FF14の二次創作置き場

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No.155, No.154, No.153, No.152, No.151, No.150, No.1497件]

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補足新生メインクエスト"魔導兵器のみる夢"後のシド光♀。まだ…

新生

#シド光♀ #即興SS

新生

旅人は魔導兵器を識りたい
補足
新生メインクエスト"魔導兵器のみる夢"後のシド光♀。まだ何も意識し合ってない頃。
 
 ミンフィリア救出作戦の一環で魔導アーマーを鹵獲した。修理・整備を終わらせ、試運転中に異変に気付いたのか帝国兵が飛んで来る。まあ冒険者と一緒に即蹴散らし、その後無事起動することを確認できた。
 最終調整を行うためビッグスとウェッジが魔導アーマーを整備用拠点へと連れて行く所を見送る。そして、いつの間にか隣からいなくなっていた冒険者である黒髪のヴィエラを探すため、周りを見回した。見つけた。先程まで戦闘していた場所で座り込んでいる。

「アンナ、何をやってるんだ?」
「研究」

 魔導兵器をじっと睨みながらノートを取り出す。首を傾げながら覗き込むと、細かな文字と魔導アーマーのスケッチが描かれていた。今は先程破壊した重装型について書き留めている。文字は異国の言語でよく分からない。何処の言葉なのかと聞くと「ひんがしの方の」とだけ溢した。

「かつて私に戦闘を教えてくれた人が昔いたんだけど。この魔導アーマーたちに関しては何も教えてくれなかったの。仕方ないのは分かってるけどね」
「それで、研究と?」

 機体に触れ、中を覗き、何かを記していく。俺は隣に座りそれを眺めた。アンナは苦笑しながらこちらを見ている。

「先に戻ってもいいんだよ。これは私個人がやりたいこと」
「まあいいじゃないか。それに俺はこう見えてこいつらを設計する側に立つ予定だったんだ。目視だけじゃ分からんことやら色々教えてやってもいいぜ」
「―――じゃあ質問なんだけど」

 最初に聞かれたのは"コアの位置"。次に"無人兵器の場合、どこを殴れば信号を打ち止められるのか"。"砲塔に使われた金属の強度"、"センサーの位置"、"ビーム装填中に砲塔詰まらせたら暴発してどの位の範囲影響あるのか"―――確実に破壊するための手順を聞いて来る。実際のスクラップを指さしながら分かる範囲のものは教えた。

「勉強熱心なんだな」
「戦う上で苦手なものが存在すると致命的なミスに繋がることがあるからね。んーやっぱり本職の人に聞くのが一番楽しいかも」
「お前さえよかったら工房にいくつか設計図が持ち込まれてたはずだ。読んでみないか?」
「いいの? こんな怪しい旅人にポンポン大切なモノ見せちゃだめだよ」

 横から頬を抓り引っ張ってやる。

「俺たちは同じ敵を持った仲間じゃないか。打倒帝国とかいう少しでも大きすぎる目標を持ってんだ。達成する確率を上げるために賭けをするのも悪くないだろ?」
「ホー。そういうものなのかしら?」
「それに真剣な顔して色々聞くお前を見てると何か楽しくなってきてな。よかったら一緒に考えてみないか? 俺も何かいい対策が浮かぶかもしれん」

 アンナは目を見開きこちらを一瞬見たと思ったら即後ろを向く。名前を呼ぶと少しだけ肩が跳ね、ポソリと呟いた。

「―――レヴナンツトールに戻りましょ。いっぱい聞くから覚悟して」
「! ああ。対策会議をしよう」

 その言葉にアンナは振り向き立ち上がる。そしていつもの笑顔でこちらに手を差し伸べた。俺はその手を取りニィと笑う。引っ張り上げられ、そのまま前へとエスコートされた。

 まあこの時の俺はアンナが一瞬そっぽを向いた理由に気付けなかった。そう、あいつは思考が一瞬フリーズし、感情を処理できず真顔になっていたのだ。悟られないようそっぽを向いたと色々見てきた今なら判断できる。すぐに察せていれば、もっと違う道程を辿れたかもしれないと思うと悔しい所があった。



 その後。隠れ工房にて俺たち2人で魔導兵器について語り合う。基本的にアンナは相槌を打ち、気になった部分を質問していただけだった。が、時々顔を見ると真剣な顔で目の前の魔導アーマーと睨み合っていた。―――まあ視線にすぐに気付き、いつもの笑顔で首を傾げながらこちらの顔を見る。そうやって気が付いたら一晩徹夜していたらしい。いつの間にか邪魔しないように外に出ていたビックスとウェッジが戻り、少しだけ呆れたような顔をしてこちらを見ていた。


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#シド光♀ #即興SS

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補足Lv39メインクエスト前後のお話。  「アルフィノ、大丈夫?」「あ…

新生

#即興SS

新生

"召し上がれ"
補足
Lv39メインクエスト前後のお話。
 
「アルフィノ、大丈夫?」
「あ、ああサリスか。大した事はないよ」

 白い息を吐きながら少年ははにかんだ。



 クルザス、ホワイトブリム前哨地。ボクたちは今、シド・ガーロンドが造ったと言われる"エンタープライズ"を探す手がかりがこの地にあるという情報を掴み、やって来た。余所者お断りの気候と同じく冷たい人間たちの扱いに困りながら、人助けをしている。まあその人助けも異端審問官が邪魔をして大して実ってないわけだが。
 記憶を失った男シドも自分が出来ることを探し、装置を修理している。しかし、ザナラーンで潜んでいたボクたちを見つけ出しここまで連れてきた少年アルフィノは地道な活動が苦手らしい。外で何やら考えことをしていた。

 見ていると非常に寒そうである。特に腹を冷やしそうでボクはそわそわしていた。見かねてつい旅用のマントを羽織らせる。

「いいのかい?」
「まあ少しは慣れてるからね。それにしても―――シドの方が寒そうなのに。無茶しちゃだめだよ?」
「確かにシドは見てるこっちが寒くなるがね……」

 薄い布のように見える半袖。アルフィノの言う通りとても寒いと思われる格好だ。本人はどうも思ってなさそうだが。

「ガレマール帝国はとても寒い土地にある国だしね。これ位誤差なんでしょ」
「ふふっそうかもしれないね」
「お前たち何を話してると思ったら……」

 いつの間にか苦笑しながらシドが立っていた。ボクとアルフィノは笑顔を見せる。

「ほらアルフィノ、噂をすれば寒そうな人だよ」
「サリスからマントを預かってるが―――もしかしたらこれは君が羽織ってる方がいいかもしれないね」
「お、俺は大丈夫だ。アルフィノ、風邪を引いたら大変だ。それで温まるといい」
「じゃあお言葉に甘えさせてもらうよ」

 苦笑する彼らを見て、ボクは少し考える。そしてふと過去の記憶が浮かび上がった。

『温かい―――』

 食材は、ある。調理道具もある。じゃあちょっと火を借りたら行けそうか。

「アルフィノ、ちょっと待っててね」

 彼らの言葉を聞く前に砦へ走り去る。頑張って再現出来るようになったモノを、差し上げよう。



「サリス。これは……いいのかい?」
「ちゃんと食べないと身体が冷えていつまでも温まらないよ」

 思い付いた時は煮込む工程を忘れていた。おかげさまで思ったより完成まで時間がかかってしまった。マントにくるまったアルフィノは目を丸くし、ボクが手渡したカップを両手で持っている。年相応って感じで可愛いね。
 湯気が立ち、肉と切った野菜が白くとろみのある汁の中に沈んでいる。これがなかなか当時作ろうとしたけど難しくて苦戦したっけ。理由は簡単。どうしてもあの夜に食べた味にならなかったから。いや味自体は作れるようになった。温かく、自分の身体の芯に火が灯されたあの感覚を得ることが出来ない。

「これは―――シチューか?」
「うん。シドも食べる?」
「丁度腹が減ってきてた。貰えるか?」
「そう」

 シドにも渡し、ボクはニコニコと2人が食べている所を見守る。

「美味しい。サリス、とっても美味しいよ」
「ああ。お前はどんな料理も出来るんだな」
「ふふっ。長く旅をしていたらね、料理の1つや2つ出来るようになるよ」

 満面の笑顔。よかった。もし美味しくないと言われたらどうしようかと。

「ああ。それに、どこか懐かしい味がするんだ」

 シドはカップの中身をじっと見つめ、目を細めた。―――まあそうでしょうね。

「あなたがガレマール帝国出身の方なら、そうかもしれないわね」

 じゃあ片付けするから、と踵を返し歩を進める。「どういうことだ、サリス」という声が聞こえたが何も言わず手を振った。

 嗚呼。別に、どんな顔されてるか見たくないからじゃないよ。いつまでもボクの鍋を置きっぱなしにしてるのは失礼だなって思っただけなんだから。
―――記憶を取り戻したら、飛空艇を夢見た機工師がいなかったか聞いてみようかな。意味はないけど。



 あの時ボクを助けた白色の少年。今どこで、何をしているのかな。ボクを探す飛空艇は作れたのだろうか。いや、キミの故郷は今こうやって急激に勢力を広げてる。だから、恐ろしい兵器を造ってるのかもしれない。
 もしかしたら、敵として会ってしまうかも。ちょっとだけ怖いな。だから、なるべく出会わないことを祈ってるよ。
 ボクは旅人。それ以上でもそれ以下でもない。誰のモノにもならないし、誰かを愛することもない。
 忘れてくれてたら、嬉しいな。


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#即興SS

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 嗚呼、キミは。どうして現れてしまったんだ。白く綺麗なお星さま、どうかボクに気付…

メモ,新生

メモ,新生

謎のメモ(新生3)
 嗚呼、キミは。どうして現れてしまったんだ。白く綺麗なお星さま、どうかボクに気付きませんように。



 黒渦団にタイタン討伐の報告後、ミンフィリアからリンクパール通信が来る。報告しに帰ろう。
 ベスパーベイ、砂の家。あれ? 受付嬢のタタルがいない。ミンフィリアとお喋り中?
 いや違う。静かすぎる。意を決して扉を開く。正面には―――死体。まさか。暁の血盟メンバーだけじゃない。帝国兵の死体まで。これは。暁の間に入る。

 シルフのノラクシアが、倒れていた。ウリエンジェも、タタルも、ビッグスやウェッジ、ミンフィリアまでいない。
 嗚呼記憶が流れ込んでくる。

 帝国兵。そして白色の鎧の女。ボクが目的。まさか―――偽装に失敗したのか? イフリートとタイタンを倒したから。余計なことを。そんな。

 ノラクシアが伝えたかった伝言。東ザナラーン、聖アダマ・ランダマ教会。イフリートの時に世話になった教会か。そこでしばらく身を隠せと。
 キミのような小さな子が、あんな奴らに勝てるわけがないでしょ。どうして。ボクがそこにいたら―――いや考えるのはよそう。連れて行かれたくない。あのボケた爺の駒になんて、なりたくないんだから。

「みんなを……助け……て……」

 そう言い残し、ノラクシアは事切れた。

「ええ、分かった。策を、練って、そして―――」

 助けてあげる。ボクがいないとあっさりと連れて行かれてしまった愚かな弱き人らを、絶対に。
 その鎧、覚えたからな。最も醜く、煽り嬲って殺してやる。
 もう何も考えたくない。フードを深く被り、ザナラーンを奔る。



