FF14の二次創作置き場
更新履歴
- 2024/11/26 旅人は魔導兵器を識りたい 新生
- 2024/11/19 "召し上がれ&quo… 新生
- 2024/11/15 溶けあうもの 紅蓮
- 2024/11/11 "11月11日&qu… 蒼天
- 2024/10/18 "嫉妬"、… 漆黒,
No.45, No.44, No.43, No.42, No.41, No.39, No.38[7件]
パスワードについて
R作品にはパスワードを付けています。
共通鍵:18↑?(yes/no)
個別鍵
旅人は初めての夜を過ごす(SideA) : アルファベット4文字のスラングを大文字で
基本的に共通鍵で開けるようにしたいですがさすがに自分しか満足しないような内容のものは個別鍵を入れておきます。
共通鍵:18↑?(yes/no)
個別鍵
旅人は初めての夜を過ごす(SideA) : アルファベット4文字のスラングを大文字で
基本的に共通鍵で開けるようにしたいですがさすがに自分しか満足しないような内容のものは個別鍵を入れておきます。
旅人は新年の空を見上げる
―――明日は降神祭という年が一巡することを記念する日。何でもお祝い化するエオルゼアに来て何年が経過したのだろう。新年祝い程度なら故郷でも無かったわけではないが本当にこの地域は色々な国のお祭りを柔軟に取り入れるなぁ。
今日はまず今年も色々ありました、と感謝のしるしに石の家の掃除を手伝った。今年の汚れは今年のうちに。旅人である自分には無縁の文化だったがそれも楽しかった。
ついでに自分の鞄や相棒チョコボのフレイム、リテイナーのフウガ、リリア、ノラに預けた荷物も整理し新年を迎える準備も終わらせる。今日は休んでいいよ、と料理をあげたらみんな喜んでくれて嬉しいね。
いろんな組織から年忘れの会に誘われたがふわりと断り、現在黒衣森にて1人焚き火の前で空を見上げていた。
この空を見上げる行為がこれまでの新年を越える瞬間の過ごし方で。いや、いつが新年かなんて見分けがつかなかったからそう言ってるだけさ。まあ何十年も続けてるわけだから簡単に変わるわけもなく。
さっき釣った魚や狩った動物の肉を焼き、先程グリダニアで調理した餅を食べる。ついでにいつも後ろに付いてきているハシビロコウに適当に生魚を投げた。本当にいつの間にか付いて来たしどこか"忘れて欲しくなさそうに"佇んでいるものだから邪険に扱うことが出来なかった。
少しずつ自分の中で決めてきた日常に誰かの手が入っているのは少々面白い。最初は心がバラバラになりそうなくらい苦痛で厭だったが、一度作っていた壁を正面から破壊されるとそれも悪くないと思うようになっていった。
懐中時計を開くとあともう少しで時計の針が一巡し、新しい世界に足を踏み入れる。何か物足りないと思う心を撫でながらまた星空を見上げているとふと人が走ってくる音が聞こえた。
音が聞こえる方をいつもの笑顔で眺めていると白色の男が息切れしながら走って来た。
「やっと見つけた……」
「おや社畜のお偉いさんが走って来た」
やってきた足りなかったパーツに「まあとりあえずおいで」と開けておいた隣を指さしミネラルウォーターを開けた。さすがにその辺りの水をおぼっちゃまにあげるほど終わった価値観はしていない。
シドは私の隣に座り水を飲んだ。
「最低限やるべき仕事は終わらせたさ。細かい作業も片付けておこうと思ったらお前座標だけリンクシェル通信で流しただろ? おかげでジェシーたちに満面の笑顔で見送られたさ」
「別に社員と迎えてもよかったんだよ? 地獄の新年」
「アンナがいないだろ?」
シラフで何言っているんだコイツ。まあシラフでいろいろ吐くのはボクも変わらないか。
「こうやって過ごすクセが抜けなくてねえ。故郷もこれよりも大きい焚き火の周りで火に感謝しながら酒の交わし合っていたのさ。未成年だったボクはとっとと寝させられたけど」
時計の針を見るとあと数刻で日が変わるようだ。
「まあ理由もわかるよね?」
