FF14の二次創作置き場

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No.131

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 早朝、シドはふと腕がずしりと重くなり薄目を開いた。すると目の前には"…

漆黒

漆黒

旅人は子供になりすごすfull―エピローグ―


 早朝、シドはふと腕がずしりと重くなり薄目を開いた。すると目の前には"いつものアンナ"がいた。そろそろ戻るような予感がしたという彼女の予想は当たっていたらしい。くすりと笑う。今すぐにでも抱きしめようと思ったがぐっと我慢をし、目覚めるのを待つ。
 更に1時間もしない頃、多分いつもの起床時間なのだろう、アンナが起き上がり「あ」という声が聞こえた。「よし」という声も漏れ嬉しそうだ。「面倒。起きる前に撤退」と呟きながらそろりと寝台から離れようとしたので腕を掴んでやる。

「げっ」
「何がげだ。挨拶とお得意の謝罪はどうした。そしてどこに行くつもりだ?」
「お、おはよう。謝罪? 言う必要無し。ほら、もうボクの起床時間。日課を、ね?」
「戻った直後にいきなり大量にタスクを課すのは身体への負荷が半端ないと思うぞ?」

 ニコリと笑顔を見せ合う。そのまま力いっぱい引き摺り込む。

「アンナ、約束覚えてるよな?」
「な、何? 大人に戻ってるから昨晩の約束は無効」
「"戻ったら好きなだけ相手してやる"って言ったよな? ちょうど24時間ほど前に」
「え? あ……い、言ってない! そんな記憶皆無!」
「言った」

 しばらく言ったやら言ってないやら言い合う。必死に取り繕いながら言う姿を見るにきちんと思い出しているようだ。勝ち誇ったような笑みを浮かべてしまう。

「さ、昨晩上書きしたから無効だ無効!」
「そもそも言ったことすら覚えてなかっただろ」
「! じゃあ無かったことに」
「お前さんいつも言ってるじゃないか"約束だけは絶対に守る"って」
「う、うぅ……いやほらキミ今日もお仕事。そんな朝から疲れるようなこと……」

 珍しく弱り切ったアンナを朝から見られるのは心地がいいとシドは笑いながらここ数日の恨みつらみを吐く。

「ネロはパパと言って俺にはおじさんと言ったな? しかも昨日はだいぶパワーアップしていたじゃないか。ロリ、何だっけか? もう一度言ってみろ」
「いやその件は」
「そもそも実の所何でネロに頼ったんだ? 完全に俺や暁への配慮じゃないよな?」
「え、あ、そっちは少々本当に心配した上の」
「時間稼ぎって言ってたな? 誰の何に対してだ? こっちは一切連絡取れず心配しすぎて心が裂けるほど痛かったんだぞ?」

 大袈裟なことを言いながらジトリと睨みつけると目を逸らし呻き声を上げている。そりゃあ言い返せないだろう。今回ばかりは100%アンナが悪いのだから。

「もしかして怒ってる?」
「もしかしなくてもだな」
「ほ、本当に途中ヘマなく戻ったら何事もなく会いに行ったし?」
「その考えに怒ってるんだ」
「いや、その―――ゆ、許して? ほらキミ今日も忙しい。お仕事、行こ?」

 笑顔で見つめ合う沈黙の時間が流れた。反省しているように言えたしこれは許されたな、とアンナは心の中でガッツポーズしていると突然口を手で塞がれシドはリンクパールに手を伸ばす。引き剥がそうとするがビクともしない。リンクシェルを慣れた手つきで操作し、適当な社員へ繋ぐ。

「あー俺だ、シドだ。朝早くにすまんが今日は少し出勤が遅くなる。大丈夫だな? じゃあ何かあったら連絡してくれ、切るぞ」

 みるみるアンナの顔が青ざめていく。通信を切った後、ゆっくりと口から手が離れ、両腕を押さえられた。

「じゃあアンナ、ゆっくり言い訳を聞こうじゃないか」
「話し合いする体勢じゃない!?」

 アンナからするとお互い全裸でベッドの上に組み敷かれどこから見ても今から話をしようかという状態には見えない。話をするならせめて服、いや下着だけでも着させてくれという懇願も虚しく首元に噛みつかれた。



「ネロサン、迷惑をかけた」
「なンだお前戻れたのか。結局1週間位かかって―――って珍しく"そっち"か。ガキになってた間何してたンだ?」
「んー何のことやら全然」

 夕方、ガーロンド社にフラフラと髪を黒く染め直したひょろりと長細いアンナが現れる。戻ったんですねというすれ違う人に会釈をしながらネロを見つけ手に持った袋を渡した。ネロは一瞬で中身が変わってることを見破り尋ねてみたが、即はぐらかされる。袋の中を見ると菓子、迷惑料と書かれた袋、そして冊子が入っていた。パラパラと捲るといくつか走り書きされた図面たち。「何だこれ?」と聞くと「さあ? どう使うかは自由」とニィと笑った。見たことのない魔法人形に、奇妙な小銃のようなもの。先日渡された煙幕の幻影やパッと見正体不明な錬金薬関係のデータも入っている。

「"ボク"は重役出勤な人間の説教で疲れてるんでね、失礼するよ」
「アー」

 昼の出来事を思い出す。遅刻した癖に珍しく機嫌のいいシドは昼に出勤した。それから部屋に篭らされ書類に埋まっているが嫌そうな顔一つせず手を動かしている。ジェシーも流石に「ねえ今日の会長怖すぎない?」と引いていた風景を半笑いで眺めた。

「姿が戻ったのは早朝。それからここ数日の怒りと称して説教に重なる説教でボクはダウン。何度もキミはパパで俺はおじさん呼ばわりされてとか"小説の台詞が元ネタの発言"が云々言ってたからその辺りが相当傷付いたみたいでね。でも各方面にちゃんと戻った件は報告しないといけない。何とか"ボク"が身体を起こして錬金術師ギルドと石の家に顔を出してきたのさ。"あの子"は当分不貞寝で起きないと思われ」
「ハァそりゃお疲れさまなこって」

 それじゃ、と踵を返し、手を振りながら去って行った。ネロは袋の中身を改めて確認すると『シドに今日ここへ来たことは絶対に黙ってあげて欲しい。疲れてるから』と書かれていた。実際数時間後、「仕事後今朝の詫びで飯に行こうと約束した」とアンナを探す反省したような顔をしていたシドとばったり会ってしまう。流石にまずいと思ったが、知ったこっちゃないと適当に誤魔化そうとしたが隠していた袋が目ざとくバレてしまった。追及され、ジトリとした目でそのまま酒に付き合わされる。密かに何度試みてもリンクパールは一切繋がらず、横では延々とアンナについての愚痴とネロ本人の日頃の行いについてグチグチと語られ、『この野生生物共ぜってェ覚えてろ……』と何度も心の中で呪うネロの姿があった。

「マジで"ボク"は何が起こっていたのか分からないんだけどねぇ。とりあえずは教訓だ。錬金薬の扱いは慎重に。イヒヒッ」

 ガーロンド社の外に出た"約束を知らないアンナ"は空を見上げ伸びをする。なまった身体をまずは程よい運動でリハビリしよう、アンナはテレポを唱え、どこかへ飛んだ―――。


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