FF14の二次創作置き場
更新履歴
- 2024/11/26 旅人は魔導兵器を識りたい 新生
- 2024/11/19 "召し上がれ&quo… 新生
- 2024/11/15 溶けあうもの 紅蓮
- 2024/11/11 "11月11日&qu… 蒼天
- 2024/10/18 "嫉妬"、… 漆黒,
No.71
- ユーザ「zome2zen」の投稿だけを見る (※時系列順で見る)
- この投稿と同じカテゴリに属する投稿:
- この投稿日時に関連する投稿:
- この投稿に隣接する前後3件ずつをまとめて見る
- この投稿を再編集または削除する
漆黒序盤の一方その頃原初世界なお話。自機兄が本軸に合流。シド少年時代捏造。
「テメェら本当にふざけンなよ!?」
「多額の領収書置いて行った奴が何言ってるんだ!」
レヴナンツトール、ロウェナ会館。主の前でいい年した大人たちが怒鳴り合っている。異様な所は金髪の男が網のようなもので動けなくなっているところだろうか。
オメガの検証から数ヶ月ほど経過し、アンナはクリスタルタワーからどこかへ消えた。どうやら別の世界で人助けをしているのだと暁の血盟のクルルから報告を受けている。相変わらずだなとシドは笑いこちらも青龍壁の調整等彼女がいない分できることをやろうと拳を振り上げる。
しかしそこから一切連絡のないアンナに想いを馳せるほど心が押しつぶされた。考えるくらいなら仕事をする方がマシだと考えた。ほぼ休みなしで作業を行っていたら周りに止められてしまう。そして休みを取れと必死な説得により決心した。アンナに言い渡された"宿題"を解けばいいのかと。ヒントは出切っているようなので記憶に引っかかった出来事を思い返す。
考えた末、"あの場所"にネロを連れて行けばいい。そのためにもまずは捕獲しようと決断し現在に至る。ネロそして将来的にアンナ用の捕獲装置を急ぎで作った。狙う時は確実に来るだろうロウェナ商会に顔を出すタイミング。事情を説明し、ポケットマネーからわざと日程を調整するよう"お願い"した。財布の痛みとほくほくとした彼女の笑顔は未だに忘れられない。その分もネロに請求してやると思いながら隙をついて捕獲装置のトリガーを引き無事特殊な網で簀巻きにした。恨み言と罵る声がどこか心が晴れやかになるなと思いながら怒鳴る。ここで笑顔になるのは少々アンナに影響されてしまっている気がした。
「おいちょっと手だけでも使わせろ。きっついンだが」
「動けたら意味ないでしょ」
舌打ちしながらバタバタと動くネロを見ながらジェシーはため息を吐く。シドはご満悦な笑顔を見せており、不気味だとネロは心の中で唾を吐いた。
ふと扉付近で影が動いたのが見えた。絶対"アイツ"だ、そうか心配して覗きに来たのかとニィと笑う。次の瞬間、網の一部が熱くなる。背中の方から焦げた匂いがした。あの男は微量の火を任意の場所に点けるのが得意である。少々離れている位置でも問題なく使えるのは本当に便利な存在だ。「あークソ!」と言いながらモゾモゾと動き床に擦り付け悟られないよう火を消す。シドの眉が一瞬動いたがネロは気付いていない。
「ちょっと領収書の山でキレたとはいえこンなことするのは趣味悪いんじゃねェか? しかもなんか笑顔で気持ち悪ィ」
「人聞きが悪いことを言うな俺にそんな趣味はないぞ。少々悔しがるお前を見れて嬉しいだけだな」
「あったら困るンだわ! 変な所メスバブーンに影響されてンなぁ!?」
これ以上拘束されるのも厄介だ、ネロはそう思いながら次は逃走のタイミングを伺う。無事焦がされた部分から穴が開き、小型ナイフも手にしたのでいつでも緩めることは可能だ。扉が勢い良く開く音が響き、シドらは振り向くとそこには誰もいない。このタイミングで行けということか、ニヤと笑顔を見せた。
「というわけでじゃあなガーロンド」
シドは異変に気付き手を伸ばすがもう遅かった。網を切り、「エル!」と叫ぶと部屋内に煙が充満する。そして手を引っ張られ気が付いたら部屋の外。フードを被った赤髪のヴィエラ族の男エルファーが笑顔を見せていた。「ほら行くぞ」と言いながら腕を引っ張り走り出す。
「おいネロ! クソッ!!」
シドのむせながら叫ぶ声が聞こえる。ゲラゲラ笑いながら走って行った。
◇
だが逃げ切ることは不可能だった。大量生産していたらしい、その捕獲装置を持って街中で社員が待ち構えていた。火で燃やしながら応戦したが、最終的に2人まとめて捕まりガーロンド社に運び込まれ転がされた。
目の前には煙臭いシドが仁王立ちしている。機嫌は最悪のようだ、当然かとため息を吐く。だがまさかここまで準備されていたとは予想だにしなかった。エルファーもフードをシドによって外され顔を出していることが心底嫌なようだ。「なあフードだけは被らせてくれないかい? 僕はシャイなんだよ」と声をかけているがジトッとした目で睨まれ舌打ちしている。
「で? ネロその男は何だ?」
「メスバブーンの兄」
「は? いや、な、アンナの? 何でお前と行動して」
「おうシド・ガーロンドくん妹とのセックスは気持ちよかったか?」