「予想はつくから言わなくてもいい」
「察しのいいキミが大好きだよ」
「お前なあ」
カラカラと笑ってやるとシドは顔を片手で覆いため息を吐いた。まあからかうと反応が面白いわけ。
残り約十秒。よし来たときにと考えていたプランを実行する。「シド」と名前を呼んで彼の方を向こうとするとぐいと引っ張られた。そしてボクの口に唇を押し当てられた。
横目で見るとジャスト0時。やられた、と目を閉じた。
「ちくしょーボクがする予定だったのにな」
「それだけ慣れたんだ」
「悔しいなあ」
「新年から悔しがる姿が見れたからいい一年になりそうだ」
「……バーカ」
私が作っていた壁を壊し、呪いに新たな祝福を上書きした男の肩に手を回し密着させた。「だから逆だろ」という言葉は無視することにする。兄さんもお嫁さんたちとこうしているのかな。
「そうだ、リムサロミンサに行かない? 今年の運勢を見よ」
「今からか? 初日の出を見に行くのが先だろう」
「今から気象予報を見て来いって? 無茶言うなって」
「それ位調べてきたさ。コスタでいいだろ?」
「リムサ行くのにはかわりないじゃん。というか間に合わないって」
「……じゃあここでいいな。お前別にそういう文化はここに来るまで触れずに星空眺めてたんだろ?」
「うん、そだね」
1人だったハズの場所に常に誰かいるというのは少し照れくさい。でもそういうのも、悪くない。
しかしこれから誰かと過ごすならば同じ見晴らしがいい場所でももっといい所がたくさんある。
「来年は、ここ以外を考えておく」
「そうしてくれ」
とりあえず、殴り込みかな。
―――一方その頃ガーロンド・アイアンワークス社。
「俺が! 妹と! 過ごしたかった! 君たちなぜ止めた……あぁ……」という表情をコロコロと変えながら呻き声をあげる赤髪ヴィエラの男を肴に残った社員で仕事を片付ける会が行われていたことをアンナは知らない。
#シド光♀ #季節イベント
今日はまず今年も色々ありました、と感謝のしるしに石の家の掃除を手伝った。今年の汚れは今年のうちに。旅人である自分には無縁の文化だったがそれも楽しかった。
ついでに自分の鞄や相棒チョコボのフレイム、リテイナーのフウガ、リリア、ノラに預けた荷物も整理し新年を迎える準備も終わらせる。今日は休んでいいよ、と料理をあげたらみんな喜んでくれて嬉しいね。
いろんな組織から年忘れの会に誘われたがふわりと断り、現在黒衣森にて1人焚き火の前で空を見上げていた。
この空を見上げる行為がこれまでの新年を越える瞬間の過ごし方で。いや、いつが新年かなんて見分けがつかなかったからそう言ってるだけさ。まあ何十年も続けてるわけだから簡単に変わるわけもなく。
さっき釣った魚や狩った動物の肉を焼き、先程グリダニアで調理した餅を食べる。ついでにいつも後ろに付いてきているハシビロコウに適当に生魚を投げた。本当にいつの間にか付いて来たしどこか"忘れて欲しくなさそうに"佇んでいるものだから邪険に扱うことが出来なかった。
少しずつ自分の中で決めてきた日常に誰かの手が入っているのは少々面白い。最初は心がバラバラになりそうなくらい苦痛で厭だったが、一度作っていた壁を正面から破壊されるとそれも悪くないと思うようになっていった。
懐中時計を開くとあともう少しで時計の針が一巡し、新しい世界に足を踏み入れる。何か物足りないと思う心を撫でながらまた星空を見上げているとふと人が走ってくる音が聞こえた。
音が聞こえる方をいつもの笑顔で眺めていると白色の男が息切れしながら走って来た。
「やっと見つけた……」
「おや社畜のお偉いさんが走って来た」
やってきた足りなかったパーツに「まあとりあえずおいで」と開けておいた隣を指さしミネラルウォーターを開けた。さすがにその辺りの水をおぼっちゃまにあげるほど終わった価値観はしていない。
シドは私の隣に座り水を飲んだ。
「最低限やるべき仕事は終わらせたさ。細かい作業も片付けておこうと思ったらお前座標だけリンクシェル通信で流しただろ? おかげでジェシーたちに満面の笑顔で見送られたさ」
