FF14の二次創作置き場
更新履歴
- 2024/11/26 旅人は魔導兵器を識りたい 新生
- 2024/11/19 "召し上がれ&quo… 新生
- 2024/11/15 溶けあうもの 紅蓮
- 2024/11/11 "11月11日&qu… 蒼天
- 2024/10/18 "嫉妬"、… 漆黒,
No.78, No.77, No.74, No.72, No.71, No.70, No.68[7件]
"髪飾り"
シドは白い髪飾りを撫でる。星芒祭の朝に握っていた"あの人"から貰った不思議な羽根と花の意匠が凝られたモノ。以降、1人ぼんやりとする時は引き出しの中から取り出し、思い返していた。
「忘れろ、って言われてもな」
ボソリと囁きあの無機質で中性的な声をした人の姿を思い浮かべる。再び会えたというのに、勿体ないことをした。次はしっかりと腕を掴んで逃がさないようにしよう、と握り締めた時だった。
「硬い……?」
髪飾りは柔らかな布素材を使われていたがある一点だけ硬い金属の物体を感じ取った。同じ白色で目立たないが明らかに後から取り付けられたものだということは分かる。慎重に取り出し、その物体を観察する。魔導装置のものでもない。何か彼のヒントに繋がるかもしれない、工房の解析装置に足を運ぶ。
◇
「明らかに最近の技術のものではないな」
ゴーグルを外し考え込む。小さな回路に極小なクリスタルが埋め込まれ、何らかを反応させるための装置だということは分かった。使われている金属と書かれた魔紋の形からアラグのものであると仮定し、データベースと睨み合う。
途中から暇そうだった社員数人を捕まえ調べているがそれらしきものは見当たらない。
「一部文献は未だに見つかってませんしもしかしたらその中にあるものかもしれないですよ」
「困ったな、じゃあ解析してこれからのデータとして追加してやれ。終わったら返せよ」
「構いませんけどこれはどこで」
シドはため息を吐き首を横に振った後席を外す。久々に電子タバコを取り出し煙を燻らせた。また手がかりがこの煙のようにすり抜けていくのかと思うと憂鬱になる。分野的にネロに聞けば何か知っているだろうか。否、捕まらない人間について考えても解決はしないかと霧散させた。
数日に及ぶ解析の結果、空気中のエーテルを取り入れ変換させるものだということが分かった。だからといって何か"あの人"の手がかりに繋がるわけもなく。
「アラグの技術は確かに奇妙なものも多いがそんなことも出来るのか、というかよく分かったな」
「親方が退室した後に一部ページ引っかかったんですよ。まあそれ以降は見つからなかったですが」
「うん? 欠けてるってことか?」
どうやら遥か昔に抜き取られているのだという。聖コイナク財団より先に発見した人間がいたのか、それとも盗掘家が価値も分からず偶然持って行ってしまったのか。かつて出し抜いた人間がいたのか現在の彼らに知る由はない。分かることは旅人であるあの人がそんなことをするわけがないという確信だった。
「先程まで聖コイナク財団の関係者と一緒に検証して分かったんです。しかしあくまでもこれは変換のみで出力するための装置も必要だと思いますがそれは分かりませんでした。―――本当にこれどこで手に入れたんです?」
「いや、まあ俺も偶然な」
兎に角返してもらうぞ、と装置を受け取り部屋に籠る。再び髪飾りに付け握り締める。
「アンタは一体何者なんだ。旅人さん―――」
◇
―――数年後。
「なあアンナ、この髪飾りなんだが」
「知らない、私は何も知りません」
「お前が一芝居打って俺にあげたものじゃないか」
街ごと俺を騙しやがってと持ち主アンナに突き付けると本人は露骨に嫌そうな顔を見せた。「捨ててると思ってたんだけどねえ」と言いながらそれを摘まみ空へ掲げる。「ただの故郷と私を繋ぐ印さ。何も価値はない」と吐き捨てシドに投げ返す。
「変な装置が付いていたんだがこれはお前の集落伝統のものなのか?」
「はい?」
シドはこれと固い部分をつついた。アンナは首を傾げる。そういえばよく見れば、材質が違う気がするとボソボソ呟きながら考え込む。
「そんなわけないじゃん。故郷ではただの髪飾りだったよ」
「いやこれはエーテル制御の装置らしくてな」
「うーん……?」
心当たり無いなあと呟きながら首を傾げている。その反応でで当時持っていたヒントではこの面倒な旅人をどうにかすることは出来なかったことを知り、苦笑しながら肩をすくめた。
しかしふとアンナは「あ」と声を出す。どうした、と聞くと「いや分かったとかそういうのではないけど」と笑う。
「昔初めてフウガに教えてもらった技を撃った時数日起きられなかったんだ」
急激な体内エーテル消費により生死を彷徨っていた時があり、死んだかと思ったら生きてたんだと語る。またリンドウかとシドは苦虫を嚙み潰したような表情を見せながらそれがどうしたと聞く。呪縛を解いたというのに無限に出てくる命の恩人で初恋の人でもあったリンドウ・フウガの話に対しては正直未だに嫉妬の感情に溢れていた。
「いやもしこれが最初から付いてたらさ、倒れなかったんじゃないかなって。だからその時以降に付けられたのかも」
「そうだったのか。―――ずっと付けてなかったのか?」
「いや肌身離さず付けてたよ。……あー確かに目が覚めた後にフウガがずっと付けとけって言ってたやつの一つだ。ついでに外にいた旧友も紹介してもらったかな」
金髪な人からからくり装置の作り方教えてもらったと答える姿にシドは頭痛がする。また変な知らない人間が出て来たという感想がよぎる。
いや、フウガはアンナの兄と旧知の仲であり、その更に知り合い、金髪。そういえば以前金髪でネロに雰囲気が似てる男がいたと語っていた。最後に『アラグの技術にクローンを作るものがあるんだと』と言い残し別れたという。まさか、アラグの技術を持って行った犯人は。
