FF14の二次創作置き場

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 付き合った後の裸エプロン云々ギャグ概念。漆黒以降のお話ですが展開には触れてませ…

漆黒

漆黒

【R18】"エプロン"【pass:共通鍵】
 付き合った後の裸エプロン云々ギャグ概念。漆黒以降のお話ですが展開には触れてません。
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注意漆黒ネタバレ。  「これは失敬。同胞を消滅させた英雄の前だからな。…

漆黒,ネタバレ有り

漆黒,ネタバレ有り

旅人は暗闇の過去に逢う
注意
漆黒ネタバレ。
 
「これは失敬。同胞を消滅させた英雄の前だからな。恐ろしくて、つい保険をかけてしまった。ガーネットという獣が怖くてねえ」
「ガー」
「ネッ」
「ト……?」
「違う!!」

 ボクの反射的に出た叫び声がクリスタリウムに響いた。

「うるさいじゃないか、赤兎。嗚呼今はアンナと言ったっけか? 英雄殿」
「知らない。初対面」

 後ろからの視線が痛い。あまりにも露骨に反応を見せてしまった事を後悔している。
 アシエン・エメトセルクーーー厄介な因縁が今更になって現れた。

 皇帝ソル、忘れる筈もない。あの寒空の国を治め、対面してしまった男。死んだと思っていたが実はアシエンだったということを知ったのはつい最近。嫌な予感がする。どこかで鉢合わせして殴り合わないといけないとは察していた。しかしその真実を突き付けられた現場には暁のメンバーはアリゼーしかいなかったので言う気がしなかった。理由は簡単、一々説明が面倒だからである。第一世界で合流し始めた今これを機に暁の人間位には言っておかないといけない。なんて分かっていてもこれはあまりにも現実離れした話。いつ切り出したらいいものかと悩んでいたが―――まさかここで会い、よりにもよって昔の名前を呼びやがるとは。

「なんだ、誰も知らないのか? まあ言えるわけないか。ではな、諸君……またすぐに会おう」

 それだけ言ってエメトセルクは闇の中へと消えて行った。この気まずい状況を作った本人が真っ先に逃げやがった。

「アンナ」
「知らない人。あのアシエンは、今が初対面だ」

 吐き捨てるように嘘をついた。いやあの男がアシエンとして会ったのは初めてだから間違っていない。ただ動揺しすぎて言葉がまとまらない。胃も痛くなってきた。今日はもう寝たい。



「ねえどう思う?」
「アンナのことか? 彼女はよく分からないからどうにも言えんが……まあ喋ってくれるのを待つしか出来ないだろ」

 あの後アンナは暗い顔でペンダント居住区方向へ歩いて行った。ガーネットとはと聞いても「昔名乗ってた名前。いつか話す」としか言われなかった。今更彼女が帝国と繋がっていると思ってはいないが―――。

「そういえばヴァリス帝との話し合いで初代皇帝がアシエンだったという言葉を聞いた時一番衝撃を受けてたのはアンナだったわ。……ガイウスも赤兎って呼んでた。話を聞く前にこっちに来ちゃったんだけど」
「彼女をいくら調べても過去は出てきませんでした。話したくないというよりかはどこか」

 英雄として活躍してきた彼女を今更疑っているわけではない。しかし何も語らないというのはこれまで共に冒険してきた仲間として寂しい所もある。

「アンナ、言ってくれないと分からないじゃないか」

 アルフィノの弱弱しい声が空に消えた。



 ネロサン、ガイウスと来て次はご本人登場か! 余計なこと言いやがって! ペンダント居住区の一室でボクはそう叫ぼうとした口を必死に塞ぐ。
 奴がトラウマだとかそういうわけではない。ただ会った時期が人に言いたくない過去なのだ。
 アルバートがボクを不審げな目で見ている。観念して少しだけ話をした。

「私、昔エメトセルクに会ったことがあった。いや正しく言うとガレマール帝国初代皇帝に直接会ったことがある」
「そうなのか? ていうかお前は何歳なんだよ」
「ヒミツ。当時ガーネットって名乗った。髪の色も赤かったし服はそこらの屍体から取ってて。ヴィエラは珍しい存在。フードで耳を隠し、胸は弓を引くためにサラシを巻いた。人から見たら怖かったのかも、沢山襲われて返り討ちにしたりね。今と全然違う生活してた」
「おいおい英雄とは程遠い存在じゃないか。それで、そのアシエンと何があったんだ?」

 少しだけ語った。特に何かしたわけじゃない。偶然大きな箱が置いてあってその中で寝てる間に積み荷と一緒に運ばれたらしく気が付いたらガレマール帝国にいた。ボクを捕まえようとする兵士を気絶させながら無我夢中に逃げ、城の中に。目の前に扉があったから入ったらなんと皇帝の寝室。初代皇帝サマとのご対面だった。

「いやあビックリ。相手の変なものを見た顔も面白かったね」
「無法か!」
「まあそこで一晩お付き合いするのと引き換えに外に放逐する約束をした」

 アルバートがむせている。「私は最近まで処女だったからね?」と言うと「いらん! その情報は今必要ない!」と顔を真っ赤にしながら手で覆っている。

「色々あって何かバリバリと身体の一部を引き剥がされるほど痛い事はあったけど性行為はしていない。……以前仲間が『貴方はエーテルで多少内面が操作された形跡がある』って言ってたんだけど多分その時の傷」
「意味が分からん」
「私も意味分かんなかった。……次の日彼の使用人から新しい服一式貰って。帝国領外に運んでもらった」

 あなたなら絶対に誰にも漏らさないから話したんだよ? って振ると「まあ物理的にお前以外から見えないしな」とぼやく。知ってる、だから話をしたのだ。少しだけ心が軽くなった気がする。

「ありがとね、明日以降奴に会ってもキレ散らかしはしなさそう」
「だったらいいんだけどな。ていうかそれなら周りに素直に言えばいいだろ?」
「……全員揃ってない内に話すのはなって」
「勝手にやってろ」

 アルバートはため息を吐き、消えていく。私は久々に少々泣いてしまった。こんなにも苦しい時に限って、シドの声を聞く事が出来ないのだから。



 正直期待以上の反応を見せてくれた。正直彼女に渡す予定だった『役割』は曾孫がやったのだから最早必要のない厄介な女だったが、内包された【魂】で捨てきれない存在。かつての獣のように奔る赤兎なら自分の思想も【理解】、いや【約束】を守り手を取っただろう。小さな国民によって阻まれ、彼女を捕えることが出来なかったのが計算外だった。その後ヘタクソな偽装をしてきやがったので死んだ事にしてやったがまさかハイデリンに選ばれ英雄となり私の目の前に現れるとは。黒薔薇でなりそこない共を絶望させるための見せしめに殺してやろうと思ったが今第一世界の地に立っている。殺し合いをするだけなら簡単である。しかし改めて話し合いをすることで【約束】ではなく【理解】を示すかもしれない。牙を抜かれたお前がどれだけ戦えるか、楽しみにしているぞ? 鮮血の赤兎よ―――