「別に社員と迎えてもよかったんだよ? 地獄の新年」
「アンナがいないだろ?」
シラフで何言っているんだコイツ。まあシラフでいろいろ吐くのはボクも変わらないか。
「こうやって過ごすクセが抜けなくてねえ。故郷もこれよりも大きい焚き火の周りで火に感謝しながら酒の交わし合っていたのさ。未成年だったボクはとっとと寝させられたけど」
時計の針を見るとあと数刻で日が変わるようだ。
「まあ理由もわかるよね?」
「予想はつくから言わなくてもいい」
「察しのいいキミが大好きだよ」
「お前なあ」
カラカラと笑ってやるとシドは顔を片手で覆いため息を吐いた。まあからかうと反応が面白いわけ。
残り約十秒。よし来たときにと考えていたプランを実行する。「シド」と名前を呼んで彼の方を向こうとするとぐいと引っ張られた。そしてボクの口に唇を押し当てられた。
横目で見るとジャスト0時。やられた、と目を閉じた。
「ちくしょーボクがする予定だったのにな」
「それだけ慣れたんだ」
「悔しいなあ」
「新年から悔しがる姿が見れたからいい一年になりそうだ」
「……バーカ」
私が作っていた壁を壊し、呪いに新たな祝福を上書きした男の肩に手を回し密着させた。「だから逆だろ」という言葉は無視することにする。兄さんもお嫁さんたちとこうしているのかな。
「そうだ、リムサロミンサに行かない? 今年の運勢を見よ」
「今からか? 初日の出を見に行くのが先だろう」
「今から気象予報を見て来いって? 無茶言うなって」
「それ位調べてきたさ。コスタでいいだろ?」
「リムサ行くのにはかわりないじゃん。というか間に合わないって」
「……じゃあここでいいな。お前別にそういう文化はここに来るまで触れずに星空眺めてたんだろ?」
「うん、そだね」
1人だったハズの場所に常に誰かいるというのは少し照れくさい。でもそういうのも、悪くない。
しかしこれから誰かと過ごすならば同じ見晴らしがいい場所でももっといい所がたくさんある。
「来年は、ここ以外を考えておく」
「そうしてくれ」
とりあえず、殴り込みかな。
―――一方その頃ガーロンド・アイアンワークス社。
「俺が! 妹と! 過ごしたかった! 君たちなぜ止めた……あぁ……」という表情をコロコロと変えながら呻き声をあげる赤髪ヴィエラの男を肴に残った社員で仕事を片付ける会が行われていたことをアンナは知らない。
#シド光♀ #季節イベント
旅人と赤色
―――あれは魔導城プラエトリウムで堂々と影口を叩かれ、舐めプされた挙句あっさり負けることになった出来事よりも前だ。羅列したら今でもかなりムカついてきたなこりゃ。すまねェ話題が逸れる所だった。あの旅人には数度会った事がある。確実にガーロンドが会うよりも前。そうだ、まだアレが赤髪だった頃。自分が『鮮血の赤兎』だってコト隠す気あったのか? と疑問に思うグリダニア入りする前のアレについて少々語っておこう。
1.高地ラノシアより
あの頃、オレはエーテル計測のために何度か独断でエオルゼア内に潜入していた。今回は高地ラノシアでタイタンのエーテル計測に洒落込もうと1人森の中で計測装置と睨み合っている。エオルゼアでは敵視されるであろう第三の眼を隠すため仮面を被り行動していたのもあり少々視界が狭い。それを補う手は持っていたのであってないようなものだが。とにかく手に持った端末でエーテル観測装置動きを見る。
急にエーテル反応が激しく上下し、興奮した。どこから来ているモノなのか、タイタンと関係してるのか? いやあの小さき蛮族たちにはまだ召喚できるほどの余裕はないハズだ。未知の発見に大人げなく目を輝かせていたらやらかした。いつの間にかコボルド族に囲まれ俺はため息を吐く。
別にコイツらくらい即追っ払える。いつものハンマーは持って来ていないが、小型ガンブレードを取り出そうとニィと笑いながら懐に手を突っ込もうと瞬間だった。観測装置が何やらブザーを鳴らし、端末で映し出していたデータがぐわんと動いたのだ。どういうことだ、と思った瞬間だった。
