FF14の二次創作置き場

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No.72

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注意自機出番なし。"捕獲"の次の日の話。  ―――…

漆黒

#エルファー関連 #シド

漆黒

"悪夢"2
注意
自機出番なし。"捕獲"の次の日の話。
 
―――夢を見た。遠い過去の友人が立っている。
 あの男が僕に久しぶりだなと声をかけて来た。

「なんだ生きてたのか」
「俺様を勝手に殺すんじゃねえよ」

 やれやれとその金髪を揺らしながらため息を吐く。相変わらず真っ白い肌が心配になるミコッテだ。

「やっと完成したんだ 見てくれよ」

 "コイツ"は僕に手を広げながら笑いかける。なんだよ、って言ってやると周りから気配を感じた。

―――金髪の女が1人、2人、3人。いやもっといる。同じ顔をした、"コイツ"の恋人。

「ほら俺様の女を蘇らせたんだ。勿論褒めてくれるよな? エルファー」



「エル!!!!」

 見知った人間の呼ぶ声でハッと目が覚める。飛空艇に揺られ、エルファーは周りを見回す。いない、夢だったようだ。流れる汗をぬぐい、血でないことも確認する。

「どうしただいぶうなされていたぞレフ」
「あー……ちょっと悪夢をな」

 頭を掻きながら起き上がる。長い船路の途中で眠ってしまったらしい。
 オメガ検証で好き勝手して逃げたら捕まってしまった次の日。シドに連れられネロと共にひんがしの国へと向かっていた。着いてからも移動が長いということで先に休むかという話になった。結局眠れるわけがないと言いながら寝ていた事実に苦笑する。ふと夢の男を思い浮かべてからネロをぼんやり見つめた。ついポロリと言葉をこぼしてしまう。

「ネロ、君が狂いきってなくてよかった」
「ハァ?」
「いや、久々に僕の友人が出てくる夢を見たんだが……これがものすごい狂ってた奴でな」

 彼の名はア・リス・ティア。エルファーがこれまで出会った中では一番の天才であった。勿論目の前の2人より優れていると胸を張って言える。一言こういうものが欲しいと言うとどんな無茶でも最終的に理論を確立できる才能に憧れた面もあった。社会不適合者だったが世話をしてくれる奇麗な恋人がいたらしい。それなりに幸せな生活を送っていたようだがある時事故で失ってしまった。
 そんな男に出会ったのは妹が誕生する少し前。修行からこっそり抜け出してイルサバード大陸にて趣味である遺跡探訪の途中だった。彼は恋人を蘇らせるために本場の錬金術を学びに来ていたのだという。

「うわよく聞くやつじゃねェか」
「ああ確かウルダハの錬金術師ギルドのマスターもそういうことしようとしてたとアンナが言ってたな」
「でも早いうちに彼女そのものを蘇らせるのは無理だと察したみたいでねぇ。まあ並行して行っていた別の研究の手伝いをしてから別れたんだ。僕と、アリスと、あとまあ1人いたんだがそれは関係ないから置いておこう」

 思い出すだけで虫唾が走る男だからなと笑ってやるとシドとネロは顔を見合わせていた。そして彼が別れる際に言っていた言葉が未だに心に刺さっていたと話す。それは『アラグの技術にクローンを作るものがあるんだと、ちょっと深堀りしてくるわ』だった。これがエルファーが聞いた最後の言葉だった。そこから何となく会いたくないから会ってない。

「うわ、ヤバいヤツじゃないか」
「バカだろ? そのアリスって男はクローンでナニしようとしてたンだよ」
「未だに無限に増えるその恋人を見せびらかす夢を見る。死んで……たらいいな」
「怖いこと言うンじゃねェぞ」

 エルファーは空を見上げふっと笑う。確かに怖いのだが不老不死の術が生まれたという話は聞いたことがないので「安心しろ」と言った。

「出会ったのは妹が生まれるより前って言っただろう? 今も生きてたら120超えてる」
「レフ、お前何歳なんだ?」
「お前らの4倍位だよ? ちなみに妹は3桁ではないからな?」

 シドとネロの『ジジィ』という言葉が重なった。エルファーはにこりと笑いじゃあ少しは敬えよ? と言いながら手をポンと叩く。シドの顔を至近距離で見つめ、あのムカつく男の顔を浮かべた。シドは狼狽えながら下がっている。

「成程ガーロンド君がムカつくヤツだと思った理由はあのクソ野郎と似てるからだな! ネロも最初アリスと重なったからそんなに違和感なく近付けたのね。あぁ納得した」
「オレをさっき話したヤツと同カテゴリにしやがったなオマエ!?」
「はースッキリしたそういうことか」
「いや俺もさりげなく罵られたんだがそのクソ野郎とは?」

 シドは眉間にしわを寄せながら言う姿に対し「そうそうその顔が滅茶苦茶似てるんだよ」と笑い声をあげる。顔は相変わらずクシャっとしているのみで笑顔ではないのだが。
 その男はかつてアリスと一緒に出会ったヒトだった。真面目で正義感が強くて不愛想のお人好しだったとため息を吐く。

「クソ野郎要素ないじゃないか」
「アレだな、同族嫌悪じゃねェか?」
「一緒にするなよ? アレはな、自分で習得しておいて得てしまった圧倒的な力に怯えて全て捨てて逃げたアホなんだわ。俺は旅人だーとか言ってさ。そういやアイツも白くてヒゲだった。思い出すだけでムカつく」
「理不尽すぎないか?」

 この時シドは言葉にすることができなかった。『それどちらかというとお前の妹では?』と。絶対に口に出せばヒゲを燃やされることは分かる。ふとネロの方に目をやると同じことを考えているのかエルファーからさりげなく目を逸らしていた。

―――エルファーはまだ知らない。この後、輪にかけて"ムカつく"真実が待ち受けていることに。


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