FF14の二次創作置き場
更新履歴
- 2024/11/26 旅人は魔導兵器を識りたい 新生
- 2024/11/19 "召し上がれ&quo… 新生
- 2024/11/15 溶けあうもの 紅蓮
- 2024/11/11 "11月11日&qu… 蒼天
- 2024/10/18 "嫉妬"、… 漆黒,
No.55, No.54, No.53, No.52, No.51, No.49, No.48[7件]
注意自機出番なし。自機兄+ネロ話。 ―――夢を見た。過去のものだ。オ…
旅人の兄は機工を操る
注意
自機出番なし。前半は蒼天後、後半は非光の戦士な自機兄+ネロ話。
「これがその爆弾か?」
「はい。心当たりありますか?」
ガーロンド社に持ち込まれた不審物が不思議な出来事を開く扉となった―――。
それは突然起こった。夜も更けた頃、未だに残るカストルムの一つにて爆発が起こったのだという。ガイウスが死んだ今、帝国軍自体はエオルゼアでは弱体化し、本国からの補給物資は絶てたとはいえ軍事機能は生きている。残党も残っており、稀に小競り合いが起きていた。
その内の1つが突然爆破され、それに使われた爆弾と思われるが起爆しなかったものを手に入れたエオルゼア同盟軍がガーロンド社に調査として持ち込まれる。会長のシドと複数人の社員がそれを囲み観察した。真っ白なフォルムに羽根のような模様が刻み込まれ、裏返すと見知らぬ文字が刻まれている。
「帝国産……でもなさそうッスね」
「超小型化されてパッと見では起爆装置か分からん。よく見つけたなあ」
「偶然でした。あなた方が作ったものでもなさそうですね」
「流石に戦争の火種になりそうなことはしないさ」
社員の1人が慎重にパーツを外し中身を覗く。「こりゃすごい」と感嘆する声を上げたのでシドも覗いてみた所それはシンプルな構造であった。
「シンプルで従来品よりもだいぶ軽量化されている。だが見た事のない無茶苦茶な機構だ」
「魔導機械でありながら起爆のスイッチはエーテルを反応させるものじゃないかしら? 火薬周辺に使われている部品が―――」
集まりメモを取りながらの議論が始まっている。シドはアゴ髭を触りながらその風景を眺め、専門外の来訪者にかみ砕いて解説した。
「ていうか本当に動くのか不思議な装置と思ってくれて構わない。爆発したやつの残骸はなかったのか?」
「完璧に消し飛んでいたのか調査に来た帝国兵が回収したのかまでは俺たちが知る由はありません。爆心地周辺は誰もおらず死者はなし。兵士はこれがあった場所に全員魔法で眠らされ、要塞内にあった魔導機械や資料のいくつかが盗まれてるんだと。証拠も見つからないからと調査は終わりそのカストルムは放棄された」
「なんだ盛大な強盗か? 脅威は弱まっているとはいえ実行犯は大胆すぎるだろう」
ですよね、と肩をすくめ考え込んでいる人間の姿を見ながらシドも分解されていく装置を凝視ている。
シンプルな中身と裏腹に火薬が思ったよりも込められており、もしこれが動作していたら周辺で眠っていた人間は最悪死んでいた。
「もしかしたら裏でこの装置を売り込むために試しに仕掛けたって可能性ないですか?」
社員の1人の発言で全員一瞬静止し、装置を眺める。「探りを入れておきます! ありがとうございました!」と大慌てで去って行く人間を見送りながらシドは考え込んでいた。
この装置を作れるほどの腕があるフリーの機工師は1人しか心当たりがない。しかし売り込むとはいえ祖国の基地を利用するような人間ではないはず。しかも盗みまでするというのは『絶対に』ありえない。
ということは全く知らないフリーの機工師が存在する。なんとしても、他所よりも先に尻尾を掴みたい。やらかしていることは許されるものじゃないが話くらいならできるハズだ。
「ジェシー、この犯人をどうにか調査するように依頼しておいてくれないか」
「会長まさかこの人雇うとか言い出しませんよね!?」