オレの前にヒトが降って来た。
赤色の髪、長い耳。鋭い"銀色"の目にすらりと高い背丈はオレと同じくらいだろう。長い耳を含めたらアウラ族の男と同じくらいには大きい。聞いたことがある。オサードの方に住むヴィエラ族。急に天に向かい矢を打ち放ちオレに「伏せな」と一言。その異質な声に一瞬鳥肌が立った。これは殺意、それも目の前の女から。オレは反射的に地面に伏せた。更に腕を掴みながら抱き寄せられた瞬間、頭上が風を切った。先程まで自分がいた場所に大量の矢が落ちる。
コボルド族の叫び声を皮切りに、断続的に何かが落ちてくる音が聞こえた。
「いいよ」
と朗らかな声が聞こえ、細い肢体から離れながら顔を上げると周りに散乱した矢、そしてコボルド族の死体。うめき声も聞こえる。仲間を見捨てて逃げ行くヤツもいた。
目の前でそのヴィエラは「恨むならあの男じゃなくて、"私"」と言いながら笑顔で致命傷を負ったコボルド族にトドメを刺す。ヒュ、と喉が鳴った。観測装置をチラりと眺めるといつの間にか何事もなく推移していた。
◇
「ケガはない?」
「あ、ああ」
「よかった」
一頻り作業が終わったのかオレのところにヴィエラが駆け寄ってくる。優しい"銀色"の目が細められた。
「騒ぎ声が聞こえて木の上から確認したらあなたが蛮族に囲まれてたから乱入してみたのさ」
「あ、ありがとナ?」
引きつった笑顔でとりあえず礼を言う。会話は出来るらしい。ひとまず安堵するがあのパワーがどこから出て来ているのか分からなかった。
健康的な褐色の肌に引き締まった筋肉、男とは異なる柔らかそうなそこらの女より豊満であろう胸。背面を隠すマントの下に見える民族衣装の特徴的にもオンナだと分かるが理解を拒む。
「あ、"私"は通りすがりの旅人、あなたも……旅人だな?」
「まあ異国から来たからオマエと一緒ってやつか」
「そう。だから名乗り合わず一期一会って所。ああ仮面も外さなくて構わない。"この子"は興味ないだろうから」
「怪我をしているもンでな。助かるぜ」
「そう。最近蛮族やモンスターが騒がしいから気を付けてな」
オンナは踵を返し手を振る。一瞬だけ翻されたマントの下に引っ掻かれたような傷痕が見えた。それがこのオンナの想像もつかない旅路の一端が伺える。
「じゃ、逃げたあなたを襲ったコボルド族のトドメ刺しておいてやるから。あまり知られたくないでしょう? イヒヒッ」
逃げて行った奴らの方向へ走って行った。その後俺は汗が噴き出し座り込んだ。手の震えを止めようと端末のログを見つめた。
あんなまとまった殺意を隣で受けたのだ。ビビるに決まってンだろ。だが当時のオレにとっては一つの興味も湧いてしまったのだ。
「面白ェ玩具を見つけたぜ」
当時のオレを殴りたい。あンなヤツに興味持った地点でオレは終わってンだよ。
でたらめに撃ち上げた矢と回し蹴りだけで小型生物であれ笑顔で生き物を殺せる人間を扱えるヤツがいるわけがないじゃねェか。
2.戻ってこない
閣下がエオルゼア入りして間もない頃、俺は何人かに金を握らせてそのヴィエラの情報を集めた。名前はすぐに分かった。『アンナ・サリス』、第七霊災以降エオルゼア周辺に現れた『旅人』らしい。困ったことはないかと声をかけ、牧畜の手伝いからモンスター討伐まで大体のことは何でもやってもらえるのだという。加えて報酬は現金でなく食事や泊まる場所の提供でいいというお人好しだとか。
よく分かんねェヤツだった。あんな軍人でもある自分が本能的にやべェとなる旅人が存在するわけがないだろと平和な脳みそのやつらだとため息を吐く。
また調べたら最近グリダニアで冒険者として登録したのだという。この登録が行われるよりも前から自発的な人助けが行われていたらしい。いや絶対どこかで雇われた傭兵とか草だろ? そうだと言って欲しかった。そっちの方がいっそ精神的に楽になる。
じゃなければアレは、山から下りてきた危険生物か災害の擬人化だ。
