FF14の二次創作置き場

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No.52

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注意自機出番なし。前半は蒼天後、後半は非光の戦士な自機兄+ネロ話。  …

蒼天

#エルファー関連 #ヴィエラ♂+ネロ

蒼天

旅人の兄は機工を操る
注意
自機出番なし。前半は蒼天後、後半は非光の戦士な自機兄+ネロ話。
 
「これがその爆弾か?」
「はい。心当たりありますか?」

 ガーロンド社に持ち込まれた不審物が不思議な出来事を開く扉となった―――。

 それは突然起こった。夜も更けた頃、未だに残るカストルムの一つにて爆発が起こったのだという。ガイウスが死んだ今、帝国軍自体はエオルゼアでは弱体化し、本国からの補給物資は絶てたとはいえ軍事機能は生きている。残党も残っており、稀に小競り合いが起きていた。
 その内の1つが突然爆破され、それに使われた爆弾と思われるが起爆しなかったものを手に入れたエオルゼア同盟軍がガーロンド社に調査として持ち込まれる。会長のシドと複数人の社員がそれを囲み観察した。真っ白なフォルムに羽根のような模様が刻み込まれ、裏返すと見知らぬ文字が刻まれている。

「帝国産……でもなさそうッスね」
「超小型化されてパッと見では起爆装置か分からん。よく見つけたなあ」
「偶然でした。あなた方が作ったものでもなさそうですね」
「流石に戦争の火種になりそうなことはしないさ」

 社員の1人が慎重にパーツを外し中身を覗く。「こりゃすごい」と感嘆する声を上げたのでシドも覗いてみた所それはシンプルな構造であった。

「シンプルで従来品よりもだいぶ軽量化されている。だが見た事のない無茶苦茶な機構だ」
「魔導機械でありながら起爆のスイッチはエーテルを反応させるものじゃないかしら? 火薬周辺に使われている部品が―――」

 集まりメモを取りながらの議論が始まっている。シドはアゴ髭を触りながらその風景を眺め、専門外の来訪者にかみ砕いて解説した。

「ていうか本当に動くのか不思議な装置と思ってくれて構わない。爆発したやつの残骸はなかったのか?」
「完璧に消し飛んでいたのか調査に来た帝国兵が回収したのかまでは俺たちが知る由はありません。爆心地周辺は誰もおらず死者はなし。兵士はこれがあった場所に全員魔法で眠らされ、要塞内にあった魔導機械や資料のいくつかが盗まれてるんだと。証拠も見つからないからと調査は終わりそのカストルムは放棄された」
「なんだ盛大な強盗か? 脅威は弱まっているとはいえ実行犯は大胆すぎるだろう」

 ですよね、と肩をすくめ考え込んでいる人間の姿を見ながらシドも分解されていく装置を凝視ている。
 シンプルな中身と裏腹に火薬が思ったよりも込められており、もしこれが動作していたら周辺で眠っていた人間は最悪死んでいた。

「もしかしたら裏でこの装置を売り込むために試しに仕掛けたって可能性ないですか?」

 社員の1人の発言で全員一瞬静止し、装置を眺める。「探りを入れておきます! ありがとうございました!」と大慌てで去って行く人間を見送りながらシドは考え込んでいた。

 この装置を作れるほどの腕があるフリーの機工師は1人しか心当たりがない。しかし売り込むとはいえ祖国の基地を利用するような人間ではないはず。しかも盗みまでするというのは『絶対に』ありえない。
 ということは全く知らないフリーの機工師が存在する。なんとしても、他所よりも先に尻尾を掴みたい。やらかしていることは許されるものじゃないが話くらいならできるハズだ。

「ジェシー、この犯人をどうにか調査するように依頼しておいてくれないか」
「会長まさかこの人雇うとか言い出しませんよね!?」
「いや見てみたいだろ? こんな妙な技術持ちだ。俺たちとはまた違う視線を持った人間なんてそう会えんぞ」
「火傷しても知りませんからね」

 シドは肩をすくめ、部屋を後にした。



―――後の調査の結果、そういった爆発物を売り込む人間は存在しなかったという。エオルゼア同盟軍でもただの純粋な物盗りだろうと帝国側と同じ結論に落ち着いた。
 それは俺たち周辺でも奇妙な現象が起こっているので考える暇が無くなったというのも大きい。
 どうやらエオルゼア各地で"修理屋"が現れたという。各所に導入されている機械装置が壊れ困っているところにほぼ無償で修理するどころか"改善"していく輩がいると定期メンテナンスを行っている社員らから報告を受けた時は眩暈がした。特徴を聞く限りでは腐れ縁のフリーランスでもないというのが余計に頭痛の種になる。しかもシンプルで、無茶苦茶な仕様だ。明らかに爆弾犯と同一人物である。

「なんとしても! この人間を! とっ捕まえろ!!」

 昼下がり、そんな怒り狂ったシドの叫び声が聞こえたとか聞こえなかったとか。



―――一方その頃。

「オマエ、マジで無茶ばっかしてンだな」

 金髪の男はそこは妹と一緒かよと言いながら作業をする男を眺める。当の相手は目の前の装置の中身と睨み合っていた。
 2人が出会ったのは数日前。偶然移動していた森の中でネロの前に現れたのは褐色赤髪ヴィエラの男。独学で魔導技術を学んでいる技術者気質であの女の兄という部分が程々に興味を持ったので共に行動するようになっている。といっても普段は姿を消して手を上げて呼べば現れる奇妙な男だったが。

