FF14の二次創作置き場
更新履歴
- 2025/02/18 旅人は花を置く 漆黒
- 2025/02/05 旅人は悩みを解決したい 漆黒,ネタバレ有り
- 2024/12/19 "武器と手加減&qu… 新生,ネタバレ有り
- 2024/12/18 星降る夜に誓いを乗せて 漆黒
- 2024/12/02 その複製体は聞き記す(ネタバレ… 漆黒,ネタバレ有り
No.166, No.165, No.163, No.161, No.160[5件]
旅人は悩みを解決したい
補足
時間軸はウェルリト後なので念のためにネタバレ有り行きにしてます。
本当は兄のエルファーとご飯きっかけに文通以外でお話したい自機の話。
――ウェルリト。
「おおアンナか、すまぬ」
「ガイウス、別に着替えしてるわけでもなしそのままでいいよ」
エオルゼアの英雄であり、かつて"鮮血の赤兎"と祖国で恐れられたヴィエラは宿泊スペースで刀の手入れを行っていた。手招きをされたのでガイウスはアンナの近くへと寄る。そしてしばらく慣れた動きを眺め、感心した。
「器用なものだな」
「慣れてるから」
「龍殺しに教えてもらったのか?」
アンナは目を見開きガイウスを見る。しかし「あーそういや帝国の人ってフウガ知ってるんだっけ」とすぐ刀に視線を落とす。
「旅人たるもの武器の手入れを怠るなって教えてもらったんだ」
「流石唯一の弟子と伝わっているだけある。うぬは苦手なこともないのか?」
「んーフウガには最後まで勝てなかったよ。だから戦うのも苦手。木の棒でドラゴンを倒したり岩をチーズのようにスライスしたりもできないよ。ボクは全然すごくないさ」
苦笑しながら柄に入れ、顔を上げた。手入れ道具を片付け身体を伸ばす。
「せっかくよい環境におるのだ。一度プロに見てもらった方がいいかもしれぬぞ?」
「うーん……武器ってさ。持ち主の身体の一部だと思ってる。だからそれを気軽に渡して見せるってのはねえ」
少しだけ唸るような声を上げた後「あーでも」と手をポンと叩く。
「銃系が分かんないんだよね」
「銃、と申すと?」
「ほら、機工士が使う銃とガンブレイカーのガンブレイドだよ。フウガって魔導技術革新より前の時代の人間だから、教えてもらえてないのさ。とりあえずイシュガルドの工房で、整備の仕方は一通り教えてもらったんだけど。まあガンブレイドの方はさっぱりってやつ」
お手上げなんだよねってと肩をすくめるとガイウスは少しだけ考える。その後愛用のガンブレイドを取りだした。アンナは首を傾げ、それを見ている。
「こいつは、No.IXと言ってな。ワシの親友、ミド・ガーロンドが軍団長就任祝いにと贈って来たものだったのだ」
「……ホー」
「うぬが持っておるものとは仕様が異なるかもしれぬが、魔導機工師ならきちんと頼めば診てもらえるのではないか? ……信頼できる人がおるだろう?」
「確かに、そうかもねぇ」
アンナは不敵な笑みを浮かべる。そして今回の企みで脳内がフル回転された。これをダシにしたら、あわよくば兄のエルファーとご飯を食べられるかもしれない。
「よし。ガイウス、いい思い出話ありがとね。かわりにちょっとだけフウガの話をするよ」
「子供たちも呼んでいいだろうか」
「……あんのアシエンどこでフウガを知ったんだよほんとに」
即苦笑しながらため息を軽くつき、呼びに行ったガイウスを待つ。
その後、少しだけリンドウとの旅の思い出を話してやる。アンナは"そういえば、こうやってフウガの詳しいこと人に話すのは初めてだっけ"と考えながら、夜が更けるまでその話をした。
◇
作戦はこう。ネロサンに武器の整備を依頼し、次の日にいつもネロサンの部屋に隠れてる兄さんを呼び、一緒に朝ごはんを食べる。これをきっかけに引きこもってないで時々は一緒に買い物とか行こうと誘う。ネロサンもノッてくれるはずだ。よし、我ながら完璧。
「というわけで武器の整備をお願いしたいんだよね」
「なーにがというわけだ? ガーロンドに頼みゃいいだろ」
「適材適所」
ガーロンド・アイアンワークス社。休憩室で優雅にコーヒーを飲んでいた男をラボと称している場所に引っ張り武器を突きつけた。
「元軍属なら銃とガンブレイドの整備位朝飯前でしょ?」
「マァそうだがそンな使ってねェよ。俺の戦い方位知ってンだろ?」
「む、お金出すし少々使える方向に改造してもいいから」
「いやガーロンドに殺されっか」
「あ、もしかしてボクが使う武器触るの怖い? まあ結構使いやすいように弄ってるしね。壊しちゃうって思ってるんだ。天才のくーせーに、意外と繊細。メンタルがザ」
その畳みかけるようなセリフにネロはカチンと来る。ヘタクソな罵倒言葉を打ち切るように震えながらキレ散らかした。
