FF14の二次創作置き場

更新履歴

No.112

(対象画像がありません)

注意セイブザクイーン【シダテル・ボズヤ蒸発事変】の記憶探索終了後のお話。落ち込ん…

漆黒,ネタバレ有り

#シド光♀

漆黒,ネタバレ有り

"追憶"
注意
セイブザクイーン【シダテル・ボズヤ蒸発事変】の記憶探索終了後のお話。落ち込んだシドを自機なりに慰めたり家族について語る感じ。
時系列的にはメイン5.3終了までには起こってる感じ。
 
「英雄さんどこに行ったッスかぁ」

 金髪のヴィエラリリヤはガンゴッシュ内をうろつき赤髪ヴィエラのアンナを探す。先程まで記憶探索の後処理でミコトといた筈なのだがいつの間にかふらりとどこかに消えていた。英雄と呼ばれているが、本人としてはフリーな旅人だと噂では聞いていたので気にはしていない。少々尋ねたいことが残っていただけで。ガンゴッシュ外には行っていないようなので、キョロキョロと周辺を見回していると見覚えのある背中を発見する。

「あ」

 探していたアンナ―――と一度帰ると言っていた筈のシドが2人で空を見上げていた。シドの頭を優しくポンと撫でながら肩に寄せる姿にリリヤは一瞬止まってしまう。後ずさり、リンクパールを手にしながら慌ててその場を離れて行った。



 シドは記憶探索も終わり一度山積みになっているだろう仕事のため飛空艇で戻ることにする。しかし少し歩くと待って、と呼び止められた。振り向くとそこにはいつもの笑顔を浮かべたアンナがいる。

「どうした、アンナ」
「少しだけ時間ちょうだい」

 腕を引っ張られ、喧騒から離れた場所にて2人は立つ。アンナは空を見上げていたので釣られて頭を上げた。すると頭をポンと撫でながら自らの肩へと寄せる。瞬時に赤くしていると表情一つ変えずボソリと喋った。

「色々あった日はね、フウガがこうやって空を見上げながら頭を撫でてくれたんだ。本当は星空だけど。おっと感情はまだ取っておいて」

 ニコリと笑い、耳元で囁く。それはまるで悪魔の囁きのように甘いお誘いだった。

「もし時間があるなら今夜望海楼においで。お仕事ラブならそのまま帰ってもいい」

 シドの返事を聞く前に耳にキスを落とし、パッと離れた。後処理まだ残ってて探してるかも、と言いながら元いた場所へと戻って行く。1人残された男はしばらく口をあんぐりと開き、去った先を見つめていた。

「帰れるわけないじゃないか……」



 夜、飛空艇で一先ずクガネに降り立つ。リンクパールでジェシーに一晩泊まって帰るからもう少し遅くなるがいいか、と聞いてみる。意外なことに即機嫌のよい声で許可を貰えた。不気味だ、と思いながら望海楼の方に行くと入り口前でアンナが佇んでいる。即こちらに気付いたようでニコリと笑顔で手を上げた。

「おやおやてっきり帰ってるかと」
「どうせ先にジェシーに連絡してるんだろ」
「バレたか」

 まさかとは思ったが本当に先回りしていたらしい。さすが準備のいい女だ、実質断れなかったかと背中を叩いてやるとニヤニヤ笑っていた。じゃあご飯準備してもらってるからと手を差し伸ばされる。

「本来は逆だといつも思うんだが」
「そんな顔してる男の人にエスコートされたくない」

 手を握ると指先に軽く口付けた後に引っ張られ、部屋へと案内された。チェックインは先に終わらせていたらしい。すれ違う従業員に物珍しい目で見られているが、アンナは仕草1つ変えずいつも通りだ。個室には既に豪勢な食事が準備され、座るように促される。

「お金は考えなくていい。何かあった時は一杯ご飯を食べて寝るのが一番」
「ヌく方が効率的とか言ってた人間とは思えない発言が飛んだな」
「おうおうご飯時にそういう話はご法度」
「最近誰かさんに影響されているのではと言われたんでな」

 アンナは一体誰かな、許さないねえと肩をすくめている。シドはニヤと笑っていると、すぐに調子が戻ったのか飯を食いたいのか「いただきます」と手を合わすので、その声に釣られて同じく手を合わせてしまった。



「食事どうだった?」
「お前さんの料理ほどではなかったが美味しかったな」
「流石にプロの方がレベル高いと思うよ?」

 東方料理だけでなく多少エオルゼアでもよく見る揚げ物等も添えられ食べ応えがあった。酒は、と問うと「絶対悪酔いするから今度ね」と言われる。
 その後アンナは苦笑しながら置かれていたタオルや浴衣を押し付けた。

「お風呂。大きい温泉、ゆっくりつかるの、いい。その間に布団敷いてもらう。それともご飯食べたから帰る?」
「帰らんと言ってるだろ」

 小突きながら道具を受け取り部屋を後にする。いい休息になりそうだ、と思いながら共同浴場へ向かった。

 言われるがままぼんやりと入浴し、部屋に戻ると確かに布団が敷かれていた。エオルゼア様式の寝台もいいが布団というものも悪くない。アンナはまだ戻っていない様子で。外を見上げると綺麗な月が雲の間から覗かせている。繁華街からの喧騒もかすかに聞こえ、その音も心地がいい。少しだけ目頭が熱くなったタイミングでアンナが部屋に戻ってきた。