「妹に見つかったら困るんだ」

 これが目の前の男、アンナの兄エルファーの口癖である。だから奇妙な魔導ビットを飛ばして離れた場所から観測したりしていたらしい。流石に妹付近に飛ばせば一瞬でバレるらしくネロを起点に追いかけていたと悪びれずに答えている。
 一度会ったことはあった。あれは幕僚長時代、アーマーを纏いタイタンのエーテル監視を行っていた所に現れた。顔は見られていなかったはずなのに記憶に残っていたエーテルの色だけでストーカーを決める勢いがネロにとっては恐ろしい。
 話を聞くと妹の過去を探るために内緒でエオルゼア中を探しているらしい。最初こそは暁の血盟の盟主とも協力関係を結んでいたらしいが、結局空振りで途絶えた。『妹と一番仲のいい人間らしいシド・ガーロンドは手紙を読む限りすぐに表情に出て妹にバレるから会えん。だから同じ雰囲気でかつ一度だけ手紙に記述があったネロに目を付けた』と笑みを浮かべていた。
 恐ろしい所が、この男は風の噂で聞いた少し前で起こったカストルム爆発騒動の犯人である。犯行理由はアシエンについて調べたかった。魔導装置と一部書類は勉強のために貰い、爆発は手がかり持っていなかった腹いせということだった。

「オレが真っ先に疑われてたンだぞ」
「だから責任取って君に捕まってあげただろう?」
「理屈がメスバブーンみたいに無茶苦茶すぎンだろ!」
「アァン? 僕の妹がゴリラって言いてぇのかぁ?」
「オマエはアレの戦いを見たことねェから言えンだよ」

 グリダニアにてエオルゼア同盟軍や暁の連中、シドと顔を合わせた時にまとめられた設計図を突き付けられたことを思い出す。全く心当たりがない身からしたら不愉快極まりなかった。しかも作動しなかったのが奇跡な程度に無駄にしっかりとしたものだった。興味ついでに絶対捕まえてやると思っていた矢先に現れたのがまさかのエオルゼアの英雄と呼ばれる人間の血縁者である。この事実をシドらに伝えたらどうなるのだろうか。面白そうだがしばらくは放置でいい。

「よし、これで修理完了だ。ご主人、動かしてみてくれ」

 蓋を閉じ、外の人間に声をかけている。この男がやっていた行為に『絶対ガーロンドキレるな』と思いながら試運転を見守っていた。想定通りにかつ従来品より静かに動く装置に店主は満足し、報酬を渡そうとしたが拒否している。『あ、こりゃ絶対ガーロンド躍起になって探すな』と苦笑しながら代わりに報酬の交渉をしながら踵を返し歩き去ろうとするエルファーを掴んだ。

「報酬は貰いな。今後商売でアレをメンテする奴らの身になれ」
「素人がやったことに金を貰うのは迷惑だろう?」
「勝手に改造してる奴が何言ってンだ」

 そういうものなのかとぼやく確実に自分よりも年上なくせに世間知らずのエルファーを尻目に店主との交渉は続く。
 終わった頃には日が暮れ始め、近くの隠れ家で一夜過ごすことにする。結局報酬は少しだけ安めに貰い、装置を作った腐れ縁の会社の顔に泥を塗らない程度にはフォローを入れておいた。
 その肝心のエルファーは置かれている書物にかじりつき離れない。眺めながらため息を吐いた。

「オマエその知識どこで手に入れたンだ?」
「昔から修行の合間に色んな遺跡に忍び込んだりしててね。いにしえの技術を調べる機会はいくらでもあったんだわ」
「妹は知ってンのか?」
「ふむ手先が器用ってしか言ってないから知らないと思う。65年会ってなかったんだぞ?」
「あの女自分のこと26歳やら40歳やら言ってンぞ」
「はっはっはっなんて可愛い妹だ」

 シスコンが、という言葉を飲み込み寝台に寝そべり以前シドから見せられた爆破装置の設計図を目にやる。あの男は遠隔から火のエーテルを注入して爆破させるものと評していたがネロの目線では全く違うものだと判断していた。

「エーテルで張り巡らせた糸で伝播させて誘爆する装置とか普通の人間は作らねェぞ」
「いやあまさか不発でしかも人に発見されるとは予想しなかった。すまないすまない」
「後ろに刻まれている文字が起爆のトリガーだろ? 分解時よく爆発しなかったな」
「万が一のために繋がった糸が切り離された地点でガラクタになるようにしてるんだ。動いた実物見ずに設計図だけで判断できるのはすげえな、天才機工師様」
「調査した奴らの報告書が程々にお上手だったンだよ。ま、ガーロンドも自分で全部分解してたら気付いただろうな。そんな仕様が分かってもオマエの扱いなンてどうしようもねェだろ」

 気軽に量産できてかつ足付かないルートから手に入る材料を考えるとこれしかなくてなと書物から目を離さず話をしていた。「もうやるんじゃねェぞ」と言うと「さすがに派手にやりすぎたからな」とヘタクソな笑みを見せている。

 エルファーとの会話は程々に弾むものだった。振った話題は大体返ってくる。アラグ文明の技術関連の話や各地の伝承、昔読んだ物語に加えて機械装置の相談まで全て会話が成立した。妹の話さえしなければ完璧な技術者である。帝国外に彼のような存在がいるとは予想もしなかったというのが本音であり、そこは『流浪の旅をしてみるもンだな』と思っていた。
 何と言えばいいのか―――そうか、助手のポジションにあっという間に収まっていったのが不思議な話である。


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