「やってやろうじゃねェかよこの野郎! この天才機工師の俺様にできないことはねェ!」
「じゃあ明日までによろしくね。はいお代先払い」
勢いで言ってしまった。ネロはその場に突っ伏してしまう。アンナは重みのある革袋を武器の横に置き、踵を返した。扉を開く直前にネロが「そういやよ」と引き留める。アンナは「何?」と言うと、ネロは指さした。
「いきなり何で武器を整備しろって言い出したンだ。お前何でも自分でできるハズだろ? 動機教えろ動機」
「え、ウェルリトでガンブレイド整備方法不明ってガイウスに言ったら"信用できる人がおるだろう?"ってヒント教えてくれたからだよ? そういやあの人が持ってる武器ってミド・ガーロンドに贈ってもらったものなんだって」
「ア?」
「じゃ、ボクは別の用事こなしてくるからまた明日」
ネロが止める間もなくアンナは去ってしまった。顔に手を当てため息を吐いているとひょっこりとエルファーが現れる。
「アレ、絶対意味履き違えてるよな。俺の勘違いじゃなけりゃ、超遠回しにガーロンドに頼めつってるよな閣下」
「だな。でもまあ一先ず隠そうか。よし、華麗に会長くんへ全仕事を押し付け、定時退社。腹ごしらえ後整備だ。我が妹の武器がどんなもんか見てみたかったんだ」
「マァ使いやすいように弄ってるっつーのがどういうのか気になるがよ」
ま、バレなきゃ何も起こらないかと肩をすくめ、笑みのようなものを見せるエルファーに笑いかけた。部屋を後にし、今晩の計画を練る。
◇
「で、俺に全部仕事を押し付けてお前たち2人は優雅に外部からの依頼、と。金もたんまりと貰ってな」
「黙秘権行使」
「しかもこれ見たことあるぞ。アンナのだよな。どういうことだ? ネロ」
2人は"普段は鈍感なくせにこういう時に限って鋭い"と舌打ちする。
優雅な定時退社を決め、整備するための道具を準備した後腹ごしらえだとレヴナンツトールで飯を食いに行く。戻ると、"ちょっと聞くことがあったから"とラボを覗いた後、何かに気づいたシドがジトリとした目で待っていた。笑顔を引きつらせながら「何か用でもあったか?」と聞くと「それはこっちのセリフだ」と吐き捨てた。
見るからに自分は不機嫌だと顔に書いている。
「前にも言ったよな? 勝手に、アンナの、お願いを聞くなって」
「記憶にねェな」
「初耳」
「いつ何回言ったか覚えてるぞ言ってやろうか?」
「クソッ、適材適所つって押し付けてきたンだよ恨むなら日ごろからアピールしてねェ自分を恨め」
「武器なら元軍属のネロに頼るのは自然だろう? 我が妹は意外と合理主義なことを忘れたのかいガーロンドくん」
「うぐ……」
シドは言葉を詰まらせる。面白いわけがなかった。これがあるということは日中アンナが来ていたということ。自分の所へは挨拶にすら来ずに。大方最初は断ろうとしたが、どうしてもと押し付けてきたのだろう。アンナが一度思いついたことは絶対に曲げない頑固さがあることを、鈍感なシドでも体感してきた。
「―――じゃあ今日の所はお前がやってるのを見る。次はないからな」
「勝手にしろ」
ネロはため息をつき道具を広げる。隣で2人分の視線を受けながら"あのバブーン覚えてろよ"とグチグチ言いながら夜は過ぎた。
◇
「やあやあ取り立てにきたよネロ、サ、うわぁシドいるじゃん。……じゃなかったおはよ」
早朝、アンナは日課を早々に終わらせこっそりとガーロンド社に顔を出す。この時間ならシドも起きていないだろうしと思いながら、軽やかなステップで3回ノック後、ネロの部屋に入る。いの一番に笑顔で立っているシドと目が合った。ネロは隣で大欠伸をしながら伸びをしている。
「うわぁって何だ。また1週間程度連絡つかなかったが元気そうじゃないか。アンナ」
「いや私がそんなこと言うわけないじゃない、お早いお目覚めとは健康で結構結構。へへっ……頼みごとの回収終わったら顔出す予定だったでやんすよ」
「変な誤魔化し方してると後で酷い目遭うの位いい加減に覚えとけ。……ほらメスバブーン終わったぞ。ったくアホみたいに弄りやがって。結構苦戦したかンな」
「帝国式に比べたらクセはあるがこれ位俺でもできるさ。ネロじゃなくて俺に頼れ」
アンナは武器を受け取りながら苦笑する。しばらく眺めた後、3人分のサンドイッチを机に置いた。
「私的には。あなたと武器、似合わないなって思ったからネロサンに押し付けただけだよ。でもまあ何かプランがあるのなら、次はお願いしようかな」
「嘘つきやがるのもお上手で」
「ネロサンお黙り」
シドは目を丸くしてアンナを見る。
「んじゃ、報酬代わり。3人で食べてね。ありがと」
そのまま踵を返し、部屋から抜け出した。シドの声が聞こえたが無視して扉を閉じる。
