあなたが」
「俺が?」
内側を擦りながら形をなぞるように撫でまわされると勝手に口元から甘い吐息が漏れた。なんとか言葉にし、抗議する。
「触り方がっ、普通はしないやつ―――ッ」
首のゾワゾワと甘い痺れに身体がピクリと痙攣する。頭がぼんやりとするから触られたくない。と思っていたら突然寝台へと抱き上げられる。温かい体温が背中を通して感じた。アンナは普段シドを抱き上げているがシドもアンナを軽く持ち上げることができる。以前重くないかと尋ねたら「機材に比べたらとても軽い」と笑顔を見せていた。
シドは長い耳の間に顔を埋め、再び優しく耳を撫でている。指を口元に持ってきたので口に含むと舌に絡められた。上下に擦られると反射的に指を甘噛みしてしまい背後からくくと笑い声が漏れた。もうこうなってしまったら満足するまで続くだろう。耳はどうすれば動かせるのかを思い返した。集中を解き、リラックスし、あと何が必要だったかとアンナは一瞬考え込んだ後、ふと名前を呼ぶ。
「シ、ド」
「どうした?」
「くび、噛んで」
「仰せのままに」
襟元を緩めてやり、シドはそのままガリと未だ消えていない痕を上書きするように噛みついた。
「ッ―――!」
痛みに対し反射的にビクリと跳ね、シドは身体が逃げないように強く抱きしめた。耳の付け根を握りながら内側を引っ掻く様に動かされると力が一気に抜ける感触を味わう。そして耳がふにゃりと垂れ下がり、シドの目的は達成である。
「満足?」
アンナは深く呼吸をしながら背後のシドに声をかけるが反応はない。転がり顔を見合わせると唇を合わされる。耳を巻き込むように大きく頭を撫でつけた。こうなるから厭だったんだよと手首を掴む。
「終わり」
「疲れを癒させてくれ」
「最低。疲れたならそのまま寝て」
胸元に押し込み頭を撫でながら子守歌を唄う。かつて故郷で毎日聴いていた"よく眠れる歌"だ。勿論シドも好きなようですぐに寝息が聞こえてくる。
「おつかれ」
ポツリと呟き、目を閉じる。シドが連日の仕事詰めの疲れで癒しを求めるように、アンナも癒しを求めていたのも確かだ。耳も最終的に許可するのは外で見せることのないバカ騒ぎができればそれで構わないという一種の甘え方になる。冷たい身体に相手の熱が少しだけ溶け込む感覚に穏やかな表情を見せた。
#シド光♀ #即興SS
「いいじゃないか」
アンナは壁に追いやられながら威嚇するがシドはどこ吹く風かと手を伸ばしている。眉間に皴を寄せながら必死にその手を握りしめ抵抗した。
そう、アンナは耳を優しく触れられる行為に対して非常に弱く、"シドに"触られるとほぼ"終わり"となる。なので手段を選ばず何としても手を出すシドと度々小競り合いが起こった。今回は仕事疲れで戻って来たシドが癒してほしいと言うので、"多少の"スキンシップを許可した所まではいい。しばらく首や顎、頬を撫でまわしていたが突然耳に手をかけようとしたので、耳だけはやめろと拒否する。
「触ってもいいってさっき言ってたじゃないか」
「してない。許可した個所は顔」
「頭部の一部じゃないか」
かすってない! とシドの両手を片手で掴みながら額のゴーグルを外し指さす。
「あなた以前第三の眼で遊ぶの拒否したでしょ?」
「お前のパワーで何かされたら命の危機だろ」
「失礼な。耳だって命の危機と隣り合う器官」
「力加減位できるさ」
埒が明かない。他の話題を探して有耶無耶にするかとアンナは判断し、床に転がす。今回はきちんと受け身を取ったようだ。胸板の上に乗り腕を押さえる。
「誘ってるのか?」
「違う」
「お前知ってるぞ、以前人に触らせてただろ耳」
どこから話が漏れたんだとアンナはため息を吐く。グ・ラハとレヴナンツトールを歩いていると通りすがりの子供が声をかけて来た。ヴィエラが珍しかったのか長い耳に興味を持っていたので仕方なく触らせる。すると思い切り掴み引っ張られたので、頬を引っ張りながら笑顔を見せてやった。喋った犯人はグ・ラハだなと思いながら適当に心を抉る言葉を吐く。
「シドの触り方おっさん臭くて嫌い」
シドの表情が固まる。よし、このまま傷付いてろとため息を吐き畳みかける。
「お子様が手加減無しで掴んで、ビックリして頬を引っ張った。一度だけ。何度もせがむおっさんとは大違い」
「ぐ。いや待てお前の方が遥かに年上じゃないか」
「まあ君が子供と仮定しても絶対不許可」
