FF14の二次創作置き場

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注意ガルーダ討伐前のおはなし。シド少年時代捏造。  ―――ボクが身につ…

新生

#シド光♀

新生

旅人は過去を視る
注意
ガルーダ討伐前のおはなし。シド少年時代捏造。
 
―――ボクが身につけてしまった力は正直に言うと旅をするうえで邪魔な代物。だけど、旅の中で見つけた星は心の奥底では求めていた縛り付けられるための【希望】だったかもしれない。

 視てしまった。何をって? 決まってるでしょう、人の過去です。第七霊災と呼ばれる星降る夜を見届けた数年後。アルフィノ、アリゼーという双子のかわいい子達に連れられてグリダニアに向かう道の途中でだ。変な声を聞いてからボクは人の過去を視る【超える力】というものを手にしたことを自覚する。口頭説明だけでなく過去を見ることで状況を把握しやすくなったのはいいこと。しかし一々眩暈が伴うのは勘弁してほしかった。いや、眩暈以外ではリスクなしで蛮神による洗脳? を無効化するという効果も一緒に渡されたと考えればお得なものだったかもしれない。

 閑話休題。今回視た対象は一味違う。突然協力関係になった組織【暁の血盟】の拠点である砂の家をあの男が興したガレマール帝国の者達に襲撃された。意味も分からぬまま協力者がいるというウルダハのキャンプ・ドライボーン郊外にある教会に転がり込んだ。正直な話自分が『バレた』のかと思って怯えていたがどうやら蛮神殺しとなった自分が鬱陶しかったらしい。紛らわしいことをしやがって……ではなく命拾いした。慣れない武器で走り回る自分はあくまでもちょっと超える力なんて得てしまったひよっこ冒険者なのだ。襲われないに越した事はない。
 その後聖アダマ・ランダマ教会という場所で記憶を失っていた墓守の男マルケズに出会う。不思議な雰囲気を醸し出す白い人だった。手先が器用で、無意識だが魔導機械を修理できる程度の知識がある。帝国の目的が分かるまで少々怯えていた自分を慰めてくれた"お人好し"だった。こりゃあの国の偉い技師かそれに近しいやつだったのかなあとぼんやりと考えていた。その正体はガルーダ討滅のためアルフィノ少年が探している飛空艇エンタープライズ号を作り、エオルゼアの魔導技術を一気に発展させた帝国からの亡命者シド・ガーロンド。彼が大空を翔るエンタープライズ号で取り戻した記憶を、隣でのぞいてしまった。
 結論を言うと"内なる存在"と話をした【あの少年】だった。寒空の夜、偶然自分の目の前に現れた偉大な父の背中と技術を夢見る可愛らしい白色の髪のあの子だ。



「俺、絶対にお兄さんに凄い飛空艇を見せるんだ」
「ホー、そりゃ楽しみだ。でも迷子になる"ボク"を見つけることはできるかな?」
「空からならきっと見つかるって! そしてお兄さんを目的地へすぐに連れて行けるじゃないか」
「ホーそりゃいい夢だ」

 もう来たくなかったあの寒空の中、このままだと凍死か捕まってゲームオーバーかと諦めた所に温かい飲み物を持って来てくれた。自分の事は男だと思っていたのだろう、お兄さんと呼ぶ所は育ちがいい子なんだなあと思うくらいで。"ボク"と彼は名乗り合わず、ただの【旅人と少年】として出会い、少しだけ話をした。お互いの故郷の話、ボクは迷子クセがあるいう話、彼の家の話、そして若き少年である彼の将来の話。

「じゃあ次はキミから全力で逃げてみようかな」
「次?」
「"ボク"を捕まえてごらん」
「っ!?」

 あの頃のボクは同じ人間には会わない旅人と決めていたはずなのにな。あまりにも面白かったし、朧げな意識の中初めての純粋な優しさが嬉しかったという感情が"内なる存在"にも伝わり、つい手の甲に口付けを送りながらこう言いやがったのだ。

「期限はそうだね……キミがお髭がとっても似合う人になるまで、かな? 翼であるキミの飛空艇たちを守る刃になってあげよう。おっと飛空艇たち、というのは簡単だよ? あんな大きな船をキミ1人で作れるわけないだろう? 全部守ってあげる。こう見えて"ボク"はすっごく強いからね」
「俺が翼で、お兄さんが刃」
「道教えてくれてありがと。あと入学おめでとう。学校、がんばれ」
「ありが……って道違う! 逆! 迷子何とかしたいなら方向覚えなよ!」



 嗚呼懐かしい。あの少年がこんなにもヒゲの似合う男になってしまったのか。これまで流れた時間ってあまり気にした事はなかったが残酷である。そして彼の運の良さにボクは恐怖を覚えたよ。
 いろいろあったんだなあ。ボクよりも短い時しか生きてないくせに濃縮されてる人生送ってるね、キミ。だからかな? あの寒空の夜を覚えてないみたいだね。いい事だ。ボクとしては捕まりたくないからそっちの方が都合がいいんだよね。そりゃあ少しだけ寂しいけどさ。

「アンナ、大丈夫か?」
「ん……大丈夫だよ」
「ははっ旅人さんは乗り物酔いでもしたか?」
「飛空艇、乗り慣れてないからそうかもしれないの」

 とりあえずキミ達との出会いという幸運に感謝して、蛮神殴ってガレマール帝国の野望を阻止してあげよう。ボクはヴィエラ、時間はたっぷりある。これが終わったら、また広い世界を旅すればいい。

 ボクはアンナ・サリス。何にも縛られない、何者でもないただの無名な旅人さ。どうせキミ達の方が先に死ぬんでしょ? 誰もボクに構わないでよ(早くボクを捕まえてよ)―――。

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#シド光♀

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「人間ごっこは楽しいか?」 ならず者の頭から飛んできた言葉に私の目が反射的に少し…

漆黒,ネタバレ有り

#即興SS

漆黒,ネタバレ有り

旅人は人に擬態する?
「人間ごっこは楽しいか?」

 ならず者の頭から飛んできた言葉に私の目が反射的に少し見開かれたように感じた。
 何度も言われた言葉だ、慣れてはいる。即いつもの笑顔に戻す。

 そういえば最近同じような事を言われていた。相手は……そうだ、アシエン・エメトセルクだ。あの時彼は何と言っていたのだろうか。嗚呼思い出した。



『あの頃に比べたら上手に人間みたいに振る舞えるようになったんだな。おい何照れてるんだ褒めてないぞ嗚呼厭だ厭だやはりお前は人間のフリをしたナニカだ』

 彼が皇帝として存在していた頃、獣のごとく走り回っていた自分を『奥の手』として引き入れようとした。【鮮血の赤兎】なんて変な二つ名で呼ばれる少し前の話になる。
 しかし今思うとそんな自分を『人間ごっこ』できるように多少の常識を叩きつけて来たのはこの胡散臭いお人よしなのだ。彼と死闘を繰り広げた後、少しだけ彼に対して冷静に考えられるようになった時にふと気が付いた。使用人経由で衣服を整えてくれたし、心が引き裂かれるように痛かったけど何かこびりついた憑き物を落としてくれた。あと恥ずかしいが自分は女に生まれたことを改めて一晩イヤミたっぷりに説教された。
 以降さらしをキツく巻くことはなくなったし少しだけ今の自分に近付いたきっかけではあった。感謝するかと言われたらしたくないのが本音だが。
 あの時から彼が見ていたのは私ではなく私の中にあるナニカなだけ。少し優しくされただけで一喜一憂するような便利なヒトにはなれなかった。

