FF14の二次創作置き場

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No.128

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 5日目。実質奇妙な同居生活最終日だ。 目が覚めるとアンナはすでに起床し、着替え…

漆黒

漆黒

旅人は子供になりすごすfull―5日目―


 5日目。実質奇妙な同居生活最終日だ。
 目が覚めるとアンナはすでに起床し、着替えも終わっていた。珍しく少女っぽい服を着ている。ファットキャットのフードが付いたパーカーはこれから怒りに来る奴らにはよく効くだろう。

「ああネロサンおはよう」
「……おう。こりゃ馬子にも衣裳だな」
「一言余計」

 朝食を済ませ、適当に蒼天街歩き回ろうかと話をする。アンナも少々気分は沈んでいるようで。そんなに会いたくないのかと尋ねてやると「いやただただ面倒」と言うのでゲラゲラと笑ってしまった。仮にも仲間相手だろうに、聞いたら何人か崩れ落ちそうだと肩をすくめる。

 しかし蒼天街に入ってしまうとテンションは上がるもので。あの受付から復興用素材が採取できる島に行ける。定期的にピアノの演奏会があるんだと聞いた。素材や製作品の納品所や試しにくじ引き券の余りをもらい引いてみたりと一通りの体験を見せてもらった。
 現在は一角でアンナを抱き上げ一息ついている。タバコを咥えライターで火を点けようと思ったがポケットをまさぐっても出て来ない。ため息を吐いていると「そこでじっとしてて」と言われる。止まると「バァン」とタバコの先に指を近づけ火花が散り火が灯された。

「エーテルって便利だな」
「でしょー」
「それガーロンドにもやってンのか?」
「え? シドタバコ吸うの?」
「……アーそういやあいつ修羅場中にストレス溜まった時しか吸わねェわ。あとそもそもアレは電子タバコか」

 じゃあ一生見ることはねェなと言ってやるとへーと景色を眺めていた。相変わらず人に興味持たないなコイツと思い肩をすくめる。直後こちらへ走る気配を感じた。遂に来たか、と思いながら両手を上げる。

「タバコ終わるまでは待ってくれねェか」
「ネロ! お前……お前!!」
「休みをもらったのは俺だけだろ? お仕事はどうしたンだガーロンドォ?」

 うっせェなあと思いながら振り返ると暁のメンバーの一部とシドがいる。エルファーはいないようだ。それもそうか、アンナには公然の秘密にしているのだ、来るはずがない。

「ちょっと、アンナはどこかしら!?」
「ネロ、今ならまだ間に合う。投降するんだ」
「おいおい俺は"お・ま・え・ら"と違って何もやらないぜ? 一緒にすンなっつーの」

 一晩の間に彼らの中でどういう話になったのだろうか、ため息を吐き吸殻を踏みつぶす。

「おいメスバブーン」
「やだ」
「見てやれ」

 小さい声で嫌と言うが無視し首根っこを掴んで今の彼らを見せてやる。すると明るい顔をする者、顔を赤くする者、驚いている者、そして泣きそうにしているシドの姿。アンナはしばらく彼らを無言で眺めるとファットキャットのフードを深く被りこう言いやがった。

「ねぇパパ、あの"お・じ・さ・ん"たちこわーい」
「ア?」
「は?」
「え?」
「はいせーの」

 やりやがった、ため息を吐いた。強調までして重点的にシドを怒らせようとしている。これは交渉決裂ということだろう、2人でポケットに入れていた袋を取り出し、割った。
―――彼らの表情を確認する前に一面に煙幕がまき散らされる。「ネロサン、行こ」という声が聞こえたのでもうがむしゃらになって走り出した。一種のヤケクソになったアンナのキャハハと笑う声が響く。まあネロも笑うことしかできないのだが。大爆笑しながら逃げてやった。
 この煙幕は宿を出る前に説明を使用方法の共有として聞いている。錬金術師ギルドでは煙幕のような幻影を出すものを作っていたらしい。人体に影響なし、短時間で消えるため屋内で使っても空気の入れ替えの必要もなく汚れない。そうつまり怒られないと輝く目で言っていた。やる地点で怒られるんだよなあでも面白ェと思っているので人のことは言えないが。試作品もあって想定外より煙が発生し、晴れるまで時間はかかるだろう。だが相手らはエーテル視やエーテリアルステップやら追いかけっこが成立しないような小細工が出来る。シドもゴーグルを外せば第三の眼で動きの確認は可能だ。
 しかしアンナはただ蒼天街で遊んでいただけではなく抜け道や飛び越えられる場所等まで分かりやすく道を示すための"ささやかな目印"を施していた。それを頼りに袋を投げ割りながら精神を研ぎ澄まし、空間を把握しながら兎に角少しでも遠く走り"時間稼ぎ"を行うことにする。