悲しげな表情を見せた。そこまで傷付くのか? と苦笑するがそこで手を差し伸べてはいけない。ここから痛い目に何度も遭って来た。
シドが耳を狙う理由は簡単である。普段は全く動かない耳を"シドが"触り続けるとふにゃりと垂れ下がってしまうからだ。アンナは相手に感情を読まれないよう極力耳を反応させない修行を行った。そんなアンナの弱った姿を見て自分の精神を癒やそうとする悪意と下心が丸見えなので許可は与えない。勿論相当なことがない限り絶対に他人が触ろうとすると反射的に刀に手をかける。アンナにとってはこれでも優しく断っているつもりだった。
「人の嫌がるとこ狙うの最低」
「う」
「純粋にあなたに会うために来たのに残念」
「す、すまん」
「もうジェシーやネロサンとお茶飲んで帰る。明日は折角の休みなのに残念だねえ」
ちらとシドを見るといつの間にか泣きそうな顔が消え、少々機嫌が悪い顔になっている。またやってしまったと慌てながら訂正する。
「いやさすがに帰るのは冗談」
「本当か?」
「私、嘘はつかない」
機嫌を取るように頬に口付けてやる。「ん」と舌を差し出してきたのでそのまま舌を絡めてやった。指を絡め合い、目を閉じて行為の終わりを待つ。いつの間にか力が抜けてしまったか急に手が振りほどかれ抱きしめられる。仕方がない、「苦しい」と言いながら離れると次の瞬間ひっくり返される。
「へ?」
見上げると笑顔のシド。騙されたかと一瞬考えたがよく見ると目は笑っていなかった。これは、終わったなとアンナは察した。
「悪かったな触り方がおっさん臭くて」
次の瞬間、シドは思い切り長い耳を掴んだ。アンナは目を見開き叫んでしまう。
「いっ―――たぁ!?」
「流石に痛いのか。すまん」
本当はそんなに痛くはない。しかし突然の行為に対し反射的にリアクションをしてしまった。
「怒ったからって子供のマネ? 大人が力加減無しでやるな、普通のヴィエラなら潰れる。拷問したいの?」
「いや大丈夫かと思ってつい」
「もーフウガぶりだ。負けず手加減しないね」
意外な名前が出て来てシドは「リンドウが?」と言うとアンナはため息を吐く。心がざわめく感情を抱いているがまだアンナは気付かない。
「里で修行できなかった分。おかげで多少では耳は動じない。ってシド凄い目が怖い」
「修行?」
「いや、護人が耳で色々バレるの、ダメ。真っ先に対策必要。だから……って撫でるな!」
シドは思い切り掴んだ部分を優しく撫でる。アンナはその手首を掴み抵抗するが弱々しい。その姿にシドはクスリと笑う。
「痛くしてすまん。―――もうあっという間に弱ってる。本当にそれは修行だったのか?」
「ひゃ、それはあなたが」
「俺が?」
内側を擦りながら形をなぞるように撫でまわされると勝手に口元から甘い吐息が漏れた。なんとか言葉にし、抗議する。
「触り方がっ、普通はしないやつ―――ッ」
首のゾワゾワと甘い痺れに身体がピクリと痙攣する。頭がぼんやりとするから触られたくない。と思っていたら突然寝台へと抱き上げられる。温かい体温が背中を通して感じた。アンナは普段シドを抱き上げているがシドもアンナを軽く持ち上げることができる。以前重くないかと尋ねたら「機材に比べたらとても軽い」と笑顔を見せていた。
シドは長い耳の間に顔を埋め、再び優しく耳を撫でている。指を口元に持ってきたので口に含むと舌に絡められた。上下に擦られると反射的に指を甘噛みしてしまい背後からくくと笑い声が漏れた。もうこうなってしまったら満足するまで続くだろう。耳はどうすれば動かせるのかを思い返した。集中を解き、リラックスし、あと何が必要だったかとアンナは一瞬考え込んだ後、ふと名前を呼ぶ。
「シ、ド」
「どうした?」
「くび、噛んで」
「仰せのままに」
襟元を緩めてやり、シドはそのままガリと未だ消えていない痕を上書きするように噛みついた。
「ッ―――!」
痛みに対し反射的にビクリと跳ね、シドは身体が逃げないように強く抱きしめた。耳の付け根を握りながら内側を引っ掻く様に動かされると力が一気に抜ける感触を味わう。そして耳がふにゃりと垂れ下がり、シドの目的は達成である。
「満足?」
アンナは深く呼吸をしながら背後のシドに声をかけるが反応はない。転がり顔を見合わせると唇を合わされる。耳を巻き込むように大きく頭を撫でつけた。こうなるから厭だったんだよと手首を掴む。
「終わり」
「疲れを癒させてくれ」
「最低。疲れたならそのまま寝て」