「自由か」
「え? シドどうした?」
「いや世間は狭いなと思っただけだ。何か言ってなかったか?」
「うーん昔の話だよ? いいおっさんだった。多分。お小遣いくれたしフウガとお揃いの板もくれた、し……あっ」
アンナの顔が一瞬で青くなりやっばと言いながら鞄を必死に押さえた。そして「よ、用事思い出したから帰る」と下がるがシドに腕を掴まれる。
「出すんだ」
「嫌。思い出の品を奪うの、最低」
「人聞きの悪い事を言うな。見せてほしいだけだ」
見るだけだよ? とアンナは鞄の隠しポケットから黒い物体を手に取った。トームストーンに酷似した薄い板だ。というか最近入手したものと同一品である。「リンドウもこれを?」とシドが聞くと「渡されてたねえ」と返ってきた。その板に手をかけ、引っ張るとアンナはちょっと! と言いながら取り合う形になる。
「ちょっと借りる」
「やだ」
「すぐ返す」
「それ絶対何かある時に言うやつ」
「壊さない」
「やだ」
「お願いだ」
「う……」
シドのお願いという言葉に弱いアンナは黙り込む。そして押し付けた。
「明日までに返して」
「分かった。すぐ戻る」
「はあ!?」
シドは受け取るや否や部屋のドアを勢い良く開きネロの元へ走って行く。アンナは大慌てで追いかける。待て、それは許可してない、返せというドスの利いた低い声が聞こえた。ビッグスと談笑していたネロに投げ「多分"アリス"の遺物でアラグ関係だ!」と言ってやると口笛を吹き走り去る。その後胸倉を掴まれ珍しく人前で顔を真っ赤にしながら説教されたがどこか気分が晴れやかだった。
―――解析の結果、厳重に暗号化されたデータが保存してあるトームストーンだということが分かった。その後、アンナの元に返されたのは3日後になる。シドはアンナの機嫌を直すのに更に3日かかった。
「すまない、いや世紀の発見の予感がしてな。あの、本当に悪かった」
「まだパスワード総当たり中なンだがありゃぜってェいいモンだぜ。メスバブーンにしたァやるじゃねェか」
「……思い出の品をそういう扱いするのサイテー」
「そういえば髪飾りについていたのが持っとけと言われたヤツの一つだと言っていたがまだあるよな? いやあの髪飾りからエーテルを取り出すための何らかのものはあるだろ、ちょっと見せてほしいんだが」
「あっても言うわけないでしょ莫迦?」
ゴミを見る目でこちらを睨む行為を必要経費と言い切るネロと小さくなるシドという対照的な風景をガーロンド社員たちは遠巻きに見つめていた。
#シド光♀ #リンドウ関連
"悪夢"2
注意
自機出番なし。"捕獲"の次の日の話。
―――夢を見た。遠い過去の友人が立っている。
あの男が僕に久しぶりだなと声をかけて来た。
「なんだ生きてたのか」
「俺様を勝手に殺すんじゃねえよ」
やれやれとその金髪を揺らしながらため息を吐く。相変わらず真っ白い肌が心配になるミコッテだ。
「やっと完成したんだ 見てくれよ」
"コイツ"は僕に手を広げながら笑いかける。なんだよ、って言ってやると周りから気配を感じた。
―――金髪の女が1人、2人、3人。いやもっといる。同じ顔をした、"コイツ"の恋人。
「ほら俺様の女を蘇らせたんだ。勿論褒めてくれるよな? エルファー」
◇
「エル!!!!」
見知った人間の呼ぶ声でハッと目が覚める。飛空艇に揺られ、エルファーは周りを見回す。いない、夢だったようだ。流れる汗をぬぐい、血でないことも確認する。
「どうしただいぶうなされていたぞレフ」
「あー……ちょっと悪夢をな」
頭を掻きながら起き上がる。長い船路の途中で眠ってしまったらしい。
オメガ検証で好き勝手して逃げたら捕まってしまった次の日。シドに連れられネロと共にひんがしの国へと向かっていた。着いてからも移動が長いということで先に休むかという話になった。結局眠れるわけがないと言いながら寝ていた事実に苦笑する。ふと夢の男を思い浮かべてからネロをぼんやり見つめた。ついポロリと言葉をこぼしてしまう。
「ネロ、君が狂いきってなくてよかった」
「ハァ?」
「いや、久々に僕の友人が出てくる夢を見たんだが……これがものすごい狂ってた奴でな」
彼の名はア・リス・ティア。エルファーがこれまで出会った中では一番の天才であった。勿論目の前の2人より優れていると胸を張って言える。一言こういうものが欲しいと言うとどんな無茶でも最終的に理論を確立できる才能に憧れた面もあった。社会不適合者だったが世話をしてくれる奇麗な恋人がいたらしい。それなりに幸せな生活を送っていたようだがある時事故で失ってしまった。
そんな男に出会ったのは妹が誕生する少し前。修行からこっそり抜け出してイルサバード大陸にて趣味である遺跡探訪の途中だった。彼は恋人を蘇らせるために本場の錬金術を学びに来ていたのだという。
「うわよく聞くやつじゃねェか」
「ああ確かウルダハの錬金術師ギルドのマスターもそういうことしようとしてたとアンナが言ってたな」
「でも早いうちに彼女そのものを蘇らせるのは無理だと察したみたいでねぇ。まあ並行して行っていた別の研究の手伝いをしてから別れたんだ。僕と、アリスと、あとまあ1人いたんだがそれは関係ないから置いておこう」
思い出すだけで虫唾が走る男だからなと笑ってやるとシドとネロは顔を見合わせていた。そして彼が別れる際に言っていた言葉が未だに心に刺さっていたと話す。それは『アラグの技術にクローンを作るものがあるんだと、ちょっと深堀りしてくるわ』だった。これがエルファーが聞いた最後の言葉だった。そこから何となく会いたくないから会ってない。
「うわ、ヤバいヤツじゃないか」