 多勢に無勢という言葉がよく似合う。シドが用意していた複数の捕獲装置でアンナごと捕獲された。予想出来てはいたが数で追い詰めて来たガーロンド社の人間と違い、実力がある少数精鋭な暁の血盟から逃げ去ることは流石に無理だと悟る。2、3発はネロ自身の運動神経とアンナの機転で避けられたがそれ以上は耐え切れなかった。以前より弾速が上がりネットが仕込まれた弾も小型になってる。徐々に追い込まれ、最終的にお縄となった。
 一晩足らずでここまで仕上げたのは最早執念だろう。シドの顔を見やると先程の泣きそうな表情から一転し、物凄く怒っている。アンナはそれでいいと満足そうな顔で言っていてもうわけが分からない。代わる代わるの説教の時間かと思いきやヤ・シュトラが止める。向こうははっとした顔で一呼吸置き、口を開いた。

「ごめんなさい、アンナの気持ち考えなくて」
「お、俺もかわいいなって思って興奮してしまった。怖がらせたようで本当に申し訳ない」

 アリゼーとグ・ラハはあっさりと謝ったがシドはジトリとした目で睨み何も言わない。アンナは「反省文、読むかぁ」と小さな声で呟く。

「ごめん、シド。5日目になっても姿が大人に戻ってなかったら皆の前に現れる予定ではあったよ。人とそう約束済み。信じられないだろうけど詳細はヤ・シュトラに」

 顔を見やると目を丸くしている。一瞬ヤ・シュトラに目を配ると肩をすくめた後頷いていた。アンナはそのまま言葉を続ける。

「あまり人に心配させたくなかった。その辺り放任主義なネロサンが一番頼れるって私が判断しただけ。ネロサン悪くない。怒るなら私だけ、ね?」
「む……」
「それにこーんなかわいい見知らぬ美少女をデレデレしながら連れ歩いて衛兵に不審者として連れて行かれるおじさんを見たくなかったし」

 耐え切れず笑いを漏らしてしまった。周りも笑いを堪えているようだ。シドは「そ、そんなことにはならん」と言っている。「じゃあほらシド、もう逃げないから」と網の中でモゾモゾと動いている。大人しく言う通りに網を切り、アンナは伸びをしながら立ち上がりシドの手を握った。一瞬目が点になった後笑顔を見せている。何も言わず手を振りほどきイタズラっぽい笑みを浮かべながら足を踏みヤ・シュトラの方へ向いた。

「あ、ヤ・シュトラありがと」
「ええ何とかなってよかったわ。やっぱり身長と声のトーン以外はそんなに変わらないわね」
「内面まで子供になれる薬は時間を戻すレベル。そんなの誰だって欲しがる」

 落ち込むアリゼーとグ・ラハの所に小走りで向かい、笑顔を見せている。

「ほらもう怒ってないし怖くないから」
「アンナぁ」
「ごめんなぁ」
「アルフィノも一緒に遊ぼ」
「ああ、私も蒼天街はゆっくり見てみたかったんだ」

 これで奇妙な日々も終わりだ。こっそり引き上げようとするとシドに腕を掴まれる。

「ア?」
「聞きたいことがあるんだが」
「なンだよ」
「何もしてないよな?」

 ガキでバブーンにゃ興味ねェお前と一緒にすンな! と一蹴してやる。シドは目を丸くしてから「俺だって子供に何かするような趣味はないぞ失礼だな!?」と怒鳴り返す。
 その時悲鳴のようなアリゼーの言葉が聞こえた。