しばらく歩き、ジェシーと鉢合わせした。
「あらアンナ、おはよう早いわね。会長に会いに来たの?」
「……兄さんと朝ごはん食べたかったなぁ」
盛大なため息を吐く姿をジェシーは珍しいものを見る目で眺めていた。
Wavebox
時間軸はウェルリト後なので念のためにネタバレ有り行きにしてます。
本当は兄のエルファーとご飯きっかけに文通以外でお話したい自機の話。
――ウェルリト。
「おおアンナか、すまぬ」
「ガイウス、別に着替えしてるわけでもなしそのままでいいよ」
エオルゼアの英雄であり、かつて"鮮血の赤兎"と祖国で恐れられたヴィエラは宿泊スペースで刀の手入れを行っていた。手招きをされたのでガイウスはアンナの近くへと寄る。そしてしばらく慣れた動きを眺め、感心した。
「器用なものだな」
「慣れてるから」
「龍殺しに教えてもらったのか?」
アンナは目を見開きガイウスを見る。しかし「あーそういや帝国の人ってフウガ知ってるんだっけ」とすぐ刀に視線を落とす。
「旅人たるもの武器の手入れを怠るなって教えてもらったんだ」
「流石唯一の弟子と伝わっているだけある。うぬは苦手なこともないのか?」
「んーフウガには最後まで勝てなかったよ。だから戦うのも苦手。木の棒でドラゴンを倒したり岩をチーズのようにスライスしたりもできないよ。ボクは全然すごくないさ」
苦笑しながら柄に入れ、顔を上げた。手入れ道具を片付け身体を伸ばす。
「せっかくよい環境におるのだ。一度プロに見てもらった方がいいかもしれぬぞ?」
「うーん……武器ってさ。持ち主の身体の一部だと思ってる。だからそれを気軽に渡して見せるってのはねえ」
少しだけ唸るような声を上げた後「あーでも」と手をポンと叩く。
「銃系が分かんないんだよね」
「銃、と申すと?」
「ほら、機工士が使う銃とガンブレイカーのガンブレイドだよ。フウガって魔導技術革新より前の時代の人間だから、教えてもらえてないのさ。とりあえずイシュガルドの工房で、整備の仕方は一通り教えてもらったんだけど。まあガンブレイドの方はさっぱりってやつ」
お手上げなんだよねってと肩をすくめるとガイウスは少しだけ考える。その後愛用のガンブレイドを取りだした。アンナは首を傾げ、それを見ている。
「こいつは、No.IXと言ってな。ワシの親友、ミド・ガーロンドが軍団長就任祝いにと贈って来たものだったのだ」
「……ホー」
「うぬが持っておるものとは仕様が異なるかもしれぬが、魔導機工師ならきちんと頼めば診てもらえるのではないか? ……信頼できる人がおるだろう?」
「確かに、そうかもねぇ」
アンナは不敵な笑みを浮かべる。そして今回の企みで脳内がフル回転された。これをダシにしたら、あわよくば兄のエルファーとご飯を食べられるかもしれない。
「よし。ガイウス、いい思い出話ありがとね。かわりにちょっとだけフウガの話をするよ」
「子供たちも呼んでいいだろうか」
「……あんのアシエンどこでフウガを知ったんだよほんとに」
即苦笑しながらため息を軽くつき、呼びに行ったガイウスを待つ。
その後、少しだけリンドウとの旅の思い出を話してやる。アンナは"そういえば、こうやってフウガの詳しいこと人に話すのは初めてだっけ"と考えながら、夜が更けるまでその話をした。
◇
作戦はこう。ネロサンに武器の整備を依頼し、次の日にいつもネロサンの部屋に隠れてる兄さんを呼び、一緒に朝ごはんを食べる。これをきっかけに引きこもってないで時々は一緒に買い物とか行こうと誘う。ネロサンもノッてくれるはずだ。よし、我ながら完璧。
「というわけで武器の整備をお願いしたいんだよね」
「なーにがというわけだ? ガーロンドに頼みゃいいだろ」
「適材適所」
ガーロンド・アイアンワークス社。休憩室で優雅にコーヒーを飲んでいた男をラボと称している場所に引っ張り武器を突きつけた。
「元軍属なら銃とガンブレイドの整備位朝飯前でしょ?」
「マァそうだがそンな使ってねェよ。俺の戦い方位知ってンだろ?」
「む、お金出すし少々使える方向に改造してもいいから」
「いやガーロンドに殺されっか」
「あ、もしかしてボクが使う武器触るの怖い? まあ結構使いやすいように弄ってるしね。壊しちゃうって思ってるんだ。天才のくーせーに、意外と繊細。メンタルがザ」
その畳みかけるようなセリフにネロはカチンと来る。ヘタクソな罵倒言葉を打ち切るように震えながらキレ散らかした。
「やってやろうじゃねェかよこの野郎! この天才機工師の俺様にできないことはねェ!」
「じゃあ明日までによろしくね。はいお代先払い」
勢いで言ってしまった。ネロはその場に突っ伏してしまう。アンナは重みのある革袋を武器の横に置き、踵を返した。扉を開く直前にネロが「そういやよ」と引き留める。アンナは「何?」と言うと、ネロは指さした。