「バカだろ? そのアリスって男はクローンでナニしようとしてたンだよ」
「未だに無限に増えるその恋人を見せびらかす夢を見る。死んで……たらいいな」
「怖いこと言うンじゃねェぞ」
エルファーは空を見上げふっと笑う。確かに怖いのだが不老不死の術が生まれたという話は聞いたことがないので「安心しろ」と言った。
「出会ったのは妹が生まれるより前って言っただろう? 今も生きてたら120超えてる」
「レフ、お前何歳なんだ?」
「お前らの4倍位だよ? ちなみに妹は3桁ではないからな?」
シドとネロの『ジジィ』という言葉が重なった。エルファーはにこりと笑いじゃあ少しは敬えよ? と言いながら手をポンと叩く。シドの顔を至近距離で見つめ、あのムカつく男の顔を浮かべた。シドは狼狽えながら下がっている。
「成程ガーロンド君がムカつくヤツだと思った理由はあのクソ野郎と似てるからだな! ネロも最初アリスと重なったからそんなに違和感なく近付けたのね。あぁ納得した」
「オレをさっき話したヤツと同カテゴリにしやがったなオマエ!?」
「はースッキリしたそういうことか」
「いや俺もさりげなく罵られたんだがそのクソ野郎とは?」
シドは眉間にしわを寄せながら言う姿に対し「そうそうその顔が滅茶苦茶似てるんだよ」と笑い声をあげる。顔は相変わらずクシャっとしているのみで笑顔ではないのだが。
その男はかつてアリスと一緒に出会ったヒトだった。真面目で正義感が強くて不愛想のお人好しだったとため息を吐く。
「クソ野郎要素ないじゃないか」
「アレだな、同族嫌悪じゃねェか?」
「一緒にするなよ? アレはな、自分で習得しておいて得てしまった圧倒的な力に怯えて全て捨てて逃げたアホなんだわ。俺は旅人だーとか言ってさ。そういやアイツも白くてヒゲだった。思い出すだけでムカつく」
「理不尽すぎないか?」
この時シドは言葉にすることができなかった。『それどちらかというとお前の妹では?』と。絶対に口に出せばヒゲを燃やされることは分かる。ふとネロの方に目をやると同じことを考えているのかエルファーからさりげなく目を逸らしていた。
―――エルファーはまだ知らない。この後、輪にかけて"ムカつく"真実が待ち受けていることに。
#エルファー関連 #シド
自機出番なし。"捕獲"の次の日の話。
―――夢を見た。遠い過去の友人が立っている。
あの男が僕に久しぶりだなと声をかけて来た。
「なんだ生きてたのか」
「俺様を勝手に殺すんじゃねえよ」
やれやれとその金髪を揺らしながらため息を吐く。相変わらず真っ白い肌が心配になるミコッテだ。
「やっと完成したんだ 見てくれよ」
"コイツ"は僕に手を広げながら笑いかける。なんだよ、って言ってやると周りから気配を感じた。
―――金髪の女が1人、2人、3人。いやもっといる。同じ顔をした、"コイツ"の恋人。
「ほら俺様の女を蘇らせたんだ。勿論褒めてくれるよな? エルファー」
◇
「エル!!!!」
見知った人間の呼ぶ声でハッと目が覚める。飛空艇に揺られ、エルファーは周りを見回す。いない、夢だったようだ。流れる汗をぬぐい、血でないことも確認する。
「どうしただいぶうなされていたぞレフ」
「あー……ちょっと悪夢をな」
頭を掻きながら起き上がる。長い船路の途中で眠ってしまったらしい。
オメガ検証で好き勝手して逃げたら捕まってしまった次の日。シドに連れられネロと共にひんがしの国へと向かっていた。着いてからも移動が長いということで先に休むかという話になった。結局眠れるわけがないと言いながら寝ていた事実に苦笑する。ふと夢の男を思い浮かべてからネロをぼんやり見つめた。ついポロリと言葉をこぼしてしまう。
「ネロ、君が狂いきってなくてよかった」
「ハァ?」
「いや、久々に僕の友人が出てくる夢を見たんだが……これがものすごい狂ってた奴でな」
彼の名はア・リス・ティア。エルファーがこれまで出会った中では一番の天才であった。勿論目の前の2人より優れていると胸を張って言える。一言こういうものが欲しいと言うとどんな無茶でも最終的に理論を確立できる才能に憧れた面もあった。社会不適合者だったが世話をしてくれる奇麗な恋人がいたらしい。それなりに幸せな生活を送っていたようだがある時事故で失ってしまった。
そんな男に出会ったのは妹が誕生する少し前。修行からこっそり抜け出してイルサバード大陸にて趣味である遺跡探訪の途中だった。彼は恋人を蘇らせるために本場の錬金術を学びに来ていたのだという。
「うわよく聞くやつじゃねェか」
「ああ確かウルダハの錬金術師ギルドのマスターもそういうことしようとしてたとアンナが言ってたな」
「でも早いうちに彼女そのものを蘇らせるのは無理だと察したみたいでねぇ。まあ並行して行っていた別の研究の手伝いをしてから別れたんだ。僕と、アリスと、あとまあ1人いたんだがそれは関係ないから置いておこう」
思い出すだけで虫唾が走る男だからなと笑ってやるとシドとネロは顔を見合わせていた。そして彼が別れる際に言っていた言葉が未だに心に刺さっていたと話す。それは『アラグの技術にクローンを作るものがあるんだと、ちょっと深堀りしてくるわ』だった。これがエルファーが聞いた最後の言葉だった。そこから何となく会いたくないから会ってない。
「うわ、ヤバいヤツじゃないか」
「バカだろ? そのアリスって男はクローンでナニしようとしてたンだよ」
「未だに無限に増えるその恋人を見せびらかす夢を見る。死んで……たらいいな」
「怖いこと言うンじゃねェぞ」
エルファーは空を見上げふっと笑う。確かに怖いのだが不老不死の術が生まれたという話は聞いたことがないので「安心しろ」と言った。
「出会ったのは妹が生まれるより前って言っただろう? 今も生きてたら120超えてる」
「レフ、お前何歳なんだ?」
