FF14の二次創作置き場
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- 2024/11/26 旅人は魔導兵器を識りたい 新生
- 2024/11/19 "召し上がれ&quo… 新生
- 2024/11/15 溶けあうもの 紅蓮
- 2024/11/11 "11月11日&qu… 蒼天
- 2024/10/18 "嫉妬"、… 漆黒,
カテゴリ「暁月」に属する投稿[3件]
影は猫と見守る
注意
アンナの影身とリテイナーのお話2本立て。色々独自設定。暁月ジョブの話題があるので暁月カテゴリーに入れてますが漆黒以降のどこかであったお話です。
はじまりは
彼女が寝静まった夜、影は形を作りリテイナーのベルを鳴らす。扉が静かに開き、金髪ミコッテのリテイナーが現れた。一瞬満面の笑顔を見せていたが相手の姿を見るなり眉間に皴を寄せる。
「へへっお呼びかご主人……ってなんだテメェかよ」
「酒に付き合え」
「へいへい」
フレイがバルビュートを脱ぎ、素顔を見せるとアリスは「へぇ」と笑う。まずは金色だった目は青色に変わった。サラサラとした銀髪を揺らしながら傍に置いてあったグラスとワインのボトルをテーブルの中央に置く。アリスは笑いながら座り、懐から取り出した小型の装置を机に置きスイッチを押した。「それは何だ?」とフレイが聞くと「ご主人が起きたら困るだろ? 俺様の新発明防音空間発生装置」と笑った。「よく分からないものを作るのは"記憶"も一緒なのだな」とグラスを渡すと「ケケッ楽しいだろ?」とその赤色のワインを眺め、目の前の男を観察する。
「ヴィエラになってんのな。身長はそのまんまなのによ。エルがクソ切れそう」
「元の肉体であるエルダスの影響だろう。そしてこの力は"影身のフレイ"と呼ばれた男やら負の感情やらと混じり合った副産物って所か」
「まあご主人の悩みはリンとほぼ一緒だったからな。俺様の元みたいに人格として宿るだけでなく影として実体化までしちまったと」
「エーテルというものは便利だな。本当に生前大して使えなかったのが勿体ないくらいだ」
笑みを浮かべ指の上で炎を発生させる。
「ご満足いただけて何より」
そう歯を見せて笑うアリスにフレイは「そういえば先日遂にシドと直接会話してな」と手を叩く。
「へぇそりゃぁめでてぇな」
「まあ数言交わしただけだぞ。おぬしの"魂"に聞いてたがエルが少々複雑な顔をしておったと云う理由が分かった」
「そりゃ何より」
「悪いやつには見えん。素直で人タラシと呼ばれる理由も分かったが―――ちと危うい部分も多い。それに……」
それに、何だ? とアリスが問うと目を逸らし少しだけ顔を赤めた。少々震えながら口を開く。
「婚前交渉以前に告白するよりも先にその、性行為を行うというのは信じられん。あと説教と性欲を混ぜるのはもっといかん。鍛錬が足りぬなありゃ」
「童貞で死んだ古いお爺ちゃんが言うと説得力が凄いな!? ヒヒッ、ご主人いい大人なんだからセックス位許してやれって!」
「はしたないことをデカい声で言うんじゃない! 大体おぬしも相当の年齢ではないか! というかおぬしはエルより年上だったであろう!」
「ヘッヘッヘッ年齢はリセットされて30代だぜぇ。つーか話題振ったのそっちじゃんよ。ていうかフレイヤちゃん俺様達と違ってちゃんと性欲あったのはよかったじゃん」
ワインを飲みながらゲラゲラと笑っている。フレイはため息を吐き指をさす。
「で、ではおぬしは、その、経験あるのか? ああ恋人はいたか」
「んー研究のパートナーって感じだったな……じゃあ俺も生前童貞だったわニャハハハ!」
ハハハと2人は一頻りに笑った後、頬杖をつきながら眠る"主人"を見つめる。
「理解出来ん」