しかし気になったこともある。金を握らせた情報屋たちが日を重ねるごとに来なくなった。持ち逃げされたのか? とその時は思ったが、オレはある時とンでもない話を通りすがった衛兵の話が聞こえたのだ。「最近よく情報屋の死体が上がるな」、と。
詳細を聞くべきか衛兵に声をかけようとした瞬間肩を叩かれた。一瞬風がざわめき心臓が止まりそうになりながらも振り向くとそこには、あのヴィエラがいた。"赤色"の目を細め、会釈する。
「こんにちは」
「お、おう」
「いい天気だね」
「そうだな」
しばらくこの調子で他愛のない話が続く。この辺りのおいしかった食べ物の話や、特産物の話。グリダニア、とっても落ち着くしいいよねと笑顔で語るのを聞く。
「うん、あなたではなさそう。じゃ」
と一頻り話をした後軽やかなステップで去って行った。そしてボソと無機質な小さな声が俺の心臓を掴んだことを覚えている。
「この辺りで合流するって口を割ったんだけどなあ」
振り向くがそこには誰も、いなかった。
アイツが殺せるのはモンスターだけではない。人も、あの笑顔で、手にかけることができる。
アレをもし閣下の元に持って行ったらどうなるだろうか。いや、忠実に人の言うことを聞くオンナには見えない。それ以前にアレを、誰にも渡したくない。当時のオレはそンな下らないことを考えていた。異性としての感情ではない。ただ、今復元しようとしている旧い技術と並ぶ"奥の手"として欲するようになったのだ。
あの時のオレに言いたいことがある。やめておけ。鮮血の赤兎に、殺されかけるぞ。
◆
というのがあのオンナがガーロンドに出会うよりも前の昔話ってやつだ。今や髪色を変え、性格も柔らかく見せながらガーロンドの野郎に懐くバカウサギになっている。
未だ底を見せないあのオンナのバケモノスペックを前によくデレデレ出来るもンだ。
練度が低かったとはいえ小型のカストルムを1時間経たずに1人で殲滅させる実力を持つバカがオンナなわけがねェだろ。隠蔽したこっちの身にもなれって話だ。
#ネロ #即興SS
紅蓮4.5ストーリー途中に起こったお話です。
「うぬは、まさか―――」
プロト・アルテマに乗り込んだガイウスは赤に染まった"冒険者"を見て絶句した。獣のような唸り声を上げながら丈夫な外殻を剥がそうと刀を振り回し、確実にアルテマウェポンを破壊しようと試みる。正気を失っているようで何がトリガーか予想が付かない。我を失った冒険者を振り払い、応戦する内に「シドが死んでたら、お前のせいだ」と朧げな呟きが聞こえる。どうやら彼女の中でシドは先程の大魔法に巻き込まれたと思っているようだ。しかしそれだけにしては異常な強さを見せる冒険者の説明にはならない。
ふとそういえば過去に部下であったネロにあまりこのヴィエラを刺激しない方がいいとデータと共に進言されたなと思い返す。詳細を聞けばよかったかもしれないと後悔しながらも感情に身を任せた獣との戦いに彼も全力を持って応戦した。
『かつて陛下の前にまで辿り着いた侵入者の話であり、現在もあの方が執着している赤髪のヴィエラだ。どうやら1部隊使って誘導して帝国領内を走らせているらしい』
魔導城プラエトリウムが崩れ行く中、ガイウスはとある日に聞いた【過去】とかつて読んだ報告書が浮かび上がる。現在は上級士官以上にしか立ち入りを許可されない書架に封印されている記録。
―――まだ死ぬわけにはいかない。
◇
ザ・バーンにて、突如倒れてしまったアルフィノを抱えアンナの前に現れることになる。
黒髪のヴィエラは相変わらず人のために戦い続ける立派な強き者だなとガイウスはかつて刃を交わしたヒトを見つめた。
情報提供のいう名の確信に至るための最後のピースとして黒薔薇プラントにあった初代ソル帝の人造生命体の話をすると明らかに反応が変わった。一瞬目を見開き、険しい顔を見せる。これは、確定だろうと判断し、ガイウスは別れの挨拶とともに言い放った。
「また会おう、真に強き光の戦士、いや赤兎よ」
「赤、ウサギとな?」
「―――!! 待て! あ、あなた!!!!」
アンナはガイウスを掴み、ヒエンとアリゼーに「少し『お話』してくるから待ってて」と言い引きずって行った。