 "のばら"、その合言葉を伝える。ボクはイリュドに砂の家で起こったことを説明した。
 神父イリュドはミンフィリアとは古くから知り合いだったらしい。暁の血盟のメンバーという顔も持っていたみたい。
 とにかく考える時間が欲しかった。お言葉に甘え、しばらく滞在することにする。

 次の日、頭をリセットさせるために教会の皆からのお願いを聞くついでにイリュドのお使いもこなす。死体が持っていた時計をマルケズが修理したいんだって。先細のタガネと小さなヤットコを受け取り、渡してやる。
 驚いた。修理された時計はとても繊細なもので。その大きな手でそんな小さな時計を修理できるのか。案内された部屋がどこか忘れてしまったので、野宿をしながら考える。

 目が覚め、エルネドが手伝い手が欲しいと聞いたので尋ねる。ベスパーベイの、死体回収、ねぇ。
 嗚呼ノラクシア、何て軽い。こうやって抱き上げて、初めて種族の違いを体感する。もっと遊んであげたかったかも。一緒にイタズラしたかったな。まあ後悔してももう遅いが。あーもー折角一晩で思考をリセットしたのに。死体回収は終わり。教会へ戻る。

 ため息を吐いているとマルケズと目が合う。「何か困ったことでもあったのか?」と聞かれたので「てっきりベスパーベイで死体の回収を行うのはあなたかと思ってたんですって」と言ってやると申し訳なさそうにしょんぼりとした顔を見せた。

「気にしてないよ。そんな顔しないで」
「いや大丈夫だ。―――ありがとう」

 そっぽを向き、去って行った。少しだけ心が落ち着いた気がする。ノラクシアの亡骸を持って、黒衣森へ向かった。

「ノラクシアは最後まで立派だったのでぶっち?」

 ボクは何も言わず、頷く。長ちゃまが何かあった時は、手伝ってくれるって。エオルゼアのことはエオルゼアの人が解決するものだ。最高な提案だと思うよ? ボクは―――最後まで、見届けられたらいいな。



 夜遅くなったので野宿。ふむ、少し周辺が臭う。少しだけ陰に移動し、目を閉じた。
 次の日、マルケズも視線に気付いたらしく、見てきてほしいと言われた。墓地を見回すと、ビンゴ。密偵だ。殴り倒す。まさかもうバレてしまったのか?
 マルケズの見立てではボクではなく自分の方じゃないかという。確かにキミが持っている技術を考えると何かあってもおかしくないかもね。もう少しだけ見回りして、せめてその陰気な雰囲気が際立たないよう頑張ってみようじゃないか。



―――暗闇は、嫌い。真実を隠し、私を狂わせるから。何も見えない闇が私をあざ笑う。そんな声が聞こえる。空を見上げ、星へと手を伸ばす。その手を掴んだのは、温かく大きな手。目に星を宿した、ヒゲが似合う男の人。少しだけ、笑みがこぼれた。

 夜、ボクはマルケズと空を見た。どこで帝国兵が見てるかも分からないのに。莫迦な子だ。そして改めて部屋の位置を教えてもらい、久々に寝台で眠った。
 スッキリとした目醒め。飯を振舞い、手伝いをした夕方。昨日あったことをイリュドに報告し、帝国対策を考えようとした時、扉が開いた。

 アルフィノ少年だった。どうやらボクと、マルケズを探してたみたい。いや、彼は"シド会長"らしい。成程、色々考えていた仮説の説明はつく。

 イクサル族が蛮神を召喚したらしい。好戦的で凶暴な存在が今暴れているのだとか。
 休息は取れた。必要とされている力を、振るってやろうじゃない。
 シドとやらの記憶も戻るかもしれないし、色々試してみる価値はあるだろう。北部森林へ。

 ふむ。やはりクルザスに行かないといけないみたい。寒い地で聞き込みを行おうとするがやはり噂通り余所者に厳しい。まあ旅をしてりゃ慣れてる扱いだ。とりあえず人探しから始めるとしよう。
 何と言うか内輪揉めみたいなことをずっと続けてる人たちなんだねえここの人たち。滞在許可はくれているだけ優しいと思っておくが―――。とりあえずこの辺りで偉い四大名家のデュランデル家以外の人間らにも会ってみたい。紹介してもらおう。

 襲撃された荷運び人の荷物を救出し、手渡すと厄介なことに巻き込まれる。四大貴族の内の1家が異端者と繋がっている疑いがあるという。どうやらそこに紹介される予定だったらしいが思わぬトラブルだ。近くにいた元使用人によるとそういう人間ではないとのことらしいが―――直接聞いてみるしかない。アインハルト家のフランセルの元に行くとまあ否定するよね。話した感じ性格的にも異端者と繋がってるようには見えない。自分の代わりにとフォルタン家のオルシュファンという人間を紹介してもらえた。

 流石にあらぬ疑いをかけられた人間は見ていて可哀想なので何とか、助けてあげられればいいが。



 何て熱い人なんだ。この地の雪を溶かしそうなほど燃え上がった若者にボクは驚く。

 キャンプドラゴンヘッドに辿り着く。そこで出迎えた男はオルシュファンというフォルタン家の人間。えらく熱い歓迎を受けた。確かに他の貴族に比べたら余所者に優しい。彼の名前を利用して情報集めをする。
 異端者を疑われた人間は審問官に連れて行かれ谷底に落とされるらしい。じゃああのフランセルというお坊ちゃんも―――うーん放ってはおけないな。どうやらお坊ちゃんだけでなく複数人疑いがあるらしくてんやわんやみたいだ。
 気になるのは新しい異端審問官か? 着任してから異端者がいっぱい見つかってるとか。仕事熱心か、それとも―――。まあそこまで考えてあげる義理はないか。こいつを何とか出来ればデュランデル家も話を聞いてくれるのかな。
 情報収集はぱっとしない。その間にフランセルがストーンヴィジルがドラゴン狩りへ行った話を聞く。オルシュファンはそんな情報を持ってない、と。はて。嫌な予感がするので見に行ってほしいと言われる。言われなくともそうするつもりさ。
 身の潔白のために真偽不明の情報に飛びついた、と。嗚呼なんて可哀想な人。オルシュファンに報告しに帰る。飛空艇の情報も掴めそうだったがフランセルの身の潔白を晴らさない限りは手に入れることは出来なさそうだ。面倒だが動くしかない。
 荷運び人を追えばアインハルト家宛の荷物全部に疑いの目を向けるための装飾品が入っていた。適当すぎる。そんなのに嵌められて谷に落とされるのは流石に哀れだ。止めに行く。

 異端審問官ギイェーム殿が連れてた騎士が異端者の装飾品を持っていた。一先ず審判は中止、帰ってもらう。捨て台詞が心地いい。
 飛空艇の情報もゲットする。ストーンヴィジルと呼ばれる要塞に堕ちたのだという。そしてそこの持ち主は―――デュランデル家。面倒だなあ! オルシュファンとフランセルの紹介状を持ってホワイトブリム前哨地へ。たらい回しにされながらドリユモンとやらの元へ行くがまたギイェーム殿だよ。別に気にしてないけど殴り倒すチャンス来ないかな。



 記憶は無くとも、機転と技術は腕に刻み込まれている。やっぱりこうやって装置を触っている方が楽しそうにするのが彼の本質なのだろう。そういう意味では本当に噂のシドと言われる存在みたい。
 しかし、異端審問官邪魔だなぁ。俺たちに恨みがあるのか、という言葉に少しピンと来る。そういえば砦の奪還も手をこまねいているみたいだし彼の動き方はまるで―――。とりあえず聞き込みを行おう。地道な手伝いが性に合わない彼のために、ね?
 キミよりシドの方が寒そうだけどそれはまああの寒い国出身かの違いだろう。さあ作戦会議だ。

 吹雪の夜に東門側、か。それに加えおあつらえ向きの崖と。下りてみると―――ビンゴ。奴の凍死体だ。殴れないのが残念だが、まあこのギイェームが犯人"では"ないことは分かったから十分だろう。ドラゴンの骨の近くに落ちているのが見てていやーな予感がする。血塗られた任命状を持ってアルフィノの元へ行く。

 殺しの現場を下っ端に見られたのは好都合か、残念か。ずさんな犯行手口でも顎で使い、信じ込まされるのは流石異端審問官様という肩書だ。証拠をドリユモンに突き付け、これ以上無罪な人間を殺させないためスノークローク大氷壁へ。
 やはり目的は4大名家のバランスを崩し人間同士の争いを増やす事か。なんと言うかイシュガルドの根は深そうだ。しかし外の人間を巻き込んだのが悪いね。素直に飛空艇を渡してたら、あなたの悪事はバレなかっただろうに。

 霊災の直前、ドリユモンをはじめとするデュランデル家の人間はエンタープライズを発見したらしい。そうして整備と保管の為、ストーンヴィジル砦の中に格納していたのだとか。だが、ドラゴンが飛来し、そこがねぐらになってしまったのだという。まあ困ってるみたいだし船を手に入れるついでに砦を取り戻そうか。



 エンタープライズはゆっくりと飛ぶ。応急処置で済んでよかった。途中、アシエンがドラゴンを起こしてしまったが、幻具を持って応戦する。グリダニアに着陸させ、次は本格的にガルーダ討伐の準備だ。

 "風属性を火属性に変換する偏属性クリスタル"、か。確かに暴風の中大爆走するなら風を火に変換するのが一番いい。彼らが修理を行う間、ボクはそれを探しに行くとしよう。

 まずはザナラーンへ。ラルベンタン先生とやらに会いに行く。東ザナラーンのバーニングウォールの偏属性クリスタルを採掘したが、どうやらそれは"土属性を火属性に変換する"モノだったらしい。そう上手くはいかないか。ならば別の場所にあるかもしれない"風属性を土属性に変換する"モノを探せばいいじゃない、と。なるほど、しらみつぶしに探しに行くのも有りか。幻影諸島と呼ばれるラノシアの島にもクリスタルがあるらしいので行ってみよう。

 何だい何だい次は幽霊騒動で欠航中か。欲しいものにはまだほど遠いようだ。トホホ。
 灯台守がいるという場所を探したら牢屋の中。そして狂い切っている。歌、か。海、歌、これはいやーな予感。
 重い足を引き摺って幻影諸島へ行ってみれば魔物討伐依頼。霊災の影響で潮の流れが変わり、船の墓場になったとか。歌声で虜にし、精気を吸い取り死霊化させる魔物の仕業。こんな所で"また"会ってしまうとはねぇ―――。
 嗚呼あの記憶の存在だ。だけど昔のボクとは、違うよ。耳栓も持ってるしね。追い払ってやった。
 そうしてクリスタルを分けてもらってきたが、まあここは海だ。"風属性を水属性に変換する"モノだった。次は"水属性を土属性に変換する"ものを探せばいい。ランベルタンが教える3人目の生徒がグリダニアにいるらしいので会いに行く。

 中央森林にある枯骨の森に偏属性クリスタルの塊があり、それは大食いスプリガンが殆ど食べちゃったらしい。まあそれ自体はすぐに終わるだろう。妙な事件に巻き込まれるよりかはマシだ。
 うえぇヨダレだらけ。まあこのまま壺に突っ込もう。生徒の元に持って行き、取り出してもらう。こうして無事手に入った。シドの元へ。

 3属性を直列に繋ぎ、変換させる。そんなもんポンポンと作れるもんなんだね。びっくり。"作業に没頭していると、何故か心が浮き立つ"か―――。シドって男は仕事人間?