胸元に押し込み頭を撫でながら子守歌を唄う。かつて故郷で毎日聴いていた"よく眠れる歌"だ。勿論シドも好きなようですぐに寝息が聞こえてくる。
「おつかれ」
ポツリと呟き、目を閉じる。シドが連日の仕事詰めの疲れで癒しを求めるように、アンナも癒しを求めていたのも確かだ。耳も最終的に許可するのは外で見せることのないバカ騒ぎができればそれで構わないという一種の甘え方になる。冷たい身体に相手の熱が少しだけ溶け込む感覚に穏やかな表情を見せた。
#シド光♀ #即興SS
"髪飾り"
シドは白い髪飾りを撫でる。星芒祭の朝に握っていた"あの人"から貰った不思議な羽根と花の意匠が凝られたモノ。以降、1人ぼんやりとする時は引き出しの中から取り出し、思い返していた。
「忘れろ、って言われてもな」
ボソリと囁きあの無機質で中性的な声をした人の姿を思い浮かべる。再び会えたというのに、勿体ないことをした。次はしっかりと腕を掴んで逃がさないようにしよう、と握り締めた時だった。
「硬い……?」
髪飾りは柔らかな布素材を使われていたがある一点だけ硬い金属の物体を感じ取った。同じ白色で目立たないが明らかに後から取り付けられたものだということは分かる。慎重に取り出し、その物体を観察する。魔導装置のものでもない。何か彼のヒントに繋がるかもしれない、工房の解析装置に足を運ぶ。
◇
「明らかに最近の技術のものではないな」
ゴーグルを外し考え込む。小さな回路に極小なクリスタルが埋め込まれ、何らかを反応させるための装置だということは分かった。使われている金属と書かれた魔紋の形からアラグのものであると仮定し、データベースと睨み合う。
途中から暇そうだった社員数人を捕まえ調べているがそれらしきものは見当たらない。
「一部文献は未だに見つかってませんしもしかしたらその中にあるものかもしれないですよ」
「困ったな、じゃあ解析してこれからのデータとして追加してやれ。終わったら返せよ」
「構いませんけどこれはどこで」
シドはため息を吐き首を横に振った後席を外す。久々に電子タバコを取り出し煙を燻らせた。また手がかりがこの煙のようにすり抜けていくのかと思うと憂鬱になる。分野的にネロに聞けば何か知っているだろうか。否、捕まらない人間について考えても解決はしないかと霧散させた。
数日に及ぶ解析の結果、空気中のエーテルを取り入れ変換させるものだということが分かった。だからといって何か"あの人"の手がかりに繋がるわけもなく。
「アラグの技術は確かに奇妙なものも多いがそんなことも出来るのか、というかよく分かったな」
「親方が退室した後に一部ページ引っかかったんですよ。まあそれ以降は見つからなかったですが」
「うん? 欠けてるってことか?」
どうやら遥か昔に抜き取られているのだという。聖コイナク財団より先に発見した人間がいたのか、それとも盗掘家が価値も分からず偶然持って行ってしまったのか。かつて出し抜いた人間がいたのか現在の彼らに知る由はない。分かることは旅人であるあの人がそんなことをするわけがないという確信だった。
「先程まで聖コイナク財団の関係者と一緒に検証して分かったんです。しかしあくまでもこれは変換のみで出力するための装置も必要だと思いますがそれは分かりませんでした。―――本当にこれどこで手に入れたんです?」
「いや、まあ俺も偶然な」
兎に角返してもらうぞ、と装置を受け取り部屋に籠る。再び髪飾りに付け握り締める。
「アンタは一体何者なんだ。旅人さん―――」
◇
―――数年後。
「なあアンナ、この髪飾りなんだが」
「知らない、私は何も知りません」
「お前が一芝居打って俺にあげたものじゃないか」
街ごと俺を騙しやがってと持ち主アンナに突き付けると本人は露骨に嫌そうな顔を見せた。「捨ててると思ってたんだけどねえ」と言いながらそれを摘まみ空へ掲げる。「ただの故郷と私を繋ぐ印さ。何も価値はない」と吐き捨てシドに投げ返す。
「変な装置が付いていたんだがこれはお前の集落伝統のものなのか?」
「はい?」
シドはこれと固い部分をつついた。アンナは首を傾げる。そういえばよく見れば、材質が違う気がするとボソボソ呟きながら考え込む。
「そんなわけないじゃん。故郷ではただの髪飾りだったよ」
「いやこれはエーテル制御の装置らしくてな」
「うーん……?」
心当たり無いなあと呟きながら首を傾げている。その反応でで当時持っていたヒントではこの面倒な旅人をどうにかすることは出来なかったことを知り、苦笑しながら肩をすくめた。