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注意次元の狭間オメガ途中の自機兄+ネロ短編6本。  "悩み&…

紅蓮,ネタバレ有り

#エルファー関連 #ヴィエラ♂+ネロ

紅蓮,ネタバレ有り

旅人の兄が歩んだ短編集2
注意
次元の狭間オメガ途中の自機兄+ネロ短編6本。
 
"悩み"
―――レフというヒトは存在するのか、オメガを追いかけながらのもう一つの悩みが俺に襲いかかる。

「シド、悩み事?」
「よ、アンナ。まあそうだな―――最近この辺りに妙なヤツが現れたんだ」

 最近起こっている妙な出来事をふらりと現れたアンナに話す。
 ネロにレフという助手が出来ていること、ラールガーズリーチのどこかにいるらしいことに、社員が欲しい備品や装置をぼやいたら次の日に置かれていること。一度試しに俺もぼやいてみたが何もくれなかったこと。ネロに話したらゲラゲラ笑われたんだと言うとアンナはクスクス笑っている。

「お前も笑うのか」
「ごめんごめん。シドその人に何かした?」
「挨拶どころか顔すら合わせてない人間に何かしたと思うか? あったとしても身に覚えのない一方的な恨みくらいだ」
「だよね」

 思い返してもそのレフという人間に心当たりはない。レフという技術者に会ったことはあるか? と聞いてみるが「知らない」と大げさに肩をすくめた。

「忍者な技師とか属性過多だね」
「単刀直入に言うと検証の協力もして欲しいんだがネロによると断られてるんだとか」
「シド嫌われすぎてない? 大丈夫?」

 アンナの可哀想なモノを見る目が痛い。だから俺が何をしたと言うのか。

「私もネロが隅で独り言を言ってるのを見た。それがレフって人との会話?」
「だと思うんだが……出来ればお前の方でも聞いてみてほしい」
「覚えてたら」

 腕組みしながらアンナは「レフ、かぁ……」とボソと呟いた。「どうした?」と聞くと耳元に近付き、「私の兄、名前にレフって入ってる。手先が器用で隠密行動が得意。偶然ーって思っただけ」と囁く。目を丸くして見やると肩をすくめながら人差し指を口元に当てる。そうか、気が付いたらモノが届けられるということはレフとやらがどこかで聞き耳を立てている可能性が高いのか。俺も極力小さな声で「そりゃすごい偶然だな」と言ってやるとアンナはふふふと笑った。



「ククッ」

 少し離れた場所で男の笑い声が響く。

『何やってンだ?』

 リンクパールから男の声が聞こえる。通話中だということを思い出しすまんと謝罪する。

「いやガーロンドくんが遂に我が妹に俺の話題を出しやがったんだ」
『ヘェ』
「今思うと割とマジでガーロンドくんに会わなくてよかったな。滅茶苦茶仲良すぎてポンポン余計なことを喋りやがる。僕は距離を置かれているというのに許さん……」
『そーだな気配でメスバブーンにバレるぞ』

 取り寄せに行った資料を手に持ち立ち上がる。「今から部屋に持って行く」と言うと短い返事が戻って来た。
 近いうちにネロに妹へ言っておいて欲しい言葉でも考えるかと脳を切り替えながらニィと笑う。

 
"秘密"
 アンナ・サリスは祖国の怪談だった。異常な強さとあの赤髪は確かによく考えなくてもそうだろう。まあ秘密にしてろと言われてるので心の中に仕舞い込んだ。ガーロンドに言う気はないが、一つ問題がある。

―――エルに言うべきだろうか。多分これはヤツが探している妹が変質した原因の一つだ。そう思うと言わない方がいい。単身帝国に乗り込み暴れ回る未来が見える。彼女を見初めたのであろう人間はもう死んでいるのに。

 この男は妹程強くはないのだ。あっという間に潰されてしまう。そんな姿を見るのは絶対にイヤだ。
 よく分からない感情を持ちながら俺は「機嫌取りしたいさせてさせろネロサン」と言いながら肩を粉砕しようとするメスバブーンを「そういうのは口に出すンじゃねェ」と押しのけガーロンドの無言の睨みから逸らすように目を閉じる。

 
"痛み"
「おいエル喋っても大丈夫だ」
『珍しいじゃないかガーロンドくんたちは?』
「……まあ今はいない。それより調べて欲しいものが、ある」

 基本的に聞かせたらマズい時以外は情報共有の為リンクパール通信は繋ぎっぱなしにしていた。1人になった隙にオメガの尖兵にやられ、何とか起き上がりながらも検証のための準備を進める。

『様子がおかしいぞ。何があった』

 流石複数人の妻を愛していただけあり察する能力は高いようだ。

「何かあったって思ってンなら、喋り続けてくれ。静かだと意識飛ばしそうなンだわ」
『オメガにやられたか? クソッガーロンドくんは何をやってるんだ……まあいい。調べて欲しいデータとは?』
「滅茶苦茶な敵のデータを手に入れた。解析するためのヒントが欲しいコイツについての文献を漁れ。名前は―――」

 オレはとにかくエルに話をさせた。そうしないと痛みで意識がトんでしまいそうだ。コイツを置いて、逝くわけにはいかない。何やらかすか考えたくないしアンナにも、ガーロンドにも渡したくねェんだ。オレの方が天才で、自分の技術でクソッタレな機械の鼻を明かしてやらなきゃ気が済まない。
 モニターと睨み合い、通話相手の声を聞きながら気合を入れる。



 様子がおかしいネロの頼みを聞きながら僕はとにかく話を続けてやった。徐々に息が荒くなりながらも事象の究明のための資料を指名する。僕は古書屋にて資料になりそうなモノを探し、店主に押し付けた。領収書をもらい走りながらその資料を読み上げた。くだらない話も振ってやったしガーロンドくんの判断力のなさにため息を吐いた。
 ビッグスとウェッジという部下が目を離した隙に襲撃をされたというのに何故1人にしやがった。オメガを舐めすぎだろう。まあ僕も表舞台には一切現れず裏方に徹しているので強くは言えないのだが。

 大ケガで運び込まれたネロを見た時、僕は思い詰めている男のヒゲでもこっそり焼いてやりたかったが、痛みで苦しそうな顔が見えた時、何とも言えない感情が僕の手を止めた。優しすぎる、それがこのシド・ガーロンドという男に対して抱いた感想だ。何かあればすぐに自分の責任にし、思いつめた顔をする。それに加え宥めようとする妹を見てふざけた怒りを振り上げようとは思えない。