シドはむせる。ネロは「あーそれ挨拶代わりに聞くか」とゲラゲラ笑い周辺の社員はシドを凝視している。「遂にか」やら「そんな……」やら色んな小声が聞こえた。明日には社内で拡散されきるのだろうなと思うとネロは憐れみさえ覚える。
「親方もうヤることヤッてたなんて……」
「見損なったッスよぉ」
「待て誤解だ! というかまだ昼だぞデカい声で言わないでくれ!」
「誤解だァ? じゃあネロが襲撃された"つ・ぎ・の・ひ"に大寝坊してその混ざり合ったエーテルを見せていたのは何だ? ホー? 嘘つくのか? 余計に最低だと思わんか? ん?」
「どこで見てたんだ初対面だよな!? あーこの話題は終わりだ! 確かにお前はアンナの兄だ畜生!」
シドは顔を赤くしながら耳をグイと掴むが「いってぇ!」と言いながら怒った顔を見せるだけだ。なんだ弱いのはアンナだけなのかとふむと顎に指を置く。
「とにかくネロ、渡している報酬分と請求書分は働いてもらうからな」
「僕は貰ってないが?」
「ジェシーから俺の給料から取ってるって聞いてる……ってお前は部外者だろ?」
「ネロそれ本当か? 働いた僕の分け前はどうした?」
「アーそンな話もあった気がするナァ……痛ェ! だってオマエ金に興味なかっただろ!? おいガーロンドせめてレフを引き剥がせ!」
エルファーはモゾモゾと網の中でネロの手を思い切りつねりながら蹴っている。なんて醜い仲間割れだ、ジェシーは目を背けた。シドは座り首を傾げながらエルファーを見つめている。
レフ、それはオメガ検証の時に裏で動き回っていたというネロの"助手"的ポジションの男。結局姿を見る前に消えてしまっていた。
「何だお前がレフだったのか。えらく嫌われていると思ったらシスコン兄なら仕方ないな。―――少し聞きたいことがある」
「ア? 反省の言葉でも浮かんだか?」
「いやそれは今度にしてくれ。……ガレマルドに行ったことはあるか?」
ネロは目を見開きシドを見た。エルファーには言ってない情報だ、ここでバラされるのが一番困る。どう誤魔化すべきかと頭をフル回転させる前にエルファーは即答する。
「いや、行ったことはないな。イルサバードより北は僕の足では無理だし」
「その髪飾り、どういうものなんだ?」
「ア? 故郷の伝統的な細工の奴だよ。非売品だ」
シドはしばらく考え込んでいる。「これは、まさか偶然か?」とボソボソ呟いた。そして「おいネロ」と声をかける。
「ア?なンだよ」
「少々付いてきてほしい所がある。というのも今回お前を捕獲したのは青龍壁の調整ともう一つ目的があってな。まさか噂の兄まで釣れるとは思わなかったが。―――ジェシー休暇もらうぞ。2人共帰りに青龍壁へお前らまとめて放り込んでやるから覚悟しておくんだな」
「はぁ構いませんけど」
「あ? 僕は君の所で働くとは一言も言ってないが?」
無視して2人を放置して走り去って行く。「おいガーロンドせめて外してから行け!!」とネロは叫んでいるが聞こえていないようだ。
「会長、最近アンナと会えなくて何も考えたくないからと仕事詰めで休ませたかったの。ごめんなさい、2人とも」
「はーフラれたのか清々するな。あの子はどこに?」
「それが……別の世界に行っているようで詳しくはこっちも把握できてないの」
別の世界ィ? と2人の声が重なる。
「遂にあの光の戦士サマの人助けは別世界にまで行くようになったンだな」
「流石我が妹だその優しさを僕にも分けてほしいんだがな。―――で? ガーロンド君は僕たちをどこに連れて行こうとすると思う? レディ」
「うわごとのように宿題がって言ってたからそれ関係かと」
「アー何かバブーン本人も言ってたな」
ジェシーは網を切ってやりため息を吐く。エルファーは困った顔を見せ、「で? 僕をここで働かせたいのかい? レディ」と言う。ジェシーは「何言ってるの?」と言いながら肩を叩く。
「もう働いてるようなもんでしょ。給料正式に出してあげるから当分は働いてちょうだい」
「ハァ。まあネロがいるならしばらくは気ままに働かせてもらおう。僕は、エルファー・レフ・ジルダ。レフと呼んでくれればいい。妹にはバレたくないからね」
ニィと笑っているつもりだろうか酷くぶっきらぼうな顔である。ジェシーはネロに小声で「もしかして笑顔が下手な人?」と耳打ちすると「すぐに慣れるぜ」と笑っている。
この後、エルファーは社員に紹介されながら歩かされた。アンナの兄が現れたということで歓迎される空気に少し照れくさいような仕草をしている。本当の感情は分からない。この男は笑顔が致命的にヘタクソすぎた。
◇
「これで、宿題が終わればいいのだが」
シドは1人部屋で呟いた。手には白い髪飾りを握り締めている。アンナの兄だという人間が付けていたものと同じ形だ。
かつて星芒祭の時期にやったプレゼント交換会前夜。あの旅人が眠ったシドに握らせた再会の印。
これが意味するものとは、一つである。あの故郷で出会った人は―――。
まさかあの場所に行く前に宿題が終わってしまうのか? いやまだ答え合わせをするには材料が足りない。あの人関係で記憶に引っかかるものがあと1つ、あるのだから。
向かう場所はひんがしの国。初恋というアンナの心を縛り続ける命の恩人の、終の棲家―――
Wavebox
#ギャグ #エルファー関連 #シド