「エンタープライズ、発進!」

 ヨーソロー、船乗りの掛け声だってフウガから聞いたことがある。口には出さない。そうしてボクらは、空を飛んだ。



 シドが、記憶を思い出した。そしてボクも、気付いてしまった。超える力でこの男の記憶の一部を覗き、あの少年の夢を見てしまう。なんてこった。そんな偶然が重なるの? 覚えてないようだし、悟られないよう立ち回ろうか。

 暴風域を越え、ガルーダを殴る。確かにこの風は癒すのが厄介だ。一番凶暴と言われるだけある。
 強まった光の加護で、ガルーダが弱った。これで倒せると思った時だった。
 甲冑の男が現れる。弱ったガルーダを煽り、そしてタイタンとイフリートを無理矢理捕まえた他種族の奴らから召喚しやがった。こんなの無理だ。流石に逃げる。
 その時だった。シドがガイウスと呼んだ鎧野郎は空から機械兵器を投入した。蛮神を喰らい、力とする。これは―――アラグか。遠い昔、そんな技術を聞いたことがある。そこまでしてエオルゼアを手に入れたいのか、あの爺は。

 次殴る目標はあの大きな兵器ということで、アルフィノの要望通り砂の家へ向かう。
 不思議と片付いた廊下を抜け、暁の間に入るとイダがいた。無事だったんだ。
 どうやらヤ・シュトラも無事らしい。今は情報収集をしているとか。これだけ戦力があれば大丈夫だろう。
 そしてガイウスの目的はボク―――の持っている"超える力"。なぁんだ。気付かれたわけじゃなかったのか。怯えて損した。タイミングよくここで一休みできるらしい。少しだけ座り込んだ。

 夢を見た。星の意思"ハイデリン"が、ボクに語り掛けて来る。だが要領を得ないふわふわとした言葉で、どうすればいいのやら。どうしてこんな力を、ボクが得てしまったんだろうね。
 物音に反応し、目が覚める。ヤ・シュトラが情報を持って帰って来た。どうやらポルトゥレーンが帝国の情報集めもしているらしい。話を聞きに行く。

 その途中に戦歌とは何か、ジュアンテルの歌声を聞きながら考える。歌というものはやはりあまり理解する気はない。だが、人を勇気付け、希望を与える。ただ弓を射るだけなら、その辺りの賊でも出来ることだ。仲間を大切にしてるように見せるため、必要な行為だろう。覚えておく。

 どうやらクルザスに飛空艇が不時着したらしい。ルガディンとララフェルのガーロンド・アイアンワークス社の制服を着た人間の目撃情報。ビッグスとウェッジが隙を見て帝国飛空艇から逃げ出したって所か。
 シド、そんな必死に頼まなくても助けるに決まってるでしょう? だってボクは―――。いいや、これは一時的に協力するだけ。余計なことは、考えなくてもいい。

 小さな足跡を辿った先で、ウェッジを見つけた。ビッグスは帝国兵の気を引くために別方向へ逃げたらしい。現地の人間から逃げそうな場所を聞きながら巨石の丘へ向かうと―――ビンゴ。帝国兵に囲まれているビッグスを発見。斧で蹴散らす。体力的に考えてあまり悠長に回復してる暇はない。

 こうして2人は無事シドと再会できた。見るからに喜んでてこっちが嬉しくなるね。再会を喜ぶ間もなく次は暁を救うんだって切り替えが早い。



 戦士の強さとは、痛くて苦しくても逃げずに己の弱さに立ち向かう心の強さ。そしてその強さにありつくために、ボクを目標とする―――。青いが悪くない結論だ。自分の場合は何も考えないようにしてるだけだが、言う必要はないだろう。

 蛮族の中でもやはり色々な派閥があるらしい。シルフ族にテンパード化した"悪い子"がいたように、アマルジャ族、サハギン族、コボルド族にも普通の人間では分からないであろうややこしい事情を持っているようだ。そうだね―――フウガはきっと種族関係なくエオルゼアの全てを見てこいって言いたかったのだろう。だから少々手伝うことにした。

 まあそちらも大事だが今はミンフィリアたちを救出することが優先事項だ。運び込まれたのだというカストルム・セントリがあるモードゥナへ向かう。
 エリックは言った。シドの論文によるとこのモードゥナという地は"惑星の中心"らしい。エーテルが濃く、それが収束する場所ということなのだろう。確かにあの大きな兵器を調整するための物資を集めるには好都合な場所だ。チャクラはエーテルであり、それならばボクの得意分野だ。復讐の力のことしか考えられない、そんな人間がボクに勝てるわけないじゃないか。ふふっ、頭を冷やす事ね、ウィダルゲルト。

 暁に再び灯を与える作戦名は"帝国軍あざむき作戦"、ね。正面から侵入とはまた堂々とした―――ふふっ、面白そうじゃないか。魔導アーマーを鹵獲する、ということは物凄く近くで見れるってことだよね? ちょっと頑張ってみるか。
 カストルムの通気口経由で盗み聞きをする。リウィアという人がミンフィリアを尋問しているらしい。怖いねぇ。まあ、こういう"どこかで誰かが聞いてるかもしれない"という意識がない人間のおかげで内情も分かった。さっさと立ち去るに限る。

 グラウムントという冒険者が作戦立ててる間、シドも出来ることをしておくらしい。だからその手伝いをする。なんと帝国軍が使う"電波通信"の妨害装置を準備するのだとか。"火属性を雷属性に変換する"偏属性クリスタルの塊に細工を施すんだって。そんなこともすぐに出来るのか。足での調査は得意だよ。任せて。
 それと並行して潜入のために必要な物を集める。帝国式の挨拶を覚え、軍服を剥ぎ取って。何か申し訳ないね。別にいらないしミンフィリアたちを救出出来たら返すよ。

 うわ適当に服着て敬礼しただけで本当に騙された。頻繁に人を入れ替えるのが仇になってるねぇ。そうして預かった発煙筒を撃ち出し待ち伏せする。
 シドも技術屋としてついてきた。さあネズミ捕りの時間だ。

「シドも戦えるんだね」
「まあ護身用程度だけどな」

 無事魔導アーマーを鹵獲に成功したが―――ちょっと打ち所が悪かったみたい。派手な煙出しちゃって。しばらく修理するみたい。隠された工房に案内され、話を聞く。
 なるほど。脳みその部分の損傷が深刻なのか。その代わりになるものが "魔法人形のコア"みたい。確かにどっちも自律操作に使うモノか。制御は出来るだろう。専門的な部分はさっぱりなのでそこは彼らに任せて、ボクはそれの調達に向かった。

 彫金師ギルドでどの位請求されるかなと思ったら、アルフィノが話を通してたみたい。どうやら彼のおうちとは長い付き合いみたい。持つべきものはコネってやつだね。早々に帰る。
 取り付け、あっという間に動き出す。さあ試運転をするか。

 動作に問題はないらしい。だが"起きる気"がないようだ。それはそれはとんだお寝坊さんだ。
 そうやって手をこまねいていると流石に帝国兵に気付かれてしまう。
 でも撃退後、魔導アーマーは"起床"した。問題なく動くようで、これでミンフィリアを助けに行ける。
 その前に、少しだけデータを整理しようか。



 すっかり徹夜してしまった。シドと魔導兵器について話し合い、入念に対策を頭に叩き込んだ。とりあえず今回の所はこれで何とかなるだろう。
 追剥ぎした服を纏い、潜入ミッションだ。ヤ・シュトラ、イダ、そしてシドの無茶をするなという激励を受けビッグス、ウェッジと主にカストルムへ向かった。

 チョロい。あっさり奪えたぞ鍵。物資保管庫とやらへ向かう。いた。ミンフィリア救出、正面から突破する。
 魔導コロッサス。新手の魔導リーパーか。まあ人型なら何とかなるだろう。蹴散らして出口へ向かう。ヤ・シュトラ、イダとも合流しこれで任務も終わり。魔導アーマーが残ってしまったのは残念だが命が大事。走り出す。飛空艇へ飛び下り、空へと逃げる。

 サンクレッドが、アシエン。そうか全部筒抜けだったと。なるほど。

『いーやアレは憑依だ。天使いにゃ実体はないらしいからねぇ』

 またどこかから知らない声が響く。―――嗚呼どちらでもいい。助けを求められたのだから、それに応えるだけ。為政者の元へ急ごう。灯を照らしてあげるのさ。ボクのような怪しい旅人の手助けでね。
 だってボクが助けないとこの人たちは、あっという間に負けそうなほど脆いんだから。

 実際、あの声の言う通りサンクレッドはアシエンに憑依されてしまった存在らしい。いい加減ボクの目の前に現れて説明してほしいものだ。

「どうか、彼を助けてあげて……。そしてエオルゼアの平和のために、あなたの力を貸して!」

 ふふっ、言われなくたってそうしてやろうと思ってた所さ。



 エオルゼア三国、12の大きな組織が参加する大作戦。コードネームは"マーチ・オブ・アルコンズ"。
 そしてボクは"冒険者選抜部隊"の隊長なんて役職。旅人に持たせていいものじゃないよ?
 さあまずはリットアティンとやら。別に何か恨みがあるわけじゃないけど―――その命貰うよ。

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注意・補足 紅蓮レイド後、旅人は密会する数日前の独り言。   オメガの…

紅蓮

#シド光♀

紅蓮

溶けあうもの
注意・補足
 紅蓮レイド後、旅人は密会する数日前の独り言。
 
 オメガの一件が終わり、一段落ついた頃。ボクはある疑問の解を探すため、考えを張り巡らせていた。

―――あのボクの体が温かくなる現象。理解不能。今までどんな手を使っても、死人のように冷たいままだったのに。あの白色の男と体を重ね、初めて熱を帯びたのだ。

 温泉旅行と称し、クガネで休息した日。まず数時間湯船に浸かったがやはり冷たいまま。火に直接手を当てても体の芯から熱を帯びる感覚は味わえなかった。本当に初めてで、正直言って少し怖い。

「ボクの体はどうしてしまったの?」

 胸を手を置いて考えてみても、浮かばない。そんな特殊な事例、誰も答えは分からないだろう。
 いや待て。誰もが持っている、生者を形成するために必須の要素。そういえばあの後石の家に立ち寄った際、ヤ・シュトラがボクに「おめでとう」と言ってきたじゃないか。彼女が何を視てボクにそんなことを言ってきたのか、ちゃんと分かっている。

「そうか、エーテル」

 混じり合ったエーテルを視たのだ。自分の心の中に仕舞ってと思うが―――まあ珍しいものを視たから言ってきたのだろう。そりゃそうか。
 ふと右腕にある傷に指を這わせる。ボクの二の腕には硬い何かが埋め込まれ、傷口は縫合されていた。そう、この部分はエーテル操作を行う際、ほんのりと熱を帯びる。全身でその現象が起こっている可能性も0ではない。

 当初の疑問は解決。さあ次浮かんだ謎。これ、シド相手以外でも起こるのかな。

「いやない。絶対ヤらない」

 自分の頬を叩く。何故自分からそんなことをしなければいけないんだ。そんなことヤるならまだシドと二度目の行為をする方がマシ。脳から候補を取り除く。

「いや二度目もないが!?」

 あの夜からボクの考えがおかしい。まるでボクがあの男を意識してるみたいじゃないか!
 違う。ありえない。どういう感情を持ってるか勝手にすればいいが―――ボクは無名の旅人だ。誰にも感情なんて抱かない。