「いきなり何で武器を整備しろって言い出したンだ。お前何でも自分でできるハズだろ? 動機教えろ動機」
「え、ウェルリトでガンブレイド整備方法不明ってガイウスに言ったら"信用できる人がおるだろう?"ってヒント教えてくれたからだよ? そういやあの人が持ってる武器ってミド・ガーロンドに贈ってもらったものなんだって」
「ア?」
「じゃ、ボクは別の用事こなしてくるからまた明日」
ネロが止める間もなくアンナは去ってしまった。顔に手を当てため息を吐いているとひょっこりとエルファーが現れる。
「アレ、絶対意味履き違えてるよな。俺の勘違いじゃなけりゃ、超遠回しにガーロンドに頼めつってるよな閣下」
「だな。でもまあ一先ず隠そうか。よし、華麗に会長くんへ全仕事を押し付け、定時退社。腹ごしらえ後整備だ。我が妹の武器がどんなもんか見てみたかったんだ」
「マァ使いやすいように弄ってるっつーのがどういうのか気になるがよ」
ま、バレなきゃ何も起こらないかと肩をすくめ、笑みのようなものを見せるエルファーに笑いかけた。部屋を後にし、今晩の計画を練る。
◇
「で、俺に全部仕事を押し付けてお前たち2人は優雅に外部からの依頼、と。金もたんまりと貰ってな」
「黙秘権行使」
「しかもこれ見たことあるぞ。アンナのだよな。どういうことだ? ネロ」
2人は"普段は鈍感なくせにこういう時に限って鋭い"と舌打ちする。
優雅な定時退社を決め、整備するための道具を準備した後腹ごしらえだとレヴナンツトールで飯を食いに行く。戻ると、"ちょっと聞くことがあったから"とラボを覗いた後、何かに気づいたシドがジトリとした目で待っていた。笑顔を引きつらせながら「何か用でもあったか?」と聞くと「それはこっちのセリフだ」と吐き捨てた。
見るからに自分は不機嫌だと顔に書いている。
「前にも言ったよな? 勝手に、アンナの、お願いを聞くなって」
「記憶にねェな」
「初耳」
「いつ何回言ったか覚えてるぞ言ってやろうか?」
「クソッ、適材適所つって押し付けてきたンだよ恨むなら日ごろからアピールしてねェ自分を恨め」
「武器なら元軍属のネロに頼るのは自然だろう? 我が妹は意外と合理主義なことを忘れたのかいガーロンドくん」
「うぐ……」
シドは言葉を詰まらせる。面白いわけがなかった。これがあるということは日中アンナが来ていたということ。自分の所へは挨拶にすら来ずに。大方最初は断ろうとしたが、どうしてもと押し付けてきたのだろう。アンナが一度思いついたことは絶対に曲げない頑固さがあることを、鈍感なシドでも体感してきた。
「―――じゃあ今日の所はお前がやってるのを見る。次はないからな」
「勝手にしろ」
ネロはため息をつき道具を広げる。隣で2人分の視線を受けながら"あのバブーン覚えてろよ"とグチグチ言いながら夜は過ぎた。
◇
「やあやあ取り立てにきたよネロ、サ、うわぁシドいるじゃん。……じゃなかったおはよ」
早朝、アンナは日課を早々に終わらせこっそりとガーロンド社に顔を出す。この時間ならシドも起きていないだろうしと思いながら、軽やかなステップで3回ノック後、ネロの部屋に入る。いの一番に笑顔で立っているシドと目が合った。ネロは隣で大欠伸をしながら伸びをしている。
「うわぁって何だ。また1週間程度連絡つかなかったが元気そうじゃないか。アンナ」
「いや私がそんなこと言うわけないじゃない、お早いお目覚めとは健康で結構結構。へへっ……頼みごとの回収終わったら顔出す予定だったでやんすよ」
「変な誤魔化し方してると後で酷い目遭うの位いい加減に覚えとけ。……ほらメスバブーン終わったぞ。ったくアホみたいに弄りやがって。結構苦戦したかンな」
「帝国式に比べたらクセはあるがこれ位俺でもできるさ。ネロじゃなくて俺に頼れ」
アンナは武器を受け取りながら苦笑する。しばらく眺めた後、3人分のサンドイッチを机に置いた。
「私的には。あなたと武器、似合わないなって思ったからネロサンに押し付けただけだよ。でもまあ何かプランがあるのなら、次はお願いしようかな」
「嘘つきやがるのもお上手で」
「ネロサンお黙り」
シドは目を丸くしてアンナを見る。
「んじゃ、報酬代わり。3人で食べてね。ありがと」
そのまま踵を返し、部屋から抜け出した。シドの声が聞こえたが無視して扉を閉じる。
しばらく歩き、ジェシーと鉢合わせした。
「あらアンナ、おはよう早いわね。会長に会いに来たの?」
「……兄さんと朝ごはん食べたかったなぁ」
盛大なため息を吐く姿をジェシーは珍しいものを見る目で眺めていた。
Wavebox
【R18】旅人が過去を懐かしんだ夜