しかしふとアンナは「あ」と声を出す。どうした、と聞くと「いや分かったとかそういうのではないけど」と笑う。
「昔初めてフウガに教えてもらった技を撃った時数日起きられなかったんだ」
急激な体内エーテル消費により生死を彷徨っていた時があり、死んだかと思ったら生きてたんだと語る。またリンドウかとシドは苦虫を嚙み潰したような表情を見せながらそれがどうしたと聞く。呪縛を解いたというのに無限に出てくる命の恩人で初恋の人でもあったリンドウ・フウガの話に対しては正直未だに嫉妬の感情に溢れていた。
「いやもしこれが最初から付いてたらさ、倒れなかったんじゃないかなって。だからその時以降に付けられたのかも」
「そうだったのか。―――ずっと付けてなかったのか?」
「いや肌身離さず付けてたよ。……あー確かに目が覚めた後にフウガがずっと付けとけって言ってたやつの一つだ。ついでに外にいた旧友も紹介してもらったかな」
金髪な人からからくり装置の作り方教えてもらったと答える姿にシドは頭痛がする。また変な知らない人間が出て来たという感想がよぎる。
いや、フウガはアンナの兄と旧知の仲であり、その更に知り合い、金髪。そういえば以前金髪でネロに雰囲気が似てる男がいたと語っていた。最後に『アラグの技術にクローンを作るものがあるんだと』と言い残し別れたという。まさか、アラグの技術を持って行った犯人は。
「自由か」
「え? シドどうした?」
「いや世間は狭いなと思っただけだ。何か言ってなかったか?」
「うーん昔の話だよ? いいおっさんだった。多分。お小遣いくれたしフウガとお揃いの板もくれた、し……あっ」
アンナの顔が一瞬で青くなりやっばと言いながら鞄を必死に押さえた。そして「よ、用事思い出したから帰る」と下がるがシドに腕を掴まれる。
「出すんだ」
「嫌。思い出の品を奪うの、最低」
「人聞きの悪い事を言うな。見せてほしいだけだ」
見るだけだよ? とアンナは鞄の隠しポケットから黒い物体を手に取った。トームストーンに酷似した薄い板だ。というか最近入手したものと同一品である。「リンドウもこれを?」とシドが聞くと「渡されてたねえ」と返ってきた。その板に手をかけ、引っ張るとアンナはちょっと! と言いながら取り合う形になる。
「ちょっと借りる」
「やだ」
「すぐ返す」
「それ絶対何かある時に言うやつ」
「壊さない」
「やだ」
「お願いだ」
「う……」
シドのお願いという言葉に弱いアンナは黙り込む。そして押し付けた。
「明日までに返して」
「分かった。すぐ戻る」
「はあ!?」
シドは受け取るや否や部屋のドアを勢い良く開きネロの元へ走って行く。アンナは大慌てで追いかける。待て、それは許可してない、返せというドスの利いた低い声が聞こえた。ビッグスと談笑していたネロに投げ「多分"アリス"の遺物でアラグ関係だ!」と言ってやると口笛を吹き走り去る。その後胸倉を掴まれ珍しく人前で顔を真っ赤にしながら説教されたがどこか気分が晴れやかだった。
―――解析の結果、厳重に暗号化されたデータが保存してあるトームストーンだということが分かった。その後、アンナの元に返されたのは3日後になる。シドはアンナの機嫌を直すのに更に3日かかった。
「すまない、いや世紀の発見の予感がしてな。あの、本当に悪かった」
「まだパスワード総当たり中なンだがありゃぜってェいいモンだぜ。メスバブーンにしたァやるじゃねェか」
「……思い出の品をそういう扱いするのサイテー」
「そういえば髪飾りについていたのが持っとけと言われたヤツの一つだと言っていたがまだあるよな? いやあの髪飾りからエーテルを取り出すための何らかのものはあるだろ、ちょっと見せてほしいんだが」
「あっても言うわけないでしょ莫迦?」
ゴミを見る目でこちらを睨む行為を必要経費と言い切るネロと小さくなるシドという対照的な風景をガーロンド社員たちは遠巻きに見つめていた。
#シド光♀ #リンドウ関連
"悪夢"2
注意
自機出番なし。"捕獲"の次の日の話。
―――夢を見た。遠い過去の友人が立っている。
あの男が僕に久しぶりだなと声をかけて来た。
「なんだ生きてたのか」
「俺様を勝手に殺すんじゃねえよ」
やれやれとその金髪を揺らしながらため息を吐く。相変わらず真っ白い肌が心配になるミコッテだ。
「やっと完成したんだ 見てくれよ」