 僕に出来ること……簡単だ。少しだけ、助けてあげることしかないだろう。

 
"接触"
「シダテル・ボズヤ事変、か」

 会長代理と我が妹の会話を少し遠くで盗み聞きしながら僕はため息を吐く。噂を耳にしたことはあったがまさかあの野郎のお父様がやらかしたものとは思わなかった。落ち込んでたなぁちょっとくらいは助けてやるかと翌日覗いたらちゃっかり妹に手を出しやがった。そんな会長サマはトラウマに手を震わせながらオメガを倒す最終兵器を作成し、レディに仕上げを任せて"2人"で大穴へと向かう。正直助走をつけてブン殴りたかったのだがネロと妹が期待をかけている相手だ、その感情は心の中に仕舞い込んだ。工房に消えて行った会長代理のレディを追いかける。ガーロンドくんが残した物の前に立ち止まり、資料に目を通そうとする瞬間、僕は「お困りかな? レディ」声をかけてやった。

 彼女はビクリと身体が跳ね振り向いた。「誰、あなた」と怪訝な目で僕を観察している。制服を見て、何かを察したらしい。

「まさかあなたが」
「ネロから聞いているだろう? ようやく人前に顔を出す勇気が湧いたんだ」
「あ、あなたが……」

 歓迎されるか、それとも追い出されるか。反応をうかがっていると僕を睨む。

「あなたがさっさと出て来て会長たちのフォローを入れてたらもっと早く終わってたんですけど!?」

 まさかお説教と思わなかったな。さすがという所だ。



「あなたがどういう存在かの予想もついてるわ。カストルム爆破事件の犯人で各地の装置を改造しまくった極悪人でしょう!」
「ホー証拠は?」
「全部同じ羽根のマークを入れてるじゃない! 会長はまだ気付いてないけど時間の問題よ。何でネロと行動してるの?」

 洞察力が高いレディで助かる。まあ説教はいつか受け入れるとして。

「それより装置を急がなくてもいいのかな? 僕も彼らが戻って来るより前に撤退したいんだ。まだバレたくないもんでね」
「……分かったわ。今は会長には黙っておくから手伝ってちょうだい。でもアレンジは禁止よ」
「この短時間でデータを読み込んで改造するのは無理だ。僕は天才たちとは違うのでね」

 本場の技術を読み込めるチャンスなのだ。逃すわけにはいかない。ニィと笑い「さあ新入社員にご教授願いたい」と言うと、社員にした覚えはないわよと隣を開けてくれた。「そのフードとメガネは取らないのかしら?」と聞かれたので「見せられる顔ではないので申し訳ない、レディ」とフードを深く被った。



 突然現れた男にどこかデジャヴ感を抱く。
 フードを深く被り先が見えているのか心配なメガネを付けた前髪で片眼を隠した男は会長に仕上げを頼まれた直後急に降り立った。
 目を凝らすと緑目と赤色の髪先が見える。そして少しだけはみ出た長い耳の端。バレたくない理由―――まさかね。
 ジェシーが組み立てていく装置をじっと見ながら資料を確認する姿は悪い人間ではなさそうだった。

 とりあえず「爆発事件の動機は?」とだけ聞くと「欲しい情報がなかったからむしゃくしゃしてやっただけだ。後ろ暗い理由はない」とだけ答え、パーツを手渡された。じゃあ早々に自首したらよかったのにと思いながら受け取り、取り付けていく。
 会話する限り世間を知らない人間というわけでもなく、理解の早さも相まってあっという間に会長に頼まれた装置が完成した。「ありがとう」とお礼を言おうとすると既に隣にはおらず扉に向かっていた。「コーヒー位飲んでいって」と言うと頭を掻きながら「レディのお誘いは断れないな」と不器用な笑顔を見せた。ケトルで湯を沸かしている間に少しだけ話を聞く。

「ネロとはいつから行動してるの?」
「君たちがオメガを起動した後」
「得意分野は?」
「君たちの会長くんやネロ程じゃないけどまあエーテル工学絡みかな」
「爆弾の仕様」
「複数個にエーテルを編み込んだ糸を張った誘爆方式」
「製造場所」
「帝国基地から拝借」
「捕まる前にウチの社員になって」

 肩を掴み「給料はちゃんと出すから」と言ってやると「今はちょっと、な」と窘められる。

「今君のところの会長くんに会ったら多分殴り飛ばしそうだから少し時間が欲しいんだ。魅力的なお誘いに感謝するよ、レディ」
「あらウチの会長と何か因縁でも?」
「天才機工師くんが傷で寝込んでいる間に女の子とよろしくセックスしてた脳みそお花畑の部下になるのは今はごめんだ」

 コーヒーありがとうとマグカップを持ちながら外へと消えた。ジェシーの笑顔が一瞬固まり、そして「…………はい?」という声しか引き出すことが出来なかった。

 最後の発言でジェシーは一つだけわかったことがある。このデリカシーの無さを見るに先程までいた男は絶対、アンナの血縁者である。そういえば兄がいると言っていた。星芒祭の時に話題を出していたし、置かれていた懐中時計も思い返せば羽根の意匠が彫り込まれていた。ということは今レフという男がキレている理由は、会長は遂に―――

「ここで知りたくはなかったわ……」

 
"逃走"
 いつまでもうじうじするシドに発破をかけた後、オメガジャマーが完成され、2人と1匹はオメガの元へ向かったらしい。エルの言葉にネロはニィと笑う。

「そうか、じゃアンナが勝つな」
「ああ。というわけで僕は先に雲隠れさせてもらう」

 ハァ? と首を傾げるのでエルはニコリと笑う。

「我が妹に手を出した野郎の顔を見たら殴りたくなるからな。とりあえず動けるようになったら連絡が欲しい。迎えに行こう」
「ケッ、ガーロンドの様子がおかしかったのはやっぱそういうことなンだな」

 ネロは荷物いくつか預かっておくと言われたのでそばに置いていた鞄を渡した。エルは即一番上にあった錠が付いた本を見つける。これは何か、と聞くとネロは頭を掻く。

「お前の妹が死ンだらガーロンドに渡せって押し付けて来たンだよ」
「妹が死ぬわけないじゃないか」
「……オレも思ってンだよ。まあまた隠れ家に戻ったらその錠と鎖を解析してみようじゃねェか。オマエの愛しの妹ちゃんが特別に作ったンだってよ」

 前髪をかき上げて隠していた片方の紅色の目を細めながらエルは鎖を眺めている。「確かに、特殊な仕様だ。面白い」と呟きながらそれを鞄にしまった。
 普段はほぼ右目だけで生活をしているが本格的にエーテルを視る時だけその隠している紅色を見せる。髪を切らないのかとネロは聞いたことがある。すると一言だけ「色々視えすぎて困るんだ」返された。どんな世界が視えているのだろうかと少しだけ想いを馳せてみたことがある。エーテル視は自らの魔力を削りながら行使するものと聞いた。さすがに視力を失った賢人のように常に命を削るような行為をしているわけではないだろう。続けているのなら止めてやりたい。

「じゃあよろしくな」

 エルは大人しく傷を治せよな、と不器用な笑顔を見せながらネロを撫で、足早に行ってしまった。

「どうしてあの兄妹はいい年した大人を子ども扱いするンだよと」

 ため息を吐き、野戦病院の天井を見上げた。

 数日後、オメガの検証が終わった2人と1匹の喧騒と報告を聞き遂げ、アンナから約束だと渡された故郷の薬とやらを飲み動けるようになったのでエルを呼びラールガーズリーチを後にした。

