FF14の二次創作置き場

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No.28

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注意旅人は過去を懐かしむ後日談その3。好きな人2と同時刻のおはなし。 …

紅蓮

#シド光♀

紅蓮

赤面の旅人
注意
旅人は過去を懐かしむ後日談その3。好きな人2と同時刻のおはなし。
 

 書類、書類、書類。シドの周りには先が見えないほどの書類がまた積まれていた。まあ3日程飛び出してしまった分のツケだ。これ位は痛くないとは思っている。しかしだ。

「必要ないやつまで混じってるじゃないか……」

 書類選別から始めないといけない積み方はどうかと本日何度目か分からないほどのため息をついた。不審なほどに大量の新商品についての仕様書や機構が書かれた設計図から予算の承認、取引履歴まで自分がいなかったにしては『効率よく事が進みすぎている』。何かがおかしい。

「会長! お仕事頑張ってください!」

 交代で見張りに来る社員達の顔は未だに機嫌がいい。先に戻ってきていたアンナが目を見張るほどの土産を置いて行き大騒ぎになっている中シドは帰って来た。満面な笑顔の会長代理が持っていた金色の箱には『会長貸出料』と書かれており、「アンナといたならもっと早く言ってくださいよ! で、何してたんですか?」と土産話を要求された。かいつまんで説明すると次第に目から光が消え呆れた顔になっていたのは少し理解できなかった。シド本人としても自分に呆れている。彼女という靄に一つ触ることが出来た筈なのにどこか近付いた感じがしない。酒の勢いで身体を合わせてしまったのかと思いモヤモヤとしていたら2日前の『ナイスイタズラ』騒動で強引に現実に引き戻されてしまった。人を驚かす行為が好きなのは知っていたが、目的のためなら自爆に等しい事もやらかす人なのは初めて知った。
 またため息を吐く。薄くなっているであろう肩に付けられた印を手で押さえる。「アンナ」とボソリと騒動から顔を出していない彼女の名前を呟く。その時だった。

「何?」

 真上から声が響く。目を見開きながら見上げるとそこには自分をいつもの笑顔で見るここ数日の悩みの種がこちらを見つめていた。

「あれ、見張りがいたと思うんだが……」
「30分休憩。勿論内緒の約束済」

 アンナは左手人差し指を口の前に当てながら右手に持っていたサンドイッチが乗せられた皿をシドに差し出す。シドが「変なの入れてないだろうな?」と聞くと「先日のお詫び」と笑顔を浮かべた。どうやら罪悪感という概念は存在したらしい。シドは礼を言いながら受け取る。
 それに続きアンナは「あとほら」と言いながら書類を軽く押しのけながら机に座りコートの留め具を外しながら首元を見せシドに近付く。突然の行為に口をポカンと開きアンナを見ていると目を細め三日月のような笑顔を見せながら耳元で囁く。

「仕返ししてみる? まあ私の肌の色では痕跡なんて付かないからご満足いただけないでしょうけど」

 一切反省してないじゃないかという理性と裏腹にふわりと漂うパーシモンの香りにごくりと息を飲む。唇が触れる手前でアンナは「なーんて。ナイスイタズラ」と言いながら離れようとした。"また"逃がしてしまう、つい反射的に「待て」と言いアンナの肩を掴み―――首元に噛り付いた。

「っ!?」

 アンナの小さく短い悲鳴が聞こえた。一瞬ビクリと震えたのが分かる。完全にやり返されることは考えていなかったであろう細く引き締まった身体を強く抱きしめながらガリと歯を立てながら吸い、これまで叶わなかった彼女を味わう。汗とは違う甘い匂いと思ったよりも柔らかい肌に女性らしい要素もあることに安心した。幸いなことに抵抗はされなかった。だがいっそのこと跳ね除けてくれた方が諦めがついていただろうにと思いながら出来た痕跡に舌を這わせながら後頭部をぐしゃりと撫でる。髭が当たりくすぐったいのかくぐもったような息遣いが聞こえた。

「噛み痕なら付く」
「……そうみたいだねえ」

 首元から顔を離しアンナの顔を見ると少しだけばつの悪そうな表情を見せながらも頬は褐色な肌の上からでも分かるくらい真っ赤に高揚していた。「煽ったのはアンナだからな?」と言ってやると「わ、忘れた」と呟きながら首元を隠すように押さえた。そして踵を返し出口の方へ歩き出す。

「そろそろ30分。サンドイッチ食べて頑張れ」
「いやまだ10分も経ってないんだが」
「……から厭だ」

 ボソボソと呟いた後アンナは手を上げ数度振りながら暗闇に消えて行った。
 手渡されたサンドイッチを口に含む。新鮮なラノシアレタスとルビートマト、卵が入った定番の品だ。とりあえず今は食べることに集中しよう。そして早々に仕事も終わらせてしまいたい。
 先程の首元に付けた証と真っ赤になった怯えた目をする彼女の顔が脳裏にこびりついていた。そして去り際に残した「これ以上いたらキミがボクから離れられなくなるからイヤだ」という言葉にニヤけが止まらない。「もう遅いさ」という呟きが闇夜に溶けて消えた。

 シドは『そうか、本当に俺はあの人を友人としてではなく異性として好きだと思っていたのか。そして彼女の心だけでない、身体にも自分だけの痕跡を残したいと強く願うほど歪んだ独占欲も持ち合わせていたのか』とこの瞬間に悟る。抱きしめ、噛み痕は残せた、じゃあ次に求めてしまう欲求はまさか―――いやそれはないだろう。しかしモヤモヤとした心が少しだけ晴れた気がした。



「うそでしょ……」

 翌朝、ジェシー達が出社すると積み上げておいた書類はほぼ全て片付けられ、ネロが組み上げていた設計図と睨み合う完徹だが異常に上機嫌なシドが座っているのであった―――

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#シド光♀

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