FF14の二次創作置き場

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No.55

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注意自機出番なし。自機兄+ネロ話。  ―――夢を見た。過去のものだ。オ…

#エルファー関連 #ヴィエラ♂+ネロ

"悪夢"
注意
自機出番なし。自機兄+ネロ話。
 
―――夢を見た。過去のものだ。オレが殺した人間どもが足にしがみつき、呪いの言葉を吐きながら深淵へと引きずり込む。軍人だったからそりゃ直接手にかけた時もあったし、技術者でもあったから間接的に殺す兵器だって作った。いつも自分の先に行っていたあの男の鼻を明かすためなら手段は選べなかった。
 これまでの人生の集大成だった最高傑作をあっさりと斬り捨てられ、全てのしがらみから逃げ出し自由に生きることにして。赦されたいわけじゃない。今の旅は別に罪滅ぼしのためでもなく知的好奇心を満たすための自分勝手の旅だ。
 過去にやった事に関しては技術の発展には犠牲はつきものと結論付けてはいるが稀に苦しむ夢は見るものだ。

 目を見開き起き上がると隣で照明を引き絞り読書するメガネをかけた赤髪の男が驚いた顔で自分を見ていた。よりにもよって人がいる時に見たか。気持ち悪さにため息を吐く。

「どうした悪い夢でも見たのか?」
「オレだってそういう夢くらい見ることはある。オマエこそいつまで読書してンだ」
「あと少しで読み終わって眠る所だった。えらくうなされてたからそろそろ叩き起こそうとも思ってたが」

 汗がすごいぞ、とタオルを渡された。受け取り顔を埋めながら「エル」と声を振り絞る。

「人を殺したことはあるか?」
「護人をやってるとな、色々侵入者を撃ち落としてサバいたことはある。君は……あぁ軍人だったか」
「超えたい奴がいた。そのためには軍人から成りあがるしかなかったンだよ」
「それもまた青春だ」

 この時は捕えて裁判をするような文化の集落なのかと眺めていた。青春という言葉の意味は分からないが、夢の内容をこぼすと「君は優しいんだな」と奇妙なことを言われ「ハァ?」と顔を上げた。本を閉じてオレを見るエルは相変わらず不器用な笑顔を浮かべている。

「ンなわけねェだろ耳でも腐ってンのか?」
「誰にだってコンプレックスはあるさ。トラウマだってある。僕も妹が生きてるって分かるまで何度も妹が男として産まれなかったことを呪う言葉を吐いて目の前で自害される夢を見てたな。それからまともに眠れなくなっちまった」

 そういえば昔あのメスバブーンは『自分がもし男だったら村全員の女性抱く予定だった』と言っていたことを思い出す。あの言葉はジョークじゃなかったのかと驚き呆れた。

「あのメスバブーンとの思い出話聞かせろ」
「ホー君が妹の話を聞きたがるとは珍しいじゃないか」
「夢と真逆な境遇でも聞いてりゃ眠れンだろ多分」

 そんなものなのか? と首を傾げるエルを見ながら寝そべってやるとポツリと話し始めた。

「妹は、僕と同じく男に生まれたと思っていたんだ。毎日修行をしながら里の女性を口説いたりしてさ。イタズラも大好きでまあ元気なクソガキだったよ」
「想像出来ねェな。ていうか性別くらい生まれた時から分かるもンだろ」
「あーヴィエラはな、産まれた時は性別は表から判別できないんだ。大体第二次成長期に表層化する。妹は14歳の頃に女の子だって分かった」

 エルに目をやると悲しそうな顔をしていた。何も言わずその言葉を聞く。

「僕が里に帰って来た時にはもう、妹はいなくなっていた。里の奴らが寝静まった頃に飛び出して行ってしまったらしい。あの子の性別が分かった時、僕が村にいればと今でも後悔している」
「そんなショック受けてンならオマエがいても変わンねェだろ」
「かもな。性別が発現してからあの子から笑顔が消えたんだと。誰にも触らなくなり、イタズラもやめ、毎日1人で素振りをしていたらしい。母親の言葉にも一切耳を傾けず、ある日部屋に籠って出て来なくなり、気が付いたらいなくなっていた」

 目を閉じてニィと笑っている。少し眉間に皴が寄っているみたいだ。

「『大きくなったら兄さんと一緒に修行の旅に出る』って言葉が妹の目標であり、僕の活力でもあった。それが脆く崩れ去った。いなくなった僕の穴を埋めてくれたのが8人の嫁と、知的好奇心だった」
「もう離婚してるじゃねェかまたぽっかり開いてンぞ心の穴」
「そういやそうだったな。―――村の文化があの子を歪めた原因の一つだっていうのも理解しているさ。それでも何だよあの体内に構成されたドス黒いエーテルは……意味わかんねぇよ……」

 これ以上は、いけないだろう。オレは震える目の前のヤツの服の裾を掴む。ちらりと濁った眼を向けられたので「寝ンぞ」って言ってやると「君が子守唄がてら話せって言ったんだろう?」と隣に寝そべる。

「最後にこれだけ聞いてくれ。妹をがむしゃらに探し回っていた時に偶然発見した墜落した飛空艇が、一番僕に生きる気力を与えてくれたんだ。機械油や青燐燃料の残っていたニオイに金属の冷たさ、精巧な芸術作品のような構造に脳が刺激されていった。だから今こうやって君と技師の真似事が出来ているのが楽しい」
「ケッ口説いてるつもりか?」
「ははっ都合のいい解釈で考えてくれて貰って構わない」
「相手が男じゃロマンスがねェな」

 ゲラゲラと笑う声と大人2人が乗った寝台のきしむ音が響く。エルはメガネを外し、天井を見上げている。

「超えたかった相手のことか僕のことでも考えながら眠るんだ。妹は許さんぞ? まあとにかく視点は変わっていくんじゃないかな?」
「ガーロンドやゴリラのことを考えるなンて絶ッ対にお断りだ」
「はっはっはっ」

 頬を引っ張りながら思いつく限りのガーロンドに対する罵詈雑言を吐き続ける。エルはずっと笑顔で聞き続けていた。別にヤツに対して未だにコンプレックスを持ってるわけではない。苛つくだけだ。それを目の前の男にぶつけても意味はないのだが。その苛つく原因はこのヴィエラの妹も絡んでいるのだ、言われる権利はある。

 そういえばいつの間にか悪夢を見た後の気持ち悪さが消え去っていた。


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