「え! あなたネロと一緒のベッドで普通に寝てたの!?」
「床痛いの可哀想だし普通にスペースあるからいいじゃん」
「いやいやそれは流石にシドが怒るだろ」
「シドは優しいから怒らない。……冷房いらずで便利って。起きる時大体抱き枕状態で抜けて朝の日課こなすの大変だったけど」
「……ネロ?」

 何も言わず走り出す。シドは必死の形相で「お前他に何もやってないだろうな!?」と言いながら追いかけまわしてくる。そう、アンナはこちらから秘密にしておけと言わない限り絶対に全て喋るオープンな女だ。完全に油断していた。やっぱりあのバブーンなんて大嫌いだと顔をしかめ「メスバブーンテメェマジで覚えとけよ!? これ以上余計なこと喋ンな!!」と叫んだ。



 罪人2人をレヴナンツトールに連れて帰る。勿論アンナは暴れているがしっかりと抱えてやった。ネロは戻るや否やガーロンド社へと連れて行かれた。シドは次の日にネロの部屋に置いてある荷物の類を回収する約束をし、宿にアンナを連れ込む。普段のアンナの仕草を見せているのにそれを見下ろす形なのは新鮮だと思いながら軽々と抱き上げると「子供扱いするな」と頬を膨らませている。

「普段俺にしてるじゃないか」
「私はいいの」

 薄い身体に普段より気持ち温かいが人より冷たい体温。抱きしめてやるとアンナは頭を優しく撫でた。額に頬に、そして唇に優しく口付けるとアンナは眉間にしわを寄せた。

「ヒゲくすぐったい」
「俺は変わらないぞ。いつも通りじゃないか」
「子供の姿だからかな。予想通り刺さるし、って続行しない!」

 小さくて、やわらかい。細い身体は確かに抱き心地がいい。普段よりも薄い腹部が脆そうで少しだけ心配になる。優しく撫でているとアンナはその腕を掴んだ。

「そういえばさ、シド」
「どうした?」
「―――今の私の身体、第二次性徴前。何も起こるわけがないでしょ?」

 耳元でボソリと呟かれると顔が熱くなっていく。改めて言われると恥ずかしくなる。クスクスと笑い声が聞こえた後「お風呂入って来るから、大人しくしててね」と下ろすよう床を指さした。言われるがまま解放すると部屋着を持って浴室へ駈け込んでいった。



 暇だ、と思いそろそろ説教も終わっているであろうネロにリンクパール通信を繋ぐ。

『あ?』
「ああネロ大丈夫か?」
『妹自慢が終わった所だ。ッたく引き受けンじゃなかったぜ』

 疲れ切った声が聞こえて来た。いい罰だ、優越感が勝る。

「お前の家ではアンナはどんな感じだったんだ?」
『料理は当番制で適当に本やらジャンクパーツで遊ンで寝させてただけだっつーの』
「健全だな」
『ッたりめェだろ。メスバブーン相手はどうも思わねェわ』
「料理は美味かったか?」
『ありゃダメ人間製造機だな。運動しねェと太るぞ』

 談笑していると扉がキィと鳴る。アンナがふとこちらを見ている。ただじっと。何か手に持っているようだがよく見えない。「アンナ、どうした?」と聞くが何も言わず奥に消えて行った。首を傾げながらネロに問う。

「風呂から出たら何かしてたか?」
『ドライヤーかけてやっただけだ。家の中濡らされたくねンだよ。面白ェもン見れっから別に苦でもなかったか』
「なるほど。じゃあ一度切るからな」

 ネロの答えを聞くより前に通信を切り、アンナの様子を伺いに立ち上がる。覗き込んでみるとドライヤーを手に持って四苦八苦しているようだ。よく分からないことを言っていたが、使い方を教えずただやってあげてたのかとため息を吐きながらその機械を手に取る。

「あ」
「ほらやってやるから」

 耳を触らないように暖かい風をかけてやる。正面にある鏡でアンナの表情はよく見えた。珍しく誰の目から見ても分かる程度にはご機嫌のようで余程これが気に入っているのかと苦笑した。もっと早く気付いていたらとネロに対し舌打ちしていると「んー」と言いながらふにゃりと耳が垂れ下がった。