「ボクは! ぜーったい! 誰も! 好きにならない!!」

 拳を正面の岩に当て、パワーを溜め込み息を吸った後放出、そして粉砕する。今日も鮮やかな岩砕きだ。

「バレないようにしないと。調子に乗られてしまう」

 結論とは言ったものの確定させるための物的証拠はない。そしてこんな妙な体質を人に悟られるのが一番嫌だ。特にシドはダメ。真っ直ぐな目をして考察、実験、検証と称して―――もうどうなるか想像したくない絶対酷い目に遭う! よし、今回の件は心の中に仕舞い込み、とりあえずドマの一件を解決しよう。話はそれからだ。

―――数日後。ボクはシドからのリンクパール通信をきっかけに"また"やらかすことになる。
 二度目はないと、決心したのに。ボクはなんて莫迦なヴィエラなんだ! しかもあの男が持ってしまった感情は一時的な勘違いじゃないという裏付けを得てしまう。頭の中はもうぐちゃぐちゃだ。

 1年後、ボクは旅に出ることできるのかな。もう何もかも、理解不能。どうすればいいんだ、助けて、フウガ。


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#シド光♀

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補足蒼天以降のまだお互い感情を自覚してない頃のシド光♀。エオルゼアにポッキーが存…

蒼天

#シド光♀ #即興SS

蒼天

"11月11日"
補足
蒼天以降のまだお互い感情を自覚してない頃のシド光♀。エオルゼアにポッキーが存在する概念です。
 
「シド」
「アンナか。どうした?」

 ガーロンド・アイアンワークス社。シドは休憩にと伸びをしていると後ろから旅人のヴィエラアンナに話しかけられる。
 人助けが趣味のお人好し。いつも助けてもらっているし、手伝ってほしいと言われたら全てを放り出し飛んで行った。クールでミステリアスな雰囲気で、何を考えているのか分からないそんな女性だったが最近分かったことがある。
 ―――その顔は完全に仮面であり、本来の彼女はイタズラが好きな人間だった。何かあるごとに色々な手段で驚かされ、心臓が何個あっても足りない。だが無かったら無かったで物足りない。
 きっかけは星芒祭でのプレゼント交換。以降、どこか距離感が変わった気がする。やっと少しだけ心を開いてくれたのかとシドは肩をすくめていた。

「見て。ポッキー」
「そうだな。既製品を持って来るなんて珍しいじゃないか」

 差し出されたのは長細いチョコレート菓子。その内の1本をそのまま貰う。

「さっき街で"ぽっきぃげぇむ"というものを聞いた。知ってる?」
「聞いたことないな。というか何だそのイントネーションは」
「ふふっ予想通り。あなた流行に疎いもんね」
「なっ。失礼だな。……そ、それ位知ってるぞ」

 シドはジトリとした目でアンナを睨むとニコリと笑顔を浮かべた。

「どんなの?」
「先に折れたら負けだろ」
「うーん合ってるか違うか微妙なライン」
「じゃあそれで正解じゃないか。ほらもう1本出せ」
「うんうん違ったね。それじゃほら口に咥えて」

 チョコレートの部分を口に向け「ほら」と含まされる。首を傾げているとスナック側からアンナはカリカリと食べ始めた。逃がさないかのように、後頭部を押さえつけられる。

「っ!?」
「折った方が負け」

 シドの顔は瞬時に赤くなるがアンナはいつもの笑顔を浮かべ少しずつ食べていく。このままでは唇に触れてしまう、そうか所謂カップル層向けのゲームだったのかと脳内で慌てていた。そしてもう数イルムで触れてしまう直前で、ポキリと折れた。

「ナイスイタズラ」

 アンナは額をゴーグルにこつりと当てた後、耳元で囁いた。

「アンナ、おま、お前、お前!?」
「残りのポッキーあげるから。じゃ」

 踵を返し、走り去って行く。その場には耳まで真っ赤に高揚しきったシドのみが残される。手で顔を覆い、ため息を吐いた。



 次の日。アンナはレヴナンツトールにて食材調達のため歩き回っていた。そこに「アンナ!」と聞き覚えのある声が呼び止める。

「シド」
「よかったまだレヴナンツトールにいたんだな」
「旅の準備」

 いつものように小走りでやって来た白色の男にアンナはニコリと笑顔を見せた。

「何かあった?」
「いや昨日の礼を言いたいなと」
「礼? 何かあったっけ?」

 シドも同じように笑顔を浮かべる。

「いや昨日ポッキー置いてっただろ。まあ全部仕事の合間に食べた。ありがとな」
「なんだそんなこと。別に気にもしてないよ」
「一粒で二度おいしいというのはそういうことを言うんだなと学びもあったからな。旅は程々にしてまたこっちの手助け頼むぞ」
「? うん。何か手伝ってほしいことあるなら引き受けるよ」
「じゃあな」

 そのまま走り去って行く。アンナは何が起こったか分からず首を傾げていた―――。


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"俺、絶対にお兄さんに凄い飛空艇を見せるんだ" 初めての飛空…

メモ,新生

#謎メモ

メモ,新生

謎のメモ(新生2)

"俺、絶対にお兄さんに凄い飛空艇を見せるんだ"

 初めての飛空艇に揺られながらあの夜の夢を見た。20年前に交わされた約束、彼は覚えているだろうか。―――出会った場所を考えると、もしかしたら敵として会う日が来るかもしれない。現在のボクはエオルゼアの便利屋な冒険者。助けを求められてしまった時、ボクは誰の味方をすればいい? 何事もなく、エンカウントせずエオルゼアで過ごせたらいいな。



 まず辿り着いたのはリムサ・ロミンサ。数年ぶりに街の中に入った気がする。
 メルウィブ提督にカルテノーでの出来事を聞いた。"メテオ計劃"―――結局自滅で撤退せざるを得なかったのねあちらさんは。愚かなことをしているな、あの皇帝は。まあそろそろ80超えてるだろうし朦朧としてやらかしたのだろう。
 そこで"救世詩盟"という聞き慣れぬ単語を聞く。ルイゾワ、という男の名前は確かにカ・ヌエ様の記憶で聴いた。また今度調べてみよう。
 リムサにも色々なギルドがあるらしいが、まずは大使としての任を果たそう。ウルダハへ向かうことにする。

 ウルダハではラウバーン局長からガレマール帝国の知識を聞く。現在このエオルゼアにいる侵攻軍は第XIV軍団。ガイウス、えっと漆黒の王狼だったかが軍団長。スパイが刈られてるらしく向こうも動き出す可能性が浮上してきたようだ。
 正直に言う。5年という期間、復興に手一杯だったこの三国同盟に比べ、帝国は力を溜め込むにはいい期間だっただろう。これは―――どうしたものか。

 お使いは終わり。カ・ヌエ様へ報告かなと思ったらリムサの冒険者ギルドに当たる溺れた海豚亭にてマスターのバデロンが助けを求めているらしい。"サスタシャ浸食洞"への調査が目的のようだ亭
 この地域はサハギン族と揉めているらしい。どこも大変だ。そしてそいつらとつるんだ海賊もいるんだとか。現地の人間を脅かす奴らは許さないよ。今から行くね。

 と思ったら悲鳴が聞こえた。現在この辺りは切り裂き魔の話題で持ちきりらしい。走って行くとそこには怯えたレディと錯乱している男。事情を聞くと商売道具を奪われ発狂しているらしい。言われた通り各地のギルドを走り回る。何か発作扱いされているのが微笑ましい。集めて来たものを渡す。すると人が変わったかのように生き生きしている。なんと正体は敏腕美容師様だったらしい。怖いなこの人。

"オメーが新世界に行きたくなったら、オレを呼べ"

 ―――天命だった。これから出会うであろう帝国の人らに少しでも過去を悟られないよう、そしてただの怪しくない冒険者として生きていくために必要なパーツ。早速手形を渡し、髪を整えてもらう。

 束ねていた髪を切り、色を染める。服もヴィエラの民族衣装から変えることにした。他の冒険者との共同訓練をこなし、装備を整える。
 そうしてボクは"サスタシャ浸食洞"の調査へと向かった。



 まあ蓋を開けてみればサハギン族とつるむ海賊ではなく。普通に縄張りに入った莫迦海賊はサハギン族に吹っ飛ばされていた。襲い掛かって来たのでそのまま他の冒険者と共に討伐。ボクは癒し手として突入した。少しは初心者に見えたかな?
 次はグリダニアで募集しているみたい。依頼へ行ってみてもいいが―――少しだけ他のギルドに顔を出してみよう。まずは料理だ。
 料理は好きだ。フウガと修行していた時もよく色々作ってあげた。ひんがし風料理以外大したものを作れないのでバリエーションを増やしてもいいだろう。
 そして釣りだ。釣りはいい。気分転換になる。島にいた頃は釣りして命を繋いでいた。
 装備の修理整備のために彫金、鍛冶、採掘、裁縫も始める。それらに必要な鉱石を掘るための採掘師ギルドにも通う。あまり経営等には興味ないが尻拭いをしたり華を咲かせたり品質勝負したりと忙しい。
 クラフター職の中でも鍛冶、甲冑は火に重きを置く生まれ故郷を思い出す。村の中心で燃え盛る火に、祈りを捧げる母さまや姉さまたち。しばらく炉を眺め、数少ない記憶を想起する。
 兄さんは元気だろうか。お嫁さんと仲良く出来てたらいいな。



 汚れた水を蒸留し、その一滴は奇跡をもたらす。2つのものを掛け合わせ、毒は薬に、また薬も毒に。錬金術とはシンプルなものだ。
 "ボク"は何者か、分からない。しかし錬金道具を持つと心が落ち着く。それは"ボク"がアンナ・サリスではない証拠。
 何も言わず、"この子"を見守る。



「もしかしてアンナかい!?髪を切ったのか」
「少しだけ、イメチェンってやつをしてみましたの。似合わなかった?」
「いやいやとっても似合ってる! さあ詳しい話をするからこっちへおいで」

 ミューヌは驚いた顔でボクを歓迎した。そりゃ正反対のイメージになったんだ、吃驚するよね。後から来たリュウィンも同じように驚きながらも来てくれたことに感謝の意を示している。

 依頼内容はカルト教団"最後の群民"と呼ばれる集団の残党退治。終末思想を広げる危険なやつらの対処と並行してイクサル族も何とかしないといけないのは大変そうだ。喜んで協力してやる。

 あっという間に終わらせ、ミューヌの所に戻る。相変わらず人と行動する時は幻術で癒す。
 そこで気になる話を聞く。最近冒険者ギルドへの依頼が急増しているらしい。なんというか最近の若い子は生き急ぎすぎているんだねぇ。コワイコワイ。
 さあ次はウルダハの冒険者ギルドの依頼だ。何が出て来るのやら。



 ボクはどうやら冒険者ギルド界隈では今賑わせている人間らしい。こんな初心者になんて期待をしてるんだろうね。
 次の依頼は"カッパーベル鉱山"で暴れる巨人"ヘカトンケイレス族"の鎮圧。300年も前に最下層に封印された浪漫溢れるモンスター。復興のための再開発中にうっかりぶち抜いて暴れてるから助けてほしいとはこれまたなんというか―――いやノーコメントとしておこう。暴れた理由もさもありなんで少し鼻につくがまあ置いておこう。
 自分よりも数倍は大きな巨人。これは殴りがいがありそうだと思いながら幻術で冒険者たちを支援する。そりゃ本当は拳で語り合いたいさ。でも、少しでもこれを帝国に見られて自分が鮮血の赤兎だとバレたら……。