「いや見てみたいだろ? こんな妙な技術持ちだ。俺たちとはまた違う視線を持った人間なんてそう会えんぞ」
「火傷しても知りませんからね」
シドは肩をすくめ、部屋を後にした。
◇
―――後の調査の結果、そういった爆発物を売り込む人間は存在しなかったという。エオルゼア同盟軍でもただの純粋な物盗りだろうと帝国側と同じ結論に落ち着いた。
それは俺たち周辺でも奇妙な現象が起こっているので考える暇が無くなったというのも大きい。
どうやらエオルゼア各地で"修理屋"が現れたという。各所に導入されている機械装置が壊れ困っているところにほぼ無償で修理するどころか"改善"していく輩がいると定期メンテナンスを行っている社員らから報告を受けた時は眩暈がした。特徴を聞く限りでは腐れ縁のフリーランスでもないというのが余計に頭痛の種になる。しかもシンプルで、無茶苦茶な仕様だ。明らかに爆弾犯と同一人物である。
「なんとしても! この人間を! とっ捕まえろ!!」
昼下がり、そんな怒り狂ったシドの叫び声が聞こえたとか聞こえなかったとか。
◇
―――一方その頃。
「オマエ、マジで無茶ばっかしてンだな」
金髪の男はそこは妹と一緒かよと言いながら作業をする男を眺める。当の相手は目の前の装置の中身と睨み合っていた。
2人が出会ったのは数日前。偶然移動していた森の中でネロの前に現れたのは褐色赤髪ヴィエラの男。独学で魔導技術を学んでいる技術者気質であの女の兄という部分が程々に興味を持ったので共に行動するようになっている。といっても普段は姿を消して手を上げて呼べば現れる奇妙な男だったが。
「妹に見つかったら困るんだ」
これが目の前の男、アンナの兄エルファーの口癖である。だから奇妙な魔導ビットを飛ばして離れた場所から観測したりしていたらしい。流石に妹付近に飛ばせば一瞬でバレるらしくネロを起点に追いかけていたと悪びれずに答えている。
一度会ったことはあった。あれは幕僚長時代、アーマーを纏いタイタンのエーテル監視を行っていた所に現れた。顔は見られていなかったはずなのに記憶に残っていたエーテルの色だけでストーカーを決める勢いがネロにとっては恐ろしい。
話を聞くと妹の過去を探るために内緒でエオルゼア中を探しているらしい。最初こそは暁の血盟の盟主とも協力関係を結んでいたらしいが、結局空振りで途絶えた。『妹と一番仲のいい人間らしいシド・ガーロンドは手紙を読む限りすぐに表情に出て妹にバレるから会えん。だから同じ雰囲気でかつ一度だけ手紙に記述があったネロに目を付けた』と笑みを浮かべていた。
恐ろしい所が、この男は風の噂で聞いた少し前で起こったカストルム爆発騒動の犯人である。犯行理由はアシエンについて調べたかった。魔導装置と一部書類は勉強のために貰い、爆発は手がかり持っていなかった腹いせということだった。
「オレが真っ先に疑われてたンだぞ」
「だから責任取って君に捕まってあげただろう?」
「理屈がメスバブーンみたいに無茶苦茶すぎンだろ!」
「アァン? 僕の妹がゴリラって言いてぇのかぁ?」
「オマエはアレの戦いを見たことねェから言えンだよ」
グリダニアにてエオルゼア同盟軍や暁の連中、シドと顔を合わせた時にまとめられた設計図を突き付けられたことを思い出す。全く心当たりがない身からしたら不愉快極まりなかった。しかも作動しなかったのが奇跡な程度に無駄にしっかりとしたものだった。興味ついでに絶対捕まえてやると思っていた矢先に現れたのがまさかのエオルゼアの英雄と呼ばれる人間の血縁者である。この事実をシドらに伝えたらどうなるのだろうか。面白そうだがしばらくは放置でいい。
「よし、これで修理完了だ。ご主人、動かしてみてくれ」
蓋を閉じ、外の人間に声をかけている。この男がやっていた行為に『絶対ガーロンドキレるな』と思いながら試運転を見守っていた。想定通りにかつ従来品より静かに動く装置に店主は満足し、報酬を渡そうとしたが拒否している。『あ、こりゃ絶対ガーロンド躍起になって探すな』と苦笑しながら代わりに報酬の交渉をしながら踵を返し歩き去ろうとするエルファーを掴んだ。