 
"残された者"
「なんだこの領収書の量はふざけるんじゃないぞネロ!!」

 膨大な量の領収書に目を通しながら怒るシドをジェシーはため息を吐いた。

「というか機材代は置いておいて本はいつ手に入れたんだずっとここにいた筈だろ!?」
「レフさんじゃないですか?」
「というか周辺に散らかしている図面は何だ変な修正しやがって」
「レフさんですね。この施設で改造した分はメンテナンスのためにちゃんと図に起こしてとお願いしたので」
「じゃあこの知らないコーヒー豆は」
「レフさんかもしれないですね。同じコーヒーばかりで飽きるだろうって一度持ってきましたし」

 シドは目を点にしてジェシーを見ているので「どうしましたか?」と聞く。

「いや、会ったこと、あるのか? そのネロの助手ってやつに」
「オメガジャマー手伝ってもらったんですよ。スカウトは断られましたが、ネロ経由で業務用のリンクパール渡したら応対はしてくれてましたね」
「俺は聞いてないんだが」
「秘密にしろって言われましたし。でもネロと一緒に逃げたなら黙っておく義理はないと思ったので報告しました」

 シドは表情をコロコロと変えながらその場に座り込む。「見た目は?」と聞くのでジェシーは「フードを被っていたのでよく分かりませんでした」と答える。嘘はついていない。

「メガネをかけてたんですけど左目は前髪で隠しててよく見えませんでしたね」
「分からんやはり心当たりがない」

 どうやらシドは自分が恨まれている原因を未だ探し続けているようだった。ミコッテだったならば耳がへたり込んでいるだろうその背中に笑いかけた。

「そういえば会長、ネロはロウェナ商会に新しい装備を卸したらしいですよ?」
「知ってる。それがどうしたか?」
「ネロを捕まえるなら簡単じゃないですか。給料分働いてもらえないと困るのは私も同じですよ」

 シドは手をポンと叩く。そして不敵な笑みを浮かべているが、それ以前にやることがある。ジェシーは「それではやる気が出た所で、お仕事の時間ですよ」と言うとシドの笑顔が固まり首を傾げている。

「今回の損失の分、働いてくださいね?」

 ネロに逃げられ、逃走幇助をしたであろうアンナにもそそくさと逃げられ、レフには唾を吐かれている情けない男はガックリとうなだれた。


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#エルファー関連 #ヴィエラ♂+ネロ

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注意自機出番なし。自機兄+ネロ話。  ―――夢を見た。過去のものだ。オ…

#エルファー関連 #ヴィエラ♂+ネロ

"悪夢"
注意
自機出番なし。自機兄+ネロ話。
 
―――夢を見た。過去のものだ。オレが殺した人間どもが足にしがみつき、呪いの言葉を吐きながら深淵へと引きずり込む。軍人だったからそりゃ直接手にかけた時もあったし、技術者でもあったから間接的に殺す兵器だって作った。いつも自分の先に行っていたあの男の鼻を明かすためなら手段は選べなかった。
 これまでの人生の集大成だった最高傑作をあっさりと斬り捨てられ、全てのしがらみから逃げ出し自由に生きることにして。赦されたいわけじゃない。今の旅は別に罪滅ぼしのためでもなく知的好奇心を満たすための自分勝手の旅だ。
 過去にやった事に関しては技術の発展には犠牲はつきものと結論付けてはいるが稀に苦しむ夢は見るものだ。

 目を見開き起き上がると隣で照明を引き絞り読書するメガネをかけた赤髪の男が驚いた顔で自分を見ていた。よりにもよって人がいる時に見たか。気持ち悪さにため息を吐く。

「どうした悪い夢でも見たのか?」
「オレだってそういう夢くらい見ることはある。オマエこそいつまで読書してンだ」
「あと少しで読み終わって眠る所だった。えらくうなされてたからそろそろ叩き起こそうとも思ってたが」

 汗がすごいぞ、とタオルを渡された。受け取り顔を埋めながら「エル」と声を振り絞る。

「人を殺したことはあるか?」
「護人をやってるとな、色々侵入者を撃ち落としてサバいたことはある。君は……あぁ軍人だったか」
「超えたい奴がいた。そのためには軍人から成りあがるしかなかったンだよ」
「それもまた青春だ」

 この時は捕えて裁判をするような文化の集落なのかと眺めていた。青春という言葉の意味は分からないが、夢の内容をこぼすと「君は優しいんだな」と奇妙なことを言われ「ハァ?」と顔を上げた。本を閉じてオレを見るエルは相変わらず不器用な笑顔を浮かべている。

「ンなわけねェだろ耳でも腐ってンのか?」
「誰にだってコンプレックスはあるさ。トラウマだってある。僕も妹が生きてるって分かるまで何度も妹が男として産まれなかったことを呪う言葉を吐いて目の前で自害される夢を見てたな。それからまともに眠れなくなっちまった」

 そういえば昔あのメスバブーンは『自分がもし男だったら村全員の女性抱く予定だった』と言っていたことを思い出す。あの言葉はジョークじゃなかったのかと驚き呆れた。

「あのメスバブーンとの思い出話聞かせろ」
「ホー君が妹の話を聞きたがるとは珍しいじゃないか」
「夢と真逆な境遇でも聞いてりゃ眠れンだろ多分」

 そんなものなのか? と首を傾げるエルを見ながら寝そべってやるとポツリと話し始めた。

「妹は、僕と同じく男に生まれたと思っていたんだ。毎日修行をしながら里の女性を口説いたりしてさ。イタズラも大好きでまあ元気なクソガキだったよ」
「想像出来ねェな。ていうか性別くらい生まれた時から分かるもンだろ」
「あーヴィエラはな、産まれた時は性別は表から判別できないんだ。大体第二次成長期に表層化する。妹は14歳の頃に女の子だって分かった」

 エルに目をやると悲しそうな顔をしていた。何も言わずその言葉を聞く。

「僕が里に帰って来た時にはもう、妹はいなくなっていた。里の奴らが寝静まった頃に飛び出して行ってしまったらしい。あの子の性別が分かった時、僕が村にいればと今でも後悔している」
「そんなショック受けてンならオマエがいても変わンねェだろ」
「かもな。性別が発現してからあの子から笑顔が消えたんだと。誰にも触らなくなり、イタズラもやめ、毎日1人で素振りをしていたらしい。母親の言葉にも一切耳を傾けず、ある日部屋に籠って出て来なくなり、気が付いたらいなくなっていた」

 目を閉じてニィと笑っている。少し眉間に皴が寄っているみたいだ。

「『大きくなったら兄さんと一緒に修行の旅に出る』って言葉が妹の目標であり、僕の活力でもあった。それが脆く崩れ去った。いなくなった僕の穴を埋めてくれたのが8人の嫁と、知的好奇心だった」
「もう離婚してるじゃねェかまたぽっかり開いてンぞ心の穴」
「そういやそうだったな。―――村の文化があの子を歪めた原因の一つだっていうのも理解しているさ。それでも何だよあの体内に構成されたドス黒いエーテルは……意味わかんねぇよ……」