"武器と手加減"
注意・補足
新生以降紅蓮以内のシド光♀。モンクジョブクエ50前提。
目を閉じて、息を大きく吸う。目に見えぬ何かをまとわせ、それを拳へ集中させる。重心を下半身に、上半身は力を抜き、"気"を意識。
「アンナじゃないか」
「っ!?」
突然声を掛けられ集中が途切れてしまった。振り向くと白い男が手を振りながら走り寄って来る。
「だいぶ早い時間に起きるんだな」
「そんなことないよ? シドこそ早い。……いや徹夜明け?」
「正解だ」
肩をすくめ、苦笑している。そして何をしていたんだと聞くのでボクはいつもの笑顔を見せた。
「朝の日課は運動から始まる」
「ああ準備運動みたいなもんか」
「昔ある人に教えてもらった。武術、その"型"と言えばいいのかな? 体操の代用」
「アラミゴの僧兵か?」
「あーそれに近い。本場のモンクの人に色々教えてもらったけど違う動きだったの。多分別流派」
じゃあそういうことでと再び構えるとシドはそのまま少し離れた場所で見ている。首を傾げた。
「いいじゃないか」
「楽しくないよ?」
「楽しいとかじゃないさ」
よく分からないので放置しておこう。そのままいつも通り、姿勢を正してゆっくりと呼吸を整え、そして―――
◇
汗を拭きながら、一息吐く。シドは―――ずっといたみたい。
「凄いな」
「毎日やってれば誰だってできるものだよ。健康体操みたいなもん。君もやってみる?」
「あー今度にしてくれ」
「やる気はなし」
「邪魔をしたくないんだ」
しっかり自覚して結構と言ってやると顔がほころんでいた。どうやら褒め言葉だと思っているらしい。もうそれでいいよ。
「まあこの辺りでやっているのも理由があるんだ」
「理由、か?」
「ここモードゥナは"世界の中心"とやららしいからね。確かにエーテルの吸収をしやすい。流れも掴みやすく、面白いことがやりやすいんだよね」
「俺の論文読んだのか?」
「ちょっと借りたのよ」
目を丸くしているシドにニィと笑ってやり、装備していた格闘武器を外す。1本の樹木の前に立ち、息を吸う。そして拳を当てがい、エーテルを集中させた。
「例えばこうやって」
拳に力を入れる。その瞬間パンと破裂音が響き渡った。小鳥たちの慌てたように飛び立つ音が聞こえる。
「木が」
シドの顔を見るとどんどん血の気が引いているのが分かる。当たり前だ。跡形もなく樹木がバラバラになったのだから。
「エーテルって便利だね」
満面の笑みで言ってやる。こうすると大体の人間はボクの周りから去って行くのだ。
しかしこの男は違った。
「おい拳は痛くないのか!?」
その手を握りボクを心配するような目を見せている。どこまでも優しい男だ。首元がくすぐったい。
「? エーテルを拳に集中させて撃ってるだけだし。やってることはモンクの体術と一緒だよ? チャクラは体内エーテルの流れのことだし」
「いやそんな激しく体内エーテルを消費するような行為も身体に悪いだろ! 無茶をするな」
「こんなのめったに人に見せないしやらないよ。だから武器装備してる」
傍に置いてある刀を持ちシドに触らせる。鞘を通し、長い刀身をなでさせた。
「これは他の人に内緒だよ? 私にとって武器というものは手加減の道具。これがないととーっても困っちゃうの」
「手加減」
「少しでも拳に力を入れちゃったらあなただって一瞬で粉砕しちゃう。人間として、エオルゼアにいるための大事なパーツ」
耳元にまで近づき、笑みを浮かべた。子供に言い聞かせるように優しくささやく。
「私は強大すぎる力を得てしまった。誰の手にも負えない、だからどの勢力にも属せない。そんな私があなたの"手伝い"をしている。その意味をよーく考えてね」
震える手を一瞬だけ握り、離れてやった。シドは一瞬ポカンとして顔を見せた後に咳払いをし、苦笑する。
「抑止力としての忠告のつもりか?」
「さあどうでしょう。……お腹空いたから朝ごはんにしましょ?」
「ああ俺も腹が減ってた所なんだ」
屋台で何を食べようかとシドは聞いてきた。そうだね、ご機嫌な朝ごはんと言いながら一緒に歩き出す。
乾いた風が今日も小心者なボクの心を嗤っていた―――。
Wavebox
#シド光♀
新生以降紅蓮以内のシド光♀。モンクジョブクエ50前提。
目を閉じて、息を大きく吸う。目に見えぬ何かをまとわせ、それを拳へ集中させる。重心を下半身に、上半身は力を抜き、"気"を意識。
「アンナじゃないか」
「っ!?」
突然声を掛けられ集中が途切れてしまった。振り向くと白い男が手を振りながら走り寄って来る。
「だいぶ早い時間に起きるんだな」
「そんなことないよ? シドこそ早い。……いや徹夜明け?」
「正解だ」
肩をすくめ、苦笑している。そして何をしていたんだと聞くのでボクはいつもの笑顔を見せた。