「報酬は貰いな。今後商売でアレをメンテする奴らの身になれ」
「素人がやったことに金を貰うのは迷惑だろう?」
「勝手に改造してる奴が何言ってンだ」
そういうものなのかとぼやく確実に自分よりも年上なくせに世間知らずのエルファーを尻目に店主との交渉は続く。
終わった頃には日が暮れ始め、近くの隠れ家で一夜過ごすことにする。結局報酬は少しだけ安めに貰い、装置を作った腐れ縁の会社の顔に泥を塗らない程度にはフォローを入れておいた。
その肝心のエルファーは置かれている書物にかじりつき離れない。眺めながらため息を吐いた。
「オマエその知識どこで手に入れたンだ?」
「昔から修行の合間に色んな遺跡に忍び込んだりしててね。いにしえの技術を調べる機会はいくらでもあったんだわ」
「妹は知ってンのか?」
「ふむ手先が器用ってしか言ってないから知らないと思う。65年会ってなかったんだぞ?」
「あの女自分のこと26歳やら40歳やら言ってンぞ」
「はっはっはっなんて可愛い妹だ」
シスコンが、という言葉を飲み込み寝台に寝そべり以前シドから見せられた爆破装置の設計図を目にやる。あの男は遠隔から火のエーテルを注入して爆破させるものと評していたがネロの目線では全く違うものだと判断していた。
「エーテルで張り巡らせた糸で伝播させて誘爆する装置とか普通の人間は作らねェぞ」
「いやあまさか不発でしかも人に発見されるとは予想しなかった。すまないすまない」
「後ろに刻まれている文字が起爆のトリガーだろ? 分解時よく爆発しなかったな」
「万が一のために繋がった糸が切り離された地点でガラクタになるようにしてるんだ。動いた実物見ずに設計図だけで判断できるのはすげえな、天才機工師様」
「調査した奴らの報告書が程々にお上手だったンだよ。ま、ガーロンドも自分で全部分解してたら気付いただろうな。そんな仕様が分かってもオマエの扱いなンてどうしようもねェだろ」
気軽に量産できてかつ足付かないルートから手に入る材料を考えるとこれしかなくてなと書物から目を離さず話をしていた。「もうやるんじゃねェぞ」と言うと「さすがに派手にやりすぎたからな」とヘタクソな笑みを見せている。
エルファーとの会話は程々に弾むものだった。振った話題は大体返ってくる。アラグ文明の技術関連の話や各地の伝承、昔読んだ物語に加えて機械装置の相談まで全て会話が成立した。妹の話さえしなければ完璧な技術者である。帝国外に彼のような存在がいるとは予想もしなかったというのが本音であり、そこは『流浪の旅をしてみるもンだな』と思っていた。
何と言えばいいのか―――そうか、助手のポジションにあっという間に収まっていったのが不思議な話である。
#エルファー関連,#ヴィエラ♂+ネロ
自機出番なし。前半は蒼天後、後半は非光の戦士な自機兄+ネロ話。
「これがその爆弾か?」
「はい。心当たりありますか?」
ガーロンド社に持ち込まれた不審物が不思議な出来事を開く扉となった―――。
それは突然起こった。夜も更けた頃、未だに残るカストルムの一つにて爆発が起こったのだという。ガイウスが死んだ今、帝国軍自体はエオルゼアでは弱体化し、本国からの補給物資は絶てたとはいえ軍事機能は生きている。残党も残っており、稀に小競り合いが起きていた。
その内の1つが突然爆破され、それに使われた爆弾と思われるが起爆しなかったものを手に入れたエオルゼア同盟軍がガーロンド社に調査として持ち込まれる。会長のシドと複数人の社員がそれを囲み観察した。真っ白なフォルムに羽根のような模様が刻み込まれ、裏返すと見知らぬ文字が刻まれている。
「帝国産……でもなさそうッスね」
「超小型化されてパッと見では起爆装置か分からん。よく見つけたなあ」
「偶然でした。あなた方が作ったものでもなさそうですね」
「流石に戦争の火種になりそうなことはしないさ」