 これ以上は、いけないだろう。オレは震える目の前のヤツの服の裾を掴む。ちらりと濁った眼を向けられたので「寝ンぞ」って言ってやると「君が子守唄がてら話せって言ったんだろう?」と隣に寝そべる。

「最後にこれだけ聞いてくれ。妹をがむしゃらに探し回っていた時に偶然発見した墜落した飛空艇が、一番僕に生きる気力を与えてくれたんだ。機械油や青燐燃料の残っていたニオイに金属の冷たさ、精巧な芸術作品のような構造に脳が刺激されていった。だから今こうやって君と技師の真似事が出来ているのが楽しい」
「ケッ口説いてるつもりか?」
「ははっ都合のいい解釈で考えてくれて貰って構わない」
「相手が男じゃロマンスがねェな」

 ゲラゲラと笑う声と大人2人が乗った寝台のきしむ音が響く。エルはメガネを外し、天井を見上げている。

「超えたかった相手のことか僕のことでも考えながら眠るんだ。妹は許さんぞ? まあとにかく視点は変わっていくんじゃないかな?」
「ガーロンドやゴリラのことを考えるなンて絶ッ対にお断りだ」
「はっはっはっ」

 頬を引っ張りながら思いつく限りのガーロンドに対する罵詈雑言を吐き続ける。エルはずっと笑顔で聞き続けていた。別にヤツに対して未だにコンプレックスを持ってるわけではない。苛つくだけだ。それを目の前の男にぶつけても意味はないのだが。その苛つく原因はこのヴィエラの妹も絡んでいるのだ、言われる権利はある。

 そういえばいつの間にか悪夢を見た後の気持ち悪さが消え去っていた。


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#エルファー関連 #ヴィエラ♂+ネロ

エルファー

(画像省略)見た目種族:ラヴァ・ヴィエラ髪色:赤、左目隠れヘア目:右目緑、左目赤…

情報,ネタバレ有り

#エルファー関連

情報,ネタバレ有り

キャラ設定:エルファー・レフ・ジルダ
エルファー
見た目
種族:ラヴァ・ヴィエラ
髪色:赤、左目隠れヘア
目:右目緑、左目赤
一人称:僕、二人称:君、三人称:アイツ
趣味:分解、機械の改造、遺跡巡り(ジャンル不問)

設定
  • アンナ・サリスの実の兄。嫁が8人いたが現在は離婚している。
  • 元々生まれ故郷を護るための任を果たす存在だったが、ある時アラグ時代の遺跡を発見したことでこっそり調べ回るようになっていた。
  • 死んだと思っていた妹が60年以上ぶりに再会して喜んだが全く違う存在になってしまったことを嘆いている。その真実を知るために故郷を捨ててエオルゼアを旅している。
  • 超える力は持っていないただの技師。ある人間が持っていた装置を見て興味を持ち各地にあるカストルムに忍び込んだり機械装置の修理しながら独学で技術を学んだ。
  • 陰で集落を護るという意識が強かったのでどちらかというと斥候が得意。そのため軽量静音化された機械を作る研究をこっそり行っていた。
  • ゲーム的に言うと黒魔道士メインな機工士。双剣士も多少嗜んでいて金属扱う系のクラフターもレベリングされている感じ。
  • 左目を髪で隠しているのは両目では"よく視えてしまう"ため。それは故郷でも一部関係者しか知らない厳重に守られた"聖石"に触れてしまい、魂までも視ることが出来るようになってしまった。副作用としてとんでもない頭痛に襲われるので隠している。普段は右目と物音だけで判断しており、細かいエーテル視を行う時だけ髪をかき上げる姿を見せる。
  • かつて友人2人と新たな技術を作り出した。しかし彼が関わっていた頃の技術は相当な精神力、生命力が無いと使い物にならない"火事場の馬鹿力"の具現化だった。リンドウの"気迫"と呼ぶネーミングセンスの悪さにそれぞれ"必殺剣:流星"(エルファー)、"シハーブ"(アリス)と名付けたが無視される。
  • 紅蓮前に表向きは妹の謎を追うためにネロを利用しようと近付いたが、漆黒突入後いつの間にかガーロンド社で働くことになり首を傾げた。
  • 妹にはガーロンド社どころかエオルゼアにいることすら公然の秘密にしている。理由は自分のせいで彼女を変えてしまったことを理解してしまったため。


性格
シスコン。笑顔がヘタクソで愛想はあまりよくないがお人好しで基本的に妹が絡まなければ怒ったりもしない。
しかし怒ったら人を吊り下げたり火で炙ろうとする。
複数人嫁がいたこともありとことん甘やかして溶かすのが好き。

#エルファー関連

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注意 自機出番なし。紅蓮~次元の狭間オメガ開始前までの自機兄+ネロ話短編4本。&…

紅蓮,ネタバレ有り

#エルファー関連 #ヴィエラ♂+ネロ

紅蓮,ネタバレ有り

旅人の兄が歩んだ短編集
注意
 自機出番なし。紅蓮~次元の狭間オメガ開始前までの自機兄+ネロ話短編4本。
 
"嫁"
「エル、そういや嫁複数人いたンだよな?」
「ああいたな」

 酒場で酒を煽りながらふとネロは以前妹から聞いていた情報を思い出し話題を振る。エルファーは首を傾げた後「あー妹から聞いてるのか」と苦笑した。

「情けない話だが離婚してるんだ」
「全員とか!?」
「ああ、8人の嫁全員と」

 私たちと妹さんどっちが大事なのと聞かれたので妹と即答したんだと笑顔で言う姿にネロは開いた口がふさがれない。

「オマエ世の男共が羨ましがるハーレムをそんな一言で終わらせたンだな」
「正しく言うと妹と知的欲求が大事ってやつだな。そうしたおかげで今は君と行動することになったから結果オーライということになる」
「割に合ってねェだろ」

 そうか? と首を傾げているがゴリラの天然タラシはこの男由来だということが痛いほど分かった。アレと一緒で性欲より云々系だろうかとため息を吐く。

「どうした? 紹介してほしかったのか?」
「ンなわけねェだろ。肉食系はタイプじゃねンだわ。オレは元々オマエの妹から故郷で交尾してるって聞いてたから気になったンだよ」
「ホー相変わらずデリカシーがないなあ我が妹は」