"コイツ"は僕に手を広げながら笑いかける。なんだよ、って言ってやると周りから気配を感じた。
―――金髪の女が1人、2人、3人。いやもっといる。同じ顔をした、"コイツ"の恋人。
「ほら俺様の女を蘇らせたんだ。勿論褒めてくれるよな? エルファー」
◇
「エル!!!!」
見知った人間の呼ぶ声でハッと目が覚める。飛空艇に揺られ、エルファーは周りを見回す。いない、夢だったようだ。流れる汗をぬぐい、血でないことも確認する。
「どうしただいぶうなされていたぞレフ」
「あー……ちょっと悪夢をな」
頭を掻きながら起き上がる。長い船路の途中で眠ってしまったらしい。
オメガ検証で好き勝手して逃げたら捕まってしまった次の日。シドに連れられネロと共にひんがしの国へと向かっていた。着いてからも移動が長いということで先に休むかという話になった。結局眠れるわけがないと言いながら寝ていた事実に苦笑する。ふと夢の男を思い浮かべてからネロをぼんやり見つめた。ついポロリと言葉をこぼしてしまう。
「ネロ、君が狂いきってなくてよかった」
「ハァ?」
「いや、久々に僕の友人が出てくる夢を見たんだが……これがものすごい狂ってた奴でな」
彼の名はア・リス・ティア。エルファーがこれまで出会った中では一番の天才であった。勿論目の前の2人より優れていると胸を張って言える。一言こういうものが欲しいと言うとどんな無茶でも最終的に理論を確立できる才能に憧れた面もあった。社会不適合者だったが世話をしてくれる奇麗な恋人がいたらしい。それなりに幸せな生活を送っていたようだがある時事故で失ってしまった。
そんな男に出会ったのは妹が誕生する少し前。修行からこっそり抜け出してイルサバード大陸にて趣味である遺跡探訪の途中だった。彼は恋人を蘇らせるために本場の錬金術を学びに来ていたのだという。
「うわよく聞くやつじゃねェか」
「ああ確かウルダハの錬金術師ギルドのマスターもそういうことしようとしてたとアンナが言ってたな」
「でも早いうちに彼女そのものを蘇らせるのは無理だと察したみたいでねぇ。まあ並行して行っていた別の研究の手伝いをしてから別れたんだ。僕と、アリスと、あとまあ1人いたんだがそれは関係ないから置いておこう」
思い出すだけで虫唾が走る男だからなと笑ってやるとシドとネロは顔を見合わせていた。そして彼が別れる際に言っていた言葉が未だに心に刺さっていたと話す。それは『アラグの技術にクローンを作るものがあるんだと、ちょっと深堀りしてくるわ』だった。これがエルファーが聞いた最後の言葉だった。そこから何となく会いたくないから会ってない。
「うわ、ヤバいヤツじゃないか」
「バカだろ? そのアリスって男はクローンでナニしようとしてたンだよ」
「未だに無限に増えるその恋人を見せびらかす夢を見る。死んで……たらいいな」
「怖いこと言うンじゃねェぞ」
エルファーは空を見上げふっと笑う。確かに怖いのだが不老不死の術が生まれたという話は聞いたことがないので「安心しろ」と言った。
「出会ったのは妹が生まれるより前って言っただろう? 今も生きてたら120超えてる」
「レフ、お前何歳なんだ?」
「お前らの4倍位だよ? ちなみに妹は3桁ではないからな?」
シドとネロの『ジジィ』という言葉が重なった。エルファーはにこりと笑いじゃあ少しは敬えよ? と言いながら手をポンと叩く。シドの顔を至近距離で見つめ、あのムカつく男の顔を浮かべた。シドは狼狽えながら下がっている。
「成程ガーロンド君がムカつくヤツだと思った理由はあのクソ野郎と似てるからだな! ネロも最初アリスと重なったからそんなに違和感なく近付けたのね。あぁ納得した」
「オレをさっき話したヤツと同カテゴリにしやがったなオマエ!?」
「はースッキリしたそういうことか」
「いや俺もさりげなく罵られたんだがそのクソ野郎とは?」
シドは眉間にしわを寄せながら言う姿に対し「そうそうその顔が滅茶苦茶似てるんだよ」と笑い声をあげる。顔は相変わらずクシャっとしているのみで笑顔ではないのだが。
その男はかつてアリスと一緒に出会ったヒトだった。真面目で正義感が強くて不愛想のお人好しだったとため息を吐く。
「クソ野郎要素ないじゃないか」
「アレだな、同族嫌悪じゃねェか?」
「一緒にするなよ? アレはな、自分で習得しておいて得てしまった圧倒的な力に怯えて全て捨てて逃げたアホなんだわ。俺は旅人だーとか言ってさ。そういやアイツも白くてヒゲだった。思い出すだけでムカつく」