社員の1人が慎重にパーツを外し中身を覗く。「こりゃすごい」と感嘆する声を上げたのでシドも覗いてみた所それはシンプルな構造であった。
「シンプルで従来品よりもだいぶ軽量化されている。だが見た事のない無茶苦茶な機構だ」
「魔導機械でありながら起爆のスイッチはエーテルを反応させるものじゃないかしら? 火薬周辺に使われている部品が―――」
集まりメモを取りながらの議論が始まっている。シドはアゴ髭を触りながらその風景を眺め、専門外の来訪者にかみ砕いて解説した。
「ていうか本当に動くのか不思議な装置と思ってくれて構わない。爆発したやつの残骸はなかったのか?」
「完璧に消し飛んでいたのか調査に来た帝国兵が回収したのかまでは俺たちが知る由はありません。爆心地周辺は誰もおらず死者はなし。兵士はこれがあった場所に全員魔法で眠らされ、要塞内にあった魔導機械や資料のいくつかが盗まれてるんだと。証拠も見つからないからと調査は終わりそのカストルムは放棄された」
「なんだ盛大な強盗か? 脅威は弱まっているとはいえ実行犯は大胆すぎるだろう」
ですよね、と肩をすくめ考え込んでいる人間の姿を見ながらシドも分解されていく装置を凝視ている。
シンプルな中身と裏腹に火薬が思ったよりも込められており、もしこれが動作していたら周辺で眠っていた人間は最悪死んでいた。
「もしかしたら裏でこの装置を売り込むために試しに仕掛けたって可能性ないですか?」
社員の1人の発言で全員一瞬静止し、装置を眺める。「探りを入れておきます! ありがとうございました!」と大慌てで去って行く人間を見送りながらシドは考え込んでいた。
この装置を作れるほどの腕があるフリーの機工師は1人しか心当たりがない。しかし売り込むとはいえ祖国の基地を利用するような人間ではないはず。しかも盗みまでするというのは『絶対に』ありえない。
ということは全く知らないフリーの機工師が存在する。なんとしても、他所よりも先に尻尾を掴みたい。やらかしていることは許されるものじゃないが話くらいならできるハズだ。
「ジェシー、この犯人をどうにか調査するように依頼しておいてくれないか」
「会長まさかこの人雇うとか言い出しませんよね!?」
「いや見てみたいだろ? こんな妙な技術持ちだ。俺たちとはまた違う視線を持った人間なんてそう会えんぞ」
「火傷しても知りませんからね」
シドは肩をすくめ、部屋を後にした。
◇
―――後の調査の結果、そういった爆発物を売り込む人間は存在しなかったという。エオルゼア同盟軍でもただの純粋な物盗りだろうと帝国側と同じ結論に落ち着いた。
それは俺たち周辺でも奇妙な現象が起こっているので考える暇が無くなったというのも大きい。
どうやらエオルゼア各地で"修理屋"が現れたという。各所に導入されている機械装置が壊れ困っているところにほぼ無償で修理するどころか"改善"していく輩がいると定期メンテナンスを行っている社員らから報告を受けた時は眩暈がした。特徴を聞く限りでは腐れ縁のフリーランスでもないというのが余計に頭痛の種になる。しかもシンプルで、無茶苦茶な仕様だ。明らかに爆弾犯と同一人物である。
「なんとしても! この人間を! とっ捕まえろ!!」
昼下がり、そんな怒り狂ったシドの叫び声が聞こえたとか聞こえなかったとか。
◇
―――一方その頃。
「オマエ、マジで無茶ばっかしてンだな」
金髪の男はそこは妹と一緒かよと言いながら作業をする男を眺める。当の相手は目の前の装置の中身と睨み合っていた。
2人が出会ったのは数日前。偶然移動していた森の中でネロの前に現れたのは褐色赤髪ヴィエラの男。独学で魔導技術を学んでいる技術者気質であの女の兄という部分が程々に興味を持ったので共に行動するようになっている。といっても普段は姿を消して手を上げて呼べば現れる奇妙な男だったが。
「妹に見つかったら困るんだ」
これが目の前の男、アンナの兄エルファーの口癖である。だから奇妙な魔導ビットを飛ばして離れた場所から観測したりしていたらしい。流石に妹付近に飛ばせば一瞬でバレるらしくネロを起点に追いかけていたと悪びれずに答えている。