「おや先に―――嗚呼遅くなってゴメン」

 着替えを放り投げ駆け寄って来る。シドは思ったよりも震えた声で口を開く。

「日中みたいに」
「ん。座って」

 月明りの下、隣に座り、アンナの肩に頭を寄せるとそのままポンと撫でられた。涙が溢れ、嗚咽が漏れる。

「泣け泣け。今は私しかいない。明日からまた笑顔を見せておくれ」

 多分フウガが言っていた言葉をそのまま口にしているのだろう。我慢できなくなり、そのまま押し倒し強く抱きしめた。

「甘えたい年頃?」
「うるせぇぞ。リンドウの真似をするな」
「嗚呼そういう。人の慰め方を他に知らずつい」

 ごめんごめんと言いながら身体に手を回し、抱き返す。その後アンナは何も言わずその堰き止めていた感情を受け止めていた。



 少しだけ落ち着いた頃、アンナは突然思い付いたかのように脇腹へと指を這わせた。

「私的にはその銃創の謎が解けたからボズヤのレジスタンスに協力してよかったなって。―――あーあ、誰かさんのせいで自分勝手な考えをするように」
「っ、それでもいいんじゃないか? アンナは完全に部外者だろ」
「その部外者でも首を突っ込んでしまうのが無名の旅人。―――ってそんな顔しないでよ冗談冗談。もうただの旅人さ」

 ジトッとした目を避けるように苦笑している。シドは「次言ったら分かってるよな?」と眉間に皴を寄せるとアンナは「はいはい」と窘める。

「ねえシド」
「どうした?」

 アンナは何かを言おうとする。しかし首を傾げた。どうしたとシドは再び聞くが目を閉じたまま固まっている。

「何か、言おうとした。でも分からず」

 ようやく口を開いたと思ったらよく分からないことを言っている。必死に考えこんでいるようだ。

「ごめん、シド」

 頭をグシャグシャと掻きながら悩み続けている。珍しいと思いながらシドはその風景を見つめた。
 アンナは確かに何か言おうと思っていた。しかし何も浮かばない。"結論がついたらすぐに報告する"と約束したのに、それを表現するための言葉が頭から消えた。あんなにも人を口説いていたはずなのに。

「まだ、足りないかも」
「うおっ!?」

 シドを強く抱きしめ、撫で続ける。強く、締まる位に。流石に苦しくなってきたので腕を掴み抗議した。

「アンナ、流石に手加減無しで抱きしめるのは」
「……ゴメン」
「その辺り考えられん位悩むことって何かあったのか?」
「う……」

 そっぽを向き、何も言わない。いつもより子供っぽい姿に笑みがこぼれた。くしゃりと頭を撫で、口付けた。

「別に今すぐ言わないといけないことなんてないだろ? ゆっくりでいいさ。それとも何かやらかしたのか?」
「そう、だね。別に悪いことして言葉詰まってるわけじゃないよ失礼。あ! そうだ!」

 どうした、と聞くと目を輝かせながら話を促す。

「あなたの家族の話、聞かせて」
「……そんなのでいいのか?」
「色々確執が消えた今だからできる話ってあるでしょう? 気が変わる前に早く」

 それもそうかとシドは呟いた。提案しておいて気が変わる前にとかなんて我儘な人間なのだろうかとも思う。だがあの人に興味を持たない女が話せとせがむのだ。悪い気はしない。優しかった少年時代の家族との日々を少しずつ紐を解くように話す。アンナはずっといつもの笑顔で聞いていた。そうしながらも、まるで自分に欠けている部分を補完するかのように家族やその周りの環境について尋ねる。

「お互い帰らずの故郷で家族の話なのに聞いてて楽しいなんて思わず」

 一通り話終わった後にポソリと呟いた言葉が印象的だった。

「お前さんはいつでも兄に手紙で聞けるだろ?」
「兄さんは血が繋がった家族の話はしない。"聖なる場所"へと旅立った父さまと色々あって」

 そういえばこの兄妹の家族についての話は一切聞いたことがなかったなと思い出す。しかし思ったより珍妙な単語が出た。首を傾げてしまう。

「聖なる、場所?」
「ヘーヘっヘっへっ、この世にゃ知らなくてもいいことっていっぱいあんだぜ兄ちゃん」
「何だその口調は」
「まあ死んでるって感じでいいと思う。顔の記憶すらないから会ったことないんでしょ、多分」

 その場所もどういうものかは私も知らないしとはにかんでいる。

「……お前の故郷グリダニアも吃驚な余所者お断りの面倒な村だな?」
「超純血主義の帝国出身な人に言われても。あと成人前に飛び出したから知らなぁい。ささ、もう寝よ? 明日少しでも早く会社に戻ってあげなきゃ」
「話題逸らされた気がするんだが」

 第三の眼付近に口付けてから目を閉じる様を見たシドのぼやきは虚空に消える。相変わらずアンナという存在を全て掴めた気はしない。いつか知ることはあるのだろうか。―――とりあえず帰ってから少しだけ兄に聞いてみよう。そう思いながらその冷たい身体を抱きしめ、目を閉じた。


Wavebox

#シド光♀

このサイトの見方
(カテゴリを選択)から大体の拡張タイトルごとの時系列なページに飛ぶことが出来ます。
漆黒以降のメインストーリーネタバレ要素があるものはちゃんと記載しています。