「朝の日課は運動から始まる」
「ああ準備運動みたいなもんか」
「昔ある人に教えてもらった。武術、その"型"と言えばいいのかな? 体操の代用」
「アラミゴの僧兵か?」
「あーそれに近い。本場のモンクの人に色々教えてもらったけど違う動きだったの。多分別流派」
じゃあそういうことでと再び構えるとシドはそのまま少し離れた場所で見ている。首を傾げた。
「いいじゃないか」
「楽しくないよ?」
「楽しいとかじゃないさ」
よく分からないので放置しておこう。そのままいつも通り、姿勢を正してゆっくりと呼吸を整え、そして―――
◇
汗を拭きながら、一息吐く。シドは―――ずっといたみたい。
「凄いな」
「毎日やってれば誰だってできるものだよ。健康体操みたいなもん。君もやってみる?」
「あー今度にしてくれ」
「やる気はなし」
「邪魔をしたくないんだ」
しっかり自覚して結構と言ってやると顔がほころんでいた。どうやら褒め言葉だと思っているらしい。もうそれでいいよ。
「まあこの辺りでやっているのも理由があるんだ」
「理由、か?」
「ここモードゥナは"世界の中心"とやららしいからね。確かにエーテルの吸収をしやすい。流れも掴みやすく、面白いことがやりやすいんだよね」
「俺の論文読んだのか?」
「ちょっと借りたのよ」
目を丸くしているシドにニィと笑ってやり、装備していた格闘武器を外す。1本の樹木の前に立ち、息を吸う。そして拳を当てがい、エーテルを集中させた。
「例えばこうやって」
拳に力を入れる。その瞬間パンと破裂音が響き渡った。小鳥たちの慌てたように飛び立つ音が聞こえる。
「木が」
シドの顔を見るとどんどん血の気が引いているのが分かる。当たり前だ。跡形もなく樹木がバラバラになったのだから。
「エーテルって便利だね」
満面の笑みで言ってやる。こうすると大体の人間はボクの周りから去って行くのだ。
しかしこの男は違った。
「おい拳は痛くないのか!?」
その手を握りボクを心配するような目を見せている。どこまでも優しい男だ。首元がくすぐったい。
「? エーテルを拳に集中させて撃ってるだけだし。やってることはモンクの体術と一緒だよ? チャクラは体内エーテルの流れのことだし」
「いやそんな激しく体内エーテルを消費するような行為も身体に悪いだろ! 無茶をするな」
「こんなのめったに人に見せないしやらないよ。だから武器装備してる」
傍に置いてある刀を持ちシドに触らせる。鞘を通し、長い刀身をなでさせた。
「これは他の人に内緒だよ? 私にとって武器というものは手加減の道具。これがないととーっても困っちゃうの」
「手加減」
「少しでも拳に力を入れちゃったらあなただって一瞬で粉砕しちゃう。人間として、エオルゼアにいるための大事なパーツ」
耳元にまで近づき、笑みを浮かべた。子供に言い聞かせるように優しくささやく。
「私は強大すぎる力を得てしまった。誰の手にも負えない、だからどの勢力にも属せない。そんな私があなたの"手伝い"をしている。その意味をよーく考えてね」
震える手を一瞬だけ握り、離れてやった。シドは一瞬ポカンとして顔を見せた後に咳払いをし、苦笑する。
「抑止力としての忠告のつもりか?」
「さあどうでしょう。……お腹空いたから朝ごはんにしましょ?」
「ああ俺も腹が減ってた所なんだ」
屋台で何を食べようかとシドは聞いてきた。そうだね、ご機嫌な朝ごはんと言いながら一緒に歩き出す。
乾いた風が今日も小心者なボクの心を嗤っていた―――。
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#シド光♀
2025年のヴァレンティオンデークエストに少し触れたシド光♀です。
少しだけ黄金ネタ有り。(物語の核心に繋がるネタではないです)
1.平和なヴァレンティオンデー朝
「今年もあるんだな……」
シドは苦笑いして見せた。目の前には"これまで以下略チョコレート"と書かれている。毎年変なことを言いながら渡していたが、ついに建前を考えることすら面倒になったらしい。
ヴァレンティオンデー。本来好きな人に「愛」を伝える祝祭と記憶している。だが、アンナが莫大な量のチョコレートを変な口実付けて配る日と化していた。
原因はアンナの兄であり現在社員として働いているエルファーによる見当違いなアドバイス。しかし残念ながらシドだけは現物を貰えたことがない。
閑話休題。今年はアンナ本人から手渡さず、自分で取る方式らしい。近くにいたジェシーにこれを置いて帰ったヤツはどこに隠れているのかと聞いた。どうやら「グリダニアで仕込み」と言ったのだとか。
「で、止めずに行かせたと」