 それでも【鮮血の赤兎】と呼ばれてた頃は人扱いされることはめったになかった。道を聞いても皆襲い掛かってくるから斬り倒した。稀に優しくしてくれて家に泊めてくれたりした人はいたけれど何かに怯えるような眼をしていた。怖いなら何で私に構うんだ、そう思いながら寝そべっていたのを覚えている。
 あの時は私を鍛えてくれた命の恩人には申し訳ないが、強くなりすぎた事を何度も後悔した。だから私はただの旅人として生きていた『あの人』のように旅を続けるしかなかった。

 時代が新たに歩き出したので【鮮血の赤兎】を殺した今、私の周りには人が集まるようになった。笑顔を浮かべ、不器用に振る舞いながらも慣れない武器を振り人助けをしてると何だか分からないが心が温かくなる。
 あとエオルゼアに辿り着いてから『超える力』という加護が与えられた。以降私はハイデリンの加護を駆使しながら危なっかしい若者たちを手助けするようになる。あの寒空の夜約束を交わした少年も大きくなり私の前に現れたのも驚いた。本人は最近まで覚えてなかったみたいだがついに過去の事を認識したらしく、捕まってしまった。気楽な旅も悪くはないけど大切な人を守るために戦う生活もいいかもしれない。現在が一番楽しい時を過ごしている、そう思っていた。

―――そこに冒頭の言葉を投げつけられた。

「違う! アンナは優しい人間だ!」
「そうよ。あなたのようなやつと違うわ!」

 仲間である銀髪の兄妹は私を庇うように立ち、叫ぶ。私の事を知ろうとする最初こそは面倒だったが今は守りたい子供たち。なるべくどす黒い所は見せたくない。私は首を横に振り、2人の感情を遮ろうと前に出る。

 次の動きは一瞬だった。彼の首に届きそうな、ギリギリ傷付けない位置に刀を突き立て笑顔で言おう。

「そう見える? 悲しいな」

 ふと男の顔を見るとこの世の絶望を見たかのごとく歪んでいた。

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#即興SS

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注意次元の狭間オメガ途中の話。シド少年時代捏造。   上級軍人になった…

紅蓮,ネタバレ有り

#シド #ネロ #ギャグ

紅蓮,ネタバレ有り

好奇心は旅人を起こす
注意
次元の狭間オメガ途中の話。シド少年時代捏造。
 
 上級軍人になった頃、オレは新たに立ち入れるようになった軍の資料室で調べモノをしていたンだ。その時偶然『あの怪談』の真実へつなぐ一欠片を見つけてしまった。それが今につながるたァ思わねェよな? 英雄サンよォ―――



「ネロ、面白い話して」
「何言ってンだ? この女ゴリラ」
「あなた、社の中では新人社員」
「だから英雄サマに面白い話を献上しろってかァ? コッチはオシゴト忙しいの」
「あき……新人クンとのコミュニケーションの一環」

 今明らかに飽きたと言いかけたな、隣では『保護者』の社長サマが笑いをこらえている。ヤーンの大穴にて発生したオメガの検証。俺やガーロンド社の人間からしたら未知との遭遇であり目を輝かせるものなのだがこの各所で英雄と呼ばれるオンナ(?)にはあまり響かないものだったらしい。
 いや物陰でガーロンドに見られないように何かやっているのは把握しているが。

 英雄サマは俺を半ば強引に社員として引き入れた"会長代理サマ(ジェシー)"とはまた違う女性として認識しにくい。それどころか人間と認識できるか曖昧なほどの強さを持つ。超える力なンて必要ないんじゃねェか? どうせ疑わしいものは全部ぶちのめしていくクセによと思うことは多々ある。ガーロンドや暁の人間がいないと誰も自分の領域に一切入れたがらない孤独な存在だは『知って』るさ。

 ていうか何が新人社員とのコミュニケーションだ。そもそも元凶であるアンナは社員でもないやつだ。最初こそ大人しく人助けがシュミな奇妙なウサギかと思っていた。だが、ガーロンドの野郎に懐いて稀に奇行に走る変人だったと聞いたときは正直眩暈がした。社員として招き入れられたからにはいつかこっちに余波が飛んでくると思っていたがまさか今だとは予想外だ。
 つーかビッグスとウェッジが倒れた後のくせに呑気すぎる。いやもしかしたらそういう雰囲気にしないと耐えられンないと判断でもされたか? そりゃまた余裕あンな。
 しかし事の元凶からの期待するかのような視線が痛い。癪だが従ってやる。この退屈を嫌うヤツが気に入りそうな話はあっただろうか。ウサギ……赤……そういえば昔聞いた話があった。戦い好きにはちょうどいい話でもあるだろう。

「英雄サマに気に入ってもらえるか分かんねェが……今は暑いし新人兵時代に聞いた怪談にすっか」
「お前がそういう話持ってるとは珍しいじゃないか」
「お前なァ……」

 次はガーロンド側がうるさい。俺が何したっていうんだ。まァいろいろあったか。記憶を頼りにイイ感じの話にしてやろう。

「昔帝国に奇妙なやつが現れてな」
「私が見た帝国の人皆変だった」
「否定はしねェが大人しく聞いてろ。まあソレは突然帝国領内に現れたそうだ。深々と血塗れのマントを被った戦士だってンだ。面白ェだろ?」
「……え?」

 長い耳がピクリと動く。そして少しだけ顔が青い気がする。もしかして怖い話は苦手だったのか? いやそれだったら最初から拒否するか。珍しくスキを見せやがったので少し嬉しくなったもンだから追撃してやる。

「『ここはどこだ、出口はどこだ』と低い声で呻きながら兵士に近付く。無論その場にいた奴らからしたら侵入者だ。捕らえようと動くが手に持った槍であっという間に一網打尽にされたそうな」
「へぇ」
「倒した後ポーションぶっかけて去るんだよ」
「はあ?」
「そしてその名前は」

 そういえば不在だがビッグズとウェッジも入隊はしていた事を思い出した。じゃあアイツらも知っているかもしれない。ガーロンドといえばきょとんとした顔でオレを見ている。まァおぼっちゃまにまでは届かなかった血生臭い話だろう。あとさっきから奇声を上げているウサギも見ていて少しだけ面白い。