「理不尽すぎないか?」
この時シドは言葉にすることができなかった。『それどちらかというとお前の妹では?』と。絶対に口に出せばヒゲを燃やされることは分かる。ふとネロの方に目をやると同じことを考えているのかエルファーからさりげなく目を逸らしていた。
―――エルファーはまだ知らない。この後、輪にかけて"ムカつく"真実が待ち受けていることに。
#エルファー関連 #シド
自機出番なし。"捕獲"の次の日の話。
―――夢を見た。遠い過去の友人が立っている。
あの男が僕に久しぶりだなと声をかけて来た。
「なんだ生きてたのか」
「俺様を勝手に殺すんじゃねえよ」
やれやれとその金髪を揺らしながらため息を吐く。相変わらず真っ白い肌が心配になるミコッテだ。
「やっと完成したんだ 見てくれよ」
"コイツ"は僕に手を広げながら笑いかける。なんだよ、って言ってやると周りから気配を感じた。
―――金髪の女が1人、2人、3人。いやもっといる。同じ顔をした、"コイツ"の恋人。
「ほら俺様の女を蘇らせたんだ。勿論褒めてくれるよな? エルファー」
◇
「エル!!!!」
見知った人間の呼ぶ声でハッと目が覚める。飛空艇に揺られ、エルファーは周りを見回す。いない、夢だったようだ。流れる汗をぬぐい、血でないことも確認する。
「どうしただいぶうなされていたぞレフ」
「あー……ちょっと悪夢をな」
頭を掻きながら起き上がる。長い船路の途中で眠ってしまったらしい。
オメガ検証で好き勝手して逃げたら捕まってしまった次の日。シドに連れられネロと共にひんがしの国へと向かっていた。着いてからも移動が長いということで先に休むかという話になった。結局眠れるわけがないと言いながら寝ていた事実に苦笑する。ふと夢の男を思い浮かべてからネロをぼんやり見つめた。ついポロリと言葉をこぼしてしまう。
「ネロ、君が狂いきってなくてよかった」
「ハァ?」
「いや、久々に僕の友人が出てくる夢を見たんだが……これがものすごい狂ってた奴でな」
彼の名はア・リス・ティア。エルファーがこれまで出会った中では一番の天才であった。勿論目の前の2人より優れていると胸を張って言える。一言こういうものが欲しいと言うとどんな無茶でも最終的に理論を確立できる才能に憧れた面もあった。社会不適合者だったが世話をしてくれる奇麗な恋人がいたらしい。それなりに幸せな生活を送っていたようだがある時事故で失ってしまった。
そんな男に出会ったのは妹が誕生する少し前。修行からこっそり抜け出してイルサバード大陸にて趣味である遺跡探訪の途中だった。彼は恋人を蘇らせるために本場の錬金術を学びに来ていたのだという。
「うわよく聞くやつじゃねェか」
「ああ確かウルダハの錬金術師ギルドのマスターもそういうことしようとしてたとアンナが言ってたな」
「でも早いうちに彼女そのものを蘇らせるのは無理だと察したみたいでねぇ。まあ並行して行っていた別の研究の手伝いをしてから別れたんだ。僕と、アリスと、あとまあ1人いたんだがそれは関係ないから置いておこう」
思い出すだけで虫唾が走る男だからなと笑ってやるとシドとネロは顔を見合わせていた。そして彼が別れる際に言っていた言葉が未だに心に刺さっていたと話す。それは『アラグの技術にクローンを作るものがあるんだと、ちょっと深堀りしてくるわ』だった。これがエルファーが聞いた最後の言葉だった。そこから何となく会いたくないから会ってない。
「うわ、ヤバいヤツじゃないか」
「バカだろ? そのアリスって男はクローンでナニしようとしてたンだよ」
「未だに無限に増えるその恋人を見せびらかす夢を見る。死んで……たらいいな」
「怖いこと言うンじゃねェぞ」
エルファーは空を見上げふっと笑う。確かに怖いのだが不老不死の術が生まれたという話は聞いたことがないので「安心しろ」と言った。
「出会ったのは妹が生まれるより前って言っただろう? 今も生きてたら120超えてる」
「レフ、お前何歳なんだ?」
「お前らの4倍位だよ? ちなみに妹は3桁ではないからな?」
シドとネロの『ジジィ』という言葉が重なった。エルファーはにこりと笑いじゃあ少しは敬えよ? と言いながら手をポンと叩く。シドの顔を至近距離で見つめ、あのムカつく男の顔を浮かべた。シドは狼狽えながら下がっている。