「お前らの4倍位だよ? ちなみに妹は3桁ではないからな?」
シドとネロの『ジジィ』という言葉が重なった。エルファーはにこりと笑いじゃあ少しは敬えよ? と言いながら手をポンと叩く。シドの顔を至近距離で見つめ、あのムカつく男の顔を浮かべた。シドは狼狽えながら下がっている。
「成程ガーロンド君がムカつくヤツだと思った理由はあのクソ野郎と似てるからだな! ネロも最初アリスと重なったからそんなに違和感なく近付けたのね。あぁ納得した」
「オレをさっき話したヤツと同カテゴリにしやがったなオマエ!?」
「はースッキリしたそういうことか」
「いや俺もさりげなく罵られたんだがそのクソ野郎とは?」
シドは眉間にしわを寄せながら言う姿に対し「そうそうその顔が滅茶苦茶似てるんだよ」と笑い声をあげる。顔は相変わらずクシャっとしているのみで笑顔ではないのだが。
その男はかつてアリスと一緒に出会ったヒトだった。真面目で正義感が強くて不愛想のお人好しだったとため息を吐く。
「クソ野郎要素ないじゃないか」
「アレだな、同族嫌悪じゃねェか?」
「一緒にするなよ? アレはな、自分で習得しておいて得てしまった圧倒的な力に怯えて全て捨てて逃げたアホなんだわ。俺は旅人だーとか言ってさ。そういやアイツも白くてヒゲだった。思い出すだけでムカつく」
「理不尽すぎないか?」
この時シドは言葉にすることができなかった。『それどちらかというとお前の妹では?』と。絶対に口に出せばヒゲを燃やされることは分かる。ふとネロの方に目をやると同じことを考えているのかエルファーからさりげなく目を逸らしていた。
―――エルファーはまだ知らない。この後、輪にかけて"ムカつく"真実が待ち受けていることに。
#エルファー関連 #シド
"口調"
注意
漆黒5.0終了後想いを伝えあってから間もない頃のシド光♀です。
アンナはネロ相手の時だけ話し方が変わる。さん付けしながらも子供っぽく喋り、対等な位置に立っている。俺はというと周辺と変わらない最低限のことだけ喋り笑顔を浮かべるだけなのに。アンナの隣に立っていてもいいのだろうか。本当はネロの方が好きなのではないか? 正直な話をネロにぶつけると鼻で笑われてしまう。
「オレが? アンナを? ない、絶対にありえねェ。メスバブーンと恋仲とか絶対無理に決まってンだろ」
「そこまでゴリラではないぞ失礼なことを言うな」
ネロ行きつけのバーにて俺は最近浮かんだ自分の悩みを打ち明ける。アンナのことが分からない、と。するとゲラゲラと笑いだす。
「オマエが分かンねェならこの世で生きてるヤツら誰一人理解できてねェ。少なくともあいつに近いのはオマエだろ。ていうかその話本人にしろよ何でオレにすンだよ」
「まあそれはそうなんだがどうやってそんな話し方するような関係になったか知りたくてな」
「何もしちゃいねェぞ。どちらかというと舐められてる感じだぜ? アーでも一度殴り合いで舐めプされて負けた身だしオマエもそうすりゃいンじゃね」
確かにそうか。いやアンナと喧嘩なんてありえない。口でも力でも負ける未来が見える。
「大体あの喋り方は兄のマネしてるだけじゃねェか? どこにうらやましい要素があンだよ」
知ったことかとこの日はため息を吐きながらネロに嫉妬の感情をぶつけ終わった。
◇
「てのがな」
「へぇシドって真っ当な嫉妬もするんだ。意外」
ネロは恨み言をアンナにぶつけている。なんとかしろ、と睨むがそんなこと言われてもと返される。
「そもそもネロサンと話してる時の口調が本来の自分とは限らないでしょ」
「はーそう来たか。じゃあガーロンド相手が本来のか?」
「……絶対違うねぇ。ていうか本来の口調というものが分からず」
グリダニアに着くまでどういう生活してたか知ってるでしょ? と言うとネロは「アー」と肩をすくめた。
「人との話し方なんて相手によって変えるに決まってるじゃん。ネロサンだって上官相手とそれ以外で態度違ったよね?」
「上下関係持って来ンのは反則じゃねェか?」
「素というものを出すのって諸刃の剣。仮面を使い分けて世渡りするのが人間ってやつだろう?」
まあバカ正直なシドと違ってボクは仮面しか持ってないって感覚だけどねと苦笑しているのを見てネロはため息を吐く。煙草をくわえるとアンナは指を向け、「バァン」と火を灯す。兄妹揃って着火剤いらずだなァと思いながらふと目をやるとシドがいつの間にか立っていた。毎回タイミングが悪すぎると眉間に指を当てる。
「それ、日頃からオマエの背後にいるやつにな?」
「え、何言って……あ、シド」
あまりよろしくない機嫌のシドにアンナは困ったような笑顔を見せた。一息ついてネロに手を振った後先手を取るようにシドの腕を引っ張り部屋を出た。
◇
仮眠室に使用中の札を付け、扉を閉め鍵をかける。そして固いベッドにシドを倒し上に乗る。
「あ、アンナ? まだ昼だぞ」
「言いたいこと、ある?」
眉間、頬、首元、胸に口付けた。これはシド相手には本音を引き出す手段として効率的だと判断している。他の相手にするはずがない。
「私がこれをネロサンにすると思う?」
「し、しないしさせん」
「ベッドの上で他人行儀だったことある?」
「……ない」
「普段から人前でイチャつけって言いたい?」
「わ、悪かった。そういうことじゃなくてな」
じゃあどういうこと? と耳元で囁いてやる。髪の毛を優しく撫で言葉を待つ。
「もっと親しくなりたい。本当のアンナを知りたいんだ。お前の隣に立つにふさわしい男かも分からない」
「ばーか」
「真剣に悩んでるんだぞ?」
「……真剣に莫迦」
鈍感かと頬をつねる。最大限の扱いをしているつもりなんだがと口には出さず胸の内を話してやる。