「鮮血の赤兎」

 当の元凶を見ると顔色が真っ青というかいつにも増して様子がおかしい。



「英雄サマはコワイ話は苦手だったかァ? 戦う相手はしっかり選べっていう教訓話だったンだぜ?」と声をかけてやるとビクリと体が跳ね俺を一瞬だけ睨みつけた。その刹那が怖かった。蛇に睨まれた蛙の気持ちが今ならわかる。殺される、本能が警笛を鳴らし喉がひゅっと鳴る音が聞こえた。しかし即座に普段の穏やかな表情を見せると回れ右をし、出口へ走り出した。

「おいアンナどこに」
「う〇ち!」
「仮にも女だろ少しはぼやかす表現しろ!」
「じゃあお花摘み!」

 ガーロンドの問いかけに対し遠慮なく言いやがったなコイツ。以前チラッとこのムカつく男からあまりデリカシーというか恥じらいが存在せず男友達みたいで楽しいと聞いた。そうかもしれないが大の大人であるこっちが恥ずかしくなるような事も言うのは少し人としてはどうかと思うがそれはいい。
 俺は本能で理解した。特大の地雷を踏んだのだ。面倒くさい。だがどの部分で踏み抜いたンだ?

「しかし不思議なんだが」

 アンナが外出した後ガーロンドが何やらブツブツ言っている。

「深くマントを被ったって話なのに何で兎って単語が付いたんだ?」
「そりゃ顔見た勇気あるやつがいたンだろ? ヴィエラなンて俺らの故郷じゃ珍しいし記憶に残ってたンじゃないの」
「それもそうか。……実話なのか?」

 ガーロンドは俺の襟を掴み体を揺らす。珍しくスゲェ必死な感じが伝わるが力任せで痛いので強引に払いのける。

「アァ、マジらしいぜ? 真っ赤な髪の返り血が良く似合う性別不明なヴィエラだったってよ」
「会ったことがあるんだ。赤髪赤目で帝国の外への道を聞いてきた不思議なヴィエラの旅人だった」
「ア?」

 話を聞くとこうだ。魔導院に入学する直前に偶然夜外に出ると国内で行き倒れかけてたヴィエラがいた。温かい食べ物を渡し出口を教えると走り去ってしまったと。いろいろありすぎて忘れていたが自分が飛空艇に憧れを強めたきっかけでいつか再会できたら大空を案内すると約束したとか。なンという淡い初恋みたいな話。最近グリダニアで会えたとかよくこンな状況で話せンな。

「入学前の頃って事は20年程度前か? 遥か昔にあった騒動が元ネタらしいから違うヤツじゃねェの」
「そうか……ならよかった」

 よかったって何言ってンだコイツ。しかし20年程度前? どこか昔の記憶が引っかかる。思い出した、流し読みで終わったアレの記録だ。いざ蓋を開いたらただの過去の不祥事をごまかしたくだらない種明かしだとため息を吐いた『報告書』。そこから俺は頭の中でパズルのピースが嵌め込まれていく感覚を味わった。



 外の空気を吸ってくるとロビーから出ると道にはモンスターの死骸が落ちている。恐ろしいほどに分かりやすい感情だ。情景をたどるとそこには血に塗れた槍を持った英雄サマが眉間にしわを寄せ空を見上げていた。

「トイレはいいのか? 英雄サマ……いや『鮮血の赤兎』さんよォ」

 俺の軽口に先程見せたクァールもぶッ倒れそうな位細く睨みつけた目を向ける。

「怖い怖い、そのキレイな顔が台無しだぜ?」
「ネロ、サン」

 その目は一瞬だった。次にウサギは引きつった笑顔でこう言い放ちやがった。

「"私"、武器振り回した後ポーションはまとめて渡したけど一々ぶっかけた記憶はない。それよりさ、仲良クシマセンカ?」

 どうやら地雷、怒りではなくバレた事に対しての怯えの方が大きかったらしい。先程の緊張は何だったのか、ため息を吐く。
 あとさりげなく重要なことを言っている。詳しく聞きたかったが先に彼女の質問攻めが始まった。帝国兵だけが知っている話なのか、悪用してやらかしたヴィエラはいないのか、他に変な逸話は出来ていないか。適当に返してやるとアゴに指を添えふむと考え込んでいた。

「勿体ないがやはり帝国消滅……」
「おっかねェこと言うな。ッたくおたくの仲間らに過去の事は?」
「聞かれてないし。そりゃ言っておいた方がいいだろうけどここ最近タイミング悪い」
「そうだな。まァちょっと過去に繋がる話出来るだけでこンな挙動不審になるお前が話せるわけないよなァ?」
「……そもそも何で"私"って分かった?」

 オマエの反応があからさますぎたから、と言えば簡単なンだが今まで隠していた情報を出してやる。

「赤髪だったのを見てたンだよなァ」
「……はああああ!?」

 期待通りの驚愕する叫び声に笑いを堪えられない。ゲラゲラ笑いながら追撃する。

「前言ったよな? 俺はお前がエオルゼアに来てからずっと見てたってよ」
「いやそれは蛮神殺しやらで監視してたとかそういうやつじゃ」
「バーカ、当時話もしたンだが英雄サマには歯にもかけられない存在だったかァ。悲しいなァ」
「あ、いやそういうのはいい……あっラノシアのあれか? まああれだよなあ」
「ヒヒッ、過去より今が大事なンだろ? ッたくマジかよ……」
「? 何か?」
「こっちの話だ気にすンな。ほら帰ンぞ。保護者心配してンじゃねえか?」
「別にシドは保護者じゃない。―――いや現状の"あの子"を考えるとそうかも?」

 俺があの時読んでしまった『報告書』。それはとある部隊が初代皇帝陛下へ報告するためのモノだ。持ち出し不可の書架に置かれた軽く50年を超える記録。帝国占領地内を移動するバケモノの行動が記されていた。当時の俺には全く理解できず。それに加えただの不祥事から作られた創作なンて事実にガッカリした。
 しかしこれがもしソル帝が対象のヴィエラが女だったと知ってたらトンデモなく下らねェ理由で創設された部隊になる。
 そして幾らか前、再び帝国内に招き入れたが潜伏され帝国領外へ走り去ったなンて記述も記憶にあった。それがもしシド・ガーロンドがやらかした事だったとしたら。そして助けた少年がアレだとアンナ・サリスも気付いていたとしたら。なぜ無名の旅人だと言ってるくせにエオルゼアから出て行かずここにいるのかに対しての見方も変わるじゃねェか。