「近頃の若ぇヤツってすげぇなあ。そういやさ、2人がヤッてる時はどうしてんだ? 相変わらず引き籠ってんの?」
「外出してる。鎧が目立つから何とかしたいものだ」
「そりゃご苦労なこって」
俺様たちにはなかった要素だと眉をひそめた。いつまでも続けていたら最低な酒盛りになる。そう判断し、話題を変えようとアリスは脳みそをフル回転させる。そしてふと相手の名前について思い出した。
「で、どう呼べばいいんだ?」
「? 何がだ?」
「何が、じゃねぇよ。お前は"フレイ"なのか、それとも」
「フレイでよい。私はもう20年ほど前に舞台から消え去り肉体を捨てた名もなき存在。生前の名前も捨てるに決まっておる」
「―――俺様と弟子以外はあっさり捨てる所は相変わらずで嬉しいぜ。ハッピーバースデー、フレイ」
ニィと笑い杯を交わす。これはまだ誰も知らない"彼女"の最悪な内面らのお話―――
"収穫者"
「やはりリーパーと魔導技術が混じって厄介なものなのか? ガレマール帝国と言うものは」
「お爺ちゃんリーパーはもう帝国から追放されて存在しないぞ」
フレイは目を見開き「まことか」と呟いた。彼に存在する"ガレマール"の知識はほぼ共和国時代で止まっている。ソルが即位した頃の話はかいつまんだ情報しか伝わっていなかった。
「童の頃に父が持っていた鎌を振ってみたことがありはした。まさかリーパーと違い前線に人を置かずとも戦闘を終わらせることが出来るとはいえ機械技術にあっさりその席を奪われるとは」
若い頃を思い返す。ヴォイドと交信出来た父親と違い、妖異の力は相性が悪く扱い切れなかった。だが追放までされていたとは予想出来なかったらしい。
「ていうかテメェが存命の時にはほぼ用無し扱いされてたっつーの。怒った一族が暗殺企てたけどアシエンに勝てるわけもなく、な。ケケッ古き技術が淘汰されるというのは当然な話ではあるが哀れだよなァ」
「ふむ父は間一髪の亡命だった、と。私は本当に運に恵まれておる」
ニィとフレイが口角を上げながらアリスの髪に触れると「ケッお上手なことで」と額を指で弾く。話題を変えるように手を大きく広げる。
「かつてヴォイドと繋がる技術としてちょっと勉強したが中々面白かったぜ。流石に扱い切れないから実用化はしてねぇけどさ」
「おぬしでも触りたくないものはあるのだな」
「ったりめーよ。俺様は世界を滅ぼしたいわけじゃねぇし。いやあフレイヤちゃんに憑いて行って正解だったぜーこんな面白いことになるのは予想外じゃん」
ガハハと笑うアリスに対し、苦虫を嚙み潰したような顔を見せたフレイはボソリと呟く。
「……あまりいい気分はしないんだがな」
#フレイ #即興SS
アンナの影身とリテイナーのお話2本立て。色々独自設定。暁月ジョブの話題があるので暁月カテゴリーに入れてますが漆黒以降のどこかであったお話です。
はじまりは
彼女が寝静まった夜、影は形を作りリテイナーのベルを鳴らす。扉が静かに開き、金髪ミコッテのリテイナーが現れた。一瞬満面の笑顔を見せていたが相手の姿を見るなり眉間に皴を寄せる。
「へへっお呼びかご主人……ってなんだテメェかよ」
「酒に付き合え」
「へいへい」
フレイがバルビュートを脱ぎ、素顔を見せるとアリスは「へぇ」と笑う。まずは金色だった目は青色に変わった。サラサラとした銀髪を揺らしながら傍に置いてあったグラスとワインのボトルをテーブルの中央に置く。アリスは笑いながら座り、懐から取り出した小型の装置を机に置きスイッチを押した。「それは何だ?」とフレイが聞くと「ご主人が起きたら困るだろ? 俺様の新発明防音空間発生装置」と笑った。「よく分からないものを作るのは"記憶"も一緒なのだな」とグラスを渡すと「ケケッ楽しいだろ?」とその赤色のワインを眺め、目の前の男を観察する。
「ヴィエラになってんのな。身長はそのまんまなのによ。エルがクソ切れそう」