◇
「ガイウス、あなた」
「魔導城にてうぬが見せた技と先程の反応で確信した。まさかソル帝が目を付けていたヴィエラがうぬだとは全くもって予想がつかなかったぞ」
「うえぇ……まだ知ってるヤツがいた……あの時確実にトドメさせばよかった……」
小型飛空艇の前でアンナは頭を抱え座り込む。さりげなく物騒なことも言っているが触れずに目を逸らした。
「よりにもよってアリゼーの前で言わなくていいじゃない……」
「なんだうぬは未だ誰にもその過去を申しておらぬのか?」
「帝国といざこざしてる時にできる話じゃない」
アンナの隠しきれない動揺と抗議の様子が少々子供っぽくガイウスの口から笑みがこぼれる。と思ったら突然大げさに手を広げ舞台役者のような演技ががかった口調で語り始めた。
「そうだよ、ボクが50年ほど前に【鮮血の赤兎】と呼ばれたガレマール帝国で怪談として伝わり続けたヴィエラさ!」
「ソル帝に出会ったあの夜、何があった?」
「……あ、それに関しては今思うと恥ずかしいのでトップシークレットにしていただきたい……。あとポーション投げ捨てるんじゃなくて後でまとめて渡したよ相当盛られてるからその話……」
「そ、そうか」
即小さくなりながらため息を吐いている。どうやらその場では殺し合ったわけではないようだ。
ただ単に迷い込んだにしては運が良すぎるが果たして。
「多分あなたも犯人じゃないんだよね?」
「何がだ」
アンナから「これ」と言われながら黒色の便箋を手渡される。渡された物を眺めるとソル帝が用いていたものと酷似しており、「開けてもよいのか?」と聞くと「勝手にどうぞ」と言われた。中身を確認すると、【お前の役割は終わった】という文面とガーネットが施された装飾品が入っている。
「我はこんなことはせぬ」
「だよねえ」
「これを知っている者は?」
「まあ1人だけ。ボクにオマエは帝国で怪談になっていると教えてくれたお節介焼きがいてね」
「うぬは面倒な運命とともにしておるのだな」
好きでやってるわけじゃないという抗議が聞こえたが流してやるとアンナは立ち上がり、笑顔を見せた。そんな彼女に報告書で気になった記述を投げかける。
「うぬは、20年程前シドに救われたというのでいいのだな?」
「は? 何で知ってるの?」
「……我はシドの後見人であった」
「ああそういえばそうだった。聞いてたのね。誰にも話してないって言ってたじゃないか……ハァ……」
やれやれと肩をすくめため息を吐いている。どうやら監視されていたことは知らないようなので誤魔化してしまったと目を閉じて心の中で謝罪をしておいた。
「どいつもこいつもボクの過去を知ってる奴らはもれなくシドのことを聞いてくるから困るね」
頭を搔きながら不貞腐れているようだ。「先に言っておくけどボクは特定の人間に好きや嫌いやらの感情は持たない方針だから」と言っているがガイウスはまだ何も言葉にしていない。
「ま、次生きて会えたら何があったかまとめておくさ」
「うぬのことを知りたい人間はいくらでもいるだろう。我だけにではなくきちんとゆっくりと考えて話すといい」
「まったく無名の旅人に言われてもなあ興味持たれる理由が分からないねえ」
アンナが踵を返し、歩き出す。祖国で発行された作品で聞いたことのある単語にガイウスは反応した。
「龍殺しのリンドウの話も、また聞かせて欲しい」
ガイウスの言葉に一瞬アンナの歩みが止まるが、片手を上げ振りながら仲間の元に帰って行った。
拾った子供たちに聞かせた作品のうちの一つに、とある東方地域の逸話があった。山のように大きな龍をその辺りの木の棒で一閃したと言われる刀使いと共に旅をするものであり生涯唯一の弟子でもあった赤髪の少女がいたという。少女はザクロといった。そして彼女が持っていた手紙の中に入っていたものといえば柘榴石。それは即ち―――
「偶然であればいいのだが」
飛空艇に乗り込み、真実を確認するため、祖国のため男は旅立つのであった。
Wavebox
#ガイウス