「なあガーロンドに」
「"ボク"がいつかちゃんと言うから"この子"のために絶ッッッ対に言うな」
「おーコワイコワイそれがお前の本性か。つーか苦しいから離せ」

 胸倉を掴み上げられ舌打ちされた。無駄に背が高くてウサ耳褐色肌で一人称ボクの女の見た目をした顔のいいヤツと人によったら大好物かもしれない。中身を見るとトンデモ戦闘兵器なンだが。しかし先程から様子がどこかおかしい。妙に自分に対して他人事だ。ふと我に返ったのか手を放しオレの服を整えながら「アーゴメン」と謝る。俺はため息を吐きながら女の手を軽く振り払った。

「言う気はねェよ。お前の反応をしばらく見てるのも楽しそうだしナァ」
「むー……そう言ってくれると思ってた。キミの本質は"ボク"と変わらなさそうだし」
「女ゴリラと? バカいうんじゃねェよ」
「そうかな? "ボク"みたいに一匹狼でいる方が好きで1人でバカみたいに分厚い仮面を被っている。ほら一緒」
「何が一緒だお前はどっちかっつーとガーロンドと同じお人好し厄介ゴリラバカなンだわ」
「ケケッ"ボク"分かってるんだよ。オメガ片付いたら逃げる気だろう? 黙っててくれるなら"ボク"も内緒にするよ?」
「その秘密と割に合うと思ってるオマエがすげェわ」

 目を丸くしている。そして次第にくくくと笑い、いつの間にかオレら2人で大爆笑していた。そしてふと前にガーロンドが言っていた彼女への評価を思い出した。

「男友達みたいで面白い、か」
「ネロサン何か言った?」
「ンでもねェ。つーかさん付け気持ち悪ぃわ」
「いやあ仲良くしましょうぜ、へへ肩でもお揉みしますよダンナァ」
「肩が粉砕されるからいらねェ。くっそ人の過去なんて気軽に暴くもンじゃねェな」

 エントランスへ戻る途中、揉み手しながら俺の2歩程後ろを歩く英雄サマはどう考えても気持ち悪すぎる。これはガーロンドの元に戻るまで続き、オメガに対峙するよりも遥かに疲れがたまってしまった。一緒に戻ってくるなり仮眠を取ると決めた俺の顔と満面の笑顔なのだろう後ろの英雄サマを見た時のヤツの反応を見る前にオレは固い床に寝転ぶのであった。クエッと鳴き声がオレの頭上から聞こえる。そのまま掴み引き入れて今後を考えながら意識を底に沈めるのであった―――。

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#シド #ネロ #ギャグ

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 慎重なノックの後、扉が開きひょっこりと首を出すヴィエラの女性。未だ過去は謎に包…

蒼天

#シド光♀ #アルフィノ

蒼天

旅人、心掴めず
 慎重なノックの後、扉が開きひょっこりと首を出すヴィエラの女性。未だ過去は謎に包まれている―――

「珈琲、入ってるよ」
「ありが、って器用だな」
「……慣れてるから」

 苦笑しながら両手にカップを持つ男よりも遥かに身長が高い女性は肘を使って扉を押し開け、足で軽く蹴るように扉を閉めた。普段遠慮がちに話す人見知りな反面、大胆でかつ鮮やかな戦闘センスにはシドをはじめとするガーロンド社も例に漏れず幾度も助けられている。黒色の髪で日に焼けた健康的な褐色肌に炎のように燃える赤色の目。すらりと細い体のどこにそんな力が込められているのだろうかと以前尋ねてみると「10年以上歩いて旅したらいい」と笑顔で言い放った。絶対に違うのだけは分かる。

「デスマ中だった?」
「まだ大丈夫だ」
「だろうと思ったよ」

 何故かこちらの予定を把握されており、ジェシーに怒られながらの納期や決算前には絶対に現れない。最初こそは手土産を持って遠慮気味な笑顔で男の元に現れ無言の時間も少なくなかったが、現在は我が家のように通され談笑するようになっていた。謎に包まれている部分も多いが気さくで話しやすい英雄様、という印象からどちらかというと冗談を言い合う男友達のような、しかし彼女という靄を掴もうと近付くとするりと避けられる。現在も話は出来る、とはいっても底を見せる隙を見せてはもらえない。暁の人間ともそういう間柄なのだろうか、ふと気になったことはある。「暁の人間とはどんな話をしているのか?」と聞いてみた。

「んー……少々前に行った時は頼まれたものを取ってきたとか倒してきたとかそんな感じの話をしたかな」
「他だよ他、俺と話してるみたいなさ」
「してない。彼らはあくまでも仕事上の仲間系だよ。なんていうか……話しかけにくい」
「今日の天気とかも話さないのか?」
「話はちゃんと聞いてる。それより焼き菓子、どう?」

 どうやら自分の話は全くしていないようだった。まあ男にもあまり過去については話さないのだが。というのも以前何故か暁の少年から『どうやったらアンナが君相手のように心を開いてくれるのか分からない』と相談されたからで。詳細を聞くと滅多に石の家に現れないし何も語らず自分達の話を聞いて終わったらまたふらふらとどこかへ去っていくのだという。『確かにそれは共に帝国からエオルゼアを守り、竜詩戦争も終わらせた仲間との距離感ではないな』と少しだけ彼女が興味を持っているものや話題を提供した。しかし彼女の方もきっかけを掴みかねてる感じというのは予想外だった。少しだけフォローしてもいいかもしれないと顎の髭を触りながら考える。

 男が「なあ旅人さん」と呼びかけると彼女は珈琲から視線を外しきょとんとした顔でじっと見つめてきた。珈琲片手にいつの間にか鞄から取り出したのだろう菓子を小さな机に並べ慣れた手つきでタワーを作っていたようだ。時々彼女は変なものを残して去っていく。菓子で作ったタワーがその筆頭だ。一度器用だと褒めるとこれまで見たこともなかった満面な笑顔でクリスタルタワーのような立派な建造物を作り、社員総出で片付けという名の彼女手作りの菓子を振る舞う時間と化していた。それからというもののまだ彼女は来ないのか、またあのクッキーを食べたい、会長だけ羨ましい、仕事しろ等の喜びのコメントが社内から寄せられるようになっている。
 閑話休題。呼びかけられた人間からの言葉を待つ彼女に優しく促すように話しかける。

「時々は石の家に行ってやれよ」
「呼ばれたら行ってるよ。こことも近いしエーテライトの目の前だから迷子にもならないからさ」
「じゃなくてな」
「……あぁ。えっとね」

 少し視線を落とし考え込んでいる。そんなに暁の人間と関わりたくないのだろうか、と男も神妙な顔になると彼女は目を見開き「ち、ちがう!」と何かを否定するように口を開く。

「えっと、滅多に石の家に行かないのは職場が嫌だからとか、そういうのじゃないよ?」
「というと?」
「……行こうと思えば、いつでもテレポで行けますの。でも他の頼みとかで面倒な所に行くと、ね?」
「ああ迷子になると」