「誰がネロサンの前では素って言った? あの話し方する相手は他にもいる。あと最低限にしか喋らないのは旅人を印象に残さない名残。それに」
「それに?」
「……あなたが見て来た自分がそんな自分。イメージ崩したくないし幻滅されたくない。あと急に態度変えたら普通は驚き」
シドは目を丸くしている。そしてくくくと笑った。笑うなと言ってやると突然世界が反転する。上に乗り、垂らしている髪に口付けている。そして「すまなかった」と顎を固定しかぶりつくようにキスをした。
「優しくする所では?」
「バカと言われたからな」
「そっちかあ」
「よくイタズラしてゲラゲラ笑っておいて今更幻滅とか言うんじゃない」
襟元を緩められ、噛みつかれる。アンナは目を見開き「痛っ」と声を漏らした。首元がゾワリと粟立ち、本能的にこれはヤバいと察知しながら思い切り手刀を落とす。
「仕事中!」
「アンナが悪いだろ明らかに―――ぐっ!?」
「話を聞く!」
痛みに悶絶するシドから"ヤバイ予感がする"雰囲気が消え安堵した。趣向を変えようとニィと笑顔で声のトーンを落とし言ってやる。
「はいはいボクが悪かったですよーだ。まったくキミはいつサカろうとするか分かんないねぇ」
「う……いやそれはお前が」
「今日はレヴナンツトールに1日滞在するから働いてきなよ」
パッとしない感じになってしまったと思いながら相手の反応を伺うと笑顔になっている。分かりやすい顔だなあと目を細めながら「ほらジェシーに怒られるよ」と送り出してやる。
シドが立ち去った後、天井を見上げながらため息を吐いた。一拍置いた後、「はー人間って分かんね」と浮かぶ笑顔を抑えることができなくなっていた。あの男はとても面白い。人と関わるために立てる予想が彼相手だと結構な割合で最終的に外れてしまう。まだまだ兄と違って未熟だなと緩む口元を引き締めた。
#シド光♀
漆黒5.0終了後想いを伝えあってから間もない頃のシド光♀です。
アンナはネロ相手の時だけ話し方が変わる。さん付けしながらも子供っぽく喋り、対等な位置に立っている。俺はというと周辺と変わらない最低限のことだけ喋り笑顔を浮かべるだけなのに。アンナの隣に立っていてもいいのだろうか。本当はネロの方が好きなのではないか? 正直な話をネロにぶつけると鼻で笑われてしまう。
「オレが? アンナを? ない、絶対にありえねェ。メスバブーンと恋仲とか絶対無理に決まってンだろ」
「そこまでゴリラではないぞ失礼なことを言うな」
ネロ行きつけのバーにて俺は最近浮かんだ自分の悩みを打ち明ける。アンナのことが分からない、と。するとゲラゲラと笑いだす。
「オマエが分かンねェならこの世で生きてるヤツら誰一人理解できてねェ。少なくともあいつに近いのはオマエだろ。ていうかその話本人にしろよ何でオレにすンだよ」
「まあそれはそうなんだがどうやってそんな話し方するような関係になったか知りたくてな」
「何もしちゃいねェぞ。どちらかというと舐められてる感じだぜ? アーでも一度殴り合いで舐めプされて負けた身だしオマエもそうすりゃいンじゃね」
確かにそうか。いやアンナと喧嘩なんてありえない。口でも力でも負ける未来が見える。
「大体あの喋り方は兄のマネしてるだけじゃねェか? どこにうらやましい要素があンだよ」
知ったことかとこの日はため息を吐きながらネロに嫉妬の感情をぶつけ終わった。
◇
「てのがな」
「へぇシドって真っ当な嫉妬もするんだ。意外」
ネロは恨み言をアンナにぶつけている。なんとかしろ、と睨むがそんなこと言われてもと返される。
「そもそもネロサンと話してる時の口調が本来の自分とは限らないでしょ」
「はーそう来たか。じゃあガーロンド相手が本来のか?」
「……絶対違うねぇ。ていうか本来の口調というものが分からず」
グリダニアに着くまでどういう生活してたか知ってるでしょ? と言うとネロは「アー」と肩をすくめた。
「人との話し方なんて相手によって変えるに決まってるじゃん。ネロサンだって上官相手とそれ以外で態度違ったよね?」
「上下関係持って来ンのは反則じゃねェか?」
「素というものを出すのって諸刃の剣。仮面を使い分けて世渡りするのが人間ってやつだろう?」
まあバカ正直なシドと違ってボクは仮面しか持ってないって感覚だけどねと苦笑しているのを見てネロはため息を吐く。煙草をくわえるとアンナは指を向け、「バァン」と火を灯す。兄妹揃って着火剤いらずだなァと思いながらふと目をやるとシドがいつの間にか立っていた。毎回タイミングが悪すぎると眉間に指を当てる。
「それ、日頃からオマエの背後にいるやつにな?」
「え、何言って……あ、シド」
あまりよろしくない機嫌のシドにアンナは困ったような笑顔を見せた。一息ついてネロに手を振った後先手を取るようにシドの腕を引っ張り部屋を出た。
◇
仮眠室に使用中の札を付け、扉を閉め鍵をかける。そして固いベッドにシドを倒し上に乗る。
「あ、アンナ? まだ昼だぞ」
「言いたいこと、ある?」
眉間、頬、首元、胸に口付けた。これはシド相手には本音を引き出す手段として効率的だと判断している。他の相手にするはずがない。
「私がこれをネロサンにすると思う?」
「し、しないしさせん」
「ベッドの上で他人行儀だったことある?」
「……ない」
「普段から人前でイチャつけって言いたい?」
「わ、悪かった。そういうことじゃなくてな」
じゃあどういうこと? と耳元で囁いてやる。髪の毛を優しく撫で言葉を待つ。
「もっと親しくなりたい。本当のアンナを知りたいんだ。お前の隣に立つにふさわしい男かも分からない」
「ばーか」
「真剣に悩んでるんだぞ?」
「……真剣に莫迦」
鈍感かと頬をつねる。最大限の扱いをしているつもりなんだがと口には出さず胸の内を話してやる。