『じゃあさ、死んだ事にしたらいいんじゃないか?』

 ―――また悪魔のささやきだ。自分を死んだ事に? そんなの野垂れ死んだとか適当なことに。

『死んだと見せかけるんだよ。新たなヒトとして新生する第一歩として』

 そんなことが、出来るのか? いややろうと思えば、出来ないこともないか。
 少しだけ、考えておこう。今はまだ、そんな工作は出来そうもない。



 カッパーベル鉱山から帰り、まずは鉱山者のペインテッドさんに報告する。その時、女性の悲鳴が響いた。すかさずボクは走り出す。

 そこには貧しい身なりの気弱そうな女性と、ガラの悪い商人たち。
 ちゃんと買ったものだと、女性は言う。因縁付けられたのか、可哀想に。
 助けを求められたのなら、応えないと力の持ち腐れでしょ。

 格闘士か。風を纏わせ様子を見る。弱い、弱すぎる。呪術師に剣術士。可哀想だ。

 適度になぶり、助けてやるとまた眩暈が起こる。
 霊災、難民。これはまた面倒な問題がこの近郊では起こっているらしい。そして、この人はちゃんと買っている。
 それを伝えてやると商人は去って行った。一件落着。
 直後すかさずやって来たのはイダとパパリモ。どうやらボクが見ている"幻"について何やら知っている人がいるらしい。そして力を貸してほしいと。彼女らは秘密組織"暁の血盟"の人間なのだとか。―――そう言われるのは弱い。

 モモディに報告へ戻るとエッダという女性が話しかけて来た。そういえばラノシア辺りから何度か見たような。自分のような怪しい旅人に憧れちゃダメだよ?
 そんなことより暁の血盟とやらだ。どこにあるのか、紹介してもらう。



 ベスパーベイ、砂の家。そこに彼らのアジトがあるらしい。大いなる問題へ立ち向かうため、実力ある冒険者が欲しいのだとか。こんな旅人を欲しがったって何も面白くないと思うんだけどねぇ。
 まあボクが"工作"出来ないと言った理由がこれだ。ずっと誰かが見張っている気配を感じていたから。自由に出来そうもないと判断し、保留していたが原因はよく分かった。とりあえず向かってみることにした。

 砂の家と呼ばれる場所に訪問する。そこには可愛らしいララフェルのレディ。物騒な歌を口ずさむ中話しかけてみる。
 彼女はタタルというらしい。可愛らしいお名前。そしてイダとパパリモの紹介であること、そして自分の名前を伝えると歓迎してくれた。アジトにお邪魔する。
 落ち着いた雰囲気の廊下を抜け、奥の扉の前にいる女性に話しかける。

 奥へ通されるとそこには数人の男女。イダとパパリモもいる。中央にいる女性が、ミンフィリア。暁の血盟の盟主。
 早速この組織についての説明を聞く。

 蛮神。そういえばイクサル族が色々やらかしていた辺りで色々何か言われてたような。そしてその蛮神に立ち向かうための力を、ボクは持っているらしい。
 "言葉の壁"を超える力。"心の壁"を超える力。そして過去を視ることが出来る"時間の壁"を超える力。ボクが持っているのは3つ目。なるほど、少々協力すぎて扱い切れないと。
 勿論世界には人種やら国家やら数々の壁があり、それを超えるための力を行使するのがこの組織。―――単刀直入に言おう。めんどくさい。
 人々を助けたいと思うが救済までは考えた事がなかった。

"エオルゼアに辿り着いたら、お主の好奇心のまま、人助けをし、数々の声に耳を傾け、そして長い人生何をすればいいかよく考えるのだ。そうすれば、この強大な力を扱うための鍵を理解出来よう"

 冒険者支援を貰いながら、このエオルゼア地域について知り、何が起こっているか耳を傾け、そしてこれからどう生きるか考える。協力するメリットはあるか。

 まずは見返りとしてリテイナーと呼ばれる制度の紹介だ。確かにこれから腰を据えて活動をするなら資産管理が必要だろう。ここに来てから荷物も増えて来たし必要な人材だ。コネはないけど。

 合言葉は"のばら"。まあ覚えておこうか。



 別にその男を見て何かを意識したわけではない。ただ、どこかその淀みきった瞳から星を感じた。それだけ。

 "シャーレアン"に"救世詩盟"。その後進組織が暁の血盟。賢人と呼ばれるエキスパートな方々がイダやパパリモをはじめとする人たち。超える力とは便利なものだ。
 自己紹介を終えた後は早速のお仕事。ウルダハと敵対しているアマルジャ族が蛮族を召喚するためにクリスタル強奪や人を誘拐している。―――許すことは出来ないね。サンクレッドと一緒にキャンプ・ドライボーンに調査へ向かう。貧民の誘拐事件を探れば何か見つかるかもしれないとのこと。弱き人を何に使ってるか分からないけどまあ探ってみましょう。

 辿り着いたらまず教会への墓参り客が襲撃されたので死体を回収して来いという。初めてのアマルジャ族との邂逅だ。イセムバードから言われた通り確かにあんなデカい奴が誘拐するのは不可能だ。ふむ、悪い人間が周辺にいるということか。貧民の1人や2人金目当てに引き渡す愚か者がいてもおかしくはない。厄介な事件だ。この辺り生まれの商人がいるそうなのでちょっと調査してみよう。

 ―――へぇキミこの辺りに住むヒトだったんだ。貧民をこき使ってた側、ねぇ。キミのような人間が事態をややこしくしてるのね分かった分かった。貧民に話しかけても塞ぎ込んでて話にならない。教会の人間を味方につけることが出来れば何とか事態が進みそうだがはてさて。まああの男がクロ前提で話を進めときましょ。

 埋葬依頼を1件持って教会へと足を運んだ。教会の前にその墓守は佇んでいる。
 心を込めて埋めてこい、ねぇ。大男にしては可愛らしいことを言う。とりあえず丘の上の墓に埋めてやる。
 簡単に死にたくないもんだね、絶対。
 戻って詳細な話を聞こうとしても「俺は知らん」と。そうかそうか。まあ司祭オルセン様に聞いてみればいいということは分かったのでよしとしよう。「俺はどうせ役に立たん」、ねえ―――。役に立つかはボクが決めるんだよ、おばかさん。
 教会に入りオルセン様に話しかける。なるほどこの人なら貧民は心を開いてくれる。そりゃ利用価値がありそうな場所だ。ついでにマルケズについて聞いてみると第七霊災でトラウマになり怯えている、ねぇ。

 一度ドライボーンに戻り報告する。まあオルセン様が怪しいと言われるのは仕方がない。でも特に"反応"はしないんだよねぇ。別にいいんだけどさ。っておいサンクレッド、マルケズに見覚えあるならちゃんと思い出しときなよ。興味ないけどね。

 次の手がかりを持っていそうなゴールドバザーにいる貧民の少年の所へ向かった。話を聞こうとしたらオルセン様が戻ってこないと。急いで郊外に行くと案の定野盗に襲われていた。少年の母親の形見を取りに、ねぇ。そんないい司祭様が人身売買なんてしないと思うけど。サンクレッドも疑ったことをちょっと後悔してて笑いかけたが平静を装う。怪しいビラを手に入れ、お見舞いに行く。

 司祭になりすまして、ねぇ。悪知恵働くやつのようで。なりすましならなりすまし返してやってみましょうか。
 情報を集める限り貧民は主に池のほとりで集まっているらしい。そこに行けば捕まえられるだろう。

 やーっぱりあの商人だった。まあ金が動機なのも予想の範疇。不滅隊の警備情報はこいつが持ってるわけないからどうせ内部犯がいるのだろう。それは流石に自分らで探してね。ボクはミンフィリアに報告へ戻るから。そして来るべきアマルジャ族との衝突に備えるとしよう。

 多分そいつ、強い方の味方だろうからね。



 戦闘準備のために一度ウルダハへ。その時、ララフェルを拾う。名前のない怯えきった目をしたララフェルの青年。近頃貧民の話を聞いていたからか少々好奇心で話しかけると逃げてしまう。追いかけていると悲鳴が聞こえ、走って行くとその青年がモンスターに襲われていた。そのまま助けてやり、最近調理師ギルドで作ったお菓子をあげる。すると懐かれてしまったようでついて来るようになった。チョロすぎて心配になるよ。

 さあ拾ったもののこの子はどうするべきか。そういえば最近リテイナー契約できるようになったんだっけと思い出す。仕方がないから"働かざるもの食うべからず"と言い放ち、契約を結んだ。資産管理は出来るのかと思ったがどうやら彼は元々資産家の息子で勉強もしていたらしい。だが、第七霊災で両親が死んでしまいそのまま彷徨っていたのだとか。
 そりゃ大変だったことで。任せてもよさそうだ。とりあえずしばらくは色んな知識を与えながら倉庫番でもしててもらおう。見極めるのもご主人様の役目ってやつだろうし。
 名前は―――フウガ。うん。フウガって呼ぼう。よろしくね。



 武器や防具への想いの力を結晶化させる技術。これは凄い。使い込んだ装備は確かに愛着湧くもんね。ちょっと違うか。
 不滅隊がアマルジャ族を叩く作戦に出るみたい。行ってみるか。

―――ちり、と首元がざわつく。マシなことにならなさそうだが、弱き者を苦しませる奴らを許すわけにはいかない。その作戦に乗ってやるよ。あ、勿論幻術でね。
 囲まれている。これはやられたな。いくら倒しても湧いてくる。もう少し待てばサンクレッドたちが来るかもしれないが―――まあここは何が行われているのか実際に見てみるのが一番だろう。

『覚えたからな、テメェら』

 あの声が響く。ダメだ。そのまま倒れておく方が賢い。過去がバレてしまう。だから、大人しくさせて。

 蛮神、イフリート。アマルジャ族が信仰する神だったか。そういえば顕現させるために準備をしているんだっけ。そうかそうか。じゃあこの"超える力"とやらでお手並み拝見といこう。

 赤き焔が吹き荒れ、その蛮神は現れた。ボクはそれを見上げ、人知れず笑顔を見せる。ちり、とまた首元がざわめく。右腕に、焔が宿った。何を考えてるか知らないが、ボクは神の信仰はとっくに捨ててるんでね。神殺しなんてどうも思わない。本当は直接手を下してもいいのだが―――ここは他の冒険者に手柄を譲ろう。ボクはただの初心者癒し手。怪しくなんてないさ。



 ―――オイオイオイ。あのエーテル反応はまさかあの時のヴィエラか。リウィアも何で分かんねェんだ。どっから見ても脅威だろ。杖持って人を癒やすふりしてずっと蛮神の首を狙っておっかねェたらありゃしない。焔が吹き荒れた時しか回復してなかったぞあいつ。
 てか最近消えたと思ったが髪を切って染めてやがったのか。ざけンなよ。小細工でもない手段で一瞬見逃した俺がバカみたいじゃねェか。
 とっととデータ集めて閣下に報告しねェとこっちが損害被ンぞ。



 本来、蛮神の光に()てられるとテンパード、信徒化されてしまうらしい。蛮神の威光で信者を増やし、強大な存在として顕現する。顕現するためにもエネルギーが必要でそれはクリスタルで賄う。なるほどそうやって2つの事件が繋がるのか。
 そしてそのテンパード化を防ぐのがこの超える力による何らかの加護。それがエオルゼアを生きる人々を護るための奥の手だという。なるほどね。

 気になるのはサンクレッド。ボクを危険な目に遭わせてしまったと思っているようだ。別に大丈夫なんだけどね。"急いては事を仕損じる"、あんまり慌ててもいいことないよ?