 遠慮気味にこくりと頷いている。彼女は極度の方向音痴だ。10年以上旅をしていたというのもひっくり返せばただグリダニアに行けなくて迷っていただけ。自分が乗ると絶対に船は難破するわ、賊に襲われるか崖から落ちるから、とチョコボキャリッジも使わず歩いていた、らしい。ふと女性に年齢を聞くのは失礼なので口には出したことないが彼女はいくつなのだろうかと考えたことはある。成人前から旅をしていると前に聞いたから同じくらいの年齢かもしれない。本当に10年程度の旅であればだが。
 しかし少しでも入り組んだ道に入ると出るのに時間がかかる方向音痴のくせによく途中で死ななかったなと彼は思う。もしかしたら自分が考えているより勘と腕っぷしが強いのかもしれないが、それを直接彼女に確認する勇気までは存在しなかった。かろうじて口に出せた「現地の人に道を尋ねなかったのか?」という質問は何も言わず首を横に振られるだけで終わっている。人に質問するのは苦手らしい。
 それにしては何度かリンクパール通信が来たと思いきや「ここはどこ?」と地図と本人の証言を手がかりに通信を介して道案内する羽目になったことがある。あまりにも難関すぎて途中ビッグスとウェッジも呼ぶこともあった。「一種のゲームみたいで楽しいッスね!」「バカあの人は真剣に迷ってるんだぞ」という彼女との通信を切った後の2人の言葉に笑いをこらえながらお礼を述べ仕事に戻るよう部屋から追い出したのだが。
 要するに石の家に行かない理由は人助けが迷子によって長引いていたからだと言いたいらしい。

「終わればきちんと私から立ち寄る予定にはしてるよ。最近ドラヴァニア雲海周辺にいる」
「あの辺り大丈夫か? 浮島だらけで地図あってもお前は」
「流石に迷子になれない。でも目標の場所が遥か空の上で、チョコボや『貴方たち』が整備した魔導アーマーにはいつも無茶をさせてるなって反省はしてるの」

 突然胸に手を当て、どうやらチョコボや整備した魔導アーマーに対して想いを馳せているらしい。その姿もまた綺麗で。とぼんやりと考えているとアンナは珈琲を飲み終わったのか荷物をまとめ始める。

「もう行くのか」
「うん。お土産持って石の家に。……アルフィノ辺りに頼まれたんでしょう?」
「なんだバレてたのか。迷惑だったか?」
「そうでもないと暁の話題にはならないって思うとね。心配されてるなんて―――シド、ありがとう」

 改めて礼を言われるとどこかくすぐったく頭を掻いてしまう。そんな彼の頭をぐしゃりと撫で、様子を見ながらにこりと『余所行き』の笑顔を見せる。最近彼女は彼と別れるとき絶対に見せるその表情は所謂スイッチを入れる動作というわけだ。「大丈夫だ」と言ってやるとこくりと頷き、部屋から去って行った。

 数日後、暁の少年から「アンナが手土産で持ってきたクッキーを褒めたら急に取り出した菓子で大きなタワーを作って帰って行ったんだけどこれは君の所でよくある話なのかい!?」という喜びの声を貰ったので一応効果はあったようだ。

#シド光♀ #アルフィノ

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注意書き・最初→紅蓮まで・久々の邂逅→漆黒メイン終了以降ボズヤ&ウェルリト以前・…

漆黒

#シド光♀ #ネロ #季節イベント #ギャグ

漆黒

守護天節とある旅人のイタズラ心
注意書き
・最初→紅蓮まで
・久々の邂逅→漆黒メイン終了以降ボズヤ&ウェルリト以前
・と言っても本編に触れるような話ではないただのギャグ概念を文章化したものです

1

 あれは悲願であったグリダニアに辿り着き、エオルゼア内だけでなく自分の故郷に近い東方地域解放のために奔放していた頃に出会った風変わりな行事。
 グリダニアにてカボチャを被った謎めいた女性に誘われるまま辿り着くは古びた屋敷。そこではこれまでに出会った、生きていた人たちの幻影を纏い歌ったり踊ったりする奇妙なパーティ……というよりかは儀式という表現の方が近いだろう。

 その頃のボクは半信半疑で普段世話になっている人間の姿やそのライバル、各所で出会った人間たちを想起し変身してみる。それは心が昔のように少しだけ荒みつつあった自分にとっては楽しい時間になった。
 絶対やらないだろうと確信しているポーズや表情を取りながら1人笑っていたのは周りから見てさぞかし怪しかっただろう。しかしこれが非常に楽しかったのだ。

 こんな愉快なイタズラし甲斐のある行事があるなんてと感動した。流石に申し訳なさの方が勝ったのでこの年は自分の記憶に収めるだけで終わった。
 毎年この奇妙な行事をやっているらしいが、それ以降帝国やアシエンとの闘いの激化により最低限の用事以外ではグリダニア自体行く余裕がなくなってしまっていた。

2

 第一世界と呼ばれていたノルヴラントでの冒険が終わった頃、ボクは再びこの行事に巡り合うことが出来た。屋敷の庭が開放され怪しげな儀式から一転、今回は少し不思議な楽しいパーティになっていた。

 適当に菓子を食べながら変身のおまじないをかける妖異たちの元へ向かう。なりたい人物を思い浮かべる、これは以前もやった事だ。

 そして今回やってみたい事がある。自分用の楽しみという用途として思い出を保存するためのトームストーンは持ってきた。自撮りというものは苦手であったが……気合で乗り切ろうと思う。

 早速変身する相手は勿論あの人。すぐに迷子になる自分を救い上げる翼になると誓いを立ててきた男。許可も取らずこっそり楽しむという用途のために容姿を利用することに対し罪悪感がないわけではない。
 そう、少々申し訳ないと思っているがこれはただの好奇心によるものだ。もしこの男があのポーズをしたらこんな感じなのかとかこういう表情になるのかとか見たかったものを『再現する』だけ。本人だけにはバレなければいい。

 きっとバレてしまったら小言を言われながらこめかみを力任せにグリグリされるだろう。あれが意外と痛いものなのだ。
 しかし今回だけはいざという時に使える言葉『これは妖異が作った夢なンだ、許さねえよなァ!』があるし本人に見せるほど頭悪くはない。

 そんな事を考えていると、彼と出会った頃の自分を思い出す。世界を旅していた頃から訪れた場所には自分を何も『残さない』為に誰とも最低限しか関わらないように気を付けていた。
 そんなつまらないヒトだった筈なのに超える力というものを手に入れ、『あれ』を見てしまったものだからいつの間にか居場所を作ったし、少しだけ素の自分を出すようになり、ついクセでイタズラして怒られることが増えたなと気が付いた。
 奇妙な二つ名が付いてた頃の自分に今の腑抜けた姿を知られたら胸倉掴まれ呪詛を吐きながら再起不能にされるだろうな。怖い怖い。