「誰がネロサンの前では素って言った? あの話し方する相手は他にもいる。あと最低限にしか喋らないのは旅人を印象に残さない名残。それに」
「それに?」
「……あなたが見て来た自分がそんな自分。イメージ崩したくないし幻滅されたくない。あと急に態度変えたら普通は驚き」
シドは目を丸くしている。そしてくくくと笑った。笑うなと言ってやると突然世界が反転する。上に乗り、垂らしている髪に口付けている。そして「すまなかった」と顎を固定しかぶりつくようにキスをした。
「優しくする所では?」
「バカと言われたからな」
「そっちかあ」
「よくイタズラしてゲラゲラ笑っておいて今更幻滅とか言うんじゃない」
襟元を緩められ、噛みつかれる。アンナは目を見開き「痛っ」と声を漏らした。首元がゾワリと粟立ち、本能的にこれはヤバいと察知しながら思い切り手刀を落とす。
「仕事中!」
「アンナが悪いだろ明らかに―――ぐっ!?」
「話を聞く!」
痛みに悶絶するシドから"ヤバイ予感がする"雰囲気が消え安堵した。趣向を変えようとニィと笑顔で声のトーンを落とし言ってやる。
「はいはいボクが悪かったですよーだ。まったくキミはいつサカろうとするか分かんないねぇ」
「う……いやそれはお前が」
「今日はレヴナンツトールに1日滞在するから働いてきなよ」
パッとしない感じになってしまったと思いながら相手の反応を伺うと笑顔になっている。分かりやすい顔だなあと目を細めながら「ほらジェシーに怒られるよ」と送り出してやる。
シドが立ち去った後、天井を見上げながらため息を吐いた。一拍置いた後、「はー人間って分かんね」と浮かぶ笑顔を抑えることができなくなっていた。あの男はとても面白い。人と関わるために立てる予想が彼相手だと結構な割合で最終的に外れてしまう。まだまだ兄と違って未熟だなと緩む口元を引き締めた。
#シド光♀
20240127メモ
漆黒編上げてます。あとマルケズ時代の自機視点のお話も上げました。まずは後者のお話。
よくシドがアンナが過去に会った旅人だと分かったらバグるぞという表現をしていましたが実はとっくの昔にアンナが通った道だよっていう話です。
アンナ視点のマルケズのお話をいつか書きたいと思っていたのできっかけを考えてたら過去に書いてた話で与えられた部屋の場所を忘れて外にいたというのがあったのを思い出したのでそれを採用しました。
シドは初めてアンナに渡したプレゼントというのは星芒祭の時の髪飾りだと思っていましたが、実は目印として徹夜で手作りしたドアに付けた銀色の飾りだった。本人はそれを彼女のアパルトメントの扉に付けているのを見るまで忘れていたけどって感じ。だから手作りのからくり装置を準備していたんですね。後付け設定ですけど。
この地点で既に少しだけ意識はシドに向いていて、ガルーダ戦前にあの寒空に出会った少年だったと分かり衝撃を受けます。そして無意識にアピールし始めるんですね。本人はあまりバレたくないのに何やってるんだ! ってバグってます。この地点で分かってたら寄り添うつもりだったけど覚えてなかったら覚えてなかったでそちらの方が絶対に幸せだと思っているので葛藤しています。
というのもあってこのドア飾りが最初の彼女を導く星だったわけですね。お守りとして鞄に仕舞い込んでいました。
漆黒後に実際ミスト・ヴィレッジにアパルトメントを購入してたんですね。そのネタで色々書いたので扉に目印としてまた付けたことにしましたって感じ。何度か休暇時にシドも訪れていて、ある日何か見覚えあるぞ? ってなり思い出しました。本人は知らん覚えてないと一点張りしますがまあね。甘い感じのオチに出来たので満足です。
以下漆黒編。
紅蓮以降の仕込みがほぼ終わったので書き始めています。まず前にも書いたように水晶公はアンナの過去を全て知っている設定です。
エメトセルクの話。アンナが露骨に嫌な顔をするので心配した水晶公+暁のメンバーが守護ってくれています。アンナ本人は胃の痛みが軽減されて助かると思っています。
2人が出会ったのは50年程度前のガレマール帝国。次に捕まったらキミの言うことを聞いてやるよという約束を交わします。しかし鮮血の赤兎であった自分は5年ほど前に死んだしソル帝は死んだからノーカンだよね!? と挙動不審になっています。エメトセルクはもうコイツは用済みだし仲間消滅させたしバケモノがよと思っています。
そして何度か出した『奥底に闇の杭が打たれ、何者かの手によって一度エーテル、というより魂そのものに操作を施されたような形跡がある』ってやつですね。これは『一部だけ』エメトセルクがやったことになります。出会った時のアンナ、その時はガーネットと名乗りましたがその時の彼女はひどいものでした。あの人の魂が辛うじて見えるほど恨みと憎しみに支配されこのままでは飲み込まれて本物のバケモノになる所を彼が剥がしたのです。それが旅人は人に擬態するであった『心が引き裂かれるように痛かったけど何かこびりついた憑き物を落としてくれた』ですね。その時に少しだけ仕込んだりもしましたが初夜にまでは至りませんでした。
ちなみにこの時はアンナはまだ身長も胸囲も最高ではありませんでした。彼に会った以降で急成長しました。創造魔法でもかけられたんですかね?畳む
ちょいちょい書いた自機兄の話。
新生以降に裏で登場し、アンナの詳しい空白の過去に迫る話を中心に仕込みを行っています。お相手はネロで、蒼天終了後に一緒に行動する流浪の技術者として登場します。ぼちぼち出身の集落の異常さも出てきたりしますが、基本的にそういう"お仕事"をし出すのは性別が発現し、成人の儀を行ってから。なので性別が分かってほぼすぐに集落を飛び出したアンナは綺麗な存在です。それ位本来は淡白で効率的に仕事を行う不愛想なヴィエラが兄のエルファーです。