「成程ガーロンド君がムカつくヤツだと思った理由はあのクソ野郎と似てるからだな! ネロも最初アリスと重なったからそんなに違和感なく近付けたのね。あぁ納得した」
「オレをさっき話したヤツと同カテゴリにしやがったなオマエ!?」
「はースッキリしたそういうことか」
「いや俺もさりげなく罵られたんだがそのクソ野郎とは?」
シドは眉間にしわを寄せながら言う姿に対し「そうそうその顔が滅茶苦茶似てるんだよ」と笑い声をあげる。顔は相変わらずクシャっとしているのみで笑顔ではないのだが。
その男はかつてアリスと一緒に出会ったヒトだった。真面目で正義感が強くて不愛想のお人好しだったとため息を吐く。
「クソ野郎要素ないじゃないか」
「アレだな、同族嫌悪じゃねェか?」
「一緒にするなよ? アレはな、自分で習得しておいて得てしまった圧倒的な力に怯えて全て捨てて逃げたアホなんだわ。俺は旅人だーとか言ってさ。そういやアイツも白くてヒゲだった。思い出すだけでムカつく」
「理不尽すぎないか?」
この時シドは言葉にすることができなかった。『それどちらかというとお前の妹では?』と。絶対に口に出せばヒゲを燃やされることは分かる。ふとネロの方に目をやると同じことを考えているのかエルファーからさりげなく目を逸らしていた。
―――エルファーはまだ知らない。この後、輪にかけて"ムカつく"真実が待ち受けていることに。
#エルファー関連 #シド
自機出番少な目なのと倫理観無し。シド光♀匂わせ程度なギャグ概念。
どちらかというと自機兄+ネロ風味。
レフ→自機の兄。ガーロンド社に出入りしている技師。嫁が8人いたが離婚済みで故郷からも追放されている。妹が絡まなければ物静かで笑顔がヘタクソな人間。
「そういえばガーロンドくん、昨年僕の妹から貰ったチョコはどんな感じだったんだ?」
アンナの兄レフの一言から今回の一件は始まった。ネロはゲラゲラと笑う。
「やっぱ手加減知らねぇメスバブーンのことだから山のように作って社員全員に振る舞ったンじゃねェの。ンでその中の1つを雑に投げられたって感じか?」
「あー確か去年の手紙でヴァレンティオンデーってよく分からんって書かれてたな。僕も知らなかったから『可哀想な男共に優しい手を差し伸べる慈善事業の日でもあるよな』って返したぞ」
「あの余計な一言はお前が原因だったのか……」
シドはため息を吐いた。昨年のヴァレンティオンデーはそれはもう凄かったと語る。突然ガーロンド社に訪れ、大きなバッグから取り出される『お母さん以外の異性から手作りチョコを貰ったことがない人優先の素材から拘った手作りチョコレート』をばら撒いた。シドは毎年結構な量を貰い社員と食べていたのだが、その多さに今年はいらないと言われほぼ1人で数日間片付けていた。挙句の果てに、アンナからは「シドいっぱい貰ってる。こっちはあげない」と言われるおまけ付きで。その後、先に試作したが少々失敗したというカカオ95%チョコを渡され、言われるがままホットミルクに溶かして飲んだ。ちょうどいい苦みがあって美味しかったと振り返る。
「レフのせいで俺は酷い目に遭ったんだぞ」
「はっはっはざまあみやがれ。ってちゃっかり貰ってるじゃないか阿呆」
「おいレフホンネ出てンぜ?」
「というかアンナも大量に貰ってたんだぞ? それは悔しくないのか兄として」
「お前と一緒で僕の妹に本命という概念が理解できるわけがないだろ」
「そーだな」
「流石にアンナよりマシだと思うぞ!?」
ネロとレフの言葉にシドは素っ頓狂な声を上げた。似てると言われるのは悪くは思わないがさすがに恋愛関係で一緒にされたくなかった。
「気にせず社員に分けてるアホが何か言ってンぜ?」
「まったく最低な男だなガーロンドくん」
「いや俺は仮にも偉い人間だし義理で渡すくらいはあるだろ。どう消費しても文句はないはずだ。お前たちだって確実に貰ってただろ」
「ガレマルドにヴァレンティオンなンてなかっただろうが」
「僕は嫁いたし。基本的に人から手作りの食べ物は貰わない主義なんだ。何混入してるか分からん」
「おいおいレフもズレてンな」
「―――おいレフ、お前人から貰ったものは受け取らないのか?」
シドに嫌な予感がよぎる。兄がこれなら人の教えを忠実に守る妹は。
「そりゃそうだろう毒とか入ってたら困るし」
「アンナもそれを知ってるのか?」
「勿論。護人としての心構えで真っ先に故郷では教えられるさ。そこから瓦解したら大変だろう?」
「……アー」