 閑話休題。早速『化けた』ボクは鏡で自らの姿を確認する。只今納期前の徹夜続きで死にそうな顔をしているであろうあの白い髪の男だ。
 試しに「くくっ」と笑うとそれは何度も自分を笑顔にした男の声。優しい笑顔も決まっている。髭を剃ればきっともう少し若い年相応の顔になるだろう。しかし本人には言っていないがボクは『この彼』が嫌いではない。まあ好きかどうかは分からない。確かなことは1つ。見た目より長生きするヴィエラの自分には、髭という数少ない自分には無い肉体的には年上だという要素が唯一といってもいい弱点であった。
 加えて自分より一回り小さな身長も再現されているのが相変わらず素晴らしい。抱き上げると『それは俺がする事だ』と抗議していた彼の姿を思い出した。「完璧な仕事だ」と小さな妖異と褒め散らかしておく。

 さあ仕事の時間だ。まずはトームストーン片手に自撮り風な写真を残していく。普段写真というものを撮らない身もあって苦戦していたらこのパーティに吸い寄せられたのであろう同じく冒険者……と思われるかつて暁の盟主だった者の姿をした仲間に話しかけられる。
 折角だからこの楽しいパーティの思い出を残したいと率直に伝えると【協力】してくれた。持つべきものは同じ志を持った仲間である……アラミゴの民が教えてくれた。今は感謝しかしていない。

 いつの間にか周りに彼のライバルが複数人集まっていたり、ムカつく親善大使様集団がいつの間にか風邪の時に見る夢のような惨状を見せ最高な写真が出来上がっていた。これは奥底に封印しておこう。

 騒がしい夜はあっという間に去っていき、また朝が訪れる。適当に挨拶を済ませ、スキップしながらパーティ会場を去って行く。

3

 悪用しようと思ったことはない。しかし出来心はあった。
 1年以上ガーロンド・アイアンワークス社に通っているうちに興味を持ったため、軽く魔導技術に興味を持ったボクは小さな装置を合間に作っていた。ただ卵型の機械人形が跳ねたりする装置やアルファを参考に作った火を噴く鳥の装置がその最もたる例である。しかしあまり勝手が分からずよく不具合が起こるものだから『なら現役にアドバイスを貰えばいい』と思いつき、ガーロンド社へ向かう。
 しかし失念していた。只今納期直前デスマーチ進行中。ピリピリとした空気を感じる。普段はこの中行くのもなあと思い踵を返すのだが。

「あ、ネロサン」
「メスバブーンか。こンな時期に来るたァ珍しい」
「忘れてた。……暇人に頼みがあるの」
「別に暇じゃねェぞ。―――が、英雄サマが俺にか? ハッ! 燃えるじゃねェか」

 金髪のサボり社員が偶然欠伸をしながら近くを歩いていた。会長と並ぶ実力の持ち主である彼に頼むとしよう。しかし何やら変な期待されてるなあと軽くため息を吐いた。立ち話でもいいのだがせっかく装置を見せるのでゆっくりできる場所がいいと思い、「ここで話すの、周りの迷惑」と飛空艇の格納庫へ2人で忍び込む。

「これお前が?」
「機械装置作ってみたいと思ってねえ」
「はー見た目と腕っぷしに反して中々可愛いモン作ってンな」
「一言余計」
「初心者が興味持って作ったにしちゃ丁寧でいンじゃね」

 ボタンを押すと火を噴きながら飛び上がりガシャンと落ちる鳥装置にゲラゲラ笑った後真剣な顔で言い出すのだからこの男の底は見えない。かつては帝国兵として襲い掛かってきたので戦った関係だったが現在はガーロンド社で好き勝手している仲間みたいなもので、未だに底が見えない飄々とした男とも思っている。工具を取り出しながら落ちた衝撃で壊れた装置をひっくり返す。

「修理してくれるの?」
「やってもいいンだが、勝手に引き受けンのもなァ。ガーロンドに禁止されてンだわ」
「言ってみたかったセリフがある。……金ならいくらでも出せるよ?」
「確かに滅多に言わねェセリフだな。まあいくらかもらうぜ」
「……あと楽しいものもあるから見せる。タイトル『おもしろ写真集シド編』」
「―――ゆっくり見せてもらおうじゃねェか」

 頭の中で悪魔が『ネロサンだったらいいじゃん。本人デスマで絶対出てこないからバレないバレない』という囁く。天使の声を聞くより先に言葉が出てしまった。ボクの内面だ、そっちも面白そうって言うに違いなかった。フラフラ歩き回っている胡散臭い男だが、兄も信用しているし、秘密を見せても人に喋るような口の軽さは存在しない男だというのはよく知っている。だから見せてしまった。
 その後大爆笑する彼の声が響き渡った。

「おいおいおいこれどうやって撮ったンだよ。ここのパーツ間違えてンぞ。動かねェ原因だナ」
「そっか。……本人は使っていない。ただグリダニアで変わった祭があって」
「そこでオマエが? 衣装にしちゃ出来がこえー程よすぎンだが。ククッ」
「そそ。あの人絶対やらないでしょ? これある時期にしか会えない人が……あ、その辺りから火を出したい」

 トームストーンを前に置き、以前撮影したものを流しながら機械装置を弄っていた。「笑いすぎて手元が狂うンだが?」とぼやきながらも慣れた手つきであっという間に組み立てられていく。自分が思い描く完成図を伝え付け加えられていく様が面白かった。シドも同じようなことが出来るのだろうか、そういえば装置は主に彫金師ギルドとイシュガルドに籠って考えたから披露したことなかったなあと思いながら次の写真を表示する。

「しっかしトームストーン便利だな。証拠がしっかり残る」
「そう。メモと写真撮影くらいにしか使わないけど」
「いンじゃね。いつでも見返せるし。そのポーズやべェ」
「そんなポーズとった記憶は無いんだがなぁ」
「当然。"同士"にアドバイス貰いながら、ボク自らやったもの。シドにさせるわけないじゃん。ぼっちゃまにはムリムリ、死んじゃう」

 はははと3人の笑い声が響く。そこで思考が止まる。

「ネロサン一人二役悪ふざけ? えらく似てる」
「ンなことするわきゃねェだろ。メスバブーン、オマエそのトームストーン録音できンのか?」
「録音なんてせず、恥ずかしいし。それより寒くない?」
「奇遇だな。俺もそう思っててナァ。眠いからかと思ったがお前もか」

 背後から感じるものは明らかに殺意。不味い。振り向けない。

「ちょっと後ろ見てみない?」
「俺ァ装置の修理で忙しンでな。暇なメスバブーンが見りゃいンじゃねェか?」
「いやあボク、過去は振り返らない主義……せーので?」
「アーそうすっか」
『せーの』