「元の肉体であるエルダスの影響だろう。そしてこの力は"影身のフレイ"と呼ばれた男やら負の感情やらと混じり合った副産物って所か」
「まあご主人の悩みはリンとほぼ一緒だったからな。俺様の元みたいに人格として宿るだけでなく影として実体化までしちまったと」
「エーテルというものは便利だな。本当に生前大して使えなかったのが勿体ないくらいだ」
笑みを浮かべ指の上で炎を発生させる。
「ご満足いただけて何より」
そう歯を見せて笑うアリスにフレイは「そういえば先日遂にシドと直接会話してな」と手を叩く。
「へぇそりゃぁめでてぇな」
「まあ数言交わしただけだぞ。おぬしの"魂"に聞いてたがエルが少々複雑な顔をしておったと云う理由が分かった」
「そりゃ何より」
「悪いやつには見えん。素直で人タラシと呼ばれる理由も分かったが―――ちと危うい部分も多い。それに……」
それに、何だ? とアリスが問うと目を逸らし少しだけ顔を赤めた。少々震えながら口を開く。
「婚前交渉以前に告白するよりも先にその、性行為を行うというのは信じられん。あと説教と性欲を混ぜるのはもっといかん。鍛錬が足りぬなありゃ」
「童貞で死んだ古いお爺ちゃんが言うと説得力が凄いな!? ヒヒッ、ご主人いい大人なんだからセックス位許してやれって!」
「はしたないことをデカい声で言うんじゃない! 大体おぬしも相当の年齢ではないか! というかおぬしはエルより年上だったであろう!」
「ヘッヘッヘッ年齢はリセットされて30代だぜぇ。つーか話題振ったのそっちじゃんよ。ていうかフレイヤちゃん俺様達と違ってちゃんと性欲あったのはよかったじゃん」
ワインを飲みながらゲラゲラと笑っている。フレイはため息を吐き指をさす。
「で、ではおぬしは、その、経験あるのか? ああ恋人はいたか」
「んー研究のパートナーって感じだったな……じゃあ俺も生前童貞だったわニャハハハ!」
ハハハと2人は一頻りに笑った後、頬杖をつきながら眠る"主人"を見つめる。
「理解出来ん」
「近頃の若ぇヤツってすげぇなあ。そういやさ、2人がヤッてる時はどうしてんだ? 相変わらず引き籠ってんの?」
「外出してる。鎧が目立つから何とかしたいものだ」
「そりゃご苦労なこって」
俺様たちにはなかった要素だと眉をひそめた。いつまでも続けていたら最低な酒盛りになる。そう判断し、話題を変えようとアリスは脳みそをフル回転させる。そしてふと相手の名前について思い出した。
「で、どう呼べばいいんだ?」
「? 何がだ?」
「何が、じゃねぇよ。お前は"フレイ"なのか、それとも」
「フレイでよい。私はもう20年ほど前に舞台から消え去り肉体を捨てた名もなき存在。生前の名前も捨てるに決まっておる」
「―――俺様と弟子以外はあっさり捨てる所は相変わらずで嬉しいぜ。ハッピーバースデー、フレイ」
ニィと笑い杯を交わす。これはまだ誰も知らない"彼女"の最悪な内面らのお話―――
"収穫者"
「やはりリーパーと魔導技術が混じって厄介なものなのか? ガレマール帝国と言うものは」
「お爺ちゃんリーパーはもう帝国から追放されて存在しないぞ」
フレイは目を見開き「まことか」と呟いた。彼に存在する"ガレマール"の知識はほぼ共和国時代で止まっている。ソルが即位した頃の話はかいつまんだ情報しか伝わっていなかった。
「童の頃に父が持っていた鎌を振ってみたことがありはした。まさかリーパーと違い前線に人を置かずとも戦闘を終わらせることが出来るとはいえ機械技術にあっさりその席を奪われるとは」
若い頃を思い返す。ヴォイドと交信出来た父親と違い、妖異の力は相性が悪く扱い切れなかった。だが追放までされていたとは予想出来なかったらしい。
「ていうかテメェが存命の時にはほぼ用無し扱いされてたっつーの。怒った一族が暗殺企てたけどアシエンに勝てるわけもなく、な。ケケッ古き技術が淘汰されるというのは当然な話ではあるが哀れだよなァ」