ネロも察した様子を見せながら肩をすくめ、レフに便箋を指さす。
「手紙書け。プレゼントは全部断れってな」
「現れる前に気付いてよかったぜ」
「君たち本当に心の問題に関しては妹のこと信用してないな。僕も書いた方がいいって思ったけど。というか去年貰ったものどうしたか聞くか」
ここ数日、またアンナと連絡が途絶えていた。暁の人間によると『やはり道具から拘る方がいいよね』と言いながらどこかに飛んで行ったのだという。連絡をするならば一番確実なのがレターモーグリだろうと判断し、レフはペンを手に取った。
◇
レフは手短な手紙を書き、レターモーグリ経由で送ると1日で返事が返って来た。しかし内容をシドに伝えることはなかった。
「……僕は教育方針を間違えてたかもしれない」
「ケケッ、オマエこれまでの生涯通しても合計1年分も会ってねェだろ」
「うるせ」
『兄さんへ
私への配慮、ありがとうございます。お返しはいらないと言って渡しているので安心してください。
あと私のような旅人には本命や義理も関係ないし感謝の気持ちを込めて燃やしてるので大丈夫。
ところで試作品を作ったからどうぞ。兄さんの感想が私がお世話になっている人たちの胃の運命が決まります。よろしくね。
フレイヤ』
手紙と一緒に小袋が入っており、中身はアルファの顔が描かれたアイシングクッキーとオメガを模した立体チョコレートだった。容赦なくパキリと割り満面の笑顔で噛みしめるように食べるレフの姿にネロは引く。
「おいしい……嗚呼滅茶苦茶おいしいぞ妹よ。だが頼むから人からの贈り物は完全に拒否してくれ……」
「オマエ本当にメスバブーン絡んだら気持ち悪ィな」
「一言余計。ほら半分に割ってるから君も食え。多分君もいっぱいもらってるからあげない組だぞ」
「いや別にオレは」
「は? 君は妹の作ったものが不味いからいらないと言いたいのか?」
「ンなこと一言も言ってねェよ!」
ネロは眉間にしわを寄せながらクッキーを一口摘まむ。ちょうどいい焼き加減でサクサクとして本当にあのデリカシー無しで脳筋が作ったものなのかと疑うほど美味い。
「バブーンじゃなけりゃなァ」
「は? 妹は可愛いが?」
「顔はいい方だけど中身が最悪だって言いたいンだよ」
「最悪の中身が混じり込んでるんだからしょうがないだろ」
「ヒヒッ違いねェ」
よし美味しかったと手紙を返しておこうとペンを手に取る姿をネロは苦笑する。素直に会いに行けよと思うが心の中に仕舞い込んだ。
―――数日後。アンナは石の家とガーロンド・アイアンワークス社に大きなバッグを持って現れた。色々な表情をしたアルファが描かれたアイシングクッキーとオメガ型立体チョコが入った小袋を『お母さん以外の異性から手作りで貰ったことがない人優先の調理道具から拘った手作りチョコレート』と称してばら撒く。昨年と違う所はなんと男女問わず渡されるチョコレートをごめんと言いながら拒否している所だ。ネロは兄の説得が心に届いたのかとマグカップを手に口をあんぐりと開けそれを見守る。ふと目が合うと意外なことに2つの袋を手渡された。両手に紙袋を持ちながらふらつくシドがやって来るとアンナは動きを止める。
「ホー昨日あんだけ説教してきたくせに自分はモテますアピール」
「いや、アンナ。断ったが押し付けられてな。また一緒に食うか?」
「自分で片付けたらいい」
踵を返し次は女性陣へと渡しに行く姿をシドはため息を吐きネロの隣に立つ。
「いや昨日ようやく連絡がついてな。問いただしたらゲロったから少々手荒に"説教"した」
「ハァ。その両手のブツがなければ説得力あったろうにな」
「俺もそう思ってるさ。とりあえずレフにはお前の説得で妹は余計な悲しみを生まさずに済んだとでも伝えておいてくれ」
「……まあその方があいつも小躍りすっか」
真面目なシドのことだ、一晩中ものすごくキツく𠮟ったのだろう。大欠伸を噛み殺しながら、いつもの内面に存在する複数の人間に込められた渦巻かれた闇1つ悟らせない満面の笑みでチョコをばら撒き去って行くアンナを見守っていた。
その横でネロはふと誰も触れていない引っかかった疑問を口にする。
「―――ン? 調理道具から拘ったってどういうことだ?」
「文字通り1から作ったってことだろ。そりゃ一切連絡つかないさ」
満面の笑顔で鉱石から採掘に行く姿が男2人の脳内で共有され馬鹿じゃねェの? と呆れた声が響き渡った―――。
Wavebox
#即興SS #季節イベント