一度会ったことはあった。あれは幕僚長時代、アーマーを纏いタイタンのエーテル監視を行っていた所に現れた。顔は見られていなかったはずなのに記憶に残っていたエーテルの色だけでストーカーを決める勢いがネロにとっては恐ろしい。
話を聞くと妹の過去を探るために内緒でエオルゼア中を探しているらしい。最初こそは暁の血盟の盟主とも協力関係を結んでいたらしいが、結局空振りで途絶えた。『妹と一番仲のいい人間らしいシド・ガーロンドは手紙を読む限りすぐに表情に出て妹にバレるから会えん。だから同じ雰囲気でかつ一度だけ手紙に記述があったネロに目を付けた』と笑みを浮かべていた。
恐ろしい所が、この男は風の噂で聞いた少し前で起こったカストルム爆発騒動の犯人である。犯行理由はアシエンについて調べたかった。魔導装置と一部書類は勉強のために貰い、爆発は手がかり持っていなかった腹いせということだった。
「オレが真っ先に疑われてたンだぞ」
「だから責任取って君に捕まってあげただろう?」
「理屈がメスバブーンみたいに無茶苦茶すぎンだろ!」
「アァン? 僕の妹がゴリラって言いてぇのかぁ?」
「オマエはアレの戦いを見たことねェから言えンだよ」
グリダニアにてエオルゼア同盟軍や暁の連中、シドと顔を合わせた時にまとめられた設計図を突き付けられたことを思い出す。全く心当たりがない身からしたら不愉快極まりなかった。しかも作動しなかったのが奇跡な程度に無駄にしっかりとしたものだった。興味ついでに絶対捕まえてやると思っていた矢先に現れたのがまさかのエオルゼアの英雄と呼ばれる人間の血縁者である。この事実をシドらに伝えたらどうなるのだろうか。面白そうだがしばらくは放置でいい。
「よし、これで修理完了だ。ご主人、動かしてみてくれ」
蓋を閉じ、外の人間に声をかけている。この男がやっていた行為に『絶対ガーロンドキレるな』と思いながら試運転を見守っていた。想定通りにかつ従来品より静かに動く装置に店主は満足し、報酬を渡そうとしたが拒否している。『あ、こりゃ絶対ガーロンド躍起になって探すな』と苦笑しながら代わりに報酬の交渉をしながら踵を返し歩き去ろうとするエルファーを掴んだ。
「報酬は貰いな。今後商売でアレをメンテする奴らの身になれ」
「素人がやったことに金を貰うのは迷惑だろう?」
「勝手に改造してる奴が何言ってンだ」
そういうものなのかとぼやく確実に自分よりも年上なくせに世間知らずのエルファーを尻目に店主との交渉は続く。
終わった頃には日が暮れ始め、近くの隠れ家で一夜過ごすことにする。結局報酬は少しだけ安めに貰い、装置を作った腐れ縁の会社の顔に泥を塗らない程度にはフォローを入れておいた。
その肝心のエルファーは置かれている書物にかじりつき離れない。眺めながらため息を吐いた。
「オマエその知識どこで手に入れたンだ?」
「昔から修行の合間に色んな遺跡に忍び込んだりしててね。いにしえの技術を調べる機会はいくらでもあったんだわ」
「妹は知ってンのか?」
「ふむ手先が器用ってしか言ってないから知らないと思う。65年会ってなかったんだぞ?」
「あの女自分のこと26歳やら40歳やら言ってンぞ」
「はっはっはっなんて可愛い妹だ」
シスコンが、という言葉を飲み込み寝台に寝そべり以前シドから見せられた爆破装置の設計図を目にやる。あの男は遠隔から火のエーテルを注入して爆破させるものと評していたがネロの目線では全く違うものだと判断していた。
「エーテルで張り巡らせた糸で伝播させて誘爆する装置とか普通の人間は作らねェぞ」
「いやあまさか不発でしかも人に発見されるとは予想しなかった。すまないすまない」
「後ろに刻まれている文字が起爆のトリガーだろ? 分解時よく爆発しなかったな」
「万が一のために繋がった糸が切り離された地点でガラクタになるようにしてるんだ。動いた実物見ずに設計図だけで判断できるのはすげえな、天才機工師様」