「ふむ父は間一髪の亡命だった、と。私は本当に運に恵まれておる」
ニィとフレイが口角を上げながらアリスの髪に触れると「ケッお上手なことで」と額を指で弾く。話題を変えるように手を大きく広げる。
「かつてヴォイドと繋がる技術としてちょっと勉強したが中々面白かったぜ。流石に扱い切れないから実用化はしてねぇけどさ」
「おぬしでも触りたくないものはあるのだな」
「ったりめーよ。俺様は世界を滅ぼしたいわけじゃねぇし。いやあフレイヤちゃんに憑いて行って正解だったぜーこんな面白いことになるのは予想外じゃん」
ガハハと笑うアリスに対し、苦虫を嚙み潰したような顔を見せたフレイはボソリと呟く。
「……あまりいい気分はしないんだがな」
#フレイ #即興SS
暁月.0終了後、実際ゲーム中でエンピに家を建てたのでそれを反映したお話です。
―――最近"また"アンナの様子がおかしい。いや、変なのは最早日常だ。が、今回ばかりは意味合いが違う。
アンナがまた世界を救い、負ってしまった傷が癒えた後。あの人は何事もなく気ままに人助けをしながら現れる生活を繰り返していた。が、約1ヶ月後、また連絡の頻度が減り滅多に顔も出さなくなった。まだ説教が足りなかったのかとため息を吐いているとリンクパールが鳴る。
『次の休日はいつ?』
「ああ一段落ついたから週末は休みだが」
『世界が滅ぶまで休み無しかあ』
「違うに決まってるだろ」
『ナイスジョーク。じゃあまた迎えに行くね』
飄々とした声で一方的に用件も言わず数言交わして切られる。やっぱり様子がおかしいのとどこかデジャヴ感があった。またリテイナーからイタズラにしか使えない変な道具を渡したか知恵を貰ったのかもしれない。アレが作ったと判明した"発信機"によると、主にイシュガルドで"仕込み"を行っているのは分かっている。少しだけ胃が痛くなった。
◇
数日後。
「久しぶり」
「だからお前は勝手すぎると何度言えば」
「ずっとエオルゼア周辺にはいたからノーカン」
ほらこっちこっちと腕を引っ張られ、飛空艇のチケットをチラリと見せた。「トップマストか?」と聞くと「違う」と言いながら放り込まれた。確かにこの時間に出る便はイシュガルドだったかと記憶を辿っていると目の前が真っ暗になる。どうやら目隠しを施されたようだ。
「こら」
「サプライズ。私がエスコート。それとも抱っこがいい?」
「往来でそんなことをするんじゃない!」
「人通り少ない場所は把握済み。安心」
何が安心だ。また変な企みかとため息を吐きながら「せめて飛空艇から降りるまでは外してくれないか。どの選択肢でも怪我するだろ」と言ってやると「ほんとだ」と外した。イタズラっぽい笑顔が相変わらず綺麗でため息を吐く。だってこれで少しだけ許してしまう自分がいるのだから呆れるのも当然じゃないか。
イシュガルドランディングを抜け、再び視界を覆われた。手を引かれ、歩かされる。時々「こちらへ」等声が聞こえた。食事会にでも連れて行かれているのだろうかと首を傾げていると「怖くない怖くない」と頭を撫でられる。「俺は子供じゃない」と威嚇するような素振りを見せるとクスクスと笑う声が聞こえた。
ふと「止まって」と言うので立ち止まり、「どうした」と聞くと目隠しが外される。光で目が眩み、目を細めながら正面を見るとそこには一軒家。そして傍には赤色のバディチョコボ"フレイム"がいる小さな厩舎。嫌な予感がする。眉間に皴が寄っていった。
「フレイヤ、お前まさかと思うが」
「アンナと呼ぶ。―――私の家」
あえて本名で呼んでやる。デジャヴ感は間違えていなかった。トップマストの一室に連れて行かれた時と全く同じ状況で。とりあえずどういう意図で連れて来たのかを問う。