 オマエが言うんじゃねェよ! と啖呵切ってやるとエルファーはぶっきらぼうだが柔らかな笑顔を見せた。

 基本的にはアンナの男版っぽい容姿をしているが細かい性質は彼女とは異なる。
 まずは表情が固い。妹は基本的に笑顔が中心で結構顔に出る。しかし兄は愛想は正直よくない。結構笑顔は引きつる。まあベースの顔はいいし妹が絡まなければ話術も秀でている。妹と同じく話題を振らなければ最低限の会話しかしないのでこの件に関しては本質はまだ分からないのだが。更にさりげない配慮等は出来るからそこは流石嫁が8人いただけはある。
 知識の差も圧倒的に異なる。アンナは基本的にサバイバル知識以外はさっぱりだが一度教えれば大体できるとガーロンドから聞いた。それに対してエルファーは野生生物と違って人と関わり合いながら己を理解して長生きしてるだけあって知識量の差は圧倒的である。
 そして何よりも違う所はアンナは切り込み隊長でエルファーは魔法も駆使できる技術者。表には滅多に姿を現さず、後方支援を得意としていた。絶対にゴリラにはできない芸当だ。議論のし甲斐もあるし劣等感も抱くこともない。ましてやこっちが技術を提供する側でもあり、一々感謝されるので悪い気はしない。
 振り返ってみたが少なくとも見た目とデリカシー無しな面以外はあのアンナの兄とは信じられないと叫びたくなる。

 最初こそは珍獣の兄という要素に興味を持ち旅の道連れ兼話し相手になった程度の存在だった。現在エルファーは一種の助手として共に各地を回る技術屋になっている。というか放っておくとまたほぼ無償で機械弄りするかカストルム爆破しに行く未来が見える。ガーロンド社に押し付けようにも妹にバレたくないと駄々をこねるしそれならいっそ技術を共有する方が有意義だ。

―――何よりも少しでも殺意を出したら殺す前提のアンナと、説得や無力化させようと動くエルファーなら後者の方がマシである。

 
"装備"
「おいエルファー聞け!」
「どうしたそんなキレながら帰って来て。奇麗な顔が台無しだ。レディにぼったくられたか?」

 ネロがレヴナンツトールに用事があるらしく近郊で待っていると怒りながら大股で戻って来る。

「いや用事自体はスムーズに終わったンだが。あの周辺の冒険者が付けている装備を見たか?」
「あの辺りで見るというならロウェナ商会が卸している装備だろう? それがどうした」

 歩き出した彼を追いかけながら話を聞いてやる。

「その装備の名前知ってっか?」
「さあ?」
「ガーロンド」
「もう一度」
「ガーロンド装備って言ってンだよ、わざと二度も言わせてンな!? ハァ……つまりあのガーロンドが手掛けた装備ってこったァ!」
「はあ。それで?」

 まあコイツが怒る要因は彼しかないだろう。予想通りだ。そして次に言いそうなことも予想が付く。
 立ち止まり不敵な笑みで自らを指さしながら言い放った。

「オレが作るンだよ」
「何をだ?」
「聡明で天才なオレの方がもっといい装備が開発出来るに決まってンだろ。アレはオレを煽ってるようなもンだ」
「まあ元軍人だし君の方がいいものは作れそうだな」
「だろ? さーて今日から寝る暇ねェぞ」

 どうやら僕も巻き込むつもりらしい。

「魔法使う奴ら方面の最終調整をやって欲しいンだわ。嗜んでる人間がやる方がもっといいモンになる」
「そりゃまた人使いが荒い事を言う。まあロウェナ嬢に卸すものならばいつか妹が纏うことになる装備だ。いいものを作ろうじゃないか」
「ケッ妹が絡ンだら即やる気出してンなァエルファー」
「エルでいい。呼びにくいだろう?」

 まあ黙っておくお詫びってやつだ。嫁たちにしか呼ばせなかった愛称を教えてやる。
 実はガーロンド装備のことは知識にあった。もちろん設計した人間に関してもだ。
 この装備はシド・ガーロンドではなくガーロンド社名義として出されている。会長行方不明時代に会社を立て直すために会長代理の人間が開発し、ロウェナ商会に卸したということも把握している。つまりネロは勝手に勘違いして対抗心を燃やしているのだ。多分ロウェナ嬢もそれを知ってて煽ったのだろう。哀れ。

「ン、ああそうかエル」

 許せガーロンドくん。君は悪くないからな。

 
"就職?"
「というわけで正式配属はまだだがガーロンド社の社員になったンだわ」
「ホー面白い話だな。フリーランスをやめるとはよっぽどいい環境でも提示されたか?」
「聞いて驚くな、会長サマの来月の給料から落ちるンだぜ?」
「ホー最高じゃないか」

 エルファーは急に青色の制服を着る人間に連れて行かれたと思ったら就職したというネロを驚いた顔で見てしまう。
 数ヶ月の間、こっそり尾行するようにネロ・スカエウァと呼ばれる人間と行動してきた。これまでは妹のフレイヤ、いやエオルゼアではアンナだったか。彼女に存在する空白でありながらも真っ黒な記録を探しながら趣味である機械装置を触りながら旅をしている。これまでよりもガレマール帝国の秀でた魔導技術に触れやすくなり、しかも数々のアラグ時代に作られたであろう遺跡も調べやすくなったエオルゼアの地はすっかり気に入った。あまりにも熱中しすぎて師匠から破門されるわ嫁たちとは離婚することになるわと故郷に帰れなくなった。そんな捨てヴィエラのエルファーが妹の手がかり兼興味関心を満たせる相手と目を付けたのがこのネロという男である。すっかり返事が来なくなった妹の手紙を暗唱できるほど読み込み選んだ相手でもある。この金髪のガレアンとの話も刺激的な物であったから故郷に捨てられたのも悪いものばかりではない。

「しばらくラールガーズリーチにある支社で手伝うついでに飛んでったオメガを探すコトになってな。エルも来るよな?」
「ああオメガという機械生命体は文献で見かけてから滅茶苦茶気になってたぞ。しかしガーロンドくんにバレたくないなあ」

 エルファーはわざと大げさに考え込むような素振りを見せるとネロはため息を吐いた。

「別に顔を合わせないようにすりゃいいだけだろ。ほら制服2着貰っといたから持っとけ」
「必要ないのでは?」
「身分証明みたいなもンだ。制服着たオレと歩いてたら怪しまれンぞ。その耳隠してメガネでもしときゃバレねェって」
「意外とその会社の人間はバカなのか?」

 言ってやンなとネロは小突く。とりあえずいただいてはおくと受け取り「で? 染めるんだろ?」と聞くと赤を好む男は「当然だ。シュミ悪い青より赤がいいに決まってンだろ」と返した。

「じゃあまずはその会長サマが来る前にそのラールガーズリーチ支社を改造してやろう」
「おうやってやろうぜ、ガーロンドの金でなァ!」

 悪い笑みを浮かべ、明日以降の企みを一晩語り合う。正式配属はまだ先だが仕事をしてはいけないとは言われていない。やってやろうじゃないかと拳を突き立てた。
 しかし彼らはまだ知らない。スカウトされた際にシドが不在だった理由を。更にアンナの過去へ繋がるヒントに一番近い存在がシドになっていることに。



