FF14の二次創作置き場

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No.154

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補足Lv39メインクエスト前後のお話。  「アルフィノ、大丈夫?」「あ…

新生

#即興SS

新生

"召し上がれ"
補足
Lv39メインクエスト前後のお話。
 
「アルフィノ、大丈夫?」
「あ、ああサリスか。大した事はないよ」

 白い息を吐きながら少年ははにかんだ。



 クルザス、ホワイトブリム前哨地。ボクたちは今、シド・ガーロンドが造ったと言われる"エンタープライズ"を探す手がかりがこの地にあるという情報を掴み、やって来た。余所者お断りの気候と同じく冷たい人間たちの扱いに困りながら、人助けをしている。まあその人助けも異端審問官が邪魔をして大して実ってないわけだが。
 記憶を失った男シドも自分が出来ることを探し、装置を修理している。しかし、ザナラーンで潜んでいたボクたちを見つけ出しここまで連れてきた少年アルフィノは地道な活動が苦手らしい。外で何やら考えことをしていた。

 見ていると非常に寒そうである。特に腹を冷やしそうでボクはそわそわしていた。見かねてつい旅用のマントを羽織らせる。

「いいのかい?」
「まあ少しは慣れてるからね。それにしても―――シドの方が寒そうなのに。無茶しちゃだめだよ?」
「確かにシドは見てるこっちが寒くなるがね……」

 薄い布のように見える半袖。アルフィノの言う通りとても寒いと思われる格好だ。本人はどうも思ってなさそうだが。

「ガレマール帝国はとても寒い土地にある国だしね。これ位誤差なんでしょ」
「ふふっそうかもしれないね」
「お前たち何を話してると思ったら……」

 いつの間にか苦笑しながらシドが立っていた。ボクとアルフィノは笑顔を見せる。

「ほらアルフィノ、噂をすれば寒そうな人だよ」
「サリスからマントを預かってるが―――もしかしたらこれは君が羽織ってる方がいいかもしれないね」
「お、俺は大丈夫だ。アルフィノ、風邪を引いたら大変だ。それで温まるといい」
「じゃあお言葉に甘えさせてもらうよ」

 苦笑する彼らを見て、ボクは少し考える。そしてふと過去の記憶が浮かび上がった。

『温かい―――』

 食材は、ある。調理道具もある。じゃあちょっと火を借りたら行けそうか。

「アルフィノ、ちょっと待っててね」

 彼らの言葉を聞く前に砦へ走り去る。頑張って再現出来るようになったモノを、差し上げよう。



「サリス。これは……いいのかい?」
「ちゃんと食べないと身体が冷えていつまでも温まらないよ」

 思い付いた時は煮込む工程を忘れていた。おかげさまで思ったより完成まで時間がかかってしまった。マントにくるまったアルフィノは目を丸くし、ボクが手渡したカップを両手で持っている。年相応って感じで可愛いね。
 湯気が立ち、肉と切った野菜が白くとろみのある汁の中に沈んでいる。これがなかなか当時作ろうとしたけど難しくて苦戦したっけ。理由は簡単。どうしてもあの夜に食べた味にならなかったから。いや味自体は作れるようになった。温かく、自分の身体の芯に火が灯されたあの感覚を得ることが出来ない。

「これは―――シチューか?」
「うん。シドも食べる?」
「丁度腹が減ってきてた。貰えるか?」
「そう」

 シドにも渡し、ボクはニコニコと2人が食べている所を見守る。

「美味しい。サリス、とっても美味しいよ」
「ああ。お前はどんな料理も出来るんだな」
「ふふっ。長く旅をしていたらね、料理の1つや2つ出来るようになるよ」

 満面の笑顔。よかった。もし美味しくないと言われたらどうしようかと。

「ああ。それに、どこか懐かしい味がするんだ」

 シドはカップの中身をじっと見つめ、目を細めた。―――まあそうでしょうね。

「あなたがガレマール帝国出身の方なら、そうかもしれないわね」

 じゃあ片付けするから、と踵を返し歩を進める。「どういうことだ、サリス」という声が聞こえたが何も言わず手を振った。

 嗚呼。別に、どんな顔されてるか見たくないからじゃないよ。いつまでもボクの鍋を置きっぱなしにしてるのは失礼だなって思っただけなんだから。
―――記憶を取り戻したら、飛空艇を夢見た機工師がいなかったか聞いてみようかな。意味はないけど。



 あの時ボクを助けた白色の少年。今どこで、何をしているのかな。ボクを探す飛空艇は作れたのだろうか。いや、キミの故郷は今こうやって急激に勢力を広げてる。だから、恐ろしい兵器を造ってるのかもしれない。
 もしかしたら、敵として会ってしまうかも。ちょっとだけ怖いな。だから、なるべく出会わないことを祈ってるよ。
 ボクは旅人。それ以上でもそれ以下でもない。誰のモノにもならないし、誰かを愛することもない。
 忘れてくれてたら、嬉しいな。


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