 同時に振り向く。そこには徹夜続きで社員と共に苦しんでいるはずの白い男が満面の笑顔で腕組みしていた。普段ならば会長代理によって縛り付けられているはず。何故ここにいるのだろうか。震えながら何とか「あ、あのお仕事」と声を出す。

「社員から格納庫の方からサボり社員の爆笑する声がうるさいという苦情が出てな。責任者として見て来いと言われた。あとえらい饒舌じゃないかアンナ?」
「あのネロサン、こ、この人何徹目? 身体に悪し」
「ネロもだが4徹目だ。言いたいことあるなら俺の目を見て、俺に聞けばいい」
「いや俺はコイツからの依頼をな」
「勝手に受けるなって何度も言ったよな?」

 これは相当お冠に見えた。ちらりと先程まで爆笑していた顔が一転して引きつった顔をした男を見る。目が合った。やれることは一つ。ボクは「せーの」と言う。
 その瞬間自らとついでにネロにもプロトンをかけ走り出す。スプリントのおまけ付きだ。男も同じく全力疾走で走り出す。「待て!!」という怒号が後ろから聞こえた。

 捕まるわけにはいかない。イタズラは大好きだがバレた時の説教は嫌いだ。

4

「ごめんなさい」
「ンで俺まで」

 逃げ始めるまではよかった。しかしゾンビ社員達に悉く道を遮られてしまいあっという間に捕まってしまった。
 白髪の鬼のような形相を見せた会長様は修理途中の自分が作った装置とトームストーンの写真を徹底的に1枚漏らさず確認している。恥ずかしい。本人に見られるほど心が押しつぶされる位苦しくなる時はあまり存在しない。

「消去」
「ッスよねー」
「どうしてこういうのを撮ったんだ?」
「見たかったから、個人用途。バレなきゃ楽しい」
「無関係な人間に見せたのは?」
「報酬の一つ。バレなきゃ誰も不幸にならず」
「意外と人間くさい部分あンだな」
「一言余計」

 はははと3人で笑った後「反省しろ」という言葉と同時にボクとネロにゲンコツが下される。これ以上怒らせたらグリグリだ。形だけでも謝り倒すことにする。「ごめんなさい」再び言うと少しだけ表情が眉間のしわが緩まった。こうしょんぼりと見せて声のトーンを下げてごめんなさいと言えば大体は許してくれる。あとで頬にキスの一つでもしてやろう。なんてチョロい男だ。

「まったく……言えば多少はやってやるぞ?」
「あ、そういうの求めず。模型撮影と一緒。これは罪悪感を感じながら、こっそり楽しむのが一番の愉悦……あっ」

 口は禍の元という言葉をご存じだろうか? 自分は何も考えずに言葉が出てしまうことがある。
 痛い目に遭いたいわけではない。気を抜いたら人を怒らせる言葉も出るだけだ。普段は気を付けているのだが不思議なことに彼の前では少しだけ本音が漏れるようになっているようだ。

「い、いででで! ごめん! ごめんなさい! しない! 今年"は"もうしない! グリグリだめ! これめっちゃ痛い!」
「もう今年終わンぞ。来年もヤる気かよ相変わらず反省しねェな」
「ネロ、お前は仕事に戻ってくれ。社員が殺意溢れさせて待ってるぞ」
「死ねってか?」

 大げさに溜息を吐きながら立ち上がり部屋を出て行こうとする。ボクはすかさず「う、裏切り者!」と叫ぶ。

「俺ァお前からの修理受付しただけで他は何もしてねンだわ」
「しまった」
「ンじゃ、ごゆっくり」

 あっという間に裏切られる。いや組んだ記憶も無いが気まずい空気に残されるのは非常につらい。こめかみに拳を入れる作業に満足したのかボクが作った装置を見つめている。

「えっと、それは最近カラクリ以外の機械装置に興味を持って」
「最近各地のギルドに顔を出して籠ってるって噂は聞いてたしな。まあまさか俺じゃなくてまずネロの方に行くとは思わなかった」

 ジトリとした目でこちらを見てくる。ボクはため息を吐きながら機嫌取りがてら頭を撫でてやった。

「納期ギリギリまで溜め込むの、やめたらいい。シドが通りかかったら頼んでた」
「くっ耳が痛い」
「いい感じに動かなくて、困ったんでここに来たのが偶然本日。キミに内緒とか、そういうのではない。あとそこの横のボタンを押して」
「そうか……ってなっ!?」

 疑うことも知らずに装置のボタンを押させると急に飛び上がり火を噴きまわしながらふわふわと漂いながら落ちる鳥型機械装置。理想通りの動きだ、また報酬を持っていこう。ボクはそう考えながら引っかかったとニコニコ笑う。彼はそんな笑顔を見せる自分を見て釣られて笑い、溜息を吐いた。

 来年はバレないように頑張ろう。心の中でそう誓った。

#シド光♀ #ネロ #季節イベント #ギャグ

暁月IDのタンク装備自機

注意独自設定盛り暁月までネタバレ有り全体的にギャグ概念本編と矛盾見つけたらしれっ…

情報,ネタバレ有り

情報,ネタバレ有り

キャラ設定(暁月までネタバレ有り)
注意
  • 独自設定盛り
  • 暁月までネタバレ有り
  • 全体的にギャグ概念
  • 本編と矛盾見つけたらしれっと変える時があります
  • シド光♀、エメ→アゼ♀前提です