「調査した奴らの報告書が程々にお上手だったンだよ。ま、ガーロンドも自分で全部分解してたら気付いただろうな。そんな仕様が分かってもオマエの扱いなンてどうしようもねェだろ」
気軽に量産できてかつ足付かないルートから手に入る材料を考えるとこれしかなくてなと書物から目を離さず話をしていた。「もうやるんじゃねェぞ」と言うと「さすがに派手にやりすぎたからな」とヘタクソな笑みを見せている。
エルファーとの会話は程々に弾むものだった。振った話題は大体返ってくる。アラグ文明の技術関連の話や各地の伝承、昔読んだ物語に加えて機械装置の相談まで全て会話が成立した。妹の話さえしなければ完璧な技術者である。帝国外に彼のような存在がいるとは予想もしなかったというのが本音であり、そこは『流浪の旅をしてみるもンだな』と思っていた。
何と言えばいいのか―――そうか、助手のポジションにあっという間に収まっていったのが不思議な話である。
#エルファー関連,#ヴィエラ♂+ネロ
"冷たい肌"
前半蒼天終了辺り、後半漆黒付き合った後のお話。メインストーリーには特に触れないです。
「アンナっていつも思うがお前冷たいよな」
「悪口?」
「体温の話だ」
アンナの怪訝な目に対してシドはため息を吐く。イシュガルドの騒動以降さりげなく手を触れる機会が増えたが、いつもひんやりと冷たい。
「冷え性、かも?」
「俺に聞かれても分からん」
「故郷の儀式で火には強いの。冷たさの原因は不明だけど」
「初めて聞いたんだが?」
「聞かれたことないから」
アンナは目を細め「バァン」と言いながら指から一瞬だけ火花らしき輝きを出す。シドは目を丸くしてそれを見つめた。一瞬別の感情が湧き出そうになるのをグッと我慢する。
「故郷は火を大切にしてる部族でね。火の操作に関してはまあまあ人より上手なの」
「着火剤いらずで便利じゃないか」
「旅のお役立ちでしょ?」
「それでも指熱くならないのは凄いな」
火を出していた指に軽く触れるとやはり冷たいままだ。アンナはニコリと笑い「不思議ね」と言う。
褐色の細くて長い指をシドはぼんやりと絡めながら眺めている。
「シドの手、大きくて温かい。嫌いじゃない」
「そうか? まあ言われて悪い感じはしないが」
「褒めてるし」
「そうだな」
2人は笑い合う。手袋とかした方がいい、夏だったら冷房いらずだな、ちゃんと寝る時は温かくしろと言うシドをアンナはニコニコと相槌を打っている。
ここはガーロンド社休憩スペース、居合わせた社員たちはポカンとした顔でその掛け合いを見つめていた。
◇
「昔お前が冷たい話したこと覚えてるか?」
「悪口の話?」
「体温の話だ」
同じような会話したぞちゃんと覚えてるなと軽く小突く。
最初こそは全身が冷たいものだった。しかし思考を溶かし、体を重ねると徐々に熱が灯され蕩けさせると人並みの体温を感じられる。自分の体温と混じり合う感覚が他では味わえない未知のもので。それはもうクセになる。
胸元に口付けを落とすと頭に手刀をお見舞いされた。痛いと言うと呆れた声でアンナは「今日はもう終わり」と返した。
「叩かなくてもいいだろ」
「キミは久方振りなボクとの休日を"また"一日中寝る行為に使うつもりかい?」
ボクはもう疲れてるんだよとアンナはジトッとした目で見つめる男に対しため息を吐く。リップ音を立てながら第三の眼付近に口付けを落とし、ボソリと喋り目を閉じた。シドは目を丸くしながら飛び起きる。
「本当か?」
アンナは寝返りを打ち、何も言わない。そんな彼女を後ろから抱きしめ「おやすみ」と囁いた。
#シド光♀ #即興SS
「アンナっていつも思うがお前冷たいよな」
「悪口?」
「体温の話だ」
アンナの怪訝な目に対してシドはため息を吐く。イシュガルドの騒動以降さりげなく手を触れる機会が増えたが、いつもひんやりと冷たい。
「冷え性、かも?」
「俺に聞かれても分からん」
「故郷の儀式で火には強いの。冷たさの原因は不明だけど」
「初めて聞いたんだが?」