「もうしばらくエオルゼアに留まるなら本格的に腰を落ち着かせる場所を準備しようと思い」
「分かる」
「そしたらイシュガルド復興プロジェクト完了、エンピレアムオープン」
「新聞で読んだな」
「じゃあここにSでいいから土地買お」
「……ん?」
「即応募、無事当選、購入。内装はとぼんやり手を動かし気が付くと1ヶ月経過。連絡より考える優先だとしてたのもあり反省し。一番最初に人を呼ぶのはキミと思ったのが数日前」
「お前薄々感じてたが相当のバカだな?」
外界のことを忘れ鼻歌を歌いながら内装を整えている姿は容易に想像できた。肩を落とし、ため息を吐く。その姿を見たアンナはニコリと笑い、「寒いでしょ? ささ、中へ」と案内した。
◇
玄関に入るとキッチンやリテイナーを呼ぶベルに食事スペース。真っ白な庭を見渡せる窓の傍には雑に物を積んだ作業机があった。手狭だが最低限の実用家具だけがそろえられている。「休みスペースは地下」と言いながら案内されると確かに寝台やクローゼット。暖を取る場所も少しだけ準備されていた。アパルトメントと違い置かれている家具は大体大人2人以上がゆったり使えそうで。風呂やトイレはあっちと呑気に案内するアンナをジトリとした目で見ると不敵な笑みを浮かべていた。
「ラノシアより本社に近いでしょ?」
「……そうだな?」
「キミもいい加減会社以外に住むことを覚えなよ。前にほぼ会社にいるからそういう所出払ってるなんて聞いてたし」
目を見開くと耳元でボソリと囁かれた。
「真っ白で寒い場所、キミと出会った時を思い出せる。グッドでしょ?」
「フレイヤ」
「だーかーらーアーンーナー。―――ボクら、故郷は捨てた身で帰る場所は無かった。まあキミはこれから復興するお手伝いとかもあるだろうけど。そろそろ作ってもいいんじゃないかな?」
「お前」
「まあお互い……特にボクは滅多に帰って来ないだろうけど帰る住処、いいなと思い。流石に終の棲家ではないけどさ。そういうのあると心の安定とやらが違うんでしょ? 書物で見た。あ、お仕事持ち帰ってやっててもよし」
「毎回何で! そういうことを相談もせず勝手にやるんだ! あといくら使った、正直に答えてくれないか!」
頭痛がする。思い付けば即実行のアンナにはいつも驚かされてきたが遂にサプライズとやらが突き抜けた。どこぞの社員2人みたいに俺の名義で勝手に領収書を切られていないだけマシだが、脳の処理が追いつけずソファに崩れ落ち項垂れた。
「金銭心配不要。最近色々大儲け。ぐっへっへっ」
「似合わん笑い方だな。ってそういう問題じゃない。いつも貰ってばっかなのが情けないんだが」
「じゃあこれからカスタマイズすればいい。好きに弄ってよし」
「だからな」
「あ、もしかして寒い場所は故郷を思い出して嫌い?」
少しだけしょんぼりとしたような顔で隣に座ったアンナに狼狽えてしまった。咳ばらいをし、笑みを返す。完全にガキの頃の話を持ち出されるのは不意打ちだっただけで問題はなかった。そして確かに少々肌寒い方が性に合う。
「いやそういうわけじゃない。こういうことするなら一言先にくれないか? サプライズにしては少々重いぞ。今後の人生的な意味で、だ」
「……ホー」
それは一切考えに入れてなかったと柔らかい笑みを浮かべた。他意なくこういうことをやらかすアンナは本当に心臓に悪い。今回も遠回しの告白ではなくただ何も考えずにやらかしただけだろう。少しだけやり返すことにする。
「じゃあ一軒家ならいいよな」
「? 何かメリットあった?」
ニィと笑いながら抱き寄せ耳元で囁いてやる。
「装置、無くても声出せるよな? 隣の家もそんなに近くない」
「……すけべ」
「いででで」
ジトリとした目で思い切りヒゲを引っ張られた。まあこうされるのも当然な話だろう。恥の概念が搭載されていない人間が何を言っているんだとも思うが。