「いいじゃないですか。恋人の奇行くらい許容しましょうよ」
「ああ、お前らもついに奇行と認めたか……」
仕込みというキーワード。それは彼女の厄介な"趣味"に起因するものである。最初こそは微塵も見せていなかったが、彼女はモーグリ族顔負けのイタズラ趣味を持っている。
多少のサプライズならどうってこともない。だが、彼女は何事にも全力を尽くす人間だ。無駄に器用な技術を用い、あの手この手でこちらを驚かせ、満足したら去る。救いなのはそのイタズラ相手はシドだけで、他人には相変わらずすました顔で対応していた。
しかし毎回怒鳴りながら追いかけている姿は社員の間でも「また見せつけて来てる」と惚気の一種だと勘違いされている。確かに間違いなく愛はある。あるのだが――心臓がいくつあっても足りないというのが本音だ。
「だって会長、アンナさんからイタズラされた後機嫌いいですし」
「毎日されててほしいよなあ」
「オイラは毎回愛って何か考えさせられるッスよ……」
このように社員らの目には機嫌を直す薬として見られているらしい。どういう解釈をしたらそういう解を導くことができるのか、是非とも詳しく聞いてみたい。が、理解できそうもないのでやめておく。
嫌な予感を察知しながらも、どさくさに紛れてチョコを手に取りながら本日も業務が始まった。
2.サプライズには花束を
珍しく彼女は夕方まで現れなかった。
「やあシド」
「またバカみたいな量のチョコを作ってたな」
シドは苦笑しながら自室に現れたアンナを迎えた。何かを後ろに隠している。怪訝な目で見ているとアンナは満面な笑顔で差し出した。
「ほらチョコレートなんかより。バラの花束、いかが?」
「ど、どうしたんだいきなり」
「今、グリダニアで、バラが熱い」
アンナによると、現在グリダニアでは愛する人に渡すバラを配っているのだという。お手伝いのお礼で貰ったからあげる、と。
ニッコリと笑いながら大きな花束を押し付けてくる。
「日頃のお礼だよ」
「だからそれをやるなら俺の方だと」
「早いもん勝ち」
ほら早く手に取って、とアンナはまた一層押し付けてくる。シドはやれやれと言いながらその花束を受け取る。
見た目は何もない赤いバラの花束だ。まじまじと眺め、どこのバラかと聞くと昔はイシュガルドで。霊災による気候変動の影響で今はグリダニアの人が育てているとアンナは答えた。
シドは柔らかな笑みを見せる。それを握り、どこに飾ればいいのかと考えているとカチッという音が鳴った。
「カチ?」
鳴り響くクラッカーの音。飛び散る紙吹雪。一瞬で理解する。これが朝聞いた仕込み、かと。アンナを見る。いつの間にか扉を開きこちらを見ていた。ニィと不敵な笑みを浮かべていつもの一言を口にする。
「ナイスイタズラ」
その言葉と共に一目散に走り去る。シドは「待てアンナ!」と怒りながら、今日もまた追いかけ回した。
3.真実は突然に
「今日も平和すぎて欠伸が出るな」
「まーた変なことしてたのか我が妹は」
また逃げられてしまった。逃げ足だけは本当に早い。ため息を吐きながら彼女の兄に苦情を言いに行く。
こいつらにも平和扱いされるのかと思いながら大体の出来事を話す。
「ということがあってな」
「赤のバラ、ねぇ」
「よしここで新開発したシステム披露。OKカイルくん」
エルファーが手を上げると青色に光る玉がコロコロとやって来る。
『ピピッ、何について調べますカ?』
「何だこれ」
「お前最近また引き籠ってンなと思ったら変なモン作ってたのか」
「変なのとは何だ変なのとは。まあ見てろ。……赤いバラ、花言葉」
手を叩きながら検索ワードを語りかけるとしばらく読み込み音が聞こえた後、電子音声が鳴り響く。
『ピピッ、愛の誓い! 愚問ですネ!』
「今さらだな。ガーロンドくん、何本?」
「何がだ?」
「お前そンなことも分かんねェのか。本数によってまた花言葉が変わンだよ」
なぜ俺が呆れられないといけないのかとジトリとした目で見ながら、思い返す。しかし、まじまじと眺め数えてはいなかった。
「いや覚えてないな。10本は超えていた、と思う」
「……まあ想像の範疇。OKカイルくん」
「なぁそのOKまでいるのか?」
「これがいいんじゃないか。コホン、赤いバラの花束、10本以上、我が妹が好きそうな花言葉」
またジジジと読み込み音が聞こえる。30秒余り経過した後、電子音声が鳴り響いた。
『ピピッ、21本』
「なぜ?」
『ピピッ、花言葉はあなただけに尽くします。ついでにヴァレンティオンデーの概要を確認しますカ?』
「はいカイルくんありがとうもうお腹いっぱいだ」
『ピピッ、お役に立てたようで何よりでス! またいつでも質問してくださいネ!』