 って何か騒がしいな。グランドカンパニー? 興味ないんだけど―――しょうがないか。確かにボクみたいな強い力の人間がフラフラしてたら怪しいし面倒なことになるもんねぇ。重い腰上げてまずはボクがグリダニアの使者として回った成果の式典に行ってみましょう。

 リムサ・ロミンサ。2つの蛮族と帝国によって大きな拠点も作られ更には海賊対処も大変、と。覚えておこう。これは"使える"。今は式典で警備も割かれた"最後のチャンス"だ。そういえばコボルド族は爆弾をポイポイ投げてたな。証拠隠滅には持って来いだ。よし。
 ウルダハ周辺。アマルジャ族は火を用いた術が多い。これも利用価値があるかもしれない。青燐水を運ぶ体制が整っているこの辺りなら"発見"されやすいだろう。
 グリダニアは―――下手に森を傷つけたら面倒なことになる。こんなにも落ち着く場所で醜い自分を見せたくない。
 さあグリダニアの式典に行く前に計画の始まりだ。



 疲れた。この一言に尽きる。二度とこんな仕込みはしたくない。あれだけ盛大にやればあのボケたであろう爺な皇帝にも分かるだろう。―――鮮血の赤兎は死んだと。自分が喉から手が出る程欲しかった力が不慮の事故で消えたのだ。現場付近で張っていた結果、第一発見者は帝国兵だった。そしてその遺品は彼らによって回収されるのも確認。
 血に塗れた荷物も全て向こうが処分してくれるので身軽になった。我ながらナイスアイデア、これで厄介な目もなくなる。念のため幻具は持ち続けるが。
 勿論所属は双蛇党。もう少しだけグリダニアに滞在するさ。
 そして着任早々お仕事。そこには飛空艇の乗組員らしきルガディンが帝国兵の動向を見守っていた。声を掛けると早速怪しまれる。まあ当たり前だ。軍服着てないし。双蛇党の人がすぐに誤解を解いてくれた。よかった。
 あの飛空艇は新造艇、最新型らしい。そういえば飛空艇というか魔導技術は帝国由来だったか。亡命者が作った会社の製品なのだろう。ガーロンド・アイアンワークス社という会社は今肝心の会長が行方不明らしく、大変そうだ。

 初めての魔導兵器相手の勝負だ。硬い装甲はぶち壊し甲斐がありそうだが、まあ今は幻具を持っているので大人しくする。人や動物とは違う手ごたえがありそうでいつか自分の手で殴る時が楽しみだ。

 晴れて正式に入隊となり、和やかな空気の中歓迎された。なんだかすごく首元がくすぐったい。そそくさとミンフィリアの元へ戻る。
 この人もボクの活躍が自分のことのように嬉しいのか。面倒見がいい人が本当に多い地域だなここは。
 ついでに前に助けた魔導技師の2人も暁に迎え入れられた様子。確かにどの勢力も欲しそうだよね。
 どこにも属さず中立企業でいるのは凄いと思う。だって頭が行方不明な地点で吸収されててもおかしくないでしょう?

 次の依頼は双蛇党から。照れて逃げたのにすぐに呼び戻されたね。ふふっ。とりあえずチョコボを支給してもらうついでに話だけ聞いてこようか。あと久々にウズウズして拳を行使したくなったんだよね。後でウルダハ行って格闘士のギルドにも寄ってみよう。ついでにパンチ力の威力調整方法とか分かるかもしれないし。

 なるほど。なるべく戦を起こさず対話だけで解決出来そうな種族なのかシルフ族は。モーグリもイタズラ好きだが基本的に怒って来ないのを見てるとこの黒衣森に棲んでる部族は大きな争いは好きじゃないのかもね。森の精霊が怖いから。



 チョコボを支給してもらう。名前はフレイム。バディとして一緒に戦闘もしてくれるらしい。よろしくね、相棒。
 相棒を作ったのは簡単。久々に弓術士ギルドに顔を出して依頼を受けようと思ったからだ。

 密猟者パワ・ムジューク、ねぇ。中々いい腕の持ち主だ。だけど弱き者を困らせる人間は許せないよ。でもあくまでも弓術士ギルドのシルヴェルとレイ・アリアポーに華を持たせる。難しいお仕事だ。ボクは外からやって来た旅人だ。こういう現地の問題はそこの住人が解決するべきだ。自分に足りなかったものに気が付き、それを認め合い、背中を預け合う関係を見るのは好きだ。ボクはいらないけどね。人助けさえできれば、それでいい。
 目を褒めてくれた。ボクのこの目が、今回の偉業を達成したのだと。少しだけ首元がくすぐったい。そして伝説の吟遊詩人について教えてもらう。歌には全く興味はないけれど、人を鼓舞させる能力は気になる。弓握り、この先を見てみたいのだ。

 カッコイイヒゲのおじさまだった。少し陰りのあるエレゼンのおじさまに少しだけフウガの面影を感じた。モーグリ族と心を通わせ、詩歌を奏でるとはいいものだね。ソウルクリスタルと呼ばれるものを受け取り、少しだけ、手に付けてみよう。

 幻術士ギルドにも立ち寄る。どうやら最近森で淀みの発生が多い原因が見つかったみたい。精霊の声が聴けることが分かったシルフィーを連れ、南部森林へと向かう。
 原因はアコーマンという妖異だった。自然の力を受け入れたシルフィーと一緒に元を絶った。道士として一つの成長を果たした彼女が少し眩しく感じる。きっと立派な子になるよ。

 その後、カ・ヌエ様の妹弟が護衛を付けずに儀式へ出立してしまったのでその手助けを頼まれた。エ・スミ様からのお願いなら仕方が無いね、とエバーシェイドへと向かった。
 案の定長老の木周辺の魔物に手を焼いていた。手助けをしてやる。すると彼らのご先祖様に後継者として認められたらしい。白魔法という新たな癒術を習うことになる。弟クンには認められなかったけどまあそれはこれから様子を見ればいいだけ。柔らかな笑みを浮かべる。
 精霊の怒りを鎮める儀式の協力か。そんな経験まで出来るとは旅をしてみるもんだ。



 一通りの頼まれごとを解決したのでシルフ族の件を片付けに行く。近隣に住む住人によれば悪意はないが価値観は人間とだいぶ異なるイタズラ好きらしい。仲良くなれそうだ。
 警戒心が高まっているのか長ちゃまとやらに会わせてもらえない。とりあえず機嫌取りにシルフ助けをする。可愛らしい子達。ぼやかしているが会わせることが出来ないというよりかは行方不明みたいだ。どうやら帝国兵が変なことしているのではないかと予想されているようで。本当ならそれは大変だ。二者の仲を深く繋ぐ英雄とまで言われるとは思わなかったが、人助けは別に苦にもならない。
 長ちゃまとやらは南部森林に行ったまま帰った来ないらしい。向かってみよう。

 バスカロンによるとグリダニアの衛士の中に帝国兵を手引きしている存在がいるらしい。気軽に潜んでたしそうとも言えるか。金払いが良くなった鬼哭隊の男ローレンティス。彼を追いかける。
 犯行動機は金のため。ていうか滅茶苦茶バスカロンブラザーズの近くで取引準備をするなって。バカだなあ。そんな奴に負けるわけないし今回のような件のためにバスカロンは人の心を掴んでるんだよ、おばかさん。本当に気付いたならいいけど……まあ今後の彼次第だ。
 弱き人間1人の力では何も起こせないのは当たり前。ボクは必要ないけどね。何も持たない旅人なんだから。

 情報は集まった。どうやらトトラクに逃げ込んだまま戻ってこないらしい。立ち入り許可を貰い、突入することに。
 その奥にはアシエンが待ち受けていた。アシエン・ラハブレアという存在らしい。蜘蛛を凶暴化させ、襲わせてきた。
 あっという間に討伐し、一息つくと繭の中からシルフ族が飛び出してくる。どうやらこの人が"長ちゃま"らしい。また、超える力が発動し、記憶が再生される。

 捕まったシルフ族は拷問により殺された。そして偉そうな赤鎧は、誰だ? 機工師、らしい。シドという男と因縁があるのか。あの野望だけバリバリありそうな鎧の名前はネロ。覚えておこう。煽って舐めた戦いしてじわじわと追い詰めてバカにしてやるからな。

 無事フリクシオ長ちゃまの救出が終わり、シルフの仮宿に戻った。そこでラムウについての話を聞く。自分たちの領地に入らなければ何もしない、と。それだけ祈りの力が強いということだろう。なら今の所は触らなければ大丈夫と。書簡を貰い、グリダニアに戻る。

 その後ミンフィリアに報告しに行く。あ、ビッグスとウェッジが出したってことはシドはあちら関係か。噂の行方不明の会長サマと。技術を仕込まれてとのことだからやはり相当腕が立つのだろう。
 そして暁の仲間としてシルフのノラクシアがやって来た。賑やかになったね。



 仮面の男の痕跡を辿るとアラミゴ人と取引がある可能性が高いことが分かった。東ザナラーンのリトルアラミゴにて手がかりを探そうとしたが、排他的な彼らから一向に話が出来そうにない。
 仕方がないので人助けだ。格闘士の基本的な型を教えてもらいながら東奔西走する。ボクは少しだけ手加減が苦手なのでどうしても弓に頼ってしまう身。最近街の側に設置してあった木人を吹っ飛ばしてしまった。型を用いた戦い方はとても新鮮。
 森の掟は厄介だ。苦しんだ人を助けることが出来ないのは窮屈ではないだろうか。しかしそれで成り立つ国ならば仕方のない事なのだろう。少しでも楽にできるよう薬の調達を手伝う。お礼として紹介状を書いてもらった。これで進展したらいいが―――。

 どうやらリトルアラミゴの若者たちとその仮面の男が接触しているらしい。何を企んでるか分からないけど―――若いねえ。
 若者クンの1人、ウィルレッドに呼ばれたので話を聞きに行く。何か襲い掛かって来たので毒矢と風でなぶる。どうやらよほど帝国を倒したいらしい。短絡的なガキは嫌いだよ。
 どうやらアマルジャ族からクリスタルを強奪してラールガーを呼び降ろす儀式の手立てを教えてもらっていたらしい。莫迦だ。キレたアマルジャ族も追いかけてきた。莫迦な若者だけど、祖国を救うために真っ直ぐな莫迦は無下には出来ない。護ってやろうじゃないか。
 蹴散らして詳細を聞いたが結局騙されただけで何か手がかりを持っていたわけではなかった。仕方がないので砂の家に戻ろう。

 戻る前に格闘士ギルドのお爺ちゃんを鍛える。いやおかしい。教えてもらいに来たはずなのに教えてる。でも全盛期のキレを見れたからいいかな。闘技場には興味ないけど悪くはない人だった。
 あと―――今まで一撃重視だったけど連続攻撃も悪くないかもね。戦術としてストックしておこ。
 特殊な武術、ねぇ。肉体に宿るエネルギーを制御し、それを力として放出するのは得意分野だ。古戦場を巡り、チャクラと呼ばれるものを開き、修行と。モンクの導き。うん、何か楽しくなってきた。

 ミンフィリアにリトルアラミゴにあったことを報告する。第七霊災以降の騒乱が全てアシエンとやらのせいが浮上してきた。どこまでそうなんだろうねぇ。
 次は黒衣森にアシエンの目撃情報が。見てこよう。