ただ、トップマストにいる時は万が一に備えてとどこか慎重に対応されていた。後にあのリテイナーが持って来たという防音壁発生装置なんて都合のいいものが導入されてからは箍が外れつつあったがそれは置いておこう。頬に口付けを落としてやると盛大な溜息が聞こえた。
「帰る場所、か」
本当に悪くない提案かもしれない。あの『人と深く関わりたくない』と頑なに拒否していた旅人がそんなことを口にしたのだ。1年前の自分に言っても信じてくれないだろう。まあどうせ明日にはまた別々の道を奔って滅多に会えない関係なのは変わらないのだけは分かる。
「―――私だって少しはここで休む努力するさ。リテイナーが何やらかすか不明」
「は? まさかあのミコッテか?」
「上の作業机、あの子が希望、設置。内装考えてる時に凄く駄々こねられて」
「俺もなるべく帰れるよう頑張るが……何やってんだあいつ」
どうやら相当我儘を言われたらしい。少しだけ疲れた顔をしている。
「『外の景色を気分転換で見れる場所がいい! 俺様だって住みたい! いいだろいいよねいーいーよーなー』がメインだったかな。もーあの子たちの中では一番の大人なのに中身はお子ちゃん」
まさに前に見たビデオレターと変わらないムカつく男である。アレは御伽噺で見たような不気味な笑顔を見せる部下でありアンナの兄の友人だ。遥か昔に自らを模した"クローン"を作成し、現在は当時の記憶もそのままに各地を元気に走り回っている。近頃アンナによって行われるイタズラはこの男が"持って帰って来たもの"で起こされていた。本当に持っている技術が惜しいがアンナの関係者じゃなかったら絶対に関わりたくない。腕は確かなのだが、この男にだけは絶対頭を下げたくなかった。
閑話休題。少し考え込んでいると視線を感じた。アンナがこちらをジトリとした目で見ている。
「ああ待たせてしまったな」
「別に」
もう一度口付けてやるとため息を吐き目を閉じる。ククと笑いそのまま身体を倒してやった―――。
◇
「とりあえず近日中に私物は持ち込もうと思う」
「ご自由に」
早朝。着替えながら今後の計画を話し合う。高い買い物をされてしまったので好きにやらせてもらおうと悟った。以前『メスバブーンに関しては目の前で起こったことは全力で楽しむ方が有意義だ』と誰かが言っていたが、確かにそうだと思ってしまう。何故あいつの方がこの結論に至るのが早かったかはムカつくだろうから聞きたくない。
「本当に好きに弄ってもいいんだな?」
「ボクは怒らない。リテイナーたちの休憩場所とキッチンさえちゃんと残してくれてたら違法建築可能」
「いやそこまではできないが。まあア・リス以外の子らはお前さんにとって大切な家族だしな」
「でしょ? ていうかア・リスあんまりいじめちゃダメ。情けないって思っちゃうくらい泣かれるよ?」
なんて言いながらアンナはニィと笑いながら肩に顎を乗せる。最初こそは頭上で身長が縮むだろうと冗談を言い合っていたが、実はヴィエラ族が行う一種の愛情表現だったことを後に知り衝撃を受けた。まあ当の本人は自覚していなかったようだが。
「ほら、今日は暁からお呼ばれ」
「―――ああ」
ぐしゃりと頭を撫でてやると所謂"余所行き"の笑顔を見せていく姿は、以前の黙って何もかも背負っていた祖国の怪談であり、英雄でもある人間とは思えない。
「好きだぞ、アンナ」
「―――知ってる。素面で言わない」
「言ってやらないと分かってくれないじゃないか。……帰って来いよ」
「折角高い買い物したのに簡単に消えると思って?」
じゃあ次のイタズラをお楽しみにと言いながら鍵を押し付け外へ出て行った。自分も行かねばと軽くため息を吐きながら出立の準備をする。
―――流石にこれより上のイタズラはプロポーズより先なのではと思いながら。
Wavebox
#シド光♀