そのまま物陰へ去っていくのを見届けた後、エルファーとネロはジトリとした目でシドをちらりと見た。
「結論、照れ隠し」
「ハッ、茹蛸になってンな」
「お、お前たちうるさいぞ!」
そういえばイタズラの後片付けを忘れていたことを思い出す。急いで自室へ駆けだした姿を呆れた目で2人は見守っていた。
4.照れ隠し
自室へ戻ると即違和感を抱く。そのまま飛び出したのでイタズラの残骸が残っていたはずだ。しかし綺麗に掃除されている。首を傾げているとふと気配を感じた。
肩をすくめた後、ゴーグルを外す。そして神経を研ぎ澄まし、第三の眼で確認をすると、何かが部屋の隅で丸まっていた。ゆっくりと近づき、目の前に座る。
「人をストレートに口説きたいなら変なギミック加えない方がいいぜ」
「……チッ」
「舌打ちをするな。ほら姿を見せてくれ」
「やだ」
「透明化はアルファ――じゃないな。これはシルフ族のおまじないから着想でも得たのか? 相変わらず錬金術で遊んでるな」
ボンという音と煙で何も見えなくなる。だが、ガレアン人が持つ目を持ってすれば小手先の策は通じない。姿を現しながら立ち上がろうとした彼女の腕を掴み、そのまま抱きしめた。
「っ――!?」
「アンナ」
「離して」
「逃げるじゃないか」
「帰る」
「帰すわけないだろ」
みるみる煙が晴れ、そこには顔を真っ赤にした恋人が。アンナ・サリスという人間はイタズラ好きのクセに、いざやらかしたらこうやって隅で震えている。初めてやらかされた時は逃げた先で泣いていた。
だから強く責めることもできない。何より器用な技術が気になるからと後で調べることも多かった。そして少しだけ改良してやり返したらこれも泣く。シドはそんな姿もまた愛おしく感じていた。
そう、あの血も涙もないと一部で囁かれているこの英雄様。実は意外と泣き虫な面がある。兄によれば「人と関わってこなかったから分からなくて泣き出すのだろう。まだまだ子供で可愛いよな。ついにガーロンドくんにも分かってもらえるとは思わず」らしい。これは酒の席で出た発言なので流石に気持ち悪いぞ一緒にするなと釘を刺しておいた。
まあ確かに彼女の泣き顔は少しだけ、そうほんの少しだけそそる所もあるのだが、絶対に言うわけがない。吊るされるというオチが浮かぶ。
「造花だよな?」
「もちろん。本物はジェシーがいい花瓶準備してくれた」
「明日部下たちからどういう目で見られるか」
「愉快」
「お前なぁ……っとそうだった」
シドはふと後で食べようとそばに置いていたチョコレートに手を取る。
「キミはママ以外からいっぱい貰ったことある。何貰ってるの」
「うるさいぞ」
今年はコーンっぽいものを模した立体チョコレートと、白いモコモコとしたような動物を描いたアイシングクッキーだ。
「これは最近お前が行った場所で生息してる生物か? いやこれは食べ物か?」
「アルパカとモロコシ様だけど」
「モロ、コシ……?」
相変わらずどこを旅すれば奇妙な体験をするのか理解ができない。もう少し説明を求めたら満面な笑みを見せた。
「アルパカはこっちでいうチョコボみたいなやつだよ。モロコシ様はモロコシ様。とっても優しくておいしいんじゃぞ」
「また妙な語尾を……」
「で? いきなりそれを持ち出してどうしたの?」
「決まってるだろ」
「……お断り」
シドは何も言わずにジトリとした目で見ると、アンナは両手を上げた。
5.サプライズはメインディッシュ
目を覚ますと、既にアンナはいなかった。相変わらず早朝の日課とやらが大切らしい。伸びをしながら着替えを手に取った。
嫌な予感がしながらも外へ出るとやはり視線が気になる。アンナは一体どこに飾ったというのだろう。
工房に入るとネロとエルファーが笑顔で立っていた。そして手に持っていた"カイルくん"が浮かび上がりシドを案内する。その先には複数の大きな花瓶に生けられたバラの花。
「OKカイルくん、女心が分からない会長クンに本数数えて花言葉、どうぞ」
『ピピッ』
上部のフタが開き、レンズが現れた。そして光と共にバラを照らした後、再び読み込み音が流れる。高らかな電子音声が響いた。
『ピピッ、バラの花束、99本ですネ! 永遠の愛、長年の想い、ずっと一緒にいてください! こちら七度目の質問でス!』
「まーた茹蛸になってンな」
「兄は割とマジで許さないぞとしか言えん」
『ピピッ、また何かありましたらいつでも質問してくださいネ!』
「いらん!」
ポケットを漁ると心当たりのない紙切れの感触。恐る恐る開くと『満足』と書かれていた。
シドは再び顔を真っ赤にしながら恋人の名前を叫んだ。
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#シド光♀ #季節イベント