FF14の二次創作置き場

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No.15

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「人間ごっこは楽しいか?」 ならず者の頭から飛んできた言葉に私の目が反射的に少し…

漆黒,ネタバレ有り

#即興SS

漆黒,ネタバレ有り

旅人は人に擬態する?
「人間ごっこは楽しいか?」

 ならず者の頭から飛んできた言葉に私の目が反射的に少し見開かれたように感じた。
 何度も言われた言葉だ、慣れてはいる。即いつもの笑顔に戻す。

 そういえば最近同じような事を言われていた。相手は……そうだ、アシエン・エメトセルクだ。あの時彼は何と言っていたのだろうか。嗚呼思い出した。



『あの頃に比べたら上手に人間みたいに振る舞えるようになったんだな。おい何照れてるんだ褒めてないぞ嗚呼厭だ厭だやはりお前は人間のフリをしたナニカだ』

 彼が皇帝として存在していた頃、獣のごとく走り回っていた自分を『奥の手』として引き入れようとした。【鮮血の赤兎】なんて変な二つ名で呼ばれる少し前の話になる。
 しかし今思うとそんな自分を『人間ごっこ』できるように多少の常識を叩きつけて来たのはこの胡散臭いお人よしなのだ。彼と死闘を繰り広げた後、少しだけ彼に対して冷静に考えられるようになった時にふと気が付いた。使用人経由で衣服を整えてくれたし、心が引き裂かれるように痛かったけど何かこびりついた憑き物を落としてくれた。あと恥ずかしいが自分は女に生まれたことを改めて一晩イヤミたっぷりに説教された。
 以降さらしをキツく巻くことはなくなったし少しだけ今の自分に近付いたきっかけではあった。感謝するかと言われたらしたくないのが本音だが。
 あの時から彼が見ていたのは私ではなく私の中にあるナニカなだけ。少し優しくされただけで一喜一憂するような便利なヒトにはなれなかった。

 それでも【鮮血の赤兎】と呼ばれてた頃は人扱いされることはめったになかった。道を聞いても皆襲い掛かってくるから斬り倒した。稀に優しくしてくれて家に泊めてくれたりした人はいたけれど何かに怯えるような眼をしていた。怖いなら何で私に構うんだ、そう思いながら寝そべっていたのを覚えている。
 あの時は私を鍛えてくれた命の恩人には申し訳ないが、強くなりすぎた事を何度も後悔した。だから私はただの旅人として生きていた『あの人』のように旅を続けるしかなかった。

 時代が新たに歩き出したので【鮮血の赤兎】を殺した今、私の周りには人が集まるようになった。笑顔を浮かべ、不器用に振る舞いながらも慣れない武器を振り人助けをしてると何だか分からないが心が温かくなる。
 あとエオルゼアに辿り着いてから『超える力』という加護が与えられた。以降私はハイデリンの加護を駆使しながら危なっかしい若者たちを手助けするようになる。あの寒空の夜約束を交わした少年も大きくなり私の前に現れたのも驚いた。本人は最近まで覚えてなかったみたいだがついに過去の事を認識したらしく、捕まってしまった。気楽な旅も悪くはないけど大切な人を守るために戦う生活もいいかもしれない。現在が一番楽しい時を過ごしている、そう思っていた。

―――そこに冒頭の言葉を投げつけられた。

「違う! アンナは優しい人間だ!」
「そうよ。あなたのようなやつと違うわ!」

 仲間である銀髪の兄妹は私を庇うように立ち、叫ぶ。私の事を知ろうとする最初こそは面倒だったが今は守りたい子供たち。なるべくどす黒い所は見せたくない。私は首を横に振り、2人の感情を遮ろうと前に出る。

 次の動きは一瞬だった。彼の首に届きそうな、ギリギリ傷付けない位置に刀を突き立て笑顔で言おう。

「そう見える? 悲しいな」

 ふと男の顔を見るとこの世の絶望を見たかのごとく歪んでいた。

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