暁月IDのタンク装備自機
過去
  • 何も考えずに里を飛び出して行き倒れかけていた際、『旅人として生きる』恩人である侍に出会う。そこでの経験・教えは守っており、助けを求めてきた人間は名前も名乗らず助けてきた。ヴィエラに対する知識があった彼から「故郷に帰りたくないというならばグリダニアと呼ばれる場所が貴様の住んでいた森と似ていると思われる。行ってきなさい」というアドバイスが旅の始まりでもある。
  • 侍の名前は『リンドウ・フウガ』。当時48歳なヒゲがとっても似合うおじ様(アンナ談)。
  • アンナと別れた後もひんがしの国各地を人助けする旅をしており、享年89歳。終の棲家としていた場所に墓が建てられ、子孫が管理しているという。当初リンドウからはエルダスと呼ばれ、アンナはフウガとお互い名前ではなく苗字で呼び合っていた。叶わぬ初恋であった。
  • 帝国には二度立ち入ったことがある。一度目はソル帝が若い頃、二度目はシドが魔導院に入学する直前
  • 一度目の帝国に訪れた際、女子力どころか蛮族のようなレベルだった。フードを深く被り声も低く弓を引くために邪魔な胸にサラシを巻いているためぱっと見性別を見分けるのは困難。しかし魂がエーテルと共に恨みを吸収しまくっていたため闇へと変質しかけていた。彼は魂から亡霊共を切り離し、自分のエーテルで補わせながらも魂を変質させないようコーティング加工するそして既に刻まれていた杭に目印を混ぜ込んだ。
  • この時は『ガーネット』と名乗った。街の名を場所によって変えていたため。無名の旅人だから名乗りたくないなあと思っていた。
  • かつて自分が女性として生まれていたことに対して一種の困惑とそれに加えて方向音痴を極めすぎてしまうように産み落とした神に対する怒りを感じており、表には出ていなかったが心のどこかに一種の残虐性も生まれていた。現在も神は信じていないので里には帰れないと思っている。
  • リンドウが死ぬ数年前、実はエメトセルクが彼の元を訪ねている。彼女の現状、そして駒として育ててくれたことに感謝の意思を示す。(その時は捕まえられると思っていた)
  • それを聞いたリンドウは後悔し老け込んでいく。その時の彼は知らなかったが、ガレマール帝国で伝説の侍として演劇化、冒険小説化される事になる。
  • アシエンの手駒にされたくなかったリンドウは友人のア・リスに遺言として『どんな手を使ってもいい、あの子が自由に生きられるように手を回してくれ』と託す。ア・リスは自分とリンドウの魂を対価にアンナに最期の"術"を施した。
  • 二度目の帝国来訪はいい加減霊災へ誘導させるための手札に加えたいと思った彼によって誘導されたものだったが、偶然通りかかった幼い頃のシドによって阻止されてしまった。密かにずっとそれを感謝している。
  • リンドウが編み出した奥義、彼は【気迫】と呼ぶもの。それはデュナミスを刀に乗せ全てを一閃する必殺技。火事場の馬鹿力の具現化ともいう。大切な人を想うと青白く光り、怒り恨みを込めると赤黒く光る。
  • かつて一度その力を無理やり"再現"したアンナは体内エーテルを全て消費しかけ、死にかけた。その時に大地のエーテルや斬られた者や人のエーテルを吸収し還元する装置を右腕に施される。
  • 死んだように見せたのはエオルゼアはあの謎の光は霊災と呼ばれるものらしいという話を聞いたのと偶然商人が売っていたヴィエラの初期衣装を見て懐かしい、これなら新たな自分の人生を歩めるんじゃないかと思ったため。髪色はそのままだったが容姿を少々整え口調を封印するために言葉を減らし率先して人助けをするようになった。槍を持つとちょっと心がざわつく為狩りのために使っていた弓を持つようになった。

現在
  • という事があったのだが本人は別に隠すつもりはない。聞かれたら答えたかったが、帝国との戦い、ドマ解放、アラミゴ解放とその時に言うと話がややこしくなると判断して何も話さなかっただけである。
  • あくまでも昔の話だし迷い込んでしまったものであり、帝国事情を聞かれても困るからなあ今は黙っておこうと放置してたら第一世界に行くことになってしまい、皆に話をする前に全てを知ってしまうことになる。(アシエン・エメトセルクとの邂逅)
  • 自分の中にもう1人存在することを自覚しており、一定以上の怒り、ストレス、ダメージを負うと切り替わる。第一世界の大罪喰いを全て吸収し果たした後から放出が終わるまでアンナの意識は無かった。
  • 命の恩人リンドウに対し、異常なほどの感情を持ち合わせている。しかしそれは恋や愛ではなくまるで人生そのものの尊敬すべき存在であり、呪いでもあった。
  • その呪いは無事にシドによって解かれ、人並みの幸せを小さく願うことが出来るようになった。相変わらず野生生物のような生態なのは変わらないが。
  • エルピスに行った際は逆にエメトセルクをからかい弄りぬいた。未来をきめ細かく教えたり本名(森の名)を教えたりした(漆黒では教えなかった)。クライマックスでは怒鳴られる事になる。最後に別れの挨拶が出来安堵していた。
  • リテイナーのア・リスはアンナの"内なる存在"となった男(ア・リス・ティア)の"記憶"を詰め込んだ複製体。兄を利用し表に出て来た。
  • フレイはアンナの魂に溶け込んだ"新たに発覚した2人目の内なる存在(リンドウ・フウガ)"が闇の感情として表に出て来た存在に変質している。どんな武器も扱うことが出来る相棒的存在。

機工暁月AF自機

(画像省略)(画像省略)(画像省略)(画像省略)(画像省略)(画像省略)偶然双子…

情報

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キャラ設定(メインストーリーネタバレ極力無し)
機工暁月AF自機
エンサイクロペディア風のやつお外用猫かぶり自機おしゃべりメモannaprof1.pngannaprof2.png漆黒後自機おしゃべりメモ。素とも言う
  • 偶然双子のエレゼンを助けたことで目的地が一致していたからと言われるままチョコボキャリッジに乗ってグリダニアに辿り着くことが出来た方向音痴。
  • 昔は赤髪だったが、リムサ・ロミンサで敏腕美容師を助けた際に渡された手形で現在の黒髪になっている。
  • 口数が少ないのは少しでも素が出てしまうのを抑えるため。ここでは静かな旅人として過ごしたいと思っていたためでもある。
  • 故郷から旅立った理由は上記の諸々通り。14歳の頃に飛び出した。元々男として生を受けたと勘違いしていたので気を抜くと座り方等が雑になる。
  • 長年旅をしていた影響で大体のことは1人で何でもできる。
  • 本名(森の名)はフレイヤ・エルダス(Freyja・Eldur)。別に本名を知られたくないわけではない。ただの名もなき旅人として生きていきたい、自分をどこにも残したくないと思っているので街の名を名乗っている。
  • 彼女の中の三大欲求は食欲・睡眠欲・戦闘欲。戦っていたら大体気が紛れる性格なのでゼノスの言葉を否定しない。
  • イタズラが好き。なのでシルフ族やモーグリ族、ピクシー族と仲がいい所が目撃されている。彼ら以外の前では欠片も見せないように頑張っている。(ウズウズはしている)
  • 大飯喰らいでバカ酒飲み。目を離した隙に皿の中身は無くなり、酒はいくら飲んでも酔わない。樽1個超えた辺りからほろよう気がする。
  • 兄がいる。名前は『エルファー・レフ・ジルダ』。エーテル視が出来、アラグ文明と魔導技術に興味があり修行しながらこっそり調べ回っている。故郷を飛び出してから長年会っていなかったが最近再会した。
  • エルダス族は森の中で暮らしていながらも火を大切にする部族であり、誕生した際、呪術師によって火の加護の儀式を行い人より火に対する耐性と火に関するエーテル操作が得意になる人が多いという。アンナも例に漏れず人より火に強く、指先から火を起こすことが出来た。
  • リテイナーは4人雇っている。フウガ(ララ♂)、リリア(ミコッテ♀)、ノラ(アウラ♀)、ア・リス(ミコッテ♂)。フウガ、リリア、ノラはサリスという苗字を与え、グリダニアで自由にさせている。ア・リスは漆黒後にクガネで雇った存在で何でも知ってる奇妙な男。色々な文明の道具・装置・薬を持って帰ってくる。

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