「アンナ?」
「―――へ?」

 鏡で今の自分の状況を見たらしい。顔を赤くし、固まっている。耳を押さえ声が震えている。

「嘘、ネロサン何も言ってなかった。待って、シド、誤解」
「アンナ、髪はまだ乾いてないぞ?」

 逃がさないよう固定し、頭をガシガシと撫でてやると「やーめーろー!」と抗議の声が聞こえた。動かさないように修行していると言っているくせにふとした拍子にこう垂れ下がる姿を見せる。しかしいちいち丹念に触らなくても即見る手段が見つかったのは朗報だと考えた。あまりにも単純でシンプルな手法すぎて発想もなく心の中でガッツポーズする。

「スマンドライヤーの音で何も聞こえないな」
「嘘つかない! あ、じゃあやーいばーか! おーじーさーんー!」
「俺は普段のお前より半分以下の年齢だ。いちいち年齢を揶揄する単語を言うんじゃない」
「聞こえてるじゃん! 都合のいい耳だなあ!」

 聞こえないと言われたら思ったより幼い悪口が飛び出し苦笑する。絶対に戻ったらやらせないという恨み言を聞きながら「それなら子供のうちにゆっくり堪能しないとな」と後先考えずに喋るアンナに感謝した。
 直後、可愛らしい「みぎゃー!」という叫び声が響き渡る。やりすぎたかもしれない、一瞬その手を止めた。



 数十分後、少々機嫌が悪くなったアンナの機嫌取りを重ねた結果、ようやく抱きかかえる許可がもらえた。一回り小さな頭に顎を置き、アンナが読んでいる本を眺めている。滲んだ文字が多めな東方地域のからくり装置のカタログを読んでいるようだ。その筆跡はどこかで見たことがある気がするが思い出せない。

「アンナ、まだ寝ないのか?」
「別に寝てほしいなら寝てもいいけど」
「……もう少し」
「ほーらそういうこと言う」

 ケラケラと笑いシドの腕を甘噛みする。指を動かそうとすると「子供相手に何をしようとしてるのかな?」と止められる。中身は普段と一緒の癖に何を言っているんだと苦虫を嚙み潰したような顔をしてしまう。

「スケベ」
「ぐ。いやお前が煽るから」
「遂に開き直った」

 本を閉じ、放り投げるとこちらへと振り向き抱きしめ身体を密着させた。小さく冷たい身体が首元を小さくリップ音を立て口付ける。何もできないだろうと高を括った動きに我慢できず抱き上げてベッドに倒す。

「何? 嗚呼性別確定前の身体でも気になった?」
「いやそういうわけではなく」
「上半身はその辺りの子と変わらないよ? 下半身はねえ」
「言わんでいい」

 せめて1日位は我慢するかなって思ったのにねえと笑っている。

「それを耐えた先にご褒美があるかもしれないよ?」
「本当か?」
「さあ? ちなみに乳首や排泄器官は存在するけど男性器、女性器は見えないって感じだよ」
「そうなのか。ヴィエラの子供の話は初めて聞いたが不思議だな……ってさっき言わんでいいって言ったよな!?」
「あははっわざとに決まってるでしょ?」

 イタズラな笑みを浮かべこちらを確実に煽る姿はまさに子供の姿をした悪魔である。ため息を吐いた後、かぶりつくように口付け、小さな舌の根を吸い彼女の口内を味わう。何せここ5日に加え2週間位またどこか歩き回っていて連絡が付かなかったのだ。変に煽られると子供の身体相手でもすぐに手を出してしまいそうで。逃がさないように身体を押しつぶし反応を伺うと、苦しいのか胸板を叩きながら抗議する姿が愛おしい。一先ず満足しゆっくりと離れると惜しむように透明な唾液の糸が引かれている。顔を真っ赤にし、睨みつける姿に笑顔を見せてしまった。

「5日隠れててよかったよ。おかげでこんな目に遭う日数は少なく済んだ。言っておくけど体力はその辺りの子供と一緒」

 そっちから仕掛けていることをいい加減自覚してほしいんだがと思いながら「もう寝よう」と寝かしつける。
 その日の晩はこれ以上何もなくアンナは普通に眠った。理性のブレーキはギリギリまだ働いていたことに非常に安堵したのは秘密にしておくことにする。


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