漆黒開始後にガーロンド社に正式に出入りするようになり、アンナにバレないように立ち回るように。ネロとは信頼関係で、シドは一方的に目の敵にするがまあ嫌いじゃないって感じの印象。
とりあえずnot光の戦士の話なのでタグだけ付けて拡張名の検索では出ないようにしています。読みたい人だけどうぞ。畳む
よくシドがアンナが過去に会った旅人だと分かったらバグるぞという表現をしていましたが実はとっくの昔にアンナが通った道だよっていう話です。
アンナ視点のマルケズのお話をいつか書きたいと思っていたのできっかけを考えてたら過去に書いてた話で与えられた部屋の場所を忘れて外にいたというのがあったのを思い出したのでそれを採用しました。
シドは初めてアンナに渡したプレゼントというのは星芒祭の時の髪飾りだと思っていましたが、実は目印として徹夜で手作りしたドアに付けた銀色の飾りだった。本人はそれを彼女のアパルトメントの扉に付けているのを見るまで忘れていたけどって感じ。だから手作りのからくり装置を準備していたんですね。後付け設定ですけど。
この地点で既に少しだけ意識はシドに向いていて、ガルーダ戦前にあの寒空に出会った少年だったと分かり衝撃を受けます。そして無意識にアピールし始めるんですね。本人はあまりバレたくないのに何やってるんだ! ってバグってます。この地点で分かってたら寄り添うつもりだったけど覚えてなかったら覚えてなかったでそちらの方が絶対に幸せだと思っているので葛藤しています。
というのもあってこのドア飾りが最初の彼女を導く星だったわけですね。お守りとして鞄に仕舞い込んでいました。
漆黒後に実際ミスト・ヴィレッジにアパルトメントを購入してたんですね。そのネタで色々書いたので扉に目印としてまた付けたことにしましたって感じ。何度か休暇時にシドも訪れていて、ある日何か見覚えあるぞ? ってなり思い出しました。本人は知らん覚えてないと一点張りしますがまあね。甘い感じのオチに出来たので満足です。
以下漆黒編。
紅蓮以降の仕込みがほぼ終わったので書き始めています。まず前にも書いたように水晶公はアンナの過去を全て知っている設定です。
エメトセルクの話。アンナが露骨に嫌な顔をするので心配した水晶公+暁のメンバーが守護ってくれています。アンナ本人は胃の痛みが軽減されて助かると思っています。
2人が出会ったのは50年程度前のガレマール帝国。次に捕まったらキミの言うことを聞いてやるよという約束を交わします。しかし鮮血の赤兎であった自分は5年ほど前に死んだしソル帝は死んだからノーカンだよね!? と挙動不審になっています。エメトセルクはもうコイツは用済みだし仲間消滅させたしバケモノがよと思っています。
そして何度か出した『奥底に闇の杭が打たれ、何者かの手によって一度エーテル、というより魂そのものに操作を施されたような形跡がある』ってやつですね。これは『一部だけ』エメトセルクがやったことになります。出会った時のアンナ、その時はガーネットと名乗りましたがその時の彼女はひどいものでした。あの人の魂が辛うじて見えるほど恨みと憎しみに支配されこのままでは飲み込まれて本物のバケモノになる所を彼が剥がしたのです。それが旅人は人に擬態するであった『心が引き裂かれるように痛かったけど何かこびりついた憑き物を落としてくれた』ですね。その時に少しだけ仕込んだりもしましたが初夜にまでは至りませんでした。
ちなみにこの時はアンナはまだ身長も胸囲も最高ではありませんでした。彼に会った以降で急成長しました。創造魔法でもかけられたんですかね?畳む
ちょいちょい書いた自機兄の話。
新生以降に裏で登場し、アンナの詳しい空白の過去に迫る話を中心に仕込みを行っています。お相手はネロで、蒼天終了後に一緒に行動する流浪の技術者として登場します。ぼちぼち出身の集落の異常さも出てきたりしますが、基本的にそういう"お仕事"をし出すのは性別が発現し、成人の儀を行ってから。なので性別が分かってほぼすぐに集落を飛び出したアンナは綺麗な存在です。それ位本来は淡白で効率的に仕事を行う不愛想なヴィエラが兄のエルファーです。
漆黒開始後にガーロンド社に正式に出入りするようになり、アンナにバレないように立ち回るように。ネロとは信頼関係で、シドは一方的に目の敵にするがまあ嫌いじゃないって感じの印象。
とりあえずnot光の戦士の話なのでタグだけ付けて拡張名の検索では出ないようにしています。読みたい人だけどうぞ。畳む
「いいじゃないか」
アンナは壁に追いやられながら威嚇するがシドはどこ吹く風かと手を伸ばしている。眉間に皴を寄せながら必死にその手を握りしめ抵抗した。
そう、アンナは耳を優しく触れられる行為に対して非常に弱く、"シドに"触られるとほぼ"終わり"となる。なので手段を選ばず何としても手を出すシドと度々小競り合いが起こった。今回は仕事疲れで戻って来たシドが癒してほしいと言うので、"多少の"スキンシップを許可した所まではいい。しばらく首や顎、頬を撫でまわしていたが突然耳に手をかけようとしたので、耳だけはやめろと拒否する。
「触ってもいいってさっき言ってたじゃないか」
「してない。許可した個所は顔」
「頭部の一部じゃないか」
かすってない! とシドの両手を片手で掴みながら額のゴーグルを外し指さす。
「あなた以前第三の眼で遊ぶの拒否したでしょ?」
「お前のパワーで何かされたら命の危機だろ」
「失礼な。耳だって命の危機と隣り合う器官」
「力加減位できるさ」
埒が明かない。他の話題を探して有耶無耶にするかとアンナは判断し、床に転がす。今回はきちんと受け身を取ったようだ。胸板の上に乗り腕を押さえる。
「誘ってるのか?」
「違う」
「お前知ってるぞ、以前人に触らせてただろ耳」