『新入りが好き勝手設備を弄っている』

 ジェシーは支社からの報告に眩暈を起こす。十中八九ネロのことだ。急に休暇を取ったシドがいない分走り回っているのは助かるが、その傍ら勝手にラールガーズリーチの施設を弄っているらしく心配する声が届いている。
 まさか他の社員にとって不利益な仕様にすることはないだろう。実際各小部屋や拠点周辺の空調装置をはじめとする住環境は整いつつあるらしい。気になるのはその金はどこから出ているのかという部分と明らかにネロ以外にもう1人関わってる奴がいるという情報だった。確かに制服を2着くれとは言われるままに渡した記憶はある。用途を聞いたが「替えの服もくれンのか? ッたくケチな職場だなァ」とぼやきやがったので叩きつけてやった。

「やっと会長も帰って来たしネロを呼びつけて話を聞かなきゃ気が済まないわ…!」

 もう1人いるならちゃんと言いなさいよ、とぼやきながらペンを折った。

 
"配属"
「本日付けで配属になったぜ。さあ、オメガの調査といこうか……ガーロンドォ……!」

 完全に不意打ちな大型新人の登場にシドは驚きを隠せていない。
 雇用条件等ふざけるなという抗議をジェシーは適当に躱しながら窘める。
 結局今日までネロからは噂のもう1人について口を割らせることは出来なかった。いるのは分かっているのだ、何度かリンクパールで会話を交わしているところを見ている。

「ンあ? あーちょっと待ってろ」

 ネロはふと後ろを向きまた通話しているようだ。「おう、白いのが偉い奴だな」「隣の女には逆らうンじゃねェぞ」やら聞こえる。シドは怪訝な目で見ながら声をかけている。

「オマエには関係ない相手なンだわ」
「ほほー仕事中にプライベートを持ち込むのか? 大型新人とやらは」
「アー……助手、ってやつ、か?」

 助手だと? とシドは素っ頓狂な声をあげる。ジェシーとしても不意打ちだった。噂は本当だったのが分かったのはいいが見回してもその助手は見当たらない。

「とりあえずレフって呼んでやってくれ。訳アリでオレも普段どこで見てるかは知らねェがな」
「頭の病院に行こうか、ネロ」
「ア?」

 険悪な空気だ。ここで本当に『助手のようなやつ』が現れれば解決だが出てくる気はないらしい。ネロはシドをスルーしこっちに「ンで? 怪しい場所はどこなンだ?」と聞いてくる。シドの方はというと「まだ連れて行くとは言ってないぞ」と機嫌が悪い。

―――こういう時にアンナがいたら楽なんだけどな、とため息を吐いた。



「ホーあれがガーロンドくんか。想定していたよりも若造じゃないか」

 そりゃネロと同い年なら当たり前かと肩をすくめる。エルファーは少し離れた場所から望遠鏡で彼らの邂逅を覗いていた。とりあえず自分のことを聞かれたらレフと呼ぶように頼んでおいてよかったと安堵する。流石に何も考えず喋ってしまい申し訳ないと謝罪し、通信を切る。
 ニィと笑い、再びオメガについての文献を整理しようと踵を返した―――


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#エルファー関連 #ヴィエラ♂+ネロ

(対象画像がありません)

注意自機出番なし。前半は蒼天後、後半は非光の戦士な自機兄+ネロ話。  …

蒼天

#エルファー関連 #ヴィエラ♂+ネロ

蒼天

旅人の兄は機工を操る
注意
自機出番なし。前半は蒼天後、後半は非光の戦士な自機兄+ネロ話。
 
「これがその爆弾か?」
「はい。心当たりありますか?」

 ガーロンド社に持ち込まれた不審物が不思議な出来事を開く扉となった―――。

 それは突然起こった。夜も更けた頃、未だに残るカストルムの一つにて爆発が起こったのだという。ガイウスが死んだ今、帝国軍自体はエオルゼアでは弱体化し、本国からの補給物資は絶てたとはいえ軍事機能は生きている。残党も残っており、稀に小競り合いが起きていた。
 その内の1つが突然爆破され、それに使われた爆弾と思われるが起爆しなかったものを手に入れたエオルゼア同盟軍がガーロンド社に調査として持ち込まれる。会長のシドと複数人の社員がそれを囲み観察した。真っ白なフォルムに羽根のような模様が刻み込まれ、裏返すと見知らぬ文字が刻まれている。

「帝国産……でもなさそうッスね」
「超小型化されてパッと見では起爆装置か分からん。よく見つけたなあ」
「偶然でした。あなた方が作ったものでもなさそうですね」
「流石に戦争の火種になりそうなことはしないさ」

 社員の1人が慎重にパーツを外し中身を覗く。「こりゃすごい」と感嘆する声を上げたのでシドも覗いてみた所それはシンプルな構造であった。

「シンプルで従来品よりもだいぶ軽量化されている。だが見た事のない無茶苦茶な機構だ」
「魔導機械でありながら起爆のスイッチはエーテルを反応させるものじゃないかしら? 火薬周辺に使われている部品が―――」

 集まりメモを取りながらの議論が始まっている。シドはアゴ髭を触りながらその風景を眺め、専門外の来訪者にかみ砕いて解説した。

「ていうか本当に動くのか不思議な装置と思ってくれて構わない。爆発したやつの残骸はなかったのか?」
「完璧に消し飛んでいたのか調査に来た帝国兵が回収したのかまでは俺たちが知る由はありません。爆心地周辺は誰もおらず死者はなし。兵士はこれがあった場所に全員魔法で眠らされ、要塞内にあった魔導機械や資料のいくつかが盗まれてるんだと。証拠も見つからないからと調査は終わりそのカストルムは放棄された」
「なんだ盛大な強盗か? 脅威は弱まっているとはいえ実行犯は大胆すぎるだろう」

 ですよね、と肩をすくめ考え込んでいる人間の姿を見ながらシドも分解されていく装置を凝視ている。
 シンプルな中身と裏腹に火薬が思ったよりも込められており、もしこれが動作していたら周辺で眠っていた人間は最悪死んでいた。

「もしかしたら裏でこの装置を売り込むために試しに仕掛けたって可能性ないですか?」

 社員の1人の発言で全員一瞬静止し、装置を眺める。「探りを入れておきます! ありがとうございました!」と大慌てで去って行く人間を見送りながらシドは考え込んでいた。

 この装置を作れるほどの腕があるフリーの機工師は1人しか心当たりがない。しかし売り込むとはいえ祖国の基地を利用するような人間ではないはず。しかも盗みまでするというのは『絶対に』ありえない。
 ということは全く知らないフリーの機工師が存在する。なんとしても、他所よりも先に尻尾を掴みたい。やらかしていることは許されるものじゃないが話くらいならできるハズだ。

「ジェシー、この犯人をどうにか調査するように依頼しておいてくれないか」
「会長まさかこの人雇うとか言い出しませんよね!?」
「いや見てみたいだろ? こんな妙な技術持ちだ。俺たちとはまた違う視線を持った人間なんてそう会えんぞ」
「火傷しても知りませんからね」