 仮面の男が引きつれた奇妙な目玉の化け物が若い女性の死体を運んでる、ねぇ。共通点は白百合紋のボタン、と。グリダニア内で聞き込みをする。かなり精巧でいいつくりをしていたのでいいお家のものだろうと。
 辿った結果、ダルタンクール家という名門の証らしい。それを知る男ウルサンデルに詳細を聞く。

 かつて美しかった当主が第七霊災で傷を負い、それを治療する儀式を行ったのが仮面の男"たち"。変わり果てたお嬢様はメイドたちを拷問の末に殺していき、死体は外へ運ばれた、と。うーん気持ち悪い。弱き立場の人間を苦しめて殺す人間は嫌いだよ。

 ハウケタ御用邸。確かに先に戦った目玉の化け物が飛んでいる。幻具を手に持ち、その扉を開いた。
 妖異と化した哀れな当主様を吹っ飛ばした後、アシエン2体がやって来た。何人いるんだ、コイツら。
 深淵の司祭とは大きく出たなラハブレアとやら。この世界の真の姿とやらは何か分からないが―――闇なんていらない。
 元使用人のお爺ちゃんも喜んでくれたしこれで調査は終わりだ。砂の家に戻る。

 一通り報告が終わったら次はまた蛮神調査。人使いが荒い。次は―――激戦になりそうだと。まあこちらは幻具を持ってフォローするだけだ。何も苦ではない。そろそろ何か別のギルドに行ってみようかな。次は何にしようか。

 少しだけ暁の血盟の子たちから話を聞く。ノラクシアは人に化けるようになり、アレンヴァルドくんが護衛することになったらしい。微笑ましいね。あと"落ちるダラガブに飛空艇で体当たりをしそうな性格"の親方さまはどんな人間なのかしらね。



 斧術士ギルドに顔を出してみる。船を造るための丸太を手に入れる道具から、圧倒させるための武器へ。攻めるため、護るため戦場に長く残り斧を振り回し敵を砕く。目立ちたくないがスタイルとしては合っている。少しだけ斧を振り回すことにした。
 力ない人々の味方になるため、海賊のように斧を振り回すのは変な感じだ。リムサ・ロミンサの人助けを通じて彼らの生活や主張を聞いて回る。各々彼らなりに正義があることが分かり、嫌いじゃないと思った。

 親を"クジャタ"と呼ばれる魔物に殺された少年を助けた。弱き人を助けるのは、ボクの役目だ。

「姉ちゃんみたいな斧術士になりたい!」

 ふわり、首元が温かな風で撫でられたようにくすぐったい。―――それはキミの頑張り次第。なりたいのなら、修行はサボっちゃダメだよ?



「はい! がんばって行ってきます!」
「いってらっしゃい、フウガ」

 リテイナーのフウガに一通りの植物に関する知識を吸収させた。あとは実践だということでで収集任務をお願いする。スクリップとクッキーを渡し、走って行く姿が可愛らしい。ゆっくりで構わないよと手を振りながら見送った。
 さて、まずはタイタンについてメルウィブ提督から直々に話を聞きに行った。うーむ元々協定を結んでいたが、国の安定のためにという名目で人間の方から破ってしまい防衛のため召喚、と。ウルダハ程じゃないが自分勝手な言い分でこちらに助けを求めてきている。―――まあ政争には興味はない。このまま放置していては被害が広がる一方だ。とりあえずタイタンがいた所に行く術も分からないというのなら、解散した以前タイタンを撃退したという"海雄旅団"のメンバーを探しに行こう。話はそこからだ。

 どうやら"グレイフリート風車群"に元海雄旅団員だと自称する人間がいるらしい。向かってみる。
 ―――おかしい。覇気が見えない。一番の実力者にしてはちょっと不安になる。案の定偽物だったが、どうやら本物さんはコスタ・デル・ソルにいるらしい。そういえば初めて行く場所だ。本当にいるよね? 嘘ついてない? 大丈夫?



 斧術士ギルドでコスタ・デル・ソルで"魔人"が現れたので調査してほしいという依頼も受けたのでついでに見に行ってみることにした。

 コスタ・デル・ソル。富豪ゲゲルジュが買い取った集落。青い空、白い海―――バカンスに持って来いだろうね。ボクは興味ないけど。

 斧を持った赤く輝いた目で吼えるヒト。見るからに暴走している。斧術士とは違うらしい。集まって来た魔物を吹っ飛ばしていると去って行ったはずの魔人とやらが戻って来た。しかし澄んだ目を見せている。協力して斧を振るった。
 この男はどうやら大昔に途絶えたと言われていた"戦士"の技を広めるために修練の旅をしているらしい。実際彼ではないと思われるが海雄旅団員にもいたらしく、それはそれは期待できる技術だ。
 "原初の魂"と呼ばれる己の中に眠る力を呼び覚まし戦う存在、それが戦士らしい。歴代戦士の魂が宿ったクリスタルを受け取り、少しだけ修練を積んでみることにした。

 見つけた。元海雄旅団の副団長ヴェイスケート。タイタンを倒したいと言ってもまともに取り合わず珍味を集めてこい、と。意外とリムサ・ロミンサは余裕あると思っているんだね。まあどうせ他の海雄旅団メンバーと会わせて実力確認がてら酒盛りの準備をしたいのだろう。海賊らしい回りくどさだ。勝手にすればいい。

 黒衣森に行き"アダマンタスの卵"を、ザナラーンに行き"ラントンウォームの肉"を手に入れ、またラノシアに戻る。エオルゼアの珍味なんて呼ばれる食材を自力調達していった。
 その合間に幻術士ギルドに立ち寄るとどうやら見知らぬ手負いの獣が北部森林で目撃されたらしい。治療しに行くとそこにはとても美しい角が生えた白い馬。噂で聞いたことがあるユニコーンみたいだ。傷を癒すと懐かれたのでギルドに戻ると予想通りユニコーンじゃないかと言われる。人に懐かないと聞いていたがそんなあっさりボクのような旅人を信用したらダメだよ? まあ旅は道連れ世は情け。ついて来たければ勝手においで。

 2種類の珍味を集めた後、コスタ・デル・ソルに戻る。どうやら最後の珍味の事を知る"ブレイフクロス"と呼ばれるゴブリンの元で何か面倒な事件が起こったらしい。向かってみると野営地にデカイ何かが襲来したらしく助けてほしいんだって。杖を持って奥地まで行くと毒を吐くドラゴンがいるじゃないか。倒してやると感謝の印として最後の珍味である"ゴブリンチーズ"を貰う。これでいいだろう。
 持って行ってやったら何と言われたと思う? 晩餐に合う最高のワインを持って来いだって。そうかそうか最後の晩餐がお望みか。



「私の光となって、少々手助けしてくれませんか?」

 シャマニという男に会いに行く。元海雄旅団の新人醸造師らしい。究極のワインと言われる、"バッカスの酒"を復活させるため協力してほしいと。第七霊災で"バッカスグレープ"が全滅してしまったみたい。手段を模索する合間にかつて命を助けられたというドレストという男の元へ向かう。
 元帝国兵。成程属州民の人間か。理不尽なもので。故郷へ帰れる日が来たらいいね。

 シャマニが醸造したワインのお礼として回収したココナッツワイン。栓に使われていた葉がどうやら"バッカスグレープ"だったらしい。急いで彼の元へ戻る。
 結果を言うと、グゥーブーの頭に残されていた。枝は手に入った。これで失われたモノを取り戻せるのだろう。こういう人助けは好きだ。人の温かな光を見ることが出来る。バッカスの酒はビルギレントのコレクションから貰った。これで最高のワインも集まったのでいよいよタイタンだ。気を引き締めていこう。

 かつての海雄旅団が蛮神討伐を共にする仲間を見定めるために行う試練。それが3種の珍味と最高のワインを集めさせる。―――いやまあ何も文句は無いよ?
 集めてきた素材で作られた料理はおいしかった。これは―――同じ食材がないと再現は難しいかも。あと美食家ゲゲルジュが集めた料理人が作った最高の料理だ。そんな簡単なモノじゃないよね。
 それじゃあ彼らの英雄譚を、受け取ろうじゃない。
 場所はブロンズレイク。タイタンの元へ。

 蛮風エーテライトというものがあるらしい。成程。コボルド族が住んでる場所は山の穴倉暮らし。1つずつ歩いて調べるなんて日が暮れちゃう。きっとタイタンがいる所へ直接飛ぶエーテライトがあるに違いない、と。
 青色のクリスタルを見つける。これがコボルド族が使っていたエーテライト。ヤ・シュトラがエーテル送り続けることで機能させ、タイタンの元へ送り込んでくれるらしい。

 タイタンはどんな刺激をくれるのかしら。すぐにへばるんじゃないよ?



『盟約をたがえなければ、山を下りることはなかった』
『聖域を踏みにじるヒトの子』

 一方から英雄と言われる存在は、また一方では悪魔と呼ばれることになるとは言うけど―――ふふっあの大義名分じゃあどっちが敵か分からないね。でも自分たちの首を絞めるような蛮神召喚はよくないよ。蛮神召喚でエーテルを侵食、喰らいつくすことで自分達が住めるところがなくなっちゃう。彼らもまた助けなければならない存在なのだろう。まあ助けろとは言われてないので介入する気はないんだけど。

 そうして大きな岩のような存在タイタンを討伐する。どこかひりつくような悪意を首元で感じつつ、その場を後にした。まだ調べものがあるというヤ・シュトラと別れ、リムサ・ロミンサへと報告しに帰ろう。

―――この時のボクは完全に油断し切っていた。過去なんて捨てることは出来ない。どうすればいい、頭の中がグチャグチャになりながら、走ることしか出来なかった。


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#謎メモ

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"聞いて……感じて……考えて……"グリダニアに降り立つ直前夢…

メモ,新生

#謎メモ

メモ,新生

謎のメモ(新生)

"聞いて……感じて……考えて……"

グリダニアに降り立つ直前夢を見た。ふわふわと浮かぶ星空の世界の中、フウガの口癖とよく似た言葉が響く。暗闇の中、星が私に力を与える奇妙な白昼夢。
 声を掛けられ、目が覚めると同乗者の旅商人。先程ボクが野党に襲われている所を助け、お礼としてちょうどグリダニア行のチョコボキャリッジに乗る所だったと連れて行ってくれた。

 あの夢はエーテル酔い、だったのだろうか。

 森の住人に話しかけられた。どうやら今は一緒に乗っていた双子と私にだけ見える存在らしい。奇妙な体験だなと苦笑した。どうやらそれに高じてイタズラ好きみたい。もしかしたらいつか仲良くお話しできるかも。

 この商人はブレモンダという男らしい。冒険者なのかと聞かれた。本当は違うのだが―――まあこの辺りで動き回るなら都合がいい身分なのだろう。合わせておくことにした。
 冒険者になった理由、つまり旅の発端ということだろうか。……力だ。旅をしながらこの圧倒的な力で人助けを行うのが今のボクの使命。戦いは気分が高揚するし、欲求不満の改善にもなる。

"英雄になったとしても、死んじまったら、墓石しか手に入らない"

 いい言葉だと思った。名誉は興味ないが、何でもない旅人だって英雄だって死んでしまえば手に入るものは一緒。
 言われた通りとりあえずグリダニアに着いたら冒険者登録をしよう。

『危ない!』

 どこかから聞こえた声とボクの声が重なった。ブレモンダは驚いたような顔をした直後、矢が傍を掠り刺さった。
 イクサル族。この辺りに生息するトカゲたちのようだ。グリダニアの人間と敵対しているらしい。助けに入るのも悪くはないが折角の街に入るチャンスを無下にしたくない。無事を祈り、その場をやり過ごした。