どこから話が漏れたんだとアンナはため息を吐く。グ・ラハとレヴナンツトールを歩いていると通りすがりの子供が声をかけて来た。ヴィエラが珍しかったのか長い耳に興味を持っていたので仕方なく触らせる。すると思い切り掴み引っ張られたので、頬を引っ張りながら笑顔を見せてやった。喋った犯人はグ・ラハだなと思いながら適当に心を抉る言葉を吐く。
「シドの触り方おっさん臭くて嫌い」
シドの表情が固まる。よし、このまま傷付いてろとため息を吐き畳みかける。
「お子様が手加減無しで掴んで、ビックリして頬を引っ張った。一度だけ。何度もせがむおっさんとは大違い」
「ぐ。いや待てお前の方が遥かに年上じゃないか」
「まあ君が子供と仮定しても絶対不許可」
悲しげな表情を見せた。そこまで傷付くのか? と苦笑するがそこで手を差し伸べてはいけない。ここから痛い目に何度も遭って来た。
シドが耳を狙う理由は簡単である。普段は全く動かない耳を"シドが"触り続けるとふにゃりと垂れ下がってしまうからだ。アンナは相手に感情を読まれないよう極力耳を反応させない修行を行った。そんなアンナの弱った姿を見て自分の精神を癒やそうとする悪意と下心が丸見えなので許可は与えない。勿論相当なことがない限り絶対に他人が触ろうとすると反射的に刀に手をかける。アンナにとってはこれでも優しく断っているつもりだった。
「人の嫌がるとこ狙うの最低」
「う」
「純粋にあなたに会うために来たのに残念」
「す、すまん」
「もうジェシーやネロサンとお茶飲んで帰る。明日は折角の休みなのに残念だねえ」
ちらとシドを見るといつの間にか泣きそうな顔が消え、少々機嫌が悪い顔になっている。またやってしまったと慌てながら訂正する。
「いやさすがに帰るのは冗談」
「本当か?」
「私、嘘はつかない」
機嫌を取るように頬に口付けてやる。「ん」と舌を差し出してきたのでそのまま舌を絡めてやった。指を絡め合い、目を閉じて行為の終わりを待つ。いつの間にか力が抜けてしまったか急に手が振りほどかれ抱きしめられる。仕方がない、「苦しい」と言いながら離れると次の瞬間ひっくり返される。
「へ?」
見上げると笑顔のシド。騙されたかと一瞬考えたがよく見ると目は笑っていなかった。これは、終わったなとアンナは察した。
「悪かったな触り方がおっさん臭くて」
次の瞬間、シドは思い切り長い耳を掴んだ。アンナは目を見開き叫んでしまう。
「いっ―――たぁ!?」
「流石に痛いのか。すまん」
本当はそんなに痛くはない。しかし突然の行為に対し反射的にリアクションをしてしまった。
「怒ったからって子供のマネ? 大人が力加減無しでやるな、普通のヴィエラなら潰れる。拷問したいの?」
「いや大丈夫かと思ってつい」
「もーフウガぶりだ。負けず手加減しないね」
意外な名前が出て来てシドは「リンドウが?」と言うとアンナはため息を吐く。心がざわめく感情を抱いているがまだアンナは気付かない。
「里で修行できなかった分。おかげで多少では耳は動じない。ってシド凄い目が怖い」
「修行?」
「いや、護人が耳で色々バレるの、ダメ。真っ先に対策必要。だから……って撫でるな!」
シドは思い切り掴んだ部分を優しく撫でる。アンナはその手首を掴み抵抗するが弱々しい。その姿にシドはクスリと笑う。
「痛くしてすまん。―――もうあっという間に弱ってる。本当にそれは修行だったのか?」
「ひゃ、それはあなたが」
「俺が?」
内側を擦りながら形をなぞるように撫でまわされると勝手に口元から甘い吐息が漏れた。なんとか言葉にし、抗議する。
「触り方がっ、普通はしないやつ―――ッ」
首のゾワゾワと甘い痺れに身体がピクリと痙攣する。頭がぼんやりとするから触られたくない。と思っていたら突然寝台へと抱き上げられる。温かい体温が背中を通して感じた。アンナは普段シドを抱き上げているがシドもアンナを軽く持ち上げることができる。以前重くないかと尋ねたら「機材に比べたらとても軽い」と笑顔を見せていた。
シドは長い耳の間に顔を埋め、再び優しく耳を撫でている。指を口元に持ってきたので口に含むと舌に絡められた。上下に擦られると反射的に指を甘噛みしてしまい背後からくくと笑い声が漏れた。もうこうなってしまったら満足するまで続くだろう。耳はどうすれば動かせるのかを思い返した。集中を解き、リラックスし、あと何が必要だったかとアンナは一瞬考え込んだ後、ふと名前を呼ぶ。
「シ、ド」
「どうした?」
「くび、噛んで」
「仰せのままに」
襟元を緩めてやり、シドはそのままガリと未だ消えていない痕を上書きするように噛みついた。
「ッ―――!」
痛みに対し反射的にビクリと跳ね、シドは身体が逃げないように強く抱きしめた。耳の付け根を握りながら内側を引っ掻く様に動かされると力が一気に抜ける感触を味わう。そして耳がふにゃりと垂れ下がり、シドの目的は達成である。
「満足?」
アンナは深く呼吸をしながら背後のシドに声をかけるが反応はない。転がり顔を見合わせると唇を合わされる。耳を巻き込むように大きく頭を撫でつけた。こうなるから厭だったんだよと手首を掴む。
「終わり」
「疲れを癒させてくれ」
「最低。疲れたならそのまま寝て」
胸元に押し込み頭を撫でながら子守歌を唄う。かつて故郷で毎日聴いていた"よく眠れる歌"だ。勿論シドも好きなようですぐに寝息が聞こえてくる。
「おつかれ」
ポツリと呟き、目を閉じる。シドが連日の仕事詰めの疲れで癒しを求めるように、アンナも癒しを求めていたのも確かだ。耳も最終的に許可するのは外で見せることのないバカ騒ぎができればそれで構わないという一種の甘え方になる。冷たい身体に相手の熱が少しだけ溶け込む感覚に穏やかな表情を見せた。
Wavebox
#シド光♀ #即興SS