FF14の二次創作置き場

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No.88

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「はー苦労だけかけさせやがって! 俺様じゃなかったら見つからなかったぜ。……テメ…

本編前

#リンドウ関連

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旅人に"魂"は宿る
「はー苦労だけかけさせやがって! 俺様じゃなかったら見つからなかったぜ。……テメェは立派なリンの弟子だ! アハハハ! ……はぁ」

 鬱蒼と茂る森の中、年老いた金髪ミコッテの男は光が点滅する黒色の装置を確認しながらボヤいた後何かを詠唱する。ざわめく風は止まり、まるで周りの時が止まったかのようだ。男はゆっくりと対象に近付く。
 正面にはフードを深く被った赤髪のヴィエラ。立ったまま目を閉じ、眠っていたようだ。

「感謝しろよ? テメェが大好きだったお師匠サマの遺言だ。絶対にバケモノになんてさせねぇよ。一緒に連れて行ってやれ」

 銀と赤の目を細めニィと笑い懐の白の宝石を取り出す。握り締めると青白く光り、近付けると"それ"はヴィエラに吸い込まれていく。

「ついでに俺様の人生の中で一番の"最高傑作"になってくれよなァ? んー、魂にけったいな加工されてるがこの天才技術者様には造作もねぇ仕様だ、絶対に成功する」

 シワシワな手を差し伸べ、目を閉じる。そして名前を呼び、優しく語り掛けるかのように口を開いた。

「"シハーブ"が使えるのは遂にリンとテメェと俺様だけだったんだぜ? 色々研究して少しくらい使える人間増やそうと頑張ったが、リンが逝ったから"今"はもう手詰まりだ。しかも子孫だって残せねぇからテメェが"唯一"の成功作になるんだぜ! 光栄だろう? だからさ、こーんな浪漫溢れる力で世界を滅ぼさせるわけにゃいけねぇんだよ」

 歪んだ笑顔を見せる反面、頬に優しく触れる。思い浮かぶのは若い頃の自分と並ぶ2人の男の姿。

「えらくエルに似た顔になっちゃってマァ。色々あったんだな、"可哀想に"。―――嗚呼エル、すまんな。"俺様たち"はテメェと同じ所には行けなくなっちまったぜ。ケケッ」

 次第に光が彼に纏わり今も修行と護人の使命に雁字搦めになっているであろう男の妹にその光が送られていく。

「流石に"肉体"だけ冥界に行くことなんて出来ねぇだろうからなァ。ケケケッ、もしよければ"記憶"の俺様に、よろしくな。―――嗚呼最ッ高の人生だった。"完成"も楽しみだぜ」

 男は強い光に包まれ、消えると再び風がざわめきを取り戻す。カタンと何かが落ちる音が響いた。
 その音に反応してか、ヴィエラは目を開く。音の元を探そうと赤色の瞳を細めた。

「―――誰がいるのか?」

 中性的な声を発しながら辺りを見回しふと何か固いものを蹴る。拾ってみるとそれは黒い変な塊だった。しばらく眺めた後、放り投げようとした瞬間立ち眩みが起こり目の前が真っ黒になる。その場に座り込みながら目を閉じる。
 目を開くとヴィエラはその装置を懐に仕舞い込んだ。その瞳の色は―――銀色。ニィと笑い身体をうんと伸ばし歩き出す。



――― "ボク"は気が付いたら存在した"もう一人のフレイヤ・エルダス"だ。そう、少しだけ幸運なヴィエラである。"ボク"が初めて発現した次の年。紆余曲折あり何故かガレマルドへ再び連れて行かれてしまう。偶然現地の少年が現れなければ捕まってしまっていた可能性が高い。実際寒くて"表のフレイヤ・エルダス"は意識を失い、"ボク"が対応したのだ。だがこれは"運命"かもしれないとはにかんだ。自分を狙う面倒な"アレ"が作った帝国というものを内側から破壊する一手を繰り出すために"わざと"印象に残すよう再会の約束をし、青燐機関車に乗り込み何とか脱出して旅を再開する。
 それから自分の持っていた"能力"と備えられた"知識"で"この子"を導いた。まずはエオルゼアへ案内し"英雄"に仕立て上げる。理由は簡単。"そうしないといけない"と思ったからである。そしてまさか二度目のガレマルド来訪から20年余り後に蒔いていた種が成長し、運良く目論見が"大成功"してしまうのは予想外だった。あの時にやった咄嗟の判断に感謝する。
 そうだ、もう恐怖の象徴となった【鮮血の赤兎】は戻ってこない。闇に纏われた記憶と記録を全て捨て、"大切な人"を見つけた"この子"は小さな一歩を踏み出した。"アレ"を思い出すことさえなかったら、"ボク"は影として長いヴィエラの寿命たっぷり生きて、終わっていただろう。

 そういえば好奇心はクアールを殺す、そんな言葉をご存じだろうか。まさにクアールの尻尾を踏んでしまった男たちは、最悪の"記憶"を起こすことになる。いくつもの混じり合った"魂"はため息を吐き、リンドウとお揃いの黒い古びたトームストーンを胸に抱いた。


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