 歴史に名を残したくないが、誰かに自慢される名も無き冒険者という存在になるのは悪くないかも。



"故郷を懐かしみたいなら、エオルゼアのグリダニアへ行くがいい"

 グリダニア。綺麗な森の中にある古都。どこか懐かしい、フウガの言う通りだ。故郷はもっと小さな里だったと思うけど、澄んだ空気がヴィエラの本能を刺激されたみたい。余所者に厳しいのも故郷と一緒だ。笑みがこぼれる。
 とりあえず身分証明のために冒険者ギルドへ向かった。

 ミューヌという不思議な雰囲気の女性に話しかける。この国についてのレクチャーを受けた。
 野党やイクサル族という部族だけでなくあのガレマール帝国に悩まされているらしく、冒険者という仕事は意外と大変そうだ。

 5年前の霊災というものの後処理がまだ終わってないらしい。あの時ボクは……ああ偶然カルテノーに辿り着いて人助けしたらグリダニア越えてラノシアに送ってもらっちゃったんだっけ。懐かしい。
 あの時に見た、流れ星は未だに覚えている。世界が滅ぶ時ってこんな感じなのかもしれないな、としみじみした。それを何とかしたのが"光の戦士"たちという存在なのだろう。ボクには無縁の存在だから記憶の片隅に置いておこう。

 街の人の話に耳を傾けながら歩き回っていると巨大なクリスタルの前に辿り着いた。そういえばリムサ・ロミンサにもあったな。興味なくてそのままにしてたっけ。転送魔法があるとは知らなかった。これで迷子になった時にここに帰って来れる、かもしれない。冒険者という身分は本当に便利なモノだ。
 人助けはやはり楽しい。子供の心を開かせたり、物を運んだり魔物から剥ぎ取った素材を持って行ったりする。これからしばらくお世話になる街なのだ。信頼を稼ぐのも悪くはない。
 だから槍を封印して、少しでも怪しくないヴィエラと見せなければ。"鮮血の赤兎"の噂がここまで来てなければいいんだけど。

 弓術士ギルドに入門する。故郷やフウガの修行で人よりかは扱えるのだが、素直に人に教えを乞うという行為も戦術の一つだ。

『面倒だが初心にかえって修行も楽しもう。何かいいヒントが見つかるかも』

 どこかから声が聞こえた。その通り。弱き人らの笑顔を引き出すための、冒険者という存在に擬態するため、しばらく弓の修行をしよう。



"強き旅人として歩みたいのならどの武器も好き嫌いせず勉強せよ"

 本職の方々によるとやはりボクの弓の扱いは隙が多いらしい。まあわざと初心者っぽく見せてるんだけど。何もかも完璧だと怪しまれてしまう。あくまでも新人の、人助けが趣味な冒険者として。

 少しだけ未熟な冒険者の演技に慣れ始め、住人に頼られ始めた頃。バノック練兵所からの依頼で乱れたエーテルの先、切り株に刺された剣を見下していると女性に話しかけられた。
 天真爛漫な女性は格闘士のようだ。その隣にはララフェルの呪術士だろうか、杖を背負い奇妙な装置を顔に付けた青年がいる。一瞬ボクの犯行かと疑われたが、一緒にやってきていた森の住人に誤解を解いてもらえた。その直後この森の怒りを見に受けることになる。
 硬い樹木はこの森の精霊なのだろう。怒り狂って闇雲に襲い掛かるのは賢くない。いやあまり悪口はよろしくないだろう。
 流石に精霊の急所は分からない。何とか矢を撃ち、2人と共にその怒りを鎮めた。
 キョロキョロと見渡すと奇妙な石を見つけた。それに手を伸ばそうと瞬間、眩暈を覚え倒れてしまった。

"聞いて……感じて……考えて……"

 奇妙な夢の声の主はハイデリンというらしい。星の意思、らしいがよく分からない。ボクには世界を救う力があるらしいが―――興味はない。ただ旅を続けるだけ。

 後で教えてもらったが彼らはイダ、そしてパパリモというらしい。ボクの次に怪しそうな漫才師に見えたがどうやらえらく信用されているらしい。どこかでまた会えるかもしれないし、どちらかが欠けてしまうかもしれない。



"森には精霊がいる。お主の故郷もそうだっただろう? そうか、知らぬか。……精霊へ感謝の意を示す儀式というものは重要な意味をはらんでいる。絶対に邪魔をしてはならぬ"

 監獄跡にて。儀式に失敗してしまったらしい道士たちを助けるためにインプを払いのけ奥へと進む。そこにいたのは巨大なゴーレム。あっさりと倒し何やら気配を感じたが既にいなくなっていた。一瞬だけ仮面を被った魔道士が見えた。あれがゴーレムを召喚したのか。胸のざわめきがどこか既視感を覚える。
 そこで再びイダとパパリモに出会う。博物学者、らしい。そこで眩暈が襲い掛かった。

―――記憶、だろうか。私が知る由もないはずの風景が、目に映った。

 パパリモが何やら変なことを言っていたが、別に興味は湧いてこなかった。とりあえずボクが出来ることをやっていこう。
 例えば―――弓の他のギルドに顔を出してみるとかね。この一件で道士という彼らの営みに興味を持った。
 そうして人を癒やす力を持つ幻術士ギルドへボクは向かうことになる。

『やれることを増やして人助けの種類を増やすのも有りかもしれないねぇ。少しだけ耳を傾けようか』

 ほら声もそう言っている。ふふっ、旅の知識を生かしてクラフターも有りかもね。

◇◆◇

―――何だあのエーテルは。ありえない。何故光の加護を受けた冒険者の魂に"あの男"のエーテルが纏わりついている。ありえない、絶対に許されない。
 あのヴィエラだけは、存在してはならぬ!


◇◆◇

"自然は我らの味方。必ず大切にしなさい。円滑に旅を行うためにも、自然との対話は欠かしてはならぬ"

 幻術士ギルドにて"土"と"風"についての教義を受けた。自然の力を借りて、それを癒やしの力とする。いい話だ。そしてシルフィーという少女の力の使い方は―――過去の自分を思い出す。力の行使に必要な自然エネルギーの力を借りず癒すということは。代わりに使っているのは己のエーテル。こればかりは痛い目を見ないと分からないだろう。だってボクがそうだったのだから。

 もっと自然との対話というものについて知りたい。というわけで次は園芸師ギルドだ。何か異変があったらすぐに怒る森から資源を貰ってくるということは、道士と同じように自然に近しい存在なのだろう。
 樹木の扱いに関しては全く分からないわけではない。しかしハチェットを担ぎこうやって森の中を走り回った経験はなかったので新鮮な体験だった。そして成果物は姉弟子シセリーの言う通り、裁縫に木工、調理にも生かされる。とりあえず木工師ギルドに顔を出してみよう。新しい弓を作り、調整できるようになりたいしね。
 マスターのベアティヌはとても怪しいけれど、悪い人間ではない。楽しく学ばせていただこう。

 そして自然というものに関して忘れてはいけないのは命への感謝だろう。革細工師ギルドに顔を出してみる。弓と同じく装備も自分の動きやすいものに調節したい。革細工はまあまあ出来る。昔狩猟した皮で衣服を見繕っていた頃がある。"あの男"に物凄く怒鳴られて以降は最低限の加工以外はやっていなかったが。エオルゼア一の革細工ブランドも持つギルドで教えを乞うことも悪くはない体験だ。
 マスターのゲヴァは口は悪いが、腕は確かだ。褒める所は褒めてもらえるし修行には丁度いい。

 自然への理解を深めるうちにやはり幻術士シルフィーは魔法が使えなくなった。原因は当然、自らの生命力切れ。才能があるからこそ起こった壁。同じことをやらかした先輩として何かアドバイスしようとも思ったが、こういうのは本人が気付いて反省してこその成長だ。数歩後ろで、見守ることにする。



"我らが手に入れた力は誰かにとっては厄介なモノだろう。その言葉に怯えず、勇気を見せてやりなさい。"

 チョコボの卵盗難事件の解決を手伝った。なんとモーグリが守ってくれていた。ただ気まぐれにふわふわしてる子達かと思いきやお人好しな所もあっていい子なんだね。ますます気に入った。
 イクサル族の気になる動きを街の方に伝えるように頼まれる。そんな重要なこと旅人に任せちゃって大丈夫なの? 少し穏やかにするだけでこうやって仲間だと任命されるとはちょろいもんだ。
 まさかそれがとある組織とのコネに繋がるとは誰も予想できなかっただろう。

 イクサル族がグリダニアの民にとって重要な"長老の木"を狙った事件だ。どうやらこの聖地でクリスタルを精製し、侵略の足掛かりにするらしい。怪しげな術を使い、妖異を召喚し襲い掛かる。
 ボクは人を癒やす幻術士として手助けをした。協力は勿論するけど―――現地の人間が頑張らないとね。ケアルで癒してやりながらボクは戦闘をこなした。
 大きな妖異を倒し、神勇隊の人らを見送る。その時だった。背後から気配を察知する。振り向くとそこにはあの時の黒衣の男が佇んでいた。

 エーテルの歪み。先程よりも圧倒的に力を感じられる妖異。ボクのことが邪魔らしい。―――舐められたもんだ。土と風の力を借り、立ち向かってやる。
 毒だって? エスナで治療すればいい。風を纏わせ土塊をぶつける。大方妖異を吹っ飛ばし終わる頃、イダとパパリモが助太刀にやって来た。流石に幻術だけであの黒衣をぶちのめせるとは思っていなかったから丁度よかった。
 彼らは天使い、アシエンというらしい。倒した筈だが手応えは感じられなかった。
 不完全燃焼だったがグリダニアの住人には感謝された。なんと長のカ・ヌエ様にまで。大御霊祭りという精霊と人を繋ぐ儀式の主役になって欲しいらしい。あまり目立ちたくはないのだが……時々は悪くないかもしれない。
 仮面を被り、そこで近頃聞いたハイデリンとやらに関わるもの、そして拾ったクリスタルのことを聞かされる。
ボクの許可も得ず"超える力"と呼ばれるものを抱えさせられたことを知った。嗚呼眩暈が、また何か妙なものを、見せられる。

―――赤い、星。ダラガブ、に黒き龍。一方的な殺戮。そういえばあの日もこの風景を見た。赤色の服の人たちを、助けたっけ。抱えて走って、いっぱいお礼を言われて。そしてエオルゼアにやってきた。
 そうか私は過去を視ているんだ。これは、カ・ヌエ様の記憶を通した風景。ノイズも以前より減っている。慣れて来たのだろうか。いやそんな慣れは必要ない。

 目が覚めると宿。案の定ぶっ倒れてしまったらしい。祭りの途中に申し訳ないことをした。
 お詫びに行くとなんと国の代表として同盟国へ親書を持って行ってほしいのだという。―――ボクでいいのかい?

『それだけ"ボクたち"が求められているのさ。悪い話ではないだろう?』

 あの声は別に嫌ではないらしい。ミューヌも自分のように喜んでくれた。
 ……まあ"約束"よりも先に飛空艇に乗ってしまうが、それも別に悪いものではないだろう。冒険者という身分としてもっと広い世界を見て回れるのが楽しみで仕方がない。

 ねえ、キミは今どんな空を見ているのかな。大空へ運んでくれる白い少年クン?

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