 シドは肩をすくめ、部屋を後にした。



―――後の調査の結果、そういった爆発物を売り込む人間は存在しなかったという。エオルゼア同盟軍でもただの純粋な物盗りだろうと帝国側と同じ結論に落ち着いた。
 それは俺たち周辺でも奇妙な現象が起こっているので考える暇が無くなったというのも大きい。
 どうやらエオルゼア各地で"修理屋"が現れたという。各所に導入されている機械装置が壊れ困っているところにほぼ無償で修理するどころか"改善"していく輩がいると定期メンテナンスを行っている社員らから報告を受けた時は眩暈がした。特徴を聞く限りでは腐れ縁のフリーランスでもないというのが余計に頭痛の種になる。しかもシンプルで、無茶苦茶な仕様だ。明らかに爆弾犯と同一人物である。

「なんとしても! この人間を! とっ捕まえろ!!」

 昼下がり、そんな怒り狂ったシドの叫び声が聞こえたとか聞こえなかったとか。



―――一方その頃。

「オマエ、マジで無茶ばっかしてンだな」

 金髪の男はそこは妹と一緒かよと言いながら作業をする男を眺める。当の相手は目の前の装置の中身と睨み合っていた。
 2人が出会ったのは数日前。偶然移動していた森の中でネロの前に現れたのは褐色赤髪ヴィエラの男。独学で魔導技術を学んでいる技術者気質であの女の兄という部分が程々に興味を持ったので共に行動するようになっている。といっても普段は姿を消して手を上げて呼べば現れる奇妙な男だったが。

「妹に見つかったら困るんだ」

 これが目の前の男、アンナの兄エルファーの口癖である。だから奇妙な魔導ビットを飛ばして離れた場所から観測したりしていたらしい。流石に妹付近に飛ばせば一瞬でバレるらしくネロを起点に追いかけていたと悪びれずに答えている。
 一度会ったことはあった。あれは幕僚長時代、アーマーを纏いタイタンのエーテル監視を行っていた所に現れた。顔は見られていなかったはずなのに記憶に残っていたエーテルの色だけでストーカーを決める勢いがネロにとっては恐ろしい。
 話を聞くと妹の過去を探るために内緒でエオルゼア中を探しているらしい。最初こそは暁の血盟の盟主とも協力関係を結んでいたらしいが、結局空振りで途絶えた。『妹と一番仲のいい人間らしいシド・ガーロンドは手紙を読む限りすぐに表情に出て妹にバレるから会えん。だから同じ雰囲気でかつ一度だけ手紙に記述があったネロに目を付けた』と笑みを浮かべていた。
 恐ろしい所が、この男は風の噂で聞いた少し前で起こったカストルム爆発騒動の犯人である。犯行理由はアシエンについて調べたかった。魔導装置と一部書類は勉強のために貰い、爆発は手がかり持っていなかった腹いせということだった。

「オレが真っ先に疑われてたンだぞ」
「だから責任取って君に捕まってあげただろう?」
「理屈がメスバブーンみたいに無茶苦茶すぎンだろ!」
「アァン? 僕の妹がゴリラって言いてぇのかぁ?」
「オマエはアレの戦いを見たことねェから言えンだよ」

 グリダニアにてエオルゼア同盟軍や暁の連中、シドと顔を合わせた時にまとめられた設計図を突き付けられたことを思い出す。全く心当たりがない身からしたら不愉快極まりなかった。しかも作動しなかったのが奇跡な程度に無駄にしっかりとしたものだった。興味ついでに絶対捕まえてやると思っていた矢先に現れたのがまさかのエオルゼアの英雄と呼ばれる人間の血縁者である。この事実をシドらに伝えたらどうなるのだろうか。面白そうだがしばらくは放置でいい。

「よし、これで修理完了だ。ご主人、動かしてみてくれ」

 蓋を閉じ、外の人間に声をかけている。この男がやっていた行為に『絶対ガーロンドキレるな』と思いながら試運転を見守っていた。想定通りにかつ従来品より静かに動く装置に店主は満足し、報酬を渡そうとしたが拒否している。『あ、こりゃ絶対ガーロンド躍起になって探すな』と苦笑しながら代わりに報酬の交渉をしながら踵を返し歩き去ろうとするエルファーを掴んだ。

「報酬は貰いな。今後商売でアレをメンテする奴らの身になれ」
「素人がやったことに金を貰うのは迷惑だろう?」
「勝手に改造してる奴が何言ってンだ」

 そういうものなのかとぼやく確実に自分よりも年上なくせに世間知らずのエルファーを尻目に店主との交渉は続く。
 終わった頃には日が暮れ始め、近くの隠れ家で一夜過ごすことにする。結局報酬は少しだけ安めに貰い、装置を作った腐れ縁の会社の顔に泥を塗らない程度にはフォローを入れておいた。
 その肝心のエルファーは置かれている書物にかじりつき離れない。眺めながらため息を吐いた。

「オマエその知識どこで手に入れたンだ?」
「昔から修行の合間に色んな遺跡に忍び込んだりしててね。いにしえの技術を調べる機会はいくらでもあったんだわ」
「妹は知ってンのか?」
「ふむ手先が器用ってしか言ってないから知らないと思う。65年会ってなかったんだぞ?」
「あの女自分のこと26歳やら40歳やら言ってンぞ」
「はっはっはっなんて可愛い妹だ」

 シスコンが、という言葉を飲み込み寝台に寝そべり以前シドから見せられた爆破装置の設計図を目にやる。あの男は遠隔から火のエーテルを注入して爆破させるものと評していたがネロの目線では全く違うものだと判断していた。

「エーテルで張り巡らせた糸で伝播させて誘爆する装置とか普通の人間は作らねェぞ」
「いやあまさか不発でしかも人に発見されるとは予想しなかった。すまないすまない」
「後ろに刻まれている文字が起爆のトリガーだろ? 分解時よく爆発しなかったな」
「万が一のために繋がった糸が切り離された地点でガラクタになるようにしてるんだ。動いた実物見ずに設計図だけで判断できるのはすげえな、天才機工師様」
「調査した奴らの報告書が程々にお上手だったンだよ。ま、ガーロンドも自分で全部分解してたら気付いただろうな。そんな仕様が分かってもオマエの扱いなンてどうしようもねェだろ」

 気軽に量産できてかつ足付かないルートから手に入る材料を考えるとこれしかなくてなと書物から目を離さず話をしていた。「もうやるんじゃねェぞ」と言うと「さすがに派手にやりすぎたからな」とヘタクソな笑みを見せている。

 エルファーとの会話は程々に弾むものだった。振った話題は大体返ってくる。アラグ文明の技術関連の話や各地の伝承、昔読んだ物語に加えて機械装置の相談まで全て会話が成立した。妹の話さえしなければ完璧な技術者である。帝国外に彼のような存在がいるとは予想もしなかったというのが本音であり、そこは『流浪の旅をしてみるもンだな』と思っていた。
 何と言えばいいのか―――そうか、助手のポジションにあっという間に収まっていったのが不思議な話である。


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