「聞かれたことないから」
アンナは目を細め「バァン」と言いながら指から一瞬だけ火花らしき輝きを出す。シドは目を丸くしてそれを見つめた。一瞬別の感情が湧き出そうになるのをグッと我慢する。
「故郷は火を大切にしてる部族でね。火の操作に関してはまあまあ人より上手なの」
「着火剤いらずで便利じゃないか」
「旅のお役立ちでしょ?」
「それでも指熱くならないのは凄いな」
火を出していた指に軽く触れるとやはり冷たいままだ。アンナはニコリと笑い「不思議ね」と言う。
褐色の細くて長い指をシドはぼんやりと絡めながら眺めている。
「シドの手、大きくて温かい。嫌いじゃない」
「そうか? まあ言われて悪い感じはしないが」
「褒めてるし」
「そうだな」
2人は笑い合う。手袋とかした方がいい、夏だったら冷房いらずだな、ちゃんと寝る時は温かくしろと言うシドをアンナはニコニコと相槌を打っている。
ここはガーロンド社休憩スペース、居合わせた社員たちはポカンとした顔でその掛け合いを見つめていた。
◇
「昔お前が冷たい話したこと覚えてるか?」
「悪口の話?」
「体温の話だ」
同じような会話したぞちゃんと覚えてるなと軽く小突く。
最初こそは全身が冷たいものだった。しかし思考を溶かし、体を重ねると徐々に熱が灯され蕩けさせると人並みの体温を感じられる。自分の体温と混じり合う感覚が他では味わえない未知のもので。それはもうクセになる。
胸元に口付けを落とすと頭に手刀をお見舞いされた。痛いと言うと呆れた声でアンナは「今日はもう終わり」と返した。
「叩かなくてもいいだろ」
「キミは久方振りなボクとの休日を"また"一日中寝る行為に使うつもりかい?」
ボクはもう疲れてるんだよとアンナはジトッとした目で見つめる男に対しため息を吐く。リップ音を立てながら第三の眼付近に口付けを落とし、ボソリと喋り目を閉じた。シドは目を丸くしながら飛び起きる。
「本当か?」
アンナは寝返りを打ち、何も言わない。そんな彼女を後ろから抱きしめ「おやすみ」と囁いた。
#シド光♀ #即興SS
自機出番なし。自機兄+ネロ話。
―――夢を見た。過去のものだ。オレが殺した人間どもが足にしがみつき、呪いの言葉を吐きながら深淵へと引きずり込む。軍人だったからそりゃ直接手にかけた時もあったし、技術者でもあったから間接的に殺す兵器だって作った。いつも自分の先に行っていたあの男の鼻を明かすためなら手段は選べなかった。
これまでの人生の集大成だった最高傑作をあっさりと斬り捨てられ、全てのしがらみから逃げ出し自由に生きることにして。赦されたいわけじゃない。今の旅は別に罪滅ぼしのためでもなく知的好奇心を満たすための自分勝手の旅だ。
過去にやった事に関しては技術の発展には犠牲はつきものと結論付けてはいるが稀に苦しむ夢は見るものだ。
目を見開き起き上がると隣で照明を引き絞り読書するメガネをかけた赤髪の男が驚いた顔で自分を見ていた。よりにもよって人がいる時に見たか。気持ち悪さにため息を吐く。
「どうした悪い夢でも見たのか?」
「オレだってそういう夢くらい見ることはある。オマエこそいつまで読書してンだ」
「あと少しで読み終わって眠る所だった。えらくうなされてたからそろそろ叩き起こそうとも思ってたが」
汗がすごいぞ、とタオルを渡された。受け取り顔を埋めながら「エル」と声を振り絞る。
「人を殺したことはあるか?」
「護人をやってるとな、色々侵入者を撃ち落としてサバいたことはある。君は……あぁ軍人だったか」
「超えたい奴がいた。そのためには軍人から成りあがるしかなかったンだよ」
「それもまた青春だ」
この時は捕えて裁判をするような文化の集落なのかと眺めていた。青春という言葉の意味は分からないが、夢の内容をこぼすと「君は優しいんだな」と奇妙なことを言われ「ハァ?」と顔を上げた。本を閉じてオレを見るエルは相変わらず不器用な笑顔を浮かべている。
「ンなわけねェだろ耳でも腐ってンのか?」
「誰にだってコンプレックスはあるさ。トラウマだってある。僕も妹が生きてるって分かるまで何度も妹が男として産まれなかったことを呪う言葉を吐いて目の前で自害される夢を見てたな。それからまともに眠れなくなっちまった」
そういえば昔あのメスバブーンは『自分がもし男だったら村全員の女性抱く予定だった』と言っていたことを思い出す。あの言葉はジョークじゃなかったのかと驚き呆れた。
「あのメスバブーンとの思い出話聞かせろ」
「ホー君が妹の話を聞きたがるとは珍しいじゃないか」
「夢と真逆な境遇でも聞いてりゃ眠れンだろ多分」
そんなものなのか? と首を傾げるエルを見ながら寝そべってやるとポツリと話し始めた。
「妹は、僕と同じく男に生まれたと思っていたんだ。毎日修行をしながら里の女性を口説いたりしてさ。イタズラも大好きでまあ元気なクソガキだったよ」
「想像出来ねェな。ていうか性別くらい生まれた時から分かるもンだろ」
「あーヴィエラはな、産まれた時は性別は表から判別できないんだ。大体第二次成長期に表層化する。妹は14歳の頃に女の子だって分かった」
エルに目をやると悲しそうな顔をしていた。何も言わずその言葉を聞く。
「僕が里に帰って来た時にはもう、妹はいなくなっていた。里の奴らが寝静まった頃に飛び出して行ってしまったらしい。あの子の性別が分かった時、僕が村にいればと今でも後悔している」
「そんなショック受けてンならオマエがいても変わンねェだろ」
「かもな。性別が発現してからあの子から笑顔が消えたんだと。誰にも触らなくなり、イタズラもやめ、毎日1人で素振りをしていたらしい。母親の言葉にも一切耳を傾けず、ある日部屋に籠って出て来なくなり、気が付いたらいなくなっていた」
目を閉じてニィと笑っている。少し眉間に皴が寄っているみたいだ。
「『大きくなったら兄さんと一緒に修行の旅に出る』って言葉が妹の目標であり、僕の活力でもあった。それが脆く崩れ去った。いなくなった僕の穴を埋めてくれたのが8人の嫁と、知的好奇心だった」
「もう離婚してるじゃねェかまたぽっかり開いてンぞ心の穴」
「そういやそうだったな。―――村の文化があの子を歪めた原因の一つだっていうのも理解しているさ。それでも何だよあの体内に構成されたドス黒いエーテルは……意味わかんねぇよ……」
これ以上は、いけないだろう。オレは震える目の前のヤツの服の裾を掴む。ちらりと濁った眼を向けられたので「寝ンぞ」って言ってやると「君が子守唄がてら話せって言ったんだろう?」と隣に寝そべる。
「最後にこれだけ聞いてくれ。妹をがむしゃらに探し回っていた時に偶然発見した墜落した飛空艇が、一番僕に生きる気力を与えてくれたんだ。機械油や青燐燃料の残っていたニオイに金属の冷たさ、精巧な芸術作品のような構造に脳が刺激されていった。だから今こうやって君と技師の真似事が出来ているのが楽しい」
「ケッ口説いてるつもりか?」
「ははっ都合のいい解釈で考えてくれて貰って構わない」
「相手が男じゃロマンスがねェな」
ゲラゲラと笑う声と大人2人が乗った寝台のきしむ音が響く。エルはメガネを外し、天井を見上げている。
「超えたかった相手のことか僕のことでも考えながら眠るんだ。妹は許さんぞ? まあとにかく視点は変わっていくんじゃないかな?」
「ガーロンドやゴリラのことを考えるなンて絶ッ対にお断りだ」
「はっはっはっ」
頬を引っ張りながら思いつく限りのガーロンドに対する罵詈雑言を吐き続ける。エルはずっと笑顔で聞き続けていた。別にヤツに対して未だにコンプレックスを持ってるわけではない。苛つくだけだ。それを目の前の男にぶつけても意味はないのだが。その苛つく原因はこのヴィエラの妹も絡んでいるのだ、言われる権利はある。
そういえばいつの間にか悪夢を見た後の気持ち悪さが消え去っていた。
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#エルファー関連 #